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しおりを挟む同伴の客とメシ食って。
メシ代も客が出してくれる。
店入って。
今日の同伴の客はOL。
来店の頻度は月二くれえ。
金遣いは派手じゃねえ。
こう言う客には無理に金遣わせねえ。
金離れの良い客は誰だって好きだ。
俺だって派手に遊ぶ客には金遣わせる様にもってく。
けどそう言う客ばっかじゃねえし。
無理させないのもやり方のうち。
地味な客でも大事にしろ。そこら辺が出来るかどうかで違ってくんだよ。
って。尊さんに教わった。
客の遊ばせ方ってもんがあんだよ。
それも尊さん。
無理に金遣わせたら客は潰れる。
一度掴んだ客をどんだけ長生きさせっかが大事。
売掛はさせねえ。させても回収が堅い客だけ。
そう言うのも全部。
尊さんに教わった。
尊さんが辞める時、俺も客つけてもらったけど。
尊さんの客って。良く教育されてんだよな。
ホント。あの人はすげえ。
今はすっかり会社員なっちまったけどな。
お母さんの会社とは言え。あの人の性格からして、自分の力でてっぺん取らねえと気が済まねえだろうな。
俺はてっぺん取ろうとかってのはそんな思ってねえけど。
売上で自分の実力があらわれるってとこは、そんな悪くねえ仕事だと思ってる。
営業のうちだからアフターも付き合う。
だから帰りは毎日朝。
「やっぱまだ朝方は寒いなあ」
ユウがコート着ながら言った。
石倉はもう仕事終わったかな。
アイツもアフターくれえやってるだろうしな。
「俺終わったけど。お前どこにいんの」
電話したら。
『兵藤くん家の前』
「……は?」
なんで家の前で待ってんだ。
やっぱバカだ。
コイツ。
少し急ぎ足でうちのマンションまで帰ってきたら。
俺ん家の前。
体操座りの石倉。
「おかえりい」
「どっかで待ってろつったろ。他人が見たら恥ずかしい」
鍵開けて石倉入れてやる。
「だってさあ、お店とか入ったらお金かかるし。もったいないよ」
またそれかよ。
「あー、寒かったあ」
両腕抱えてぶるっと震える。
「仕事何時に終わったんだよ」
エアコンのスイッチ押す。
「ん、二時ちょっと過ぎ」
「は?それからずっと家の前いたのか?」
「うん」
バカだ。やっぱ。
顔が赤い。
「飲んでんのか」
「うーん…あんまり」
まだ震えてやがる。
「石倉」
「うん?」
違えな。俺見て赤くなるんじゃなくて。
「兵藤くん?」
ほっぺた触ったら熱い。
昼間も具合悪いつってたな。
俺は自惚れてたワケか。
「お前、熱あんぞ」
「そうかなあ。寒いけど」
ヘラヘラすんな。バカ。
「病院行ってこい」
「いや…いい」
「保険証ねえのか?」
「あるけどお金かかるし。寝てたら治るよ」
両手グー。
「金のどうこうじゃねえんだよ。俺にうつす気か!?うつったら俺が仕事出来なくなるだろうが!」
「やっ、ごめんなさい!今お金無くてっ!」
ったく。ため息出る。
この時間ならまだ緊急外来か。
「ほら、行くぞ」
「どこに?」
「病院に決まってんだろ」
「でもお金…」
ホント。マジ面倒くせえ女。
「貸してやる。給料出たら返せ」
タクシーで病院行って。
インフルじゃなくてほっとした。
「…ごめんね兵藤くん」
クマの布団掛けてやった。
「ありがとう…ごめんね」
泣きそうな顔すんな。
バカ。
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