エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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第三部 1 ある事件直後の土日

三 家に帰りたい(※)

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「パーティーは終わってるんですよね」
「あ、うん。解散してる」
「じゃあ帰りましょっか」

 弁解する機会はないか。来週以降に考えればいいや。西さんは再来週に東京に来るけど、葉子さんがなにか連絡するかな。会社同士で連絡をとられたりするのかな。やだな……。
 和臣さんは、ベッドに伸ばした俺の両足の上にうつ伏せてる。
 動けないんだけど。

「なにしてるんです?」
「付き合ってるって言ってほしい……」
「はあ」
「真剣交際してるって言って……」
「……はいはい。わかりましたよ」

 処分されたら可哀相だしね。
 和臣さんはがばっと顔をあげて尻尾を振って喜んでいる。ぱあっと花開くみたいな超笑顔。俺に抱きついてきて、首筋をちゅうちゅう吸ってる。
 痕をつけたらだめだよ。

「真剣交際してる恋人同士だから、たくさん求め合わないと」

 また何か言ってる……。
 首筋やら耳のあたりをいやらしく舐められてついばまれると、俺のほうも我慢できなくなってくるわけで……。
 生温かい唾液が流れ込んでくるし、飲んだり飲まれたりしながら、あちこち触ったり、俺は脱がされていって、重ねる肌の面積が増えていく。
 和臣さんはワイシャツを脱いで、スラックスも脱いで、肌着と下着姿になってシーツと上掛けの隙間にもぐりこんでくる。素早いし手際よすぎ。

「あっ、しまった。ローション持ってきてない」

 持ってきてるほうがおかしいから。

「触るだけにしましょ。俺も洗ってないですし」
「舐めてあげようか。久しぶりで新鮮だね。こうしてホテルでするの」
「そうですねえ」

 悲劇はホテルで始まったので、俺としては少々複雑な気分。
 記憶を上書きしたいな。

「どっか旅行にいくのもいいですよね」

 そういえば、旅行にいくって話、してたな。記憶喪失中に。
 バンコクを案内してもらえるだろうか、なんてワクワクしちゃってさ。のんきな俺。してくれないよ。ほぼ軟禁でベッドの上。

「行く。短答式試験が終わったらでもいい?」
「もちろん」
「楽しみがひとつできた」

 和臣さんは幸せそう。
 パスポートも持っている今の俺は海外にだって行ける。けど、バンコクに限らず、どこに行っても観光できるかはわからないってもんだ。ホテルや旅館から一歩も出られなかったりしてね。
 お互いに肌着も下着も脱いじゃって、全裸。和臣さんは上になって、片手ずつで擦り合い。先走りのぬるぬるで上下する。それだけでも気持ちいい。
 だけど和臣さんが俺の臀部に手を回してつかんで揉みしだくので、ちょっと、いや、かなり困る。俺は和臣さんの胸を揉んでみたり、乳首に触れてみたり。

「多紀くん、っ」
「和臣さん、揉まれると、う……」
「きもちいい。いれたい……!」
「お、俺も、ん、あ、い、入れてほしい」

 また貪りあうみたいな、余裕のない激しいキス。キスも気持ちいい。
 口でセックスの真似ごと。舌を激しく入れられて快感。高まってくる。唇も口の周りも、顎まで唾液でぐちゃぐちゃ。粘膜をあちこち突かれてこすられて、唇で締めたり、撫でてくる先っぽの圧力に屈したり。
 苦しくて息ができない。息継ぎ。とける。熱くてぼーっとしてる。でも続けたい。
 入れられてるときの感覚を思い出すようなキスをしながら、重ねている下半身のほうは先走りでとろとろ。しがみついて身を任せているうちに、呻いて同時に射精。
 早く家に帰りたい……。

「家で、したいです」

 涙目になりながら呟くと、和臣さんはにこにこしながら手早くティッシュで拭いたりしつつ、目を見合わせてくる。

「多紀くん、可愛い」

 エッチ中にも可愛い可愛い言われるものだからまた腰にずんとくる。もはや条件反射。
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