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4 ある二月の雪の夜
五 一緒に飲むらしい
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ネットカフェはどこもかしこも混み合っていた。帰宅難民がネカフェに大集合で、乗車率二百パーセント。
飛び込んだ二軒目に断られて、俺は焦る。
慌ててスマホで別のネカフェを探す。電話を掛けて問い合わせ。
「あ、予約いっぱいですか、わかりました」
だけど、どこも同じ。満席、満室。キャンセル待ち。
「あ、すみません、空き……あ、わかりました」
ホテルを探しても同じ。高いホテルすらも空いてない。カプセルホテルなんか問い合わせが殺到しているみたいで電話すら繋がらない。カラオケも同様。
ため息。
思い切って西さんに電話してみたけれど電源が入っていない。あの様子だもん。ホテルに帰ってさっさと寝てるな。お酒は弱そうだし。
詰んだかもと思いながら、二十四時間営業と看板に出ている、雑居ビル一階の飲食店に入る。以前、カズ先輩と何度か来たな、と思いながら。
カズ先輩か。
連絡しようと思えば、できる。きっと受け入れてくれる。だけど、繰り返すことになりかねない。
頼る人にするのはやめないと。
出入口がすでに混雑している。待っている人がたくさん。
立っている隙間すらない状況に、ここも空いていないんだと肩を落としそうになったときだ。
出入口に近い、二人掛けの小さなテーブル席にカズ先輩が一人でいるのを見つけて、俺は驚いた。
カズ先輩も入ってきた俺に気づいて目を丸くしている。スーツ姿そのまま。別れたあと、真っ直ぐにここに来たのかな。
店員が、入口を入ってきた俺に頭を下げに来る。
「申し訳ございません。ただいま満席でして」
そこで、カズ先輩が片手をあげて言った。
「あ、待ち合わせです」
カズ先輩に手招きされて、俺は席に通される。正直助かった。外すごい雪なんだもん。
向かい合って水を飲む。店内は暖かくて、座ってコートを脱いで、落ち着いた。
「すみません。ありがとうございます。助かりました」
「驚いた。どうしたの、タキくん」
「カズ先輩のほうこそ。おひとりですか」
偶然だよなぁ。ネカフェに泊まるはずの俺のほうがここに来たんだから。
「うん。どうせ帰っても寝られないから。あと、あんまり食べてなくて、何か食べようかと」
といってもカズ先輩の手元には飲み物しかない。っていうか酒。ハーフボトルの赤ワインを手酌で飲んでる。
……こんな飲み方をする人だったっけ。
元気ないな。
「タキくんは?」
「ネカフェが空いてなくて。ホテルも全滅で……」
「そっか。じゃあ、ここで一緒に飲まない?」
カズ先輩の部屋に行くのはやめておいたほうがいいけれど、ここで飲むならいいな。ここで夜明かしすれば。始発なら帰れるでしょ。土日は休みでよかった。
もしカズ先輩が元気ないなら、元気になってほしいけど、俺が願うことでもないんだろうな。
俺は笑って頷いた。俺にできることはこれだけ。
「飲みます!」
「あ、食事は? タキくんも、お酒ばかりでそれほど食べてないんじゃないの。ちゃんと食べたほうがいいよ」
メニュー表を差し出されて開く。急に腹が減ってくる。つまみは食べてたけど、腹にたまらないんだよな。ごはんものをしっかり食べたいのは確かだな。
「そうですね。おなか減ったかも。じゃあ和風ステーキセット」
「タキくん、お肉好きだねえ。俺も同じの食べようかな……」
そういって、お互いに食事をしながらワインをかなり飲んだ。
飛び込んだ二軒目に断られて、俺は焦る。
慌ててスマホで別のネカフェを探す。電話を掛けて問い合わせ。
「あ、予約いっぱいですか、わかりました」
だけど、どこも同じ。満席、満室。キャンセル待ち。
「あ、すみません、空き……あ、わかりました」
ホテルを探しても同じ。高いホテルすらも空いてない。カプセルホテルなんか問い合わせが殺到しているみたいで電話すら繋がらない。カラオケも同様。
ため息。
思い切って西さんに電話してみたけれど電源が入っていない。あの様子だもん。ホテルに帰ってさっさと寝てるな。お酒は弱そうだし。
詰んだかもと思いながら、二十四時間営業と看板に出ている、雑居ビル一階の飲食店に入る。以前、カズ先輩と何度か来たな、と思いながら。
カズ先輩か。
連絡しようと思えば、できる。きっと受け入れてくれる。だけど、繰り返すことになりかねない。
頼る人にするのはやめないと。
出入口がすでに混雑している。待っている人がたくさん。
立っている隙間すらない状況に、ここも空いていないんだと肩を落としそうになったときだ。
出入口に近い、二人掛けの小さなテーブル席にカズ先輩が一人でいるのを見つけて、俺は驚いた。
カズ先輩も入ってきた俺に気づいて目を丸くしている。スーツ姿そのまま。別れたあと、真っ直ぐにここに来たのかな。
店員が、入口を入ってきた俺に頭を下げに来る。
「申し訳ございません。ただいま満席でして」
そこで、カズ先輩が片手をあげて言った。
「あ、待ち合わせです」
カズ先輩に手招きされて、俺は席に通される。正直助かった。外すごい雪なんだもん。
向かい合って水を飲む。店内は暖かくて、座ってコートを脱いで、落ち着いた。
「すみません。ありがとうございます。助かりました」
「驚いた。どうしたの、タキくん」
「カズ先輩のほうこそ。おひとりですか」
偶然だよなぁ。ネカフェに泊まるはずの俺のほうがここに来たんだから。
「うん。どうせ帰っても寝られないから。あと、あんまり食べてなくて、何か食べようかと」
といってもカズ先輩の手元には飲み物しかない。っていうか酒。ハーフボトルの赤ワインを手酌で飲んでる。
……こんな飲み方をする人だったっけ。
元気ないな。
「タキくんは?」
「ネカフェが空いてなくて。ホテルも全滅で……」
「そっか。じゃあ、ここで一緒に飲まない?」
カズ先輩の部屋に行くのはやめておいたほうがいいけれど、ここで飲むならいいな。ここで夜明かしすれば。始発なら帰れるでしょ。土日は休みでよかった。
もしカズ先輩が元気ないなら、元気になってほしいけど、俺が願うことでもないんだろうな。
俺は笑って頷いた。俺にできることはこれだけ。
「飲みます!」
「あ、食事は? タキくんも、お酒ばかりでそれほど食べてないんじゃないの。ちゃんと食べたほうがいいよ」
メニュー表を差し出されて開く。急に腹が減ってくる。つまみは食べてたけど、腹にたまらないんだよな。ごはんものをしっかり食べたいのは確かだな。
「そうですね。おなか減ったかも。じゃあ和風ステーキセット」
「タキくん、お肉好きだねえ。俺も同じの食べようかな……」
そういって、お互いに食事をしながらワインをかなり飲んだ。
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