はじめての契約つがい

みつきみつか

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5 巣作りと発情期

四 異常行動

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 文弥さんがスーツに着替えてとぼとぼ出かけていってしまった後、俺はTシャツを着て、下着をはいた。
 主寝室と洋室の壁を抜くなんて……。そういえば、前に言っていた気がする。実行するものなんだ。冗談だとばかり思っていた。
 本当に、これまで洋室と主寝室を隔てていた壁は跡形もなくなって、ひとつの部屋になってる。リビングと同じ広さなんじゃないかな。
 文弥さんのベッドは、すごくいいにおい。
 別荘のベッドもよかったけれど、こちらのほうが新鮮。
 いつも俺の部屋だったから、文弥さんのベッドで寝るの、なにげに初めてかも。
 枕まで嗅ぐのはいけないかな、と躊躇うものの、文弥さんなら許してくれそうだから、と手を伸ばす。
 俺は文弥さんの枕を抱きしめて深呼吸してみる。アウトバスのトリートメントのすっとしたにおい。汗のにおい。肌のにおい。
 でもちょっともの足りないかも。
 毎日ちゃんとお洗濯してるから、清潔なんだよね。
 俺はベッドから起き上がり、脱衣所に向かった。
 むわっと何かを感じ取る。
 俺のペニスを舐めてるときに文弥さんが垂らした先走りが床に落ちて乾いている。それに、洗濯機を回すのを忘れていた。
 洗濯機のなかには別荘で着ていた衣類がそのまま入っている。
 誘われるように衣類を取り出す。文弥さんのシャツ、下着、靴下。使用済みだとにおいが凄くついてる。
 俺は文弥さんの服を引っ張り出して抱え、床を拭って、また寝室に戻る。
 使用済み衣類をベッドに置き、文弥さんの部屋のクローゼットを開ける。上段はスーツがかけてあり、下が低いタンスで、下着や肌着、ネクタイなどの小物、さらにハンカチが入っていた。
 とりあえず目につくところにあるものを取って、ベッドにぽいぽい積んでいく。ワイシャツ、ベスト、スラックス、ジャケット……。
 古くてぼろぼろの毛布を見つけたので鼻を寄せると、別荘で嗅いだにおいがした。
 これ、文弥さんが大事にしてるものかもしれない。使ったら叱られるかなぁ……。そんなことないか。
 ある程度集まったなと俺は満足して、ベッドに転がって、うず高く積んだ衣類にまとわりつく。
 文弥さんのにおいはもともと好きだ。夫婦になってからは、さらに好きになった。しょっぱくて甘くて芳しくて、永遠に嗅いでいたいんだ。とくに肌のにおいは、あたたかいせいか、すごく心地よく感じる。
 俺は服の山に潜り込む。呼吸のための換気ルートを確保して、包まって温まっていると、やたらぽかぽかとして、幸せで、なんだか眠くなってきた。
 文弥さん、早く帰ってこないかなぁ……。

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