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しおりを挟む中ツ国 首都 香蘭
禁黎城 第一監獄
「あーーー暇。暇過ぎて死ぬ」
ここは城中の地下牢獄の中。
その中でなんとも情けない声を出しているのは、先日の戦で捕虜として捕らえられた真澄鏡の将軍 二級上将 花垣
「身共もじゃーーー。もう藁を数えるのも飽きたわい」
そしてその隣の牢獄では、彼に共鳴して少将の乱華が同じく情けない声で叫んでいた。
「貴様ら、もっと緊張感持てよ。一応俺たちは捕虜だぞ? 明日起きて首取れててもおかしくねぇんだぞ?」
そう言って緊張感のない彼らを戒めるは一級上将 荊木だ。
「そうですよ、お二方。せっかくの休暇なのですから偶には休むことも覚えなさい」
「休暇でもねーよ!!」
荊木に賛同するは、二級上将 楠茂
彼だけが五人の中で唯一、牢獄生活を満喫している。理由は単純。高官だったが故に在職中は全く休暇が取れなかったからである。
「やる事は無いし、我々5人以外は別の地下に連れて行かれたみたいですし、牢獄内では終活もできませんし、これを休暇と言わずしてなんと言いますか!」
「実刑待ちだけど?」
監禁されて3日目。
陽が差さない暗い空間で、5人は何をされるわけでも、するわけでもなく、昼夜も分からない日を過ごした。
「そういえば……昼ご飯………まだ、……食べていない」
「さっき食べたろ。あれ? 朝飯だったっけ?」
「身共は晩飯のつもりで食べてたわい」
本人達が何ご飯を食べているのかも分かっていない有様から、外と完全に遮断されているのがよく分かる。
1日3食の食事が確保されているとはいえ量が少ないため、絶賛食べ盛りの中将 亥藏にとってはまさに拷問に値する。元々戦が大好きな花垣と乱華が暇だ何だと騒ぐ一方で、亥藏は飯の催促をするだけで1日が終わる。
通常の捕虜なら、ここまで揃って騒ぎ立てていれば見張りに至極きつい仕置を受けるはず。最悪、一人殺されてもおかしくない。
しかし、驚く事に5人はこの地下牢獄に入ってからと言うもの、殴られる事は愚か、食事を運ぶ奴婢と外の見張り以外、誰とも会っていない。つまり、中の見張りは誰もいない。
拘束だって、それぞれ鉄格子付きの狭い牢獄に入れられているのと、両手足をそれぞれ鎖付きの拘束具で拘束されている程度で、捕虜と言うにはあまりにも自由度が高い。
何故、軍並みの実力を持つと謳われる彼ら五人が、こんなにも放任されているのか。
それは真澄鏡が中ツ国に白旗を揚げた後の話に関係する。
単純な話、彼らは島国から売られたのである。
そもそも、軍並みの実力を持つ彼らが何故戦争に呆気なく負けたのか……それは上官が無能だったから!
真澄鏡は別名 盗賊島。
島の兵士たちの仕事は、皇族の首を狙う盗賊達の排除が主な仕事。誰も軍隊との戦争の仕方を知らなかったのである。
『盗賊だろうが軍隊だろうが同じだろ』?
否!
盗賊の場合、数こそ多けれど彼らは団体行動をしない。というよりも出来ないのである。
何故なら、団体で動けば盗品は仲間内で山分けとなり、各自の取り分に不公平が生じ、十中八九仲間割れになるからだ。各々が生活に困窮しているのだから、譲り合いなる精神なんぞ持ち合わせる余裕がない。もしも団体で襲うとなれば、大方強姦目的か金で雇われて誰かを襲撃する場合と相場は決まっている。
それでも50人前後……多くても100が限界である。
高々3桁の人数しか相手にしてこなかった者たちに、いきなり1万の軍勢とどう戦えと?
島の兵法はほぼ対盗賊用。役になど立ちやしない。
それ故、今回の戦は島中の兵士総出となった。
三千の兵と言われてはいるものの、中身は現役引退した者から新兵1週間の者も含まれていた。ほとんどが寄せ集めの頭数で、実際はその半分の兵力しか集まらなかったのだ。
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