52 / 86
06
9
しおりを挟む昼間の太陽なんて久し振りだ。
さすがに電車やら乗る気にはなんねえから、タクシー拾った。
日曜の遊園地はガキばっか。
煩くてしょうがねえ。
遊園地なんかガキの頃以来来てねえし。
だいたい昼間っから外出る事自体久し振りだし。
「ねえ!次あれ乗ろうよ!」
はしゃぐんじゃねえよ。
さっきから。
絶叫系ばっかじゃねえか。
「疲れたの?もしかして…絶叫系ダメ?」
笑うな。
「いでっ!止めてっ!」
「誰が苦手つった」
「いやっ!言ってないですっ!ごめんなさいっ」
「ほら、行くぞ」
手繋いだら真っ赤になる。
考えてみたら手繋いだ事なんかなかった。
けど今更。こんな事で。
俺までなんか変な気分なってくる。
なんとなく変な気分のまま、手繋いで歩いた。
「いっぱい作ったから、いっぱい食べてね!」
俺はそんな食えねえっていつも言ってんのに。
朝早く起きて作ってたから。
食えるだけ食った。絶叫系はもう乗れねえぞ。
「観覧車乗ろうよ!」
観覧車なんか乗ってる間ぼーっとしてるだけで、面白くもねえのに。
ゴンドラの中で。
「お前そっち座れ」
「え?」
「一緒座ったら重心が傾く」
向かい合わせで。下の景色眺める。
つまんねえ。
「昔、よくお兄ちゃんと観覧車乗ったなあ」
お前のバカ兄貴なんかどうでもいい。
兄貴の事思い出してんのか、その顔が寂しそうだから。
「やっぱお前こっち来い」
隣に座らせて。
キスしながら。兄貴つっても。
俺といる時に他の男思い出してんじゃねえよ。
って。
俺にも独占欲なんてもんがあるって事に。
気が付いて。
ちょっと笑えた。
昔、唯一付き合ったって言えるのかわかんねえが。
中学ん時、同級生の女でソイツもヤンキーだった。
女の方から付き合ってくれ、って言われて。
まあ、ありがちだよな。
ヤンキー同士とかな。
付き合ってみたのは良いが。
俺にはソイツを好きだとかは別に無かった気がする。
ソイツといるより、俺は自分の時間の方が大事だったし。
ただ単に特定の女。
そのくれえの感情。
けど、向こうは俺が他の女としゃべるくれえで怒るし。
友達とつるんでる時にも割り込んで来やがるし。
自分の事を俺が好きじゃねえ、とか言って泣きやがるし。
なんかそんなんが鬱陶しくて止めた。
だから女は面倒なもんでしかねえ。
そう思ってた。
「もう帰るぞ」
「うんっ」
陽の暮れかけた空。
二人で手繋いで。
「楽しかった!ありがとう!」
そう言って笑う。
「…良かったな」
またどっか連れてってやろうとか。
そんな風に思ってしまって。
大事なもんって。
こう言うもんなのか。
初めて思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる