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四 ホワイトデーの話
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第四章
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温室庭の前方では、花婿と花嫁が幸せそうに、巨大なケーキに入刀していた。
真っ白のクリームとホワイトチョコのコポーに包まれた三段のウェディングケーキは、ファーストバイトの後、参列者にお裾分けされると決まっている。
三角錐が特徴のピエスモンテという飾り方の色とりどりのマカロン、結婚式の定番クロカンブッシュもある。
俺は、間に合ってよかったと胸を撫で下ろし、ウェディングケーキの行く末を見届けて、控室へと向かった。
控室の作業台で参列者にひとつひとつ手渡す予定の引き菓子のドラジェとフィナンシェを高速でラッピングしているのは寿人さんとスタッフ二人だ。
俺は言った。
「間に合いました! あれ。シェフは」
「着替えて参列しにいきました」
と、寿人さんはラッピングを終えて、大きな籐かごに丁寧に入れていく。顔は怖く、スピードは目にも止まらぬ速度だが手つきは壊れ物を扱うようだ。百個ずつのお菓子は、透明のPP袋の中に入れられ、純白のサテンリボンは端をくるんと巻き、金色のシールを貼り、きらきらと光り輝いて見えた。こちらもなんとか間に合ったようだ。
俺は訊ねた。
「寿人さんも披露宴に行かれますよね」
「僕は入りません。みなさん手伝いありがとうございます。配送さんが来ましたから、他の方と一緒に本店に戻ってください」
本店から連れてきたスタッフたちに礼をいい、寿人さんは引き菓子の入った籐かごを小脇に抱え、配送の運転手に声をかけたうえで、受付のほうへ向かって歩いていく。
その背に問いかけた。
「俺は、他に何かすることありますか」
「狭山さんはクグロフを片づけてもらっていいですか」
「あ、はい」
作業台の隅、天板の上に、失敗したクグロフが大量に残置されている。
今朝、この会社の次期社長と目されている片桐家の長男である新郎の輝人さんが焼いたものだ。ものづくりには、企画設計、材料加工、製造の工程があるが、後継ぎである新郎の彼はいずれの工程も壊滅的にセンスがないのだという。おかげで、百名分のクグロフの材料は無駄になってしまった。
俺は可哀相な残骸をばんじゅうに入れて、工場のスタッフに連絡し、工場行きを指定して、配送のおじさんに渡す。
と、そこで寿人さんが控室に戻ってきた。
「狭山さん」
「寿人さん」
「お任せしてしまい、すみません。帰りは僕が送りますね」
式場は郊外の山の手で公共交通機関まではかなりの距離がある。バスも通っていないらしく、足のない俺が単独で帰るのは困難だ。
三月半ば。
外はまだ寒く、さらにいえば、朝に慌ててやってきたので、着替えも何も持っていない。作業着のみだ。
「いえ、まだ配送さんいるので、人手が足りているなら俺も配送車で帰りますよ」
「……そうですか」
寿人さんは目を泳がせた後、頷いた。
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温室庭の前方では、花婿と花嫁が幸せそうに、巨大なケーキに入刀していた。
真っ白のクリームとホワイトチョコのコポーに包まれた三段のウェディングケーキは、ファーストバイトの後、参列者にお裾分けされると決まっている。
三角錐が特徴のピエスモンテという飾り方の色とりどりのマカロン、結婚式の定番クロカンブッシュもある。
俺は、間に合ってよかったと胸を撫で下ろし、ウェディングケーキの行く末を見届けて、控室へと向かった。
控室の作業台で参列者にひとつひとつ手渡す予定の引き菓子のドラジェとフィナンシェを高速でラッピングしているのは寿人さんとスタッフ二人だ。
俺は言った。
「間に合いました! あれ。シェフは」
「着替えて参列しにいきました」
と、寿人さんはラッピングを終えて、大きな籐かごに丁寧に入れていく。顔は怖く、スピードは目にも止まらぬ速度だが手つきは壊れ物を扱うようだ。百個ずつのお菓子は、透明のPP袋の中に入れられ、純白のサテンリボンは端をくるんと巻き、金色のシールを貼り、きらきらと光り輝いて見えた。こちらもなんとか間に合ったようだ。
俺は訊ねた。
「寿人さんも披露宴に行かれますよね」
「僕は入りません。みなさん手伝いありがとうございます。配送さんが来ましたから、他の方と一緒に本店に戻ってください」
本店から連れてきたスタッフたちに礼をいい、寿人さんは引き菓子の入った籐かごを小脇に抱え、配送の運転手に声をかけたうえで、受付のほうへ向かって歩いていく。
その背に問いかけた。
「俺は、他に何かすることありますか」
「狭山さんはクグロフを片づけてもらっていいですか」
「あ、はい」
作業台の隅、天板の上に、失敗したクグロフが大量に残置されている。
今朝、この会社の次期社長と目されている片桐家の長男である新郎の輝人さんが焼いたものだ。ものづくりには、企画設計、材料加工、製造の工程があるが、後継ぎである新郎の彼はいずれの工程も壊滅的にセンスがないのだという。おかげで、百名分のクグロフの材料は無駄になってしまった。
俺は可哀相な残骸をばんじゅうに入れて、工場のスタッフに連絡し、工場行きを指定して、配送のおじさんに渡す。
と、そこで寿人さんが控室に戻ってきた。
「狭山さん」
「寿人さん」
「お任せしてしまい、すみません。帰りは僕が送りますね」
式場は郊外の山の手で公共交通機関まではかなりの距離がある。バスも通っていないらしく、足のない俺が単独で帰るのは困難だ。
三月半ば。
外はまだ寒く、さらにいえば、朝に慌ててやってきたので、着替えも何も持っていない。作業着のみだ。
「いえ、まだ配送さんいるので、人手が足りているなら俺も配送車で帰りますよ」
「……そうですか」
寿人さんは目を泳がせた後、頷いた。
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