エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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第三部 1 ある事件直後の土日

四 認められたい

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 俺はベッドの横に腰掛けて、急いでワイシャツを着たり、下着をはいて、スラックスをはいて、ベルトをしたり。
 和臣さんはベッドにあぐらをかいて、おしくらまんじゅうみたいに圧し掛かってきて、俺が服を着るのを邪魔しつつ、ワイシャツに袖を通しながら言った。

「よし、公認ってことで、普段から恋人同士を徹底しよう。これからは、手をつないで買い物に行きたいな。通勤のときも手をつなぎたい。お風呂も一緒に入りたい。朝晩一回ずつエッチしたい。いってらっしゃいとおかえりのキスも必ずしたい。あと、お昼も一緒に食べたい。お弁当作ろうかな……。それか一回帰ってきてお昼食べてお昼寝エッチしてもいいな……」

 照れ照れしながら、上目遣いでちらちら見てくる。
 別人格の下半身が脳みそを乗っ取っているね。
 要望多いし。
 俺は呆れる。

「エッチ多すぎですし。それになんでそんなに外から認められたいんですか?」

 俺は、恋人同士ってまず心のありかただと思ってるから、ひとに知られたり外野にあれこれ言われるのは避けたいところ。公衆の面前ふたたびで、知られすぎてるくらい知られたけど。
 和臣さんは、神妙な顔で頷いた。
 価値観が違っていそうな表情をしているね。
 体はお互いに別の向きだけど、上半身だけ振り返って、ワイシャツのボタンを留めつつまた口づけてくる。
 俺のこめかみにおでこを当てながら、頬を寄せて、目を閉じて、唇は、一センチの距離。

「認められたいよ。多紀くんが欲しい……。これから先、誰にもとられたくない。俺のものって書いておきたい。名実ともに、多紀くんの恋人に……ううん。俺……本当は、多紀くんの旦那さんになりたい。多紀くんに、俺の旦那さんになってほしい。だめ?」

 それ前も言ってたけど、無理じゃない?
 いつからこの国は男同士で結婚できるようになったの?
 ツッコミどころは多いものの、何も言えなくなる。
 だってド直球のプロポーズ、受け止めるのに必死。
 またパニックになってくる。焦る。恥ずかしい。
 しばらく沈黙して、和臣さんは困惑する俺を見ながら悲しそうに苦笑した。

「ごめん、混乱させて。返事はいらない……」

 そんな悲しそうな顔しないでほしい。
 べつに、断るつもりで黙っているわけじゃない。
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