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第一章
陸国の食堂について
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陸国の夕方。
陽が傾き始める頃になると、中央広場にはあちこちの地域から一日の仕事を終えた人々が集まってくる。
農家に酪農家、鉱夫、木工などの職人達に漁師まで。
中央広場に集まってくるのはほとんどが中央広場沿いに居を構えている者達だが、中にはそれぞれの地域の中央付近に住んでいる者までいて、行き来するのだけでもそれなりの距離があるようなところから来ていることもある。
それぞれの地域(家)に帰り着くまでのためにわざわざ馬などを借りていることもあるのだとか。
そうまでして人々が中央広場に集まる理由。
それはおおかたの場合、夕食のためだ。
陸国では各家庭で食事を用意する他に『外食』という形で食堂を利用することも多く、朝は家庭で食べても、昼食や夕食は他の者達と賑やかに食事をして楽しむということが多々ある。
特に夕食というのは仕事を終えて一日の疲れを労いながらゆったりと過ごすことができる貴重な時間だといっていいだろう。
人々は交流と好みの味の食事を求めて、行きつけの食堂へ通うものなのだ。
食堂は基本的に中央広場に集中している。
なぜならばそれぞれの地域の中心地というのは地域特有の作業場などが立ち並んでいるせいで場所がなく、さらに他地域から運搬されてくる食材などのやり取りにもあまり適している立地だとは言えないからだ。
そのため、どの地域の特性にも属していない専門職である料理人達は皆中央広場沿いに食堂を構えている。
食堂の形態にも様々な種類があり、大まかに分類すると
・【昼食のみ提供する食堂】
・【夕食のみ提供する食堂】
・【酒類と軽食を提供する食堂】
という、それぞれ完全に特色などが異なる3種に分けることができる。
たとえば。
【昼食のみを提供する食堂】は午前中から仕込みをしていて、昼になると訪れた人へと食事を提供し、その後はその食堂で働いている人々が各家に持ち帰って夕食とする分の料理(まかない)を手分けして用意するということがほとんど。昼が終わるとそれぞれの夕食とする分を家へ持ち帰ることが多い。
※『熊の魚』に登場する食堂はこの形態である
【夕食のみ提供する食堂】はそれなりに遅い時間まで開いていて、仕事終わりの人々のために食事を提供し続けている。女性が働いているところもないわけではないが、その多くは男性だけで切り盛りをしている。
そして【酒類と軽食のみ提供する食堂】では、まさにその通り食事というよりも嗜好品を、さまざまな酒類やつまみとなるような軽食を主に提供している。
どこも陽が沈み始める頃に開き、いくつかは【夕食のみ提供する食堂】と隣り合わせか、もしくは内部で軽く仕切られているような場所に設けられていて、ほとんど区別なく運営しているところもある。
言うなれば、食堂ではなく酒場だ。
ワイワイと賑やかに酒を酌み交わしているところもあれば、各々がしっとりと楽しむための雰囲気を大切にしているところもある。
特に制約があるわけではないのだが、酒屋以外で酒を楽しめるのはこの【酒類と軽食のみ提供する食堂】と言っていいだろう。
※陸国ではほとんど貨幣が機能していない(存在してはいるものの、多くが物々交換のような形でやり取りされていて貨幣自体を目にすることが少ない)ため、『酒屋』や『店内』といった表現は少々適さないと思われる。
しかし、各家庭で楽しむための酒を取り扱っている酒屋も点在してはいる。
献立に関してはそれぞれの地域の特色(農業地域では野菜の出汁、酪農地域では肉の出汁、というようなもの)が活かされたものを中心に準備しているようで、そういった自身の住んでいる地域とは別の味を求めて食堂を訪れる人もいるのだとか。
どこの食堂でもその形態に依らず持ち帰りに対応していて、そのまま食堂で食べていく人の他にも料理を中食にするために求めていく人が少なくないのだそうだ。
陽が傾き始める頃になると、中央広場にはあちこちの地域から一日の仕事を終えた人々が集まってくる。
農家に酪農家、鉱夫、木工などの職人達に漁師まで。
中央広場に集まってくるのはほとんどが中央広場沿いに居を構えている者達だが、中にはそれぞれの地域の中央付近に住んでいる者までいて、行き来するのだけでもそれなりの距離があるようなところから来ていることもある。
それぞれの地域(家)に帰り着くまでのためにわざわざ馬などを借りていることもあるのだとか。
そうまでして人々が中央広場に集まる理由。
それはおおかたの場合、夕食のためだ。
陸国では各家庭で食事を用意する他に『外食』という形で食堂を利用することも多く、朝は家庭で食べても、昼食や夕食は他の者達と賑やかに食事をして楽しむということが多々ある。
特に夕食というのは仕事を終えて一日の疲れを労いながらゆったりと過ごすことができる貴重な時間だといっていいだろう。
人々は交流と好みの味の食事を求めて、行きつけの食堂へ通うものなのだ。
食堂は基本的に中央広場に集中している。
なぜならばそれぞれの地域の中心地というのは地域特有の作業場などが立ち並んでいるせいで場所がなく、さらに他地域から運搬されてくる食材などのやり取りにもあまり適している立地だとは言えないからだ。
そのため、どの地域の特性にも属していない専門職である料理人達は皆中央広場沿いに食堂を構えている。
食堂の形態にも様々な種類があり、大まかに分類すると
・【昼食のみ提供する食堂】
・【夕食のみ提供する食堂】
・【酒類と軽食を提供する食堂】
という、それぞれ完全に特色などが異なる3種に分けることができる。
たとえば。
【昼食のみを提供する食堂】は午前中から仕込みをしていて、昼になると訪れた人へと食事を提供し、その後はその食堂で働いている人々が各家に持ち帰って夕食とする分の料理(まかない)を手分けして用意するということがほとんど。昼が終わるとそれぞれの夕食とする分を家へ持ち帰ることが多い。
※『熊の魚』に登場する食堂はこの形態である
【夕食のみ提供する食堂】はそれなりに遅い時間まで開いていて、仕事終わりの人々のために食事を提供し続けている。女性が働いているところもないわけではないが、その多くは男性だけで切り盛りをしている。
そして【酒類と軽食のみ提供する食堂】では、まさにその通り食事というよりも嗜好品を、さまざまな酒類やつまみとなるような軽食を主に提供している。
どこも陽が沈み始める頃に開き、いくつかは【夕食のみ提供する食堂】と隣り合わせか、もしくは内部で軽く仕切られているような場所に設けられていて、ほとんど区別なく運営しているところもある。
言うなれば、食堂ではなく酒場だ。
ワイワイと賑やかに酒を酌み交わしているところもあれば、各々がしっとりと楽しむための雰囲気を大切にしているところもある。
特に制約があるわけではないのだが、酒屋以外で酒を楽しめるのはこの【酒類と軽食のみ提供する食堂】と言っていいだろう。
※陸国ではほとんど貨幣が機能していない(存在してはいるものの、多くが物々交換のような形でやり取りされていて貨幣自体を目にすることが少ない)ため、『酒屋』や『店内』といった表現は少々適さないと思われる。
しかし、各家庭で楽しむための酒を取り扱っている酒屋も点在してはいる。
献立に関してはそれぞれの地域の特色(農業地域では野菜の出汁、酪農地域では肉の出汁、というようなもの)が活かされたものを中心に準備しているようで、そういった自身の住んでいる地域とは別の味を求めて食堂を訪れる人もいるのだとか。
どこの食堂でもその形態に依らず持ち帰りに対応していて、そのまま食堂で食べていく人の他にも料理を中食にするために求めていく人が少なくないのだそうだ。
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