You Could Be Mine 【改訂版】

そのじゅう-たけるにっき

そのじゅう-たける3

仕事は相変わらず気ぃ抜けねえ。

客なんて、水物だから油断してたらすぐ指名変えしやがる。

店ん中でも、派閥みたいなのあるし。

派閥間で裏で客の取り合い。

少しでも隙を見せれば、足元すくわれる。

今てっぺんにいても、明日はどうなるか知れたもんじゃねえ。

俺んとこについてるのは、龍二とユウと秀輝。

アイツら以外のがヘルプについたら、上手い事言って客取ろうとしやがる。 

本音を言えば、龍二以外は信用してない。

けど、俺についてる以上それなりに良い思いはさせとかないと、いつ裏切りやがるかわかんないから。

売上つけてやったり、客まわしてやったりはする。

ギブアンドテイク、ってね。

俺は客に売掛はさせない。

売掛されると、店に借金した事になる。

当然、回収するのは自分。

そんなバカな事するくらいなら、ホストなんてやるかよ。

まあ、俺は売掛されても回収するルートは持ってる。

そんなの、みのりさんには絶対言えねえ話だけど。

俺についてるヤツらの一番のリターンは、そう言う俺のテクを見れるから。

俺の営業教えてやる代わりに、俺を助けろ。

そう言う関係だ。

俺は他人を信用しない。

そうやって、生きてきた。

ずっと、そうやって生きていく。

そう、思ってた。

みのりさんに会うまでは。

龍二は別として、ユウや秀輝は俺になついてんだから。

もう少し、アイツらの事信用してもいいかな。

アイツらの前くらい、少しは気ぃ抜いて喋るくらいしてもいいかな。

たまには、遊びに連れてったりとかしても。

いいかな。

て、ちょっと思う様になった。

みのりさんを好きになって、俺のものになってくれて。

決めた事が二つ、ある。

一つは。

みのりさんを泣かせる様な事はしない。

だけど。

泣かせてしまう。

まあ、俺が怒るからみのりさんが怖がって泣いてしまうんだけどな。

いくらみのりさん相手でも、怒ると地が出てしまう。

みのりさんと付き合って、最初に俺が怒ったのは。

みのりさんが俺にウソついたから。

飲み行ってくる

メッセージはあった。

でも。

男と一緒なのを俺に黙ってたから。

男と二人きりで酒飲むな、って言ってるのに。

コンビニから帰ってきたユウが。

「みのりさんに会いましたよぉ」

とか言ってきて。

話聞いたら、男と一緒だったっつーし。

「友達て言ってましたよぉ」

俺の顔が怖かったのか、ユウもビビってたな。

友達なら、まあ。

黙ってた事を謝れば、許してあげようかな。

そう思ったのに。

女の子と一緒。

って、ウソついたから。

俺の周りじゃ、毎日騙し合い。

そんくらいのウソなんか、ウソのうちに入らない。

けど。

みのりさんが俺にウソついた。

なんか、すげえ、ショックだった。

そんなウソつかれる俺って。みのりさんは俺の事、なんだと思ってんだろ。

どうして。そんなに俺の言う事聞けないんだろ。

いつも。俺が聞かないと。俺が言ってって言わないと。

俺の事、好き、って言わない。

ホントに俺の事好きなのかな。

そこまで考えた。

そしたら、なんか悲しくなった。

騙し合いん中で生きてるくせに。

他人を騙すなんて平気なくせに。

みのりさんの小さなウソは、凄い。

悲しかった。

ホントは、あんな事する気なかったんだけど。

俺の言う事、聞かないとお仕置きだよ。ってわからせとこうと思って。

ちょっと。

苛めてしまった。