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番外編15 リクエストなどなど2
家族会議(突入数分前の話)
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※紗英との見合いの少し前のお話(母親に弱い和臣の小話の直前)です。
「ねー、聞いて。瑞穂さん、のんちゃん。三郎ったら、今度お見合いするらしいわよ」
「三郎坊ちゃまが!? 本当ですか、奥様!」
「えっ、女の子と? あ、瑞穂さん、追加のあられ取ってー。色々入ってるほうの缶」
ポリポリ
「勤め先の役員の姪か何からしいわ。来週末、釣書を持って帰ってくるそうよ。ご両親の承諾を得てくるように言われたんですって。このあられ、美味しいわねぇ。ほんと色々入ってる。瑞穂さんもお茶にしましょうよ」
「せんべぇとおかきとあられのお味ミックスだそうで。ではご一緒させていただきます。来週末は……お赤飯でしょうか?」
「あの三郎が見合い……? あ、この海苔巻き美味しい。海苔がぱりぱりしてる」
パリパリ
「あら、のんちゃん。三郎ったら、高校生のときもちゃーんと好きな子がいたのよ? 人間嫌いのくせにイッチョ前に」
「たいへんな大恋愛でございました」
「そうだったっけ? このザラメも美味しい」
ポリポリ
「社会人になってそれなりに遊んで女性慣れしたのかしらね。そろそろいいとこのお嬢様と身を固めるだなんて、そんな家じゃないのに自ら進んでするって不思議ね」
「ご立派なおうちですけども、堅苦しくない家風ですものねぇ。みなさま東京にお出になられて、あちらでご結婚されるのは、ばぁにするとさみしいものですが……。のんちゃま、えびせんべぇもオススメです」
「了解。あ、ほんと。出汁がきいてていいね。三郎、ずっと片想いしていたでしょ。あれは諦めたのかしら」
パリポリ
「あら、のんちゃん、三郎から何か聞いてるの? 兄妹が仲良しだなんて知らなかったわ。サラダ味も定番でいいわね」
「わたくしも驚きです。あ、お醤油は少々しょっぱいです」
「お茶呑むとちょうどいいよ。一時期、私、三郎と二人暮らししてたでしょ。あのときに三郎ときたら、部屋に好きな子の写真だのなんだのをハムスターみたく溜め込んでたのよ。一人暮らしに戻って、大学卒業する頃かしら? 部屋に行ったらまだ集めていたの。あいつ、わたしには全部捨てろだなんて平気で言うくせに自分はコレクター気質でね。やだ、チョコレートあられハマりそう。甘じょっぱいって罪だわ……」
カリカリ
「黒ごま、香ばしくていいわよ。瑞穂さんのそれ何?」
「こちらはカレーおかきです。すぱいしーでございます。のんちゃまの黄色いのは?」
「焼きとうもろこし。ほんのり甘みがあって香ばしくて塩を振ってあって……間違いないわ」
「あっ、わさび当たっちゃった」
「奥様、お水を。わたくし、わさび好きですからぜひわたくしに」
「お母さん、梅昆布あるわよ。好きでしょ。瑞穂さん、こっちの黒胡椒、たぶん好きな味」
「まぁ、ご丁寧に。いただきます」
「梅昆布いいわね。ここ出汁がいいんだわ」
「繊細なお味でございますねぇ」
「豆もちふかふか」
「お茶おかわりしよー」
「奥様、わたくしが」
「このお茶も美味しいね」
トポトポ
モグモグ
「はー。そういえば、三郎の荷物、多いわよねぇ。定期的に荷物を送ってくるし。整理整頓はしているみたいだけど」
「三郎坊ちゃまはこの豆もちのようにたいへんまめまめしくいらっしゃいまして、帰省のたびにお部屋にこもってきちんと荷物を開け、手ずから片づけておられます。ばぁはお部屋には入らないようにと言いつかっておりまして」
「あいつ、実家を物置にしてるのね……」
ポリポリ
「掃除機はかけているのかしら? これから梅雨だし、晴れた日には風を通したほうがいいわよねぇ」
「止められているのでなんとも……」
「入らないほうがいいんじゃない? へんなもの見ちゃうよ」
パリポリ
「でも瑞穂さんは三郎に止められているんでしょ。じゃあわたしが先に入るしかないわよ。わたしは言われてないんですもの。何も」
「家主の方に先陣を切っていただけると助かりますねぇ。使用人は板挟みで……よぼよぼ……」
「ねぇ、三郎が好きだった子のこと、二人とも知ってるの?」
ムシャムシャ
「高校生のときなら、『タキくん』でしょ。卒業式の日、三郎が号泣しながらぶつぶつ呟いてたの。下の名前らしいわ。珍しいよね」
「さすが奥様。よく覚えていらっしゃる。苗字は『森下』さんでございましたわね」
「あー、知ってるのね……」
トポトポ
「あの子、大叔父様にこっそり、二学年下の卒業アルバムを買わせてほしいって頼んだのよ」
「三郎坊ちゃまと『タキくん』、高校で、学年は違うもののとても良いご友人同士で有名だったそうで。あんなに暗かった三郎坊ちゃまがたいへん明るくなって、お友達のおかげだと」
「へぇ~。そういう関係」
「好きになっちゃうのもわからないわけじゃないわ」
「わたくしは、そのような思春期の男子学生の崇高なご友人関係、たいへん興味深いですわ。おほほ」
「瑞穂さんたら」
モグモグ
「ほら、でもねぇ。みんなうかうかしてるとすぐ三十四十よ。太郎も次郎も女っ気ないでしょ。まさか三郎もかしらって、お母さん、心配してるのよ。お母さんとしては、子どもたちみんな、幸せになってほしいの。孫の顔も見たいし」
「さぞ愛らしいでしょうねぇ」
「次郎くんは大学のときは彼女いたよ。大学で見かけたもの。太郎お兄ちゃんは……あれだけど……」
カリカリ
「三郎も長い片想いをスッパリ断ち切って、お見合いすることにしたんでしょ。それか、不毛な片想いを諦めるために。そんなこともあるわよね。何にせよとびきり美人な女の子みたいだし、楽しみね~」
「お夕食、豪勢にいたしましょう」
「でもあの三郎がねぇ……にわかには信じがたいな。相当入れ込んでる様子で、わたしの部屋の物の多さとはまったく性質の異なる、整理整頓された大量の……うーん」
ポリポリ
「食べ終わったら三郎の部屋、入りましょっか」
「掃除機をかけさせていただきますね」
「鬼が出るか蛇が出るか……」
<数分前の話 終わり>
「ねー、聞いて。瑞穂さん、のんちゃん。三郎ったら、今度お見合いするらしいわよ」
「三郎坊ちゃまが!? 本当ですか、奥様!」
「えっ、女の子と? あ、瑞穂さん、追加のあられ取ってー。色々入ってるほうの缶」
ポリポリ
「勤め先の役員の姪か何からしいわ。来週末、釣書を持って帰ってくるそうよ。ご両親の承諾を得てくるように言われたんですって。このあられ、美味しいわねぇ。ほんと色々入ってる。瑞穂さんもお茶にしましょうよ」
「せんべぇとおかきとあられのお味ミックスだそうで。ではご一緒させていただきます。来週末は……お赤飯でしょうか?」
「あの三郎が見合い……? あ、この海苔巻き美味しい。海苔がぱりぱりしてる」
パリパリ
「あら、のんちゃん。三郎ったら、高校生のときもちゃーんと好きな子がいたのよ? 人間嫌いのくせにイッチョ前に」
「たいへんな大恋愛でございました」
「そうだったっけ? このザラメも美味しい」
ポリポリ
「社会人になってそれなりに遊んで女性慣れしたのかしらね。そろそろいいとこのお嬢様と身を固めるだなんて、そんな家じゃないのに自ら進んでするって不思議ね」
「ご立派なおうちですけども、堅苦しくない家風ですものねぇ。みなさま東京にお出になられて、あちらでご結婚されるのは、ばぁにするとさみしいものですが……。のんちゃま、えびせんべぇもオススメです」
「了解。あ、ほんと。出汁がきいてていいね。三郎、ずっと片想いしていたでしょ。あれは諦めたのかしら」
パリポリ
「あら、のんちゃん、三郎から何か聞いてるの? 兄妹が仲良しだなんて知らなかったわ。サラダ味も定番でいいわね」
「わたくしも驚きです。あ、お醤油は少々しょっぱいです」
「お茶呑むとちょうどいいよ。一時期、私、三郎と二人暮らししてたでしょ。あのときに三郎ときたら、部屋に好きな子の写真だのなんだのをハムスターみたく溜め込んでたのよ。一人暮らしに戻って、大学卒業する頃かしら? 部屋に行ったらまだ集めていたの。あいつ、わたしには全部捨てろだなんて平気で言うくせに自分はコレクター気質でね。やだ、チョコレートあられハマりそう。甘じょっぱいって罪だわ……」
カリカリ
「黒ごま、香ばしくていいわよ。瑞穂さんのそれ何?」
「こちらはカレーおかきです。すぱいしーでございます。のんちゃまの黄色いのは?」
「焼きとうもろこし。ほんのり甘みがあって香ばしくて塩を振ってあって……間違いないわ」
「あっ、わさび当たっちゃった」
「奥様、お水を。わたくし、わさび好きですからぜひわたくしに」
「お母さん、梅昆布あるわよ。好きでしょ。瑞穂さん、こっちの黒胡椒、たぶん好きな味」
「まぁ、ご丁寧に。いただきます」
「梅昆布いいわね。ここ出汁がいいんだわ」
「繊細なお味でございますねぇ」
「豆もちふかふか」
「お茶おかわりしよー」
「奥様、わたくしが」
「このお茶も美味しいね」
トポトポ
モグモグ
「はー。そういえば、三郎の荷物、多いわよねぇ。定期的に荷物を送ってくるし。整理整頓はしているみたいだけど」
「三郎坊ちゃまはこの豆もちのようにたいへんまめまめしくいらっしゃいまして、帰省のたびにお部屋にこもってきちんと荷物を開け、手ずから片づけておられます。ばぁはお部屋には入らないようにと言いつかっておりまして」
「あいつ、実家を物置にしてるのね……」
ポリポリ
「掃除機はかけているのかしら? これから梅雨だし、晴れた日には風を通したほうがいいわよねぇ」
「止められているのでなんとも……」
「入らないほうがいいんじゃない? へんなもの見ちゃうよ」
パリポリ
「でも瑞穂さんは三郎に止められているんでしょ。じゃあわたしが先に入るしかないわよ。わたしは言われてないんですもの。何も」
「家主の方に先陣を切っていただけると助かりますねぇ。使用人は板挟みで……よぼよぼ……」
「ねぇ、三郎が好きだった子のこと、二人とも知ってるの?」
ムシャムシャ
「高校生のときなら、『タキくん』でしょ。卒業式の日、三郎が号泣しながらぶつぶつ呟いてたの。下の名前らしいわ。珍しいよね」
「さすが奥様。よく覚えていらっしゃる。苗字は『森下』さんでございましたわね」
「あー、知ってるのね……」
トポトポ
「あの子、大叔父様にこっそり、二学年下の卒業アルバムを買わせてほしいって頼んだのよ」
「三郎坊ちゃまと『タキくん』、高校で、学年は違うもののとても良いご友人同士で有名だったそうで。あんなに暗かった三郎坊ちゃまがたいへん明るくなって、お友達のおかげだと」
「へぇ~。そういう関係」
「好きになっちゃうのもわからないわけじゃないわ」
「わたくしは、そのような思春期の男子学生の崇高なご友人関係、たいへん興味深いですわ。おほほ」
「瑞穂さんたら」
モグモグ
「ほら、でもねぇ。みんなうかうかしてるとすぐ三十四十よ。太郎も次郎も女っ気ないでしょ。まさか三郎もかしらって、お母さん、心配してるのよ。お母さんとしては、子どもたちみんな、幸せになってほしいの。孫の顔も見たいし」
「さぞ愛らしいでしょうねぇ」
「次郎くんは大学のときは彼女いたよ。大学で見かけたもの。太郎お兄ちゃんは……あれだけど……」
カリカリ
「三郎も長い片想いをスッパリ断ち切って、お見合いすることにしたんでしょ。それか、不毛な片想いを諦めるために。そんなこともあるわよね。何にせよとびきり美人な女の子みたいだし、楽しみね~」
「お夕食、豪勢にいたしましょう」
「でもあの三郎がねぇ……にわかには信じがたいな。相当入れ込んでる様子で、わたしの部屋の物の多さとはまったく性質の異なる、整理整頓された大量の……うーん」
ポリポリ
「食べ終わったら三郎の部屋、入りましょっか」
「掃除機をかけさせていただきますね」
「鬼が出るか蛇が出るか……」
<数分前の話 終わり>
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