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2 ある聖夜のころ
一 クリスマスデートではない
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十二月の第二週、金曜日。
午前十一時半過ぎ。
デスクで少し早めのお昼として牛丼を食べながら、西さんが言った。
「相田くん、きょう張り切ってんな。どないしたん?」
その問いに返す言葉を考えていると、数ヶ月前に中途入社した事務の女の子で、俺の隣のデスクの真鍋さんが、同調するように頷く。
真鍋さんは短大卒で、三つ年下の色白清楚系女子。いつもきれいめのワンピース。
「相田さん、今日の午後、お休みですよね」
俺は交わしたばかりの契約書のチェックを終えて、今日の仕事は終わり。
日報を書いたら十二時。
あと少し。
「あ、はい」
「土日どっかいくん?」
「え、どうでしょうね??」
別にどこか遠出する予定はないのだけど。
「デート? これ訊いたらあかんやつ?」
「はい、西社長、コンプラ違反ー。有給休暇取得に理由は必要ありませーん。その上セクハラー」
「アウトー」
西さんと真鍋さんの仲良しコンビは二人でコント中。俺はスルーしてイントラで日報。
二人の会話が途切れたのでパソコンの画面から顔を上げると、ふたりともニヤニヤしながら俺を観察してる。
仕事しなよ。もしくはお昼食べなよ。冷めるよ。
「そわそわしてますね」
「そわそわしてんな」
「いえいえ、いえいえ」
「クリスマスは再来週ですよー?」
「いや、クリスマスは会えないんで……あっ」
「おおっ! 相田さんの秘められたプライベート事情が!」
「えっ、でもクリスマスに会われへんの? 大丈夫?」
「新たな問題勃発!?」
そんな前のめりになられても。
仕方ないじゃん。帰国しないっぽいんだからさ。
顔が熱くなっている気がする。パソコンの電源を消して、デスクを立つ。いそいそとコートとカバンをとる。
「お先に失礼します……」
「はーい、お疲れさまでーす」
「楽しんでやー! 彼女によろしくー!」
「はい、コンプラ違反ー! アウトー!」
「デデーン!」
きゃっきゃしてる二人を置いて、俺はオフィスを出ようとする。
ちょうど、営業の先輩の佐伯さんが外回りから戻ってきた。佐伯さんは俺の五つ年上で、イケメンで女性スタッフ人気高め。
ちなみに俺は、おばちゃんやおばあちゃんに可愛がられる係で、めっちゃ飴ちゃんもらえる。
「あ、佐伯さん、おかえりなさい」
「ただいまー。なに? 笑ってはいけない?」
「おかえり、佐伯くん。いま相田くんの門出を祝ってな」
「相田さんったら一足早めのクリスマスデートなんです」
「違いますって……」
「へえ、相田くん、彼女?」
「いえ、違います。ほんと」
「遊ばれてるの?」
「はい」
「なんや!? 相田くん! 俺らのことは遊びやったんか!?」
「ひどい! 許せない……!」
「ふたりとも……」
「はい、解散解散。相田くん、あとはやっとくよ」
「すみません」
俺はいそいそオフィスを出ていく。ぱふぱふ言ってる。ったく。
違うよ。そわそわじゃない。
俺は、もやもやしてる。ちょっと怒ってる。
なにせ、ほぼ半年ぶりなんだから。
午前十一時半過ぎ。
デスクで少し早めのお昼として牛丼を食べながら、西さんが言った。
「相田くん、きょう張り切ってんな。どないしたん?」
その問いに返す言葉を考えていると、数ヶ月前に中途入社した事務の女の子で、俺の隣のデスクの真鍋さんが、同調するように頷く。
真鍋さんは短大卒で、三つ年下の色白清楚系女子。いつもきれいめのワンピース。
「相田さん、今日の午後、お休みですよね」
俺は交わしたばかりの契約書のチェックを終えて、今日の仕事は終わり。
日報を書いたら十二時。
あと少し。
「あ、はい」
「土日どっかいくん?」
「え、どうでしょうね??」
別にどこか遠出する予定はないのだけど。
「デート? これ訊いたらあかんやつ?」
「はい、西社長、コンプラ違反ー。有給休暇取得に理由は必要ありませーん。その上セクハラー」
「アウトー」
西さんと真鍋さんの仲良しコンビは二人でコント中。俺はスルーしてイントラで日報。
二人の会話が途切れたのでパソコンの画面から顔を上げると、ふたりともニヤニヤしながら俺を観察してる。
仕事しなよ。もしくはお昼食べなよ。冷めるよ。
「そわそわしてますね」
「そわそわしてんな」
「いえいえ、いえいえ」
「クリスマスは再来週ですよー?」
「いや、クリスマスは会えないんで……あっ」
「おおっ! 相田さんの秘められたプライベート事情が!」
「えっ、でもクリスマスに会われへんの? 大丈夫?」
「新たな問題勃発!?」
そんな前のめりになられても。
仕方ないじゃん。帰国しないっぽいんだからさ。
顔が熱くなっている気がする。パソコンの電源を消して、デスクを立つ。いそいそとコートとカバンをとる。
「お先に失礼します……」
「はーい、お疲れさまでーす」
「楽しんでやー! 彼女によろしくー!」
「はい、コンプラ違反ー! アウトー!」
「デデーン!」
きゃっきゃしてる二人を置いて、俺はオフィスを出ようとする。
ちょうど、営業の先輩の佐伯さんが外回りから戻ってきた。佐伯さんは俺の五つ年上で、イケメンで女性スタッフ人気高め。
ちなみに俺は、おばちゃんやおばあちゃんに可愛がられる係で、めっちゃ飴ちゃんもらえる。
「あ、佐伯さん、おかえりなさい」
「ただいまー。なに? 笑ってはいけない?」
「おかえり、佐伯くん。いま相田くんの門出を祝ってな」
「相田さんったら一足早めのクリスマスデートなんです」
「違いますって……」
「へえ、相田くん、彼女?」
「いえ、違います。ほんと」
「遊ばれてるの?」
「はい」
「なんや!? 相田くん! 俺らのことは遊びやったんか!?」
「ひどい! 許せない……!」
「ふたりとも……」
「はい、解散解散。相田くん、あとはやっとくよ」
「すみません」
俺はいそいそオフィスを出ていく。ぱふぱふ言ってる。ったく。
違うよ。そわそわじゃない。
俺は、もやもやしてる。ちょっと怒ってる。
なにせ、ほぼ半年ぶりなんだから。
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