75 / 86
09
2
しおりを挟む俺が家に帰る頃が莉緒の起きる時間。
おはよう。お疲れ様。
寝る。
そんなやり取りのメール。
俺もな、別に。
自分の女だからそんなもんで良いだろ。
とか思ってるワケじゃねえんだがな。
ホントはもっと色々書いてやりゃあ喜ぶのわかってんだが。
それをしねえのが自分の性格なんだよな。
莉緒が三回メールして来て一回返信。
まあ、送ってくる内容にもよるが。
「ダメっすよお!なんでもないさりげないやり取りに気持ち込めなきゃ。返事無いと待ってる方はツラいんすよ」
とかユウが言ってた。
俺は客以外にはマメじゃねえ。
電話は毎日、家出る前にしてる。
「メール、あんま返さねえけど。お前寂しいか?」
面倒くせえから本人に聞いた。
『ん?んー…でもあたしのメールとかどうでも良い事しか書いてないしなあ…いちいち返事するほどの事じゃないの自分でわかってるし』
そうか。
『龍二の性格でマメに返事されたら恐縮するよ』
て、笑うなよ。
『返事は嬉しいけど…気を遣われて返事いっぱいされたら逆に気軽にメール出来なくなるから止めて』
笑う声が可愛いな、お前。
俺はずっとお前の事バカだと思って。
今でも思うけど。
そうやって俺の事理解して好きになってくれてんだよな。
そんなお前だから。
一緒にいてえな。
思わせてくれる。
お前って案外、良い女かもな。
「うーん…」
日曜日。
俺ん家で求人誌睨み付ける莉緒。
土曜の夜に家来て俺が仕事行ってる間寝て。
俺が帰る頃起きて待ってる。
鍵開ける音で気付くのか、玄関で待ってて。
お前は犬か。
「おかえり!」
一週間ぶりに笑う顔。
つい手が伸びて抱き締めてしまう。
で、さっきからなに唸ってんだ。
「仕事見つからねえか」
「うーん…なかなか無いんだよねえ」
別に昼間の仕事で良いだろ。
今は一緒住んでねえし、週末しか会わねえんだし。
俺に合わせる必要はねえ。
「あ、昼間の仕事だよ」
「ならバイトじゃ無くてちゃんと就職しろよ」
兄貴があんななんだから、妹のお前はまっとうに生きろ。
普通に会社員して。
なんか想像出来ねえが。OLのお前が。
まあ、探せば仕事はあるだろ。なんでそんな唸ってんだよ。
まさか、クリエイターだとか到底出来そうにねえ様な仕事したいとかじゃねえよな。
「お前なんの仕事探してんだ」
「ん?仕事て言うか、休みの条件がね」
なんだそれ。普通土日とかだろ。
「えっと、日曜と…月曜が休み、良いかな…と」
「なんで」
「日曜はもちろん休みが良いんだけど…月曜休みだったら一緒にいれる時間が長くなるから…」
赤い顔で上目遣いすんな、バカ。
そこまでして俺といたいとか。
「やっぱバカだな。お前」
「なっ、なんでっ!?」
「ちゃんと就職すんなら俺の事とかじゃなくて自分の事考えろよ」
もしかして俺と別れたら後悔するかも知れねえだろ。
別れるとか。
なったりしたら俺は。どうなるんだろうな。
「あたしにとっては龍二といられるのが一番大事なのっ!」
「…バカが」
どうなるとかは考えたくねえな。
俺は今のこの時間が。
大事に思えるから。
0
あなたにおすすめの小説
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
こじらせ女子の恋愛事情
あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26)
そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26)
いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。
なんて自らまたこじらせる残念な私。
「俺はずっと好きだけど?」
「仁科の返事を待ってるんだよね」
宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。
これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。
*******************
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
鬼隊長は元お隣女子には敵わない~猪はひよこを愛でる~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「ひなちゃん。
俺と結婚、しよ?」
兄の結婚式で昔、お隣に住んでいた憧れのお兄ちゃん・猪狩に再会した雛乃。
昔話をしているうちに結婚を迫られ、冗談だと思ったものの。
それから猪狩の猛追撃が!?
相変わらず格好いい猪狩に次第に惹かれていく雛乃。
でも、彼のとある事情で結婚には踏み切れない。
そんな折り、雛乃の勤めている銀行で事件が……。
愛川雛乃 あいかわひなの 26
ごく普通の地方銀行員
某着せ替え人形のような見た目で可愛い
おかげで女性からは恨みを買いがちなのが悩み
真面目で努力家なのに、
なぜかよくない噂を立てられる苦労人
×
岡藤猪狩 おかふじいかり 36
警察官でSIT所属のエリート
泣く子も黙る突入部隊の鬼隊長
でも、雛乃には……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる