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しおりを挟むさらに5日程経ったある日。
その時は突然訪れた。
「乱華少将、出ろ」
昼飯時にまた奴婢が入って来た為、この日も食事を運びに来たのかと思ったが違った。運びにきた4人の奴婢の後に続いて、隊服を来た3人の男が刀を携え、一目散に乱華の牢獄の前に立つと、すぐに鍵を開けた。そして乱華が動き出すよりも早く、2人の男が中に入り、彼女の両腕を抱えて連れ出した。
兵士はそれ以上何も言わなかったし、乱華も一切抵抗しなかったが、5人は何となく状況を察した。
——判決が下ったのだと。
彼女一人が連れて行かれる様子を、四人は格子に駆け寄って張り付くように見ていた。
亥藏、花垣、楠茂の前を通り過ぎ、最後に荊木と目が合った時、乱華は微かに微笑み、声は出さずに口だけ動かした。
『先に逝く』
それが乱華の4人に向けた最後の言葉だった。
いつかこうなる時が来ることは分かりきっていた。覚悟もしていた。止める理由も、惜しむ必要もない。何故なら、残された4人もすぐに彼女の後を追うからだ。
しかし、あまりにも呆気なさ過ぎる仲間との別れの後に食らう飯は、塩の味が強かった。
・
・
・
・
久々に外に出ると、太陽が眩し過ぎて目が開けられなかった。
運ばれるように連れて行かれた場所は、処刑場にある尋問部屋……ではなく、城中の物置部屋のような個室だった。
壺や本棚が端に寄せられ、無理やり作られたであろう真ん中の空間に机と二つの椅子が向かい合うようにして置かれていた。
「座れ」
そう言われつつ、半ば強引に座らされた。拘束用の椅子ではない為、逃げ出すことを恐れてか、両肩は2人の男に押さえつけられている。両足にも枷が嵌められている為、歩くので精一杯だと言うのに。
相席がいない席に座らされた直後、男性の高官が1人入ってきて身共の向かいの椅子に座った。恐らく宦官だろう。
男であるのに、丸みを帯びた身体のラインで少し女性的な身体つきだ。そのせいなのかは分からないが、柔らかな雰囲気で落ち着きがある。見目だって決して女に負けず劣らずの端麗さだ。少し緑みがかった黄色の瞳にぱっちり二重目で、薄紫の髪は後ろ一つに結い上げられている。
これから身共は彼から死刑宣告を受けるのか。
「お前達は外で待っていろ」
しかし、宣告の前に彼は何故か兵士達を退室させた。男と身共の2人だけ空気……若干気まずい。
「私の名は王 桐生。乱華少将、残念ですが貴方の処分が決定致しました」
「謹んでお受け致します。執行はこの後ですか?」
「……」
「何か?」
「いや、あまりにも話が早いので……落ち着いていられますね」
動揺も暴れもしない身共の落ち着きように、桐生は少し驚いた様子だった。こちら側としては驚かれる事の方が不思議なのだが。
「遅いくらいです。真澄鏡が貴国に降伏した時点で覚悟は出来ておりました」
「左様でございますか」
「で、執行は?」
「その前に、一つご提案させて下さい」
「提案?」
「はい。単刀直入に申し上げます。
乱華少将、後宮に入りませんか?」
聞き間違いかと思い、取り敢えず耳の穴をかっぽじった。
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