エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

文字の大きさ
38 / 396
4 ある二月の雪の夜

六 恋人ごっこをしたいらしい(※)

しおりを挟む
「――タキくん。思い出した?」

 お尻の穴に中指を入れられて、丁寧に念入りにされる。そのまま射精させられた。二度目。なんで指一本を穴に入れられて射精してるんだろう。

「ふ……っ、う……」

 しかも、こんな格好でさ。拘束具つけられて、足開かされて、両足を抱え上げられて、指を突っ込まれて。無理やり気持ちよくさせられて。

「ああ、出したね。気持ちいいね?」
「あ……、んん……気持ちい……」

 そうだ。あの店で、赤ワインをボトルでぐびぐび飲んで、べろべろになったんだった。そこまではいいよ。俺はわりとアルコール強いし。覚えてる。
 しばらくして、ブレーカーの故障で店が停電して、暖房がきかなくなってきたんだ。
 店内はみるみる極寒、アルコールも相当入っているし、眠くなってきて、このまま眠ったら死ぬと言い合って、やむなくカズ先輩の家に避難することにした。
 それが午前三時くらいの出来事。
 カズ先輩のマンションに着いて、エレベーターに乗ってドアが閉まった。ふとカズ先輩を見上げたら、目が合って、その瞬間に壁に押しつけられて激しく口づけられて……、俺も酔っ払いすぎたのか、舌を絡ませて、夢中で縋りついて……。めちゃくちゃ熱くなってきて……。
 もつれあうみたいにエレベーターから共用廊下に出て、玄関に入って、靴を脱ぎ散らかして、冷たい廊下に押し倒されながら、また貪るようなキスをして……。
 カズ先輩は俺に跨って、俺の胸の上に頭を押しつけて、しがみついて咽び泣きながら絶叫。

 ――会いたかった。会いたかった、会いたかった! 放したくなかった。離れたくなかった。タキくん。逃げないで! 俺のものになってくれ!

 こんなことになると思ったと、酔っ払いの俺は爆笑。
 逆に変わってなくてほっとした。
 俺は、むかし飼っていた犬が俺の不注意で逃げ出して、しばらくして別の家の子になっていたのを見つけ、しかも懐いてるからといって返してもらえなかった、という悲しい出来事を思い出しながら言った。
 あのとき、親父に言われたんだよな。お前が逃したせいだろって。

 ――逃げられたくないなら、ちゃんと捕まえておかないといけないんじゃないですか?
 ――え、いいの? じゃあ捕まえておく……。

 そんなやり取りが、あったような、なかったような。なかったと信じたい素面の俺が、そんな思わせぶりな言葉をなかったことにしようとしているような?
 でも、あれって拘束まで同意してる? 解釈違い? 俺が悪い?
 カズ先輩は俺の立てている片膝に頬を寄せながら、嬉しそうに言う。

「わかった。素面のタキくんがそこまで強情なんだったらさ、前のときみたいに恋人ごっこか、いっそ俺のことを奴隷か、ペットだと思えばいいんだよ。俺たちのこれは単なるごっこ遊びってことで」

 またわけわかんないこと言ってるし。

「恋人ごっことペットごっこ。どっちがいい? タキくんの自尊心を守る方向で行こう。合わせるから」
「ペットって、カズ先輩がペットなんですか」

 明らかに俺のほうがペットじゃない?
 首輪とかついてるし。身動きとれなくさせられてるし。

「どっちでもいいよ。好きな方をどうぞ」

 拒否権はないのかな。ないんだろうな。

「恋人ごっこのほうがマシかな……」
「本当にどれでもいいよ。俺に首輪をつけてもいいよ。どんなでもいいから、またタキくんといちゃいちゃしたい。髪を撫でてほしいな。あと、タキくんの方からキスしてほしい」
「要望多いし……。カズ先輩って諦め悪いですね」
「うん。俺は諦められない。ごめんね。まあこうなったらさ、新しい人とか、新しい恋ができるまで、こういう関係でいいじゃん。タキくんが他に好きな人ができたら、さすがに諦めるよ。それまで時々会ってよ。時々でいいから。気持ちよくしてあげる」
「うわー、それってぜんぜんよくない……」

 いわゆるセフレでしょ、それ。
 今はよくても、時間とともにどっちかが傷ついてくやつ。俺そういうの嫌。

「別にいいよ。いま、タキくんとこうして話せて、ごはん食べたりして、一緒に過ごせて、エッチできたら、俺にとってはそれがすべてだから。なんでもいいもん」

 また出たよ。その刹那主義。いまがよければすべてよし。

「じゃあ恋人ごっこ開始。ね、タキくん。俺の指でされるの気持ちいい? よかった? 三回目しようか」

 同意していないけれど中指が勝手に入ってくる。

「あっ、カズ先輩……」
「そのカズ先輩っていうのも変えたいな。俺の名前は知ってるよね?」
「小野寺先輩」
「和臣って呼んでよ」
「…………和臣さん」

 そう言った瞬間、カズ先輩は少し表情を変えて、俺の腰を掴んで引っ張ってくる。前屈みになってきて、視線を合わせながら口づけられる。
 甘いような、真剣なような雰囲気になる。
 カズ先輩は唇を離して、俺の首輪やら拘束具を解きながら問いかけてくる。

「タキくん。してもいい? 入れたいなー……」
「あれ? 俺がおねだりしたら入れるんじゃなかったんですか?」
「そんな得意になっちゃって。でも負けを認めるから、させてほしい……」

 そう言いつつ、俺のあちこちを愛撫して、カズ先輩は自分のそれを掴んで扱きながら、分厚い先っぽを俺のそこに当ててくる。ローションを足して、少し入ってる。今朝は結局手でされて、そのまま寝たので、挿入は半年ぶり。緊張する。

「あ……」
「痛くない?」
「痛くないです……」

 悔しいことに、こんなにでかいのに、挿入自体が痛かったことはない。念入りにほぐされるし。カズ先輩に徹底的に慣らされてる体に慄く。
 ゆっくりと擦りながら、揺らしながら徐々に入ってくる。

「あ、あああ……、か、和臣さん、や……」
「タキくん、リラックスして」

 半年ぶりだけど、身体が、どうされたいのかを覚えてる。広げながら入ってくる。めり込んでくるみたい。息を吐いたり吸ったりしながら受け入れる。

「ふ……う……ん、ん……!」
「タキくん、上手だね。可愛いね。一緒に気持ちよくなろうね。欲しかった?」
「やっ、いや、あっ、ああっ、いや」
「でも、ここは欲しがってるみたい」

 両手を繋いで、胸を合わせる。のしかかってくる。全部入ってる。揺らされながら。カズ先輩は額をすりつけてきて、ついばむように口づける。全身を重ねて熱い。

「あっ、あ、あっ、あっ」

 規則的に揺らしながら、カズ先輩は満足げに呟いた。

「タキくんとのエッチ、すっごく気持ちいいなぁ……俺は欲しかったよ。こうしたかった……多紀くんの中、すごい。温かくて狭くて締め付けてきて……気持ちいい……」
「んっ、ん、俺も、気持ちい、いい、あっあっ、せんぱい」

 と呼んだら、口を塞がれる。そうしながら、腰を打ち付けてくる。ぶつかる音。

「ん、ん、ん」

 身体を揺らしすぎてベッドボードに頭を打ちそうになるのを引き戻された。その拍子に深く入る。脇の下に両腕を差し入れられて、肩を押さえられながら、上も下も、深くしたり浅くしたり。
 俺もカズ先輩の肩に両腕を回して抱きつく。密着するとより気持ちいい。

「多紀くん。和臣だよ。ちゃんと名前呼んで。さっきみたいに」
「和臣さん、ん、あ、あ、あ、ああ……!」
「あっ、多紀くん。気持ちいい、ん、多紀くん」

 久しぶりであまりに気持ちよくて何も考えられない……。揺らされるたびに一番いいところをかすめる。

「んん、か、和臣さん、あ、いい、あっ、俺も、気持ちいい、これ好き、あっ、そこ、あっあっ、和臣さん……!」
「あ、多紀くん、ごめん、俺イくかも。やばい」
「へ?」
「あ、イく。ごめん、イく。多紀くん……! あっ、あっ」

 カズ先輩は必死な表情で真っ赤になりながら、何度か深く速く突いてきて中でイった。その瞬間にぎゅっと抱かれて、奥に押しつけられる。獣みたいに。種付けするみたいに。
 射精し終わって、力が抜けて、のしかかってくる。
 息が荒くなっていて、激しい鼓動が響いてくる。

「呼ばれるのすごいクる……」
「和臣さんって?」
「うん。あー、よかった。気持ちいい。ごめん、多紀くんイかせるから、このままもっかいしよ……」
「休憩なしですか……」
「まだ固いからいけそう。多紀くんイかせてあげる」

 カズ先輩は俺の唇を奪いにくる。
 両手をつないで、ふたたび動き始めた。相変わらず性欲強いな……。
しおりを挟む
感想 341

あなたにおすすめの小説

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

処理中です...