はじめての契約つがい

みつきみつか

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1 契約及び婚姻届の提出

五* 後の祭り

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「う、動けない……」

 瞼が重い。
 全身筋肉痛みたいだ。
 だが動けないのは、主に、背中から抱いてくる文弥さんのせいだ。俺の裸体を覆うように、両手両足で絡んできている。
 全裸になった文弥さんは、服を着ていたときよりも、大柄な印象だった。筋肉質だからか。組み敷かれて抵抗できなかったせいかも。
 それにしても……両足を何度も開かされて、内腿が痛い。生まれたての子鹿のように震えている。太股は文弥さんが放った大量の精液に濡れて、あられもない状態。
 契約内容には、たしかに、番、夫婦として生活するとは書いていた。だが、セックスをするだなんて、想像していなかった。
 そもそも俺は、セックスという行為をあまり知らなくて、その手の動画をみることもほとんどなく、もっと、なんというか、品のあるものだと思っていた。
 だが勘違いだった。相手がαとしては弱そうな文弥さんだとしても、けだものみたいに求められて、押しつぶされるみたいにやられたり、膝をつかされて後ろから激しく突き入れられたり、抱っこされて突き上げられたり、立たされて後ろから入れられたり、ありとあらゆる角度で濡れた股間を激しくこすりあわせ、あれほどまでにアクロバティックに蹂躙されるものだとは、まるで知らなかった。

「んん……尚くん」
「文弥さん……」

 顔を振り向かされ、口付けられる。キスだって初めてだった。
 なのに、昨夜はキスばかりか、文弥さんのペニスを喉奥まで差し込まれ、精液を出されて、飲んで、いまや喉の奥まで文弥さんのものみたい。

「尚くん、発情期まで毎日しようね」
「えっ、ま、毎日!?」

 文弥さんはこくりと幸せそうに頷いた。

「昨日すごくよかった。これから尚くんとこうして夫婦生活ができると思うと、仕事が手につかなくなりそう……」
「本末転倒……!?」
「発情期は長期のお休みをとります」

 早く来ないかな、と文弥さんは俺の腹を撫でる。

「発情期は、子どもができやすいんです。いまのうちに慣らしておいて、発情期にスムーズにできるようにと思っていたんですが、この分なら大丈夫そう。楽しみです。早く欲しい」
「えっ、あ、う……!?」

 昨日さんざん味わわさせられた文弥さんのペニスが、俺の背中側でふたたび固くなって、尻の割れ目に擦り付けられている。

「尚くん。愛してる」

 挿れるよ、と耳元で囁かれ、首の後ろを舐められながら、ぶちゅ、と押し込まれた。思わず「あぁっ」と喘ぎ声をあげると、たまらなさそうに文弥さんが後ろからしがみついてきて、首の後ろを食み、「尚くんは僕のもの」と、歯を立てる。
 痛みと同時に強烈な快感に襲われる。正気を失いそうになりながら、俺、もしかして、やばい契約した……? と今更ながら後悔した。




〈契約及び婚姻届の提出 終わり〉
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