101 / 159
そのじゅうよん
そのじゅうよん-7
しおりを挟む
「…天海さん、どうかなさったんですか?」
パーティションで仕切られた打ち合わせ室。
「いや…ちょっと寝不足で」
眼がちょっと腫れぼったい。
「眠れませんでしたか。まあ、確かに。わかります」
いつもより、若干高めトーンな松本氏。
賞の発表当日。
松本氏も少し、緊張気味。
まあ、緊張で眠れんかったワケやないけど。
そう言う事にしとこ。
「とりあえず打ち合わせ、進めましょうか」
松本氏が座り直した。
「このエピソード要らないんじゃないですか?」
「いや、要ります。小さいけど後の展開に必要なエピソードなんです」
「後の展開?ですか?」
「プロットでこういう流れ作ってますけど、ここに至らせるのに必要になるんです」
松本氏との打ち合わせ風景もだいぶ変わった。
あたしは自分の作る物語に自信が持てる様になった。
「それはちょっと違いませんか?」
「ここでは大きく話に絡んでくるわけじゃないんですけど、後半のこの部分の心理描写に絶対必要なんです」
松本氏に言いたい事言う様になった。
松本氏には感謝しかない。
ひよっこのあたしを一から育ててくれて。
大きな賞の候補になるまでにしてくれた。
ホント。松本氏いなかったら。
バタバタと慌てた人の気配。
突然ドアが開いて。
「天海さんっ!いや、天海先生!」
編集長があたしの手をがっしり握った。
なんだ。キモいな。
いつも奥のほうのデスクで仏頂面してるくせに。
「たった今、連絡ありました!」
連絡って。
「やりましたよ!翠廉賞!今年は天海瞬に決まりました!」
編集長があたしの手握ったまま、ぶんぶん振る。
なんだか頭がぼんやりして。
松本氏を見た。
「おめでとうございます!」
初めて見る松本氏の。
すんごい笑顔。
「やりましたね、天海先生」
松本氏があたしの肩叩いて。
先生。
て、言った。
生まれて初めて。
記者会見しちゃったりした。
受賞者の発表直後、まだよくわからんままに会見会場に連れてこられ。
文学賞の会見にしちゃテレビらしきのがえらいこと多いな。
と思ったら。
「桂木さんには受賞の事伝えられたんですか?」
ワイドショーが来てやがった。
まあ、記事も出ちゃったしな。
冬馬くんからは電話あった。
あたしはぼんやりしたままの頭やったけど。
興奮気味の声で。
『すげえな!お前、マジすげえな!』
すげえな連発して。
『俺も負けてらんねえわ!俺もなんか賞とろ!』
冬馬くんらしい。
冬馬くんとなら。活動のジャンルは違うけど。
お互いを刺激しあって。
一緒に歩いていけるかな。
そんな風に思った。
それからはあちこちの取材やインタビューやらで。
ちょっとだけテレビなんかも出ちゃったりした。
執筆依頼がどかんと増えた。
「受けるのは先生ですけど、自分のペースを崩さない様によく考えて」
松本氏に言われた。
あたしも多少。書くのは早くなった。
作家としての自覚も持てる様になった。
小説家、として。
あたしの道。
パーティションで仕切られた打ち合わせ室。
「いや…ちょっと寝不足で」
眼がちょっと腫れぼったい。
「眠れませんでしたか。まあ、確かに。わかります」
いつもより、若干高めトーンな松本氏。
賞の発表当日。
松本氏も少し、緊張気味。
まあ、緊張で眠れんかったワケやないけど。
そう言う事にしとこ。
「とりあえず打ち合わせ、進めましょうか」
松本氏が座り直した。
「このエピソード要らないんじゃないですか?」
「いや、要ります。小さいけど後の展開に必要なエピソードなんです」
「後の展開?ですか?」
「プロットでこういう流れ作ってますけど、ここに至らせるのに必要になるんです」
松本氏との打ち合わせ風景もだいぶ変わった。
あたしは自分の作る物語に自信が持てる様になった。
「それはちょっと違いませんか?」
「ここでは大きく話に絡んでくるわけじゃないんですけど、後半のこの部分の心理描写に絶対必要なんです」
松本氏に言いたい事言う様になった。
松本氏には感謝しかない。
ひよっこのあたしを一から育ててくれて。
大きな賞の候補になるまでにしてくれた。
ホント。松本氏いなかったら。
バタバタと慌てた人の気配。
突然ドアが開いて。
「天海さんっ!いや、天海先生!」
編集長があたしの手をがっしり握った。
なんだ。キモいな。
いつも奥のほうのデスクで仏頂面してるくせに。
「たった今、連絡ありました!」
連絡って。
「やりましたよ!翠廉賞!今年は天海瞬に決まりました!」
編集長があたしの手握ったまま、ぶんぶん振る。
なんだか頭がぼんやりして。
松本氏を見た。
「おめでとうございます!」
初めて見る松本氏の。
すんごい笑顔。
「やりましたね、天海先生」
松本氏があたしの肩叩いて。
先生。
て、言った。
生まれて初めて。
記者会見しちゃったりした。
受賞者の発表直後、まだよくわからんままに会見会場に連れてこられ。
文学賞の会見にしちゃテレビらしきのがえらいこと多いな。
と思ったら。
「桂木さんには受賞の事伝えられたんですか?」
ワイドショーが来てやがった。
まあ、記事も出ちゃったしな。
冬馬くんからは電話あった。
あたしはぼんやりしたままの頭やったけど。
興奮気味の声で。
『すげえな!お前、マジすげえな!』
すげえな連発して。
『俺も負けてらんねえわ!俺もなんか賞とろ!』
冬馬くんらしい。
冬馬くんとなら。活動のジャンルは違うけど。
お互いを刺激しあって。
一緒に歩いていけるかな。
そんな風に思った。
それからはあちこちの取材やインタビューやらで。
ちょっとだけテレビなんかも出ちゃったりした。
執筆依頼がどかんと増えた。
「受けるのは先生ですけど、自分のペースを崩さない様によく考えて」
松本氏に言われた。
あたしも多少。書くのは早くなった。
作家としての自覚も持てる様になった。
小説家、として。
あたしの道。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
25
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる