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第2章 2-4
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第2章 2-4
殲撃三課、来襲──夜空を裂く“選択の刃”
夜の荒野を、凶悪なエンジン音が切り裂いた。
装甲車の後方から迫る赤いライト。
砂煙を巻き上げながら、軍用バイクとホバー機が編隊を組む。
“殲撃三課”。
国家側の中でも、最も殺害成功率の高い殲滅部隊。
その目的はただひとつ――
「第七因子の抹消」。
「クソッ……本気で俺を殺しにきてんじゃねえか……!」
ユウは歯を食いしばりながら窓の外を見た。
ユリアがユウの腕を掴む。
「ユウ、伏せて! 窓から頭を出さないで!」
次の瞬間――
装甲車の外壁が“バンッ!”と弾けた。
「なっ……!」
「スナイパーだ。
殲撃三課……やはり容赦がないな」
レイブンが低く言う。
◆
装甲車はジグザグに進路を変えながら逃走を続ける。
だが、敵はすぐ背後に迫っていた。
「レイブン、このままだと……!」
「わかっている」
レイブンは運転しながら、車内の壁のロックを解除した。
強化された黒いケースが開く。
「ユリア、君はこれを」
「……っ!」
そこには小型の“結界投射器”。
ユリア専用の、魔力増幅器だ。
「ありがとう……でも、これだけじゃ……」
「十分だ。君は“彼を守ること”に集中しろ」
ユリアは唇を噛み、こくりと頷いた。
◆
一方、ユウは自分の胸に手を当てていた。
(体が……勝手に熱くなる。
さっきから……心臓が痛い……)
脈の奥で、何かが蠢く感覚。
第七因子が暴れようとしているのか、あるいは――
《願いを確認。
対象を守る意志を再計測中……》
(まただ……! この声……!)
《再確認。
“ユリアを守る”という意志は変動なし》
(……あたりまえだろ!
俺は、ユリアを……絶対守る!)
《意志、受理。
出力ルートを切り替える》
(え……?)
《暴走ではなく、制御優先へ。
あなたは“選んだ”》
胸の奥で“ドクンッ”と脈が跳ねた。
◆
その瞬間――
装甲車が急停止した。
「レイブン!? 何してんだ、止まったら──!」
「……来るぞ」
レイブンは冷静だった。
まるで、この瞬間を“待っていた”かのように。
夜の砂漠の闇の中から……
ひときわ大きなホバー装甲車が姿を現した。
殲撃三課の“重装ユニット”。
その周囲を、六台のバイクが円を描くように包囲してくる。
「……囲まれた……!」
ユリアが息を飲む。
バイク隊の一人がヘルメットのバイザーを上げ、冷酷に告げた。
「自治圏の介入者レイブン、および第七因子対象ユウ。
そして補助因子ユリア。
三名を確認」
引き金に指をかけながら、男は無感情に告げた。
「国家命令に基づき、抹消する」
「ふざけんな……!」
ユウが立ち上がると同時に、頭の奥が強く疼く。
《危険接近。
防御反応を推奨》
(今、暴走したら……また全部壊してしまう。
でも……!)
ユウは拳を握りしめる。
(今の俺なら……制御できる!
守りたいって願った力なら……!)
◆
レイブンがユウの肩に手を置いた。
「ユウ。
君はまだ戦ってはいけない」
「な、なんでだよ……!」
「君の因子は、まだ“安定段階”に入っていない。
今使えば、どんな副作用が出るかわからない」
「でも……このままじゃ……!」
「安心しろ。
“影部隊”が来る」
「影部隊……?」
その言葉を合図にしたかのように――
夜空を切り裂く閃光。
「……ッ!?」
ユウもユリアも目を見開いた。
殲撃三課を囲むように、黒い影が次々と地面に着地する。
全員がマントで顔を覆い、光学迷彩が揺らめく。
「お待たせしました、レイブン隊員」
「よく来た、“影部隊”。」
殲撃三課の男たちが一斉に警戒態勢を取る。
「自治圏の……影部隊だと……!?」
「なんでこんな戦力が……!」
影部隊の隊長格がレイブンに声をかける。
「第七因子の移送、継続可能です。
殲撃三課は我々が引き受けましょう」
レイブンは頷き、ユウに振り向く。
「さあ、行くぞ。三人とも車に戻れ」
「えっ……でも……!」
「ここで戦えば、敵はユウ君を優先して狙う。
それでは影部隊の負担が不必要に増す。
君たちは生き残ることを優先しろ」
ユリアがユウの手を掴み、強く引いた。
「ユウ、行こう!
今は……生きることが最優先よ!」
ユウの手は震えていた。
(逃げる……
また逃げるんだ……
俺は……弱い……)
だが――
ユリアの手の温もりが、ユウの心を支えてくれる。
「強さってね……
“戦うことだけ”じゃないのよ」
「……ユリア……?」
「私は、あなたが“誰かを守りたい”って言った時……
一番強いと思ったの」
ユウは息を飲む。
(俺は……
守りたいって気持ちで戦った。
その気持ちは……弱くなんかない……)
ユリアの言葉が、胸の奥に染みていく。
「だから行こう。
今は二人で……守り合うの」
「……わかった」
ユウは頷き、車に乗り込む。
◆
レイブンが最後に影部隊へ目配せし、装甲車に乗り込む。
「各員、後退開始!」
エンジンが唸り、車体が急発進する。
その背後――
影部隊と殲撃三課が激突した。
閃光。
爆音。
砂塵が舞い、兵器が火花を散らす。
荒野に、戦場が広がっていく。
◆
車内。
ユリアはまだユウの手を握ったままだった。
「ユウ……大丈夫?」
「……ユリアがいるから、大丈夫」
レイブンが運転席越しに言う。
「この先は自治圏の安全地帯だ。
君たちはしばらく保護される」
「……保護、か」
「だが覚えておけ。
国家は諦めない。
君を“脅威”だと判断した以上、必ず追ってくる」
ユウは拳を握った。
「……俺は逃げない。
ユリアと一緒に、生きてみせる」
ユリアの頬が赤く染まる。
「ユウ……!」
その時、レイブンが初めて“柔らかい声”を出した。
「……それでいい」
◆
車の天井が微かに震え、遠くから爆発音が響く。
殲撃三課と影部隊の戦闘はまだ続いている。
だが、ユウ達はその戦場から離れていく。
荒野の地平線が遠ざかり――
ユウの胸の奥で、別の何かが静かに目を覚まそうとしていた。
《第七因子。
あなたの“意志”を確認……再構築完了》
(再構築……?)
《第七因子の新システムが確立されました。
あなたはもう“暴走の器”ではありません》
(じゃあ俺は……どうなる?)
《――あなたは、“選ぶ者”になる》
(選ぶ……?)
《そう。
破壊するか、救うか。
憎むか、愛するか。
戦うか、守るか。
あなたは全てを“自分の意志で選ぶ者”》
ユウは震えた指で、ユリアの手をそっと握り返す。
(俺は……守る。
絶対に……守る。
それが俺の――)
《意志、確定。
第七因子、安定モードへ移行》
ユウは目を閉じた。
荒野の風が止んでいく。
やがて装甲車は暗闇を抜け、
自治圏の灯りへと向かって走り続けた。
殲撃三課、来襲──夜空を裂く“選択の刃”
夜の荒野を、凶悪なエンジン音が切り裂いた。
装甲車の後方から迫る赤いライト。
砂煙を巻き上げながら、軍用バイクとホバー機が編隊を組む。
“殲撃三課”。
国家側の中でも、最も殺害成功率の高い殲滅部隊。
その目的はただひとつ――
「第七因子の抹消」。
「クソッ……本気で俺を殺しにきてんじゃねえか……!」
ユウは歯を食いしばりながら窓の外を見た。
ユリアがユウの腕を掴む。
「ユウ、伏せて! 窓から頭を出さないで!」
次の瞬間――
装甲車の外壁が“バンッ!”と弾けた。
「なっ……!」
「スナイパーだ。
殲撃三課……やはり容赦がないな」
レイブンが低く言う。
◆
装甲車はジグザグに進路を変えながら逃走を続ける。
だが、敵はすぐ背後に迫っていた。
「レイブン、このままだと……!」
「わかっている」
レイブンは運転しながら、車内の壁のロックを解除した。
強化された黒いケースが開く。
「ユリア、君はこれを」
「……っ!」
そこには小型の“結界投射器”。
ユリア専用の、魔力増幅器だ。
「ありがとう……でも、これだけじゃ……」
「十分だ。君は“彼を守ること”に集中しろ」
ユリアは唇を噛み、こくりと頷いた。
◆
一方、ユウは自分の胸に手を当てていた。
(体が……勝手に熱くなる。
さっきから……心臓が痛い……)
脈の奥で、何かが蠢く感覚。
第七因子が暴れようとしているのか、あるいは――
《願いを確認。
対象を守る意志を再計測中……》
(まただ……! この声……!)
《再確認。
“ユリアを守る”という意志は変動なし》
(……あたりまえだろ!
俺は、ユリアを……絶対守る!)
《意志、受理。
出力ルートを切り替える》
(え……?)
《暴走ではなく、制御優先へ。
あなたは“選んだ”》
胸の奥で“ドクンッ”と脈が跳ねた。
◆
その瞬間――
装甲車が急停止した。
「レイブン!? 何してんだ、止まったら──!」
「……来るぞ」
レイブンは冷静だった。
まるで、この瞬間を“待っていた”かのように。
夜の砂漠の闇の中から……
ひときわ大きなホバー装甲車が姿を現した。
殲撃三課の“重装ユニット”。
その周囲を、六台のバイクが円を描くように包囲してくる。
「……囲まれた……!」
ユリアが息を飲む。
バイク隊の一人がヘルメットのバイザーを上げ、冷酷に告げた。
「自治圏の介入者レイブン、および第七因子対象ユウ。
そして補助因子ユリア。
三名を確認」
引き金に指をかけながら、男は無感情に告げた。
「国家命令に基づき、抹消する」
「ふざけんな……!」
ユウが立ち上がると同時に、頭の奥が強く疼く。
《危険接近。
防御反応を推奨》
(今、暴走したら……また全部壊してしまう。
でも……!)
ユウは拳を握りしめる。
(今の俺なら……制御できる!
守りたいって願った力なら……!)
◆
レイブンがユウの肩に手を置いた。
「ユウ。
君はまだ戦ってはいけない」
「な、なんでだよ……!」
「君の因子は、まだ“安定段階”に入っていない。
今使えば、どんな副作用が出るかわからない」
「でも……このままじゃ……!」
「安心しろ。
“影部隊”が来る」
「影部隊……?」
その言葉を合図にしたかのように――
夜空を切り裂く閃光。
「……ッ!?」
ユウもユリアも目を見開いた。
殲撃三課を囲むように、黒い影が次々と地面に着地する。
全員がマントで顔を覆い、光学迷彩が揺らめく。
「お待たせしました、レイブン隊員」
「よく来た、“影部隊”。」
殲撃三課の男たちが一斉に警戒態勢を取る。
「自治圏の……影部隊だと……!?」
「なんでこんな戦力が……!」
影部隊の隊長格がレイブンに声をかける。
「第七因子の移送、継続可能です。
殲撃三課は我々が引き受けましょう」
レイブンは頷き、ユウに振り向く。
「さあ、行くぞ。三人とも車に戻れ」
「えっ……でも……!」
「ここで戦えば、敵はユウ君を優先して狙う。
それでは影部隊の負担が不必要に増す。
君たちは生き残ることを優先しろ」
ユリアがユウの手を掴み、強く引いた。
「ユウ、行こう!
今は……生きることが最優先よ!」
ユウの手は震えていた。
(逃げる……
また逃げるんだ……
俺は……弱い……)
だが――
ユリアの手の温もりが、ユウの心を支えてくれる。
「強さってね……
“戦うことだけ”じゃないのよ」
「……ユリア……?」
「私は、あなたが“誰かを守りたい”って言った時……
一番強いと思ったの」
ユウは息を飲む。
(俺は……
守りたいって気持ちで戦った。
その気持ちは……弱くなんかない……)
ユリアの言葉が、胸の奥に染みていく。
「だから行こう。
今は二人で……守り合うの」
「……わかった」
ユウは頷き、車に乗り込む。
◆
レイブンが最後に影部隊へ目配せし、装甲車に乗り込む。
「各員、後退開始!」
エンジンが唸り、車体が急発進する。
その背後――
影部隊と殲撃三課が激突した。
閃光。
爆音。
砂塵が舞い、兵器が火花を散らす。
荒野に、戦場が広がっていく。
◆
車内。
ユリアはまだユウの手を握ったままだった。
「ユウ……大丈夫?」
「……ユリアがいるから、大丈夫」
レイブンが運転席越しに言う。
「この先は自治圏の安全地帯だ。
君たちはしばらく保護される」
「……保護、か」
「だが覚えておけ。
国家は諦めない。
君を“脅威”だと判断した以上、必ず追ってくる」
ユウは拳を握った。
「……俺は逃げない。
ユリアと一緒に、生きてみせる」
ユリアの頬が赤く染まる。
「ユウ……!」
その時、レイブンが初めて“柔らかい声”を出した。
「……それでいい」
◆
車の天井が微かに震え、遠くから爆発音が響く。
殲撃三課と影部隊の戦闘はまだ続いている。
だが、ユウ達はその戦場から離れていく。
荒野の地平線が遠ざかり――
ユウの胸の奥で、別の何かが静かに目を覚まそうとしていた。
《第七因子。
あなたの“意志”を確認……再構築完了》
(再構築……?)
《第七因子の新システムが確立されました。
あなたはもう“暴走の器”ではありません》
(じゃあ俺は……どうなる?)
《――あなたは、“選ぶ者”になる》
(選ぶ……?)
《そう。
破壊するか、救うか。
憎むか、愛するか。
戦うか、守るか。
あなたは全てを“自分の意志で選ぶ者”》
ユウは震えた指で、ユリアの手をそっと握り返す。
(俺は……守る。
絶対に……守る。
それが俺の――)
《意志、確定。
第七因子、安定モードへ移行》
ユウは目を閉じた。
荒野の風が止んでいく。
やがて装甲車は暗闇を抜け、
自治圏の灯りへと向かって走り続けた。
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