エリート先輩はうかつな後輩に執着する

番外編２１ 和臣の妄想Ⅰ

十四 告白

　　　十四

　カズ先輩の大きな手に抱かれて、低い声でささやかれて、俺は緊張で硬直してる。

「……タキくんが好きなんだ。世界中でいちばん大好き。ずっと一緒にいてほしい」

　カズ先輩は言った。
　鏡越しに、泣きそうなカズ先輩の表情。

「俺のことを、好きになって」

　そんな顔、初めて見る。そう思った。
　でもよく思い返してみると、カズ先輩は時折、そんな顔をしていた気がする。
　そっか。そのたびに、俺のことを好きになってって、言いたかったんだ。俺がちゃんと受け取っていなかっただけ。
　俺が気づかなかっただけで、カズ先輩はずっと俺のことを好きだった。
　でも、俺も、カズ先輩のことが好きだった。別の意味でだけど、俺はカズ先輩のことが大好きだったんだ。
　いま抱きしめられて、どきどきしてる。ちっとも嫌じゃない。心地よくて、嬉しいんだ。
　昨日、手をつながれたときに、この手が俺をさらに求める日が来ることを予感していた。そう遠くない未来、もっと強く手を握り合うんじゃないかって……。
　ずるいなぁ。世界中でいちばん大好きだなんて、誰一人、親にだって言われたことないよ。
　相手はカズ先輩だよ。このひとに愛の告白をされて喜ばない奴はいないし、付き合ってっていわれて付き合わないはずがないし、このひとに求められたら何でもするって。どんな要望だってぜんぶイエス。

「カズ先輩」
「うん」
「たぶんですけど、俺、ずっと一緒にいます」
「……本当？」

　そんな弱気な声出しちゃって、なんでそんなに自信ないんだろ。俺が男に興味ないからか。
　でもそんなのを跳ね返すぐらいの力を、カズ先輩は持ってる。しかもカズ先輩は、俺のことが、とんでもなく好き。それがわかる。
　なんで気づかなかったんだろう。カズ先輩って、俺のこと、めっちゃ好きじゃん。顔も声も、全身が、叫ぶみたいに訴えてる。
　カズ先輩は俺を振り向かせて、かがんでくる。

「タキくん」
「俺……」
「タキくん」
「カズ先輩」
「タキくん」
「俺も、カズ先輩が……」

　顔が近くて、きれいだなって見惚れながら。同時に目を閉じたら唇が触れた。弾けるみたいに自覚してしまう。
　なんにも、なにひとつ嫌じゃない。
　告白されたときも、付き合うと決めたときも、手をつないでも、寝ているときに抱きしめられても、起きているときに抱きしめられても、こうしてキスをしても。
　男同士なのに大丈夫か？　って思いはある。こういう経験をするなんて想定したことない。
　だけど、好きだから仕方ない。
　性別じゃないんだ。
　近くて親しくて気安くて、一緒にいるのがとても自然で、ほっとする。ずっとそばにいたい、それがカズ先輩ってだけなんだ。