(仮)捕虜となった女兵士が敵国の皇帝に求婚されたってよ

蛾花 凛太郎

文字の大きさ
5 / 6

5

しおりを挟む


「後宮に入りませんか?」


 身共の聞き間違いでなければ、桐生は確かにそう言った。人手不足なのか? 何故属国の捕虜なんぞをそんな重要な場所に勤務させようと考えたんだ?  


「えー……っと、それは因みに護衛として?  それとも下女としてですか?」
「どちらでもありません」
「じゃあ奴婢?」
「我が王の正妃としてです」
「ああー……ん?」


 夢でも見ているのか。それとも実はもう身共は殺されたのか?
 密かに太腿の肉を思い切り抓ってみたが、ちゃんと痛みを感じる。まだ生きてるし、夢でもなく現実だ。


「ご無礼を承知で確認しますが、もしかして桐生殿は、皇帝との結婚を私に提案されましたか?」
「相違ありません」
「…………」


 どうしよう……全ッ然、状況が飲み込めない。
あまりに予想外の展開に身共の頭の中の整理が追いつかない。
 身共が何も言えないでいると、桐生は留めを刺すかの如く改めてもう一度はっきりと言った。


「貴方に、我が王の妃となり、後宮に入る事をここに提案いたします」
「正気か?」
「そう思われるのも無理ないこと。しかしこれは我が君の意向です」


 それ即ち大陸の覇者、死神の化身とも謳われる中ツ国歴代最強の王 白 蓮眞の意向。
 絶ッ対に、何か裏があることに違いない。大陸の覇者ともあろう人間が、こんな突拍子な事を言うはずがない。


「どうしますか?」


 仮にここで生き延びられたとしても死期が少し延びるだけ。どの道捨てられる命ならば、ここで見切りをつけておいた方が、余計な事に巻き込まれずに成仏できそうな気もするのだが……


「理由は?」
「理由?」
「中ツ国の王が、捕虜を正妃にしようと考えた理由をお聞かせ願いたい」
「そんなの、貴方があの島国のだからですが?」
「……え…………?」


 思わぬ回答に、身共は唇を震わせた。
 何故この者達は、身共のことを知っているのか。

 真澄鏡は古い歴史とはいえ、ほぼ鎖国状態の国だ。他国との関わりは非常に限定的で、限られた国としか国交は行っていない。中ツ国とは、今回の戦争で初めて関わりを持ったはずだ。

この若輩は愚か、老体でさえも島の歴史は知らない。
まさか属国になる際、皇帝が教えたのか?  何のために?


「ちょちょっと待て!  何故それを?  それに私はすでに皇族から抜けています!」
「ですが血筋はあります」
「もう10年前の話です。それに、大陸の覇者ともあろうお方が、属国の捕虜と結婚して何の得があると言うのですか」
「大陸では、真澄鏡は”盗賊の島”と言われる一方で、月が沈む神秘の島、あるいは”神がやすむ島”とも言われています。神が育てた娘を妃に迎えたとあれば験担ぎになるのです。それに我が君の威厳にも繋がります」
「威厳?」
「神の手元にも手が届く、と」


 それは威厳というより、単に神様の娘にさえも手を出す不調法者という印象を与えるのではないだろうか。


「それなら、何も除籍になった私ではなく、第一皇女の方が良いではありませんか」
「貴方も聞いた事があるはずです。我が君の通り名を」
「!!」


 桐生のその一言で、何故第一皇女ではなく身共なのかすぐに分かった。
 単純に嫁がせたく無かったのだ。『死神の化身』と呼ばれる男の元に。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛
恋愛
食事のあまりの不味さに前世を思い出した私。 水洗トイレにシステムキッチン。テレビもラジオもスマホある日本。異世界転生じゃなかったわ。 と、思っていたらなんか可笑しいぞ? なんか視線の先には、男性ばかり。 そう、ここは男女比8:2の滅び間近な世界だったのです。 人口減少によって様々なことが効率化された世界。その一環による食事の効率化。 料理とは非効率的な家事であり、非効率的な栄養摂取方法になっていた…。 お、美味しいご飯が食べたい…! え、そんなことより、恋でもして子ども産め? うるせぇ!そんなことより美味しいご飯だ!!!

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...