20 / 23
番外編 カイ
しおりを挟む
あの日、四人の獣をその身一つで従えて以来、砦の秩序は静かに、しかし確実に変貌していた。
男たちはゆきを女王の様に崇め、その寵愛を競い合うように、日々の任務に、そして夜の奉仕に励んだ。
そんなある夜、ゆきは誰にも告げず、城塞の最上階にあるカイの私室を訪れた。
そこは、無骨な机と羊皮紙の地図、そして武具だけが置かれた、王の仕事場であり、彼の縄張りだ。
「……何の用だ」
机に向かっていたカイは、振り返りもせずに言った。
その声には、ゆきが他の男たち――特に、反逆者であるはずのキースさえも許し、傍に置いていることへの、隠しきれない苛立ちが滲んでいる。
「貴方の顔を見に来ました。私の、一番強い獣の」
ゆきがこともなげに言うと、カイは椅子を蹴るようにして立ち上がった。
その巨体が、ゆきの前に立ちはだかる。
逆光で表情は読めないが、その瞳が獰猛な光を宿していることだけは分かった。
「俺を、他の奴らと同列に扱うな」
「あら、違うの?」
「当然だ。お前をこの世界で導き、その身体を最初に刻んだのは、この俺だ」
カイは、出会ったあの夜のように、有無を言わさぬ力でゆきの顎を掴んだ。
しかし、今のゆきはもう、怯えるだけの少女ではない。彼女はその手を振り払うことなく、むしろ、その視線を真正面から受け止めて、挑発的に微笑んだ。
「ええ、そうね。だから、確かめに来てあげたのよ。その烙印が、まだ消えずに残っているかどうかを」
その言葉が、引き金だった。
カイは唸り声を上げると、ゆきの身体を担ぎ上げ、机の上に乱暴に押し倒した。
散らばる羊皮紙の地図の上で、ゆきのドレスの裾が乱れる。
「ならば、思い出させてやる。誰がお前の最初の男で、唯一の王であるべきかをな」
彼は、ゆきの脚の間にその逞しい身体を割り込ませ、ドレスの薄い布地の上から、熱く硬くなった自身の存在を強く押し付けた。
布越しに伝わる、雄々しい熱と形。それは、ゆきの身体の奥に眠る、最初の夜の記憶を呼び覚ます。
「ん……っ」
しかし、ゆきはただ流されるだけでは終わらない。
彼女は、乱暴に唇を奪おうとするカイの胸を、一本の指でそっと押し返した。
「待って。……今日は、少しだけ、やり方を変えてみない?」
「……何?」
「いつも、貴方がいつも私に奉仕して、気持ちよくしてくれるでしょ? だからたまには、私の方が気持ちよくさせたいなとおもってね…」
ゆきはそう囁くと、地図の上で身体を起こし、今度は自らが、カイの鎧の留め金を、一つ、また一つと、ゆっくりと解き始めた。
その指先は、まるで宝物の封印を解くかのように、丁寧で、しかし有無を言わせぬ力強さがあった。
カイは、なされるがままになっていた。
女王の気まぐれな戯れを、プライドの高い王様が、ただ黙って受け入れている。
その倒錯した構図が、部屋の空気を濃密なものに変えていく。
鎧が剥がされ、鍛え上げられた肉体が露わになる。そこに刻まれた無数の傷跡を、ゆきは愛おしそうに、その指先でなぞった。
「貴方のこの傷は、私のもの。この力も、この身体も、全部」
彼女は、彼の胸に咲く古い傷跡に、そっと口づけを落とした。
そして、その舌はゆっくりと下へ、下へと、彼の身体の中心へと向かっていく。
「……っ、ユキ、よせ……!」
カイが、苦しげな、それでいて歓喜に満ちた声を上げる。
だが、ゆきは止めない。
彼女は、彼の象徴である熱い楔を、まるで赤子が乳を求めるように、その唇で優しく迎え入れた。
彼のすべてを、自分の支配下に置くための、儀式のように。
それは、カイが決して与えられることのなかった、絶対的な奉仕だった。
やがて、カイが限界を訴えるように喘ぎ始めた時、ゆきは顔を上げた。
「さあ、立ちなさい、私の獣。そして、今度こそ、その力で私を満たして」
もはや、主導権は完全にゆきのものだった。
カイは、もはや反論する気力もなく、ただ目の前の女王を求める獣と化していた。
彼は再びゆきを机の上に押し倒すと、今度はゆきが望むままに、その灼熱を、ゆっくりと、しかし確実に、彼女の最も奥深い場所へと沈めていった。
「あ……ぁ……っ」
隙間なく満たされる感覚。
熱い楔が、内壁を押し広げ、擦り上げていく。その度に、ゆきの身体はびくびくと快感に震えた。
カイの動きは、力強く、猛々しい。だが、その律動は、もはや一方的な支配ではない。
女王に捧げる、忠誠の証そのものだった。
彼は、ゆきの表情を、喘ぎ声を、その身じろぎ一つも見逃すまいと、必死に彼女を感じようとしていた。
「ユキ……ユキ……っ」
彼は、ただ、彼女の名前を繰り返す。
ゆきは、彼の首に腕を回し、その耳元で、最後の命令を下した。
「啼きなさい、カイ。私の名前を呼びながら、私の中で、果てなさい」
「あああああああっ……! ユキィィィィッ!!」
男の咆哮が、部屋を揺るがす。
凄まじい熱の奔流が、ゆきの身体の奥深くで弾け、彼女を再び、灼熱の頂点へと導いていった。
交わりの後。
カイは、汗だくのまま、ゆきの上に崩れ落ちた。その巨体は、今はただ、女王の腕の中で安らぎを求める、一匹の獣に過ぎない。
ゆきは、その汗ばんだ髪を、優しく撫でた。
「よくできました、私の団長さん」
その首には、もう、目には見えない、しかし決して外れることのない、女王の首輪が、確かに嵌められていた。
男たちはゆきを女王の様に崇め、その寵愛を競い合うように、日々の任務に、そして夜の奉仕に励んだ。
そんなある夜、ゆきは誰にも告げず、城塞の最上階にあるカイの私室を訪れた。
そこは、無骨な机と羊皮紙の地図、そして武具だけが置かれた、王の仕事場であり、彼の縄張りだ。
「……何の用だ」
机に向かっていたカイは、振り返りもせずに言った。
その声には、ゆきが他の男たち――特に、反逆者であるはずのキースさえも許し、傍に置いていることへの、隠しきれない苛立ちが滲んでいる。
「貴方の顔を見に来ました。私の、一番強い獣の」
ゆきがこともなげに言うと、カイは椅子を蹴るようにして立ち上がった。
その巨体が、ゆきの前に立ちはだかる。
逆光で表情は読めないが、その瞳が獰猛な光を宿していることだけは分かった。
「俺を、他の奴らと同列に扱うな」
「あら、違うの?」
「当然だ。お前をこの世界で導き、その身体を最初に刻んだのは、この俺だ」
カイは、出会ったあの夜のように、有無を言わさぬ力でゆきの顎を掴んだ。
しかし、今のゆきはもう、怯えるだけの少女ではない。彼女はその手を振り払うことなく、むしろ、その視線を真正面から受け止めて、挑発的に微笑んだ。
「ええ、そうね。だから、確かめに来てあげたのよ。その烙印が、まだ消えずに残っているかどうかを」
その言葉が、引き金だった。
カイは唸り声を上げると、ゆきの身体を担ぎ上げ、机の上に乱暴に押し倒した。
散らばる羊皮紙の地図の上で、ゆきのドレスの裾が乱れる。
「ならば、思い出させてやる。誰がお前の最初の男で、唯一の王であるべきかをな」
彼は、ゆきの脚の間にその逞しい身体を割り込ませ、ドレスの薄い布地の上から、熱く硬くなった自身の存在を強く押し付けた。
布越しに伝わる、雄々しい熱と形。それは、ゆきの身体の奥に眠る、最初の夜の記憶を呼び覚ます。
「ん……っ」
しかし、ゆきはただ流されるだけでは終わらない。
彼女は、乱暴に唇を奪おうとするカイの胸を、一本の指でそっと押し返した。
「待って。……今日は、少しだけ、やり方を変えてみない?」
「……何?」
「いつも、貴方がいつも私に奉仕して、気持ちよくしてくれるでしょ? だからたまには、私の方が気持ちよくさせたいなとおもってね…」
ゆきはそう囁くと、地図の上で身体を起こし、今度は自らが、カイの鎧の留め金を、一つ、また一つと、ゆっくりと解き始めた。
その指先は、まるで宝物の封印を解くかのように、丁寧で、しかし有無を言わせぬ力強さがあった。
カイは、なされるがままになっていた。
女王の気まぐれな戯れを、プライドの高い王様が、ただ黙って受け入れている。
その倒錯した構図が、部屋の空気を濃密なものに変えていく。
鎧が剥がされ、鍛え上げられた肉体が露わになる。そこに刻まれた無数の傷跡を、ゆきは愛おしそうに、その指先でなぞった。
「貴方のこの傷は、私のもの。この力も、この身体も、全部」
彼女は、彼の胸に咲く古い傷跡に、そっと口づけを落とした。
そして、その舌はゆっくりと下へ、下へと、彼の身体の中心へと向かっていく。
「……っ、ユキ、よせ……!」
カイが、苦しげな、それでいて歓喜に満ちた声を上げる。
だが、ゆきは止めない。
彼女は、彼の象徴である熱い楔を、まるで赤子が乳を求めるように、その唇で優しく迎え入れた。
彼のすべてを、自分の支配下に置くための、儀式のように。
それは、カイが決して与えられることのなかった、絶対的な奉仕だった。
やがて、カイが限界を訴えるように喘ぎ始めた時、ゆきは顔を上げた。
「さあ、立ちなさい、私の獣。そして、今度こそ、その力で私を満たして」
もはや、主導権は完全にゆきのものだった。
カイは、もはや反論する気力もなく、ただ目の前の女王を求める獣と化していた。
彼は再びゆきを机の上に押し倒すと、今度はゆきが望むままに、その灼熱を、ゆっくりと、しかし確実に、彼女の最も奥深い場所へと沈めていった。
「あ……ぁ……っ」
隙間なく満たされる感覚。
熱い楔が、内壁を押し広げ、擦り上げていく。その度に、ゆきの身体はびくびくと快感に震えた。
カイの動きは、力強く、猛々しい。だが、その律動は、もはや一方的な支配ではない。
女王に捧げる、忠誠の証そのものだった。
彼は、ゆきの表情を、喘ぎ声を、その身じろぎ一つも見逃すまいと、必死に彼女を感じようとしていた。
「ユキ……ユキ……っ」
彼は、ただ、彼女の名前を繰り返す。
ゆきは、彼の首に腕を回し、その耳元で、最後の命令を下した。
「啼きなさい、カイ。私の名前を呼びながら、私の中で、果てなさい」
「あああああああっ……! ユキィィィィッ!!」
男の咆哮が、部屋を揺るがす。
凄まじい熱の奔流が、ゆきの身体の奥深くで弾け、彼女を再び、灼熱の頂点へと導いていった。
交わりの後。
カイは、汗だくのまま、ゆきの上に崩れ落ちた。その巨体は、今はただ、女王の腕の中で安らぎを求める、一匹の獣に過ぎない。
ゆきは、その汗ばんだ髪を、優しく撫でた。
「よくできました、私の団長さん」
その首には、もう、目には見えない、しかし決して外れることのない、女王の首輪が、確かに嵌められていた。
35
あなたにおすすめの小説
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。
そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!?
貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる