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20.5「閨」
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【天界】の夜はやけに青白いのが常だ。
しっかりとした覆いの中にいれば別だろうが、普通はなんの灯りもなくても自由に出歩けるほど、道や屋敷内が青白い光に照らされている。
それが月光によるものなのかは定かではないが、神秘的な青白い光に包まれる【天界】の夜は非常に美しいものだ。
いくらか時が経って灯りが消えたこの閨も例外なくその光に照らされ、神々しいほどに輝いていた。
ーーーーーーー
「ん………」
うっすらと目を開けた牧草地の神は何度か瞬きをし、しばらくしてから自らが閨に横になっていることを自覚する。
背後から腕を回し、牧草地の神にぴったりとくっついているのは白馬に間違いない。
顔を見ずとも、体のくっついた部分から白馬のものである神力が感じられるのだ。
牧草地の神は すぅすぅという白馬の規則正しい寝息に耳を傾けながら自らの唇に触れ、初めての白馬との目合いを思い出す。
どのように白馬が触れたか
どのように白馬が動いたか
どのように白馬が囁いたか……
(深く愛されるって……あんなにもすごいこと…なんだ……)
寝具の中でそっと足を動かすと、自らの素肌が白馬の脛やふくらはぎ、足首と擦れ合う。
どちらもまだ薄衣1枚さえ身にまとっていないことは明らかだ。
そのくすぐったいような感覚が嬉しく、気恥ずかしくて、牧草地の神はいっそう愛おしさをつのらせていく。
(これからはずっと一緒……ハクと、ずっと…)
薄明かりの中で見つめた白馬の瞳を鮮明に思い起こしながら、自らを抱きしめる白馬の腕に触れた牧草地の神。
だが、そこであることに気づく。
(あれ…?私は…あれからどうしたんだろう…?)
白馬との素晴らしい一時を思い起こすにつれ、牧草地の神は自身がその後どうなったかの記憶がないことに気づいたのだ。
幾度も絶頂を迎えたということははっきりと憶えている。
白馬に抱えあげられ、つま先さえ寝具につかない格好で突かれたことも。
うつ伏せの状態で覆いかぶされながら耳やうなじ、首筋に口づけられ、胸を摘まれたことも。
そして、足を折り曲げながら体の中の信じられないほど深いところまで白馬のものに掻き回されたことも…。
散々やりたい放題をしたことは憶えているのに、自身がなぜこのように白馬に後ろから抱きつかれながら横になっているのかという経緯については、まったく記憶がない。
記憶がないということは、牧草地の神にとっては全く初めての感覚だった。
眠ることのない神はすべての時を途切れることなく経験しているため、数百年前のことならまだしも、こんなにもすぐのことの記憶がないというのはあり得ないことだったのだ。
「なぜ…どうして?」
思わずそう呟いた牧草地の神の耳に「お目覚めですか…」という白馬の声が響いてきた。
牧草地の神がビクリと肩をすくめると、その腕を擦るようにしながら白馬は言う。
「蒼様…ふふ、蒼様はお眠りになった姿も素敵ですね」
「え……」
「初めて拝見しましたが、とても……愛らしいお姿です」
牧草地の神は目を瞬かせながら聞いていたが、ついにじっとしていられなくなって「待って…『眠る』って?」と訊ねた。
「眠るって、なんのこと?私が?」
「はい、そうですが…?」
「え?何を言ってるの、神は眠らないのに」
「…ですが、蒼様は寝入ってしまわれたじゃありませんか」
「え……?」
「蒼様は眠ってしまったんですよ」
まったく訳が分からずにいる牧草地の神。
白馬は牧草地の神の髪を梳くようにして撫でると順を追って話し始める。
「蒼様、最後にあけびが生まれたのを覚えておられますか?またあのふわふわとしたものが漂って…蒼様はそれが『あけびだ』と仰いました。それで かりん や やまもも のそばにいるように言いつけて、あけびが出ていった後に『あまり口数が多くない子なんだね』と…それからもう2度ほど体を重ねたところで、蒼様は寝入ってしまわれたんです。すっと目を閉じて、体から力を無くして……」
たしかに、牧草地の神にも『あけび』のものらしき魄が生まれたのを見届けた記憶はある。
ふわふわと漂うそれはあまり多く声を出したわけではないが、それでも『おとう…さま』『とと…さま』と愛らしい声を聴かせてくれた。
見えていないらしいとはいえ、さすがに自身と白馬の乱れきった姿を晒すわけにもいかず、牧草地の神は『あけび』に『かりん』や『やまもも』と共にいるようにと言ったのだ。
その後、自身の思い通りに3つの魄を、それも愛着のある3匹を生み出せたという嬉しさも相まって より激しく白馬と交わりあった牧草地の神。
記憶がなくなる直前、体中が強く痺れるほどの強い快感に身をよがらせたが…そういわれてみれば ちょうどそれからの記憶がなく、気がつけばこうして横になっていた。
だが、牧草地の神はそれでも(神が…眠る?)と信じられない思いでいる。
「きっと、その…神力を混ぜ合うのには深くお休みになる必要がある、んでしょう。現に今の蒼様は神力が以前よりもずっと強くなっておいでですから」
「そ、そう……?」
「はい。私もそうです、蒼様の神力をいただいて体が……変わったのを感じています」
神力を混ぜ合う、ということはつまり行為そのものを指しているのだが、改めて白馬からそれを聞いた牧草地の神は ぱっと顔が熱くなったように感じてしまう。
しかしそんな牧草地の神に気づいているのかいないのか、白馬は牧草地の神を抱きしめ直しながら「どうですか…お分かりになりますか?」とやけに嬉しそうに囁いてくるのだ。
それはあまりにもくすぐったい。
息を呑み、返事一つ返さない牧草地の神がやがて心配になったらしい白馬は「蒼様?」とわずかに体を起こして訊ねてきた。
「どうかなさったんですか、蒼様」
「っ!い、いや!なんでもない……」
「なんでもないって、そんなはずがないでしょう?どこかお具合が悪いんですか」
「そうじゃない、そうじゃないから……」
「…蒼様、そうじゃないと仰るなら私の方を向いてください。私の顔を見てそう仰ってください」
「………」
「蒼様?」
肩肘をついてさらに身を起こした白馬は牧草地の神の顔を覗き込もうとしてくる。
肩にかかる肌掛けをそっと引っ張って顔を隠そうとした牧草地の神だったが、白馬が腹を密着させるようにしながらしきりに顔を覗こうとしてくるので、ついに堪えきれなくなってもぞもぞと白馬の方へと寝返りを打ち、向かい合った。
牧草地の神の眼前、すぐそばには肩肘をついて身を起こしている白馬の胸元がある。
それを見てさらにドギマギとしてしまう牧草地の神。
白馬はようやく落ち着いたように再び横になると、肌掛けの端を握りしめている牧草地の神の手を優しく握った。
牧草地の神も、たしかに自身の中で神力が今まで以上に高まっていることを感じている。
それも白馬の神力が自らのものと混じり合ったからに違いないということも。
そしてそれが 白馬も同じだ、ということも。
「蒼様……」
白馬は握った牧草地の神の手にそっと、愛おしいといわんばかりにきわめてそっと口づけてくる。
牧草地の神はそんな白馬に「…ねぇ、ハク」と切り出した。
「ハク…名を改めてはどうかな」
「…はい?」
「ハク。白馬のハク。それを……」
「嫌です」
「そう言わずに、まず私の話を聞いて。ね?」
「嫌なものは嫌なんです」
きっぱりと言う白馬に牧草地の神は静かな声音で語りかける。
「ハク…私が君を『白馬』と呼び始めたのは、もうずっと前のことだ。君が私に従って【天界】に昇ってくれた時につけた名。でも、いつしか人間達は君と同じ動物を『馬』と呼ぶようになったね。……だけど、もはやその名は君には合わないと思うんだ。だって君は…もうただの私の側仕えの『馬』ではないから」
「な、何を仰るんですか」
「だって君は…」
牧草地の神は手を伸ばし、白馬の頬に触れて言った。
「私の夫神、でしょう?」
牧草地の神は続けて言う。
「転生を終えて神力を得た君は…もはやただの側仕えではない。私の夫神だよ。この屋敷でこうして共に過ごす、私の、たった1人の……」
牧草地の神をさらに強く握り、自身の額にかざすようにして肩を震わせる白馬。
「ハク、私のハク。そうだね、これからは……これからは『銀白』と名乗ったらどうかな。…ほら、君の銀に輝く髪や真白の姿によく似合う名だ。…なぜ泣くの?嫌?」
「ちが…違います、そうでは……」
「ほらほら、泣かないで、うん?」
「夫……私のような者が、私のような者が蒼様の…そんなだいそれたこと…」
「こら、どうしてそんな事を言うの。君は立派な神力を得ている身なのだから、もうそんな風に思うのはいけないよ」
牧草地の神は白馬の頬を撫でながら微笑んで言う。
「『銀白』…うん、とても綺麗だ。銀白…」
「蒼様…」
「銀白、これからもずっとそばにいてくれる?」
「もちろんです、蒼様」
「本当?」
「はい。私は蒼様の夫神で…蒼様は私の夫神ですから」
潤んだ瞳で微笑む『銀白』。
牧草地の神はさらにその頬を一撫でして同じように微笑んだ。
閨の中、横になって互いにじっと見つめ合っていると、次第に微笑みは真剣な表情に変わっていく。
銀白はやがて牧草地の神へと手を伸ばし、頬と耳元を撫でた後、そっとうなじまでその手を伸ばして顔を近づけてきた。
それを受け入れ、唇と舌で濃密に触れ合う牧草地の神。
しばらくそうして絡み合った牧草地の神は「…待って、ハク」と顔を離す。
「今なにか君の手に……ちょっと見せて?」
牧草地の神は自らのうなじに伸ばされていた銀白の左手を取ると、その手のひらを見た。
そこにはうっすらとなにかの紋様らしきものが浮かび上がっている。
牧草地の神は今しがた自らに向かって手を伸ばされた時に、目の端でそれを捉えていたのだ。
「これは…なんだろう。いつからこれが?」
「さぁ…?私も今気づきましたが…」
「なんだろう…私にはないみたいだけど…?」
牧草地の神が自身の両の手のひらを見てみるも、そこにはなんの紋様も見当たらない。
それが一体何なのか。
気になる牧草地の神だったが、それよりもさらに気になることが突如として発生する。
下腹部に、なにかはっきりとした形のものが当たっているのだ。
それの正体は、もはや直接確かめるまでもない。
白馬は目を伏せながら唇を噛み締めている。
「ハク…」
気を遣ってか何も言わずにいる銀白に、牧草地の神は自身の気持ちを伝えるかのように身を擦り寄せた。
わざと、下腹部が触れ合うようにして。
「蒼様…」
「なに?」
「よろしいんですか」
「うん?なにが?」
「ちょっと……」
牧草地の神がそうして銀白をからかうようにしていると、なんといつのまにか銀白の長い髪の中から立派な耳が立ち上がっていた。
それは銀白の、馬の耳だ。
すでに転生した銀白はいまやこの『人間の姿』が元の姿となっているのだが、やはりその魄には馬だった頃の名残が残っているのだろう。
完全な馬の姿になることはないが、こうして名残は出てしまうものらしい。
牧草地の神はくすくすと笑いながらその耳を触る。
「可愛い…耳……ふふっ、耳が……ふふふっ」
「蒼様…からかわないでください、その、やはり、これは…」
「『興奮』してるから?」
牧草地の神のその含みをもたせた一言は銀白をさらに焚きつける。
「…そうです」
熱っぽい視線を牧草地の神に向ける銀白。
「蒼様を…お慕いしているので」
「『蒼様』…?」
牧草地の神が目を細めて言うと、銀白は「……蒼」と改めて言い直した。
「あまり…煽らないで」
「ん…興奮して……大きくなってる」
「……」
「ハク…本当におっきい……」
「蒼…ちょっと……」
煽らないで、と言いつつも銀白は牧草地の神からの口づけをしっかりと受け止め、さらに体に腕を回している。
「ハク…ずっと、そばにいてくれる?」
「もちろん…この命がある限り」
「んん…私達は神力がある限り生きるから……」
「はい」
「つまりそれは…陸国が続く限りってことになるよ」
銀白は「もちろんです」とはっきり応えた。
「なので陸国が永遠に続くよう…もっと神力を高めて護らなければいけませんね」
「神力を高めて…ふふっ、そうだね」
抱きしめ合って口づけながら、閨の中をそれぞれが上になったり、下になったりと絡み合う2人。
「んっ、はぁっ……もう、あの子達に『器』を創ってあげなくちゃいけない、のに……」
「でも…それだって神力を高めなくてはいけないでしょう?」
「ん…そう、そうだね…『器』を3つもだから……」
すでにどちらのものも固く反り勃っていて、身じろぎ1つにも敏感に反応してしまう。
「今はまだ【天界】の夜が半分過ぎた頃です。【地界】の夜明けまででも、まだまだ時間があるじゃありませんか……」
「んんっ、んっ……」
「【天界】の夜は…まだまだ、ですよ」
【天界】の青白い夜。
銀白がうつ伏せになるように言うと、牧草地の神はそれに従い、顔を寝具に伏せながら腰を上げ、秘部を銀白へと差し出した。
すっかり柔らかくなっているそこはわずかに はくはくと開閉を繰り返していて、肉棒の切っ先をそこにあてがった銀白はうねるような妙な感覚にみまわれる。
中に挿入するとその感覚はより強くなり、銀白の肉棒はいっそうキツく締めつけられた。
銀白は牧草地の神の腹のあたりをしっかりと抱え込むようにしながら、中の深さを確かめるようにしてゆっくりと抽挿を始める。
恍惚とした表情で吐息混じりの喘ぎ声をもらす牧草地の神の右の手のひらには、銀白の手のひらに現れたものとまったく同じ紋様が浮き出ている。
さらに、銀白の左の手のひらのものも先ほどに比べてずっとはっきりと、くっきりとしていた。
しっかりとした覆いの中にいれば別だろうが、普通はなんの灯りもなくても自由に出歩けるほど、道や屋敷内が青白い光に照らされている。
それが月光によるものなのかは定かではないが、神秘的な青白い光に包まれる【天界】の夜は非常に美しいものだ。
いくらか時が経って灯りが消えたこの閨も例外なくその光に照らされ、神々しいほどに輝いていた。
ーーーーーーー
「ん………」
うっすらと目を開けた牧草地の神は何度か瞬きをし、しばらくしてから自らが閨に横になっていることを自覚する。
背後から腕を回し、牧草地の神にぴったりとくっついているのは白馬に間違いない。
顔を見ずとも、体のくっついた部分から白馬のものである神力が感じられるのだ。
牧草地の神は すぅすぅという白馬の規則正しい寝息に耳を傾けながら自らの唇に触れ、初めての白馬との目合いを思い出す。
どのように白馬が触れたか
どのように白馬が動いたか
どのように白馬が囁いたか……
(深く愛されるって……あんなにもすごいこと…なんだ……)
寝具の中でそっと足を動かすと、自らの素肌が白馬の脛やふくらはぎ、足首と擦れ合う。
どちらもまだ薄衣1枚さえ身にまとっていないことは明らかだ。
そのくすぐったいような感覚が嬉しく、気恥ずかしくて、牧草地の神はいっそう愛おしさをつのらせていく。
(これからはずっと一緒……ハクと、ずっと…)
薄明かりの中で見つめた白馬の瞳を鮮明に思い起こしながら、自らを抱きしめる白馬の腕に触れた牧草地の神。
だが、そこであることに気づく。
(あれ…?私は…あれからどうしたんだろう…?)
白馬との素晴らしい一時を思い起こすにつれ、牧草地の神は自身がその後どうなったかの記憶がないことに気づいたのだ。
幾度も絶頂を迎えたということははっきりと憶えている。
白馬に抱えあげられ、つま先さえ寝具につかない格好で突かれたことも。
うつ伏せの状態で覆いかぶされながら耳やうなじ、首筋に口づけられ、胸を摘まれたことも。
そして、足を折り曲げながら体の中の信じられないほど深いところまで白馬のものに掻き回されたことも…。
散々やりたい放題をしたことは憶えているのに、自身がなぜこのように白馬に後ろから抱きつかれながら横になっているのかという経緯については、まったく記憶がない。
記憶がないということは、牧草地の神にとっては全く初めての感覚だった。
眠ることのない神はすべての時を途切れることなく経験しているため、数百年前のことならまだしも、こんなにもすぐのことの記憶がないというのはあり得ないことだったのだ。
「なぜ…どうして?」
思わずそう呟いた牧草地の神の耳に「お目覚めですか…」という白馬の声が響いてきた。
牧草地の神がビクリと肩をすくめると、その腕を擦るようにしながら白馬は言う。
「蒼様…ふふ、蒼様はお眠りになった姿も素敵ですね」
「え……」
「初めて拝見しましたが、とても……愛らしいお姿です」
牧草地の神は目を瞬かせながら聞いていたが、ついにじっとしていられなくなって「待って…『眠る』って?」と訊ねた。
「眠るって、なんのこと?私が?」
「はい、そうですが…?」
「え?何を言ってるの、神は眠らないのに」
「…ですが、蒼様は寝入ってしまわれたじゃありませんか」
「え……?」
「蒼様は眠ってしまったんですよ」
まったく訳が分からずにいる牧草地の神。
白馬は牧草地の神の髪を梳くようにして撫でると順を追って話し始める。
「蒼様、最後にあけびが生まれたのを覚えておられますか?またあのふわふわとしたものが漂って…蒼様はそれが『あけびだ』と仰いました。それで かりん や やまもも のそばにいるように言いつけて、あけびが出ていった後に『あまり口数が多くない子なんだね』と…それからもう2度ほど体を重ねたところで、蒼様は寝入ってしまわれたんです。すっと目を閉じて、体から力を無くして……」
たしかに、牧草地の神にも『あけび』のものらしき魄が生まれたのを見届けた記憶はある。
ふわふわと漂うそれはあまり多く声を出したわけではないが、それでも『おとう…さま』『とと…さま』と愛らしい声を聴かせてくれた。
見えていないらしいとはいえ、さすがに自身と白馬の乱れきった姿を晒すわけにもいかず、牧草地の神は『あけび』に『かりん』や『やまもも』と共にいるようにと言ったのだ。
その後、自身の思い通りに3つの魄を、それも愛着のある3匹を生み出せたという嬉しさも相まって より激しく白馬と交わりあった牧草地の神。
記憶がなくなる直前、体中が強く痺れるほどの強い快感に身をよがらせたが…そういわれてみれば ちょうどそれからの記憶がなく、気がつけばこうして横になっていた。
だが、牧草地の神はそれでも(神が…眠る?)と信じられない思いでいる。
「きっと、その…神力を混ぜ合うのには深くお休みになる必要がある、んでしょう。現に今の蒼様は神力が以前よりもずっと強くなっておいでですから」
「そ、そう……?」
「はい。私もそうです、蒼様の神力をいただいて体が……変わったのを感じています」
神力を混ぜ合う、ということはつまり行為そのものを指しているのだが、改めて白馬からそれを聞いた牧草地の神は ぱっと顔が熱くなったように感じてしまう。
しかしそんな牧草地の神に気づいているのかいないのか、白馬は牧草地の神を抱きしめ直しながら「どうですか…お分かりになりますか?」とやけに嬉しそうに囁いてくるのだ。
それはあまりにもくすぐったい。
息を呑み、返事一つ返さない牧草地の神がやがて心配になったらしい白馬は「蒼様?」とわずかに体を起こして訊ねてきた。
「どうかなさったんですか、蒼様」
「っ!い、いや!なんでもない……」
「なんでもないって、そんなはずがないでしょう?どこかお具合が悪いんですか」
「そうじゃない、そうじゃないから……」
「…蒼様、そうじゃないと仰るなら私の方を向いてください。私の顔を見てそう仰ってください」
「………」
「蒼様?」
肩肘をついてさらに身を起こした白馬は牧草地の神の顔を覗き込もうとしてくる。
肩にかかる肌掛けをそっと引っ張って顔を隠そうとした牧草地の神だったが、白馬が腹を密着させるようにしながらしきりに顔を覗こうとしてくるので、ついに堪えきれなくなってもぞもぞと白馬の方へと寝返りを打ち、向かい合った。
牧草地の神の眼前、すぐそばには肩肘をついて身を起こしている白馬の胸元がある。
それを見てさらにドギマギとしてしまう牧草地の神。
白馬はようやく落ち着いたように再び横になると、肌掛けの端を握りしめている牧草地の神の手を優しく握った。
牧草地の神も、たしかに自身の中で神力が今まで以上に高まっていることを感じている。
それも白馬の神力が自らのものと混じり合ったからに違いないということも。
そしてそれが 白馬も同じだ、ということも。
「蒼様……」
白馬は握った牧草地の神の手にそっと、愛おしいといわんばかりにきわめてそっと口づけてくる。
牧草地の神はそんな白馬に「…ねぇ、ハク」と切り出した。
「ハク…名を改めてはどうかな」
「…はい?」
「ハク。白馬のハク。それを……」
「嫌です」
「そう言わずに、まず私の話を聞いて。ね?」
「嫌なものは嫌なんです」
きっぱりと言う白馬に牧草地の神は静かな声音で語りかける。
「ハク…私が君を『白馬』と呼び始めたのは、もうずっと前のことだ。君が私に従って【天界】に昇ってくれた時につけた名。でも、いつしか人間達は君と同じ動物を『馬』と呼ぶようになったね。……だけど、もはやその名は君には合わないと思うんだ。だって君は…もうただの私の側仕えの『馬』ではないから」
「な、何を仰るんですか」
「だって君は…」
牧草地の神は手を伸ばし、白馬の頬に触れて言った。
「私の夫神、でしょう?」
牧草地の神は続けて言う。
「転生を終えて神力を得た君は…もはやただの側仕えではない。私の夫神だよ。この屋敷でこうして共に過ごす、私の、たった1人の……」
牧草地の神をさらに強く握り、自身の額にかざすようにして肩を震わせる白馬。
「ハク、私のハク。そうだね、これからは……これからは『銀白』と名乗ったらどうかな。…ほら、君の銀に輝く髪や真白の姿によく似合う名だ。…なぜ泣くの?嫌?」
「ちが…違います、そうでは……」
「ほらほら、泣かないで、うん?」
「夫……私のような者が、私のような者が蒼様の…そんなだいそれたこと…」
「こら、どうしてそんな事を言うの。君は立派な神力を得ている身なのだから、もうそんな風に思うのはいけないよ」
牧草地の神は白馬の頬を撫でながら微笑んで言う。
「『銀白』…うん、とても綺麗だ。銀白…」
「蒼様…」
「銀白、これからもずっとそばにいてくれる?」
「もちろんです、蒼様」
「本当?」
「はい。私は蒼様の夫神で…蒼様は私の夫神ですから」
潤んだ瞳で微笑む『銀白』。
牧草地の神はさらにその頬を一撫でして同じように微笑んだ。
閨の中、横になって互いにじっと見つめ合っていると、次第に微笑みは真剣な表情に変わっていく。
銀白はやがて牧草地の神へと手を伸ばし、頬と耳元を撫でた後、そっとうなじまでその手を伸ばして顔を近づけてきた。
それを受け入れ、唇と舌で濃密に触れ合う牧草地の神。
しばらくそうして絡み合った牧草地の神は「…待って、ハク」と顔を離す。
「今なにか君の手に……ちょっと見せて?」
牧草地の神は自らのうなじに伸ばされていた銀白の左手を取ると、その手のひらを見た。
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「これは…なんだろう。いつからこれが?」
「さぁ…?私も今気づきましたが…」
「なんだろう…私にはないみたいだけど…?」
牧草地の神が自身の両の手のひらを見てみるも、そこにはなんの紋様も見当たらない。
それが一体何なのか。
気になる牧草地の神だったが、それよりもさらに気になることが突如として発生する。
下腹部に、なにかはっきりとした形のものが当たっているのだ。
それの正体は、もはや直接確かめるまでもない。
白馬は目を伏せながら唇を噛み締めている。
「ハク…」
気を遣ってか何も言わずにいる銀白に、牧草地の神は自身の気持ちを伝えるかのように身を擦り寄せた。
わざと、下腹部が触れ合うようにして。
「蒼様…」
「なに?」
「よろしいんですか」
「うん?なにが?」
「ちょっと……」
牧草地の神がそうして銀白をからかうようにしていると、なんといつのまにか銀白の長い髪の中から立派な耳が立ち上がっていた。
それは銀白の、馬の耳だ。
すでに転生した銀白はいまやこの『人間の姿』が元の姿となっているのだが、やはりその魄には馬だった頃の名残が残っているのだろう。
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牧草地の神はくすくすと笑いながらその耳を触る。
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「蒼様…からかわないでください、その、やはり、これは…」
「『興奮』してるから?」
牧草地の神のその含みをもたせた一言は銀白をさらに焚きつける。
「…そうです」
熱っぽい視線を牧草地の神に向ける銀白。
「蒼様を…お慕いしているので」
「『蒼様』…?」
牧草地の神が目を細めて言うと、銀白は「……蒼」と改めて言い直した。
「あまり…煽らないで」
「ん…興奮して……大きくなってる」
「……」
「ハク…本当におっきい……」
「蒼…ちょっと……」
煽らないで、と言いつつも銀白は牧草地の神からの口づけをしっかりと受け止め、さらに体に腕を回している。
「ハク…ずっと、そばにいてくれる?」
「もちろん…この命がある限り」
「んん…私達は神力がある限り生きるから……」
「はい」
「つまりそれは…陸国が続く限りってことになるよ」
銀白は「もちろんです」とはっきり応えた。
「なので陸国が永遠に続くよう…もっと神力を高めて護らなければいけませんね」
「神力を高めて…ふふっ、そうだね」
抱きしめ合って口づけながら、閨の中をそれぞれが上になったり、下になったりと絡み合う2人。
「んっ、はぁっ……もう、あの子達に『器』を創ってあげなくちゃいけない、のに……」
「でも…それだって神力を高めなくてはいけないでしょう?」
「ん…そう、そうだね…『器』を3つもだから……」
すでにどちらのものも固く反り勃っていて、身じろぎ1つにも敏感に反応してしまう。
「今はまだ【天界】の夜が半分過ぎた頃です。【地界】の夜明けまででも、まだまだ時間があるじゃありませんか……」
「んんっ、んっ……」
「【天界】の夜は…まだまだ、ですよ」
【天界】の青白い夜。
銀白がうつ伏せになるように言うと、牧草地の神はそれに従い、顔を寝具に伏せながら腰を上げ、秘部を銀白へと差し出した。
すっかり柔らかくなっているそこはわずかに はくはくと開閉を繰り返していて、肉棒の切っ先をそこにあてがった銀白はうねるような妙な感覚にみまわれる。
中に挿入するとその感覚はより強くなり、銀白の肉棒はいっそうキツく締めつけられた。
銀白は牧草地の神の腹のあたりをしっかりと抱え込むようにしながら、中の深さを確かめるようにしてゆっくりと抽挿を始める。
恍惚とした表情で吐息混じりの喘ぎ声をもらす牧草地の神の右の手のひらには、銀白の手のひらに現れたものとまったく同じ紋様が浮き出ている。
さらに、銀白の左の手のひらのものも先ほどに比べてずっとはっきりと、くっきりとしていた。
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