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第3章 3-1
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第3章 3-1
自治圏への到達──“隠された街”で始まる新生活
ガタガタ……ゴウン……。
装甲車が砂利道から舗装路へ乗り換えた音で、ユウは目を覚ました。
「……ん……ここ……どこ……?」
薄く目を開けると、外の景色が変わっていた。
乱暴にむき出しの荒野ではなく、
整備された街路灯が並び、
巨大な壁に囲まれた“街”の入口が近づいている。
「ユウ、起きた?」
隣でユリアが微笑んでいた。
その笑顔だけで、ユウの胸の緊張がふっと軽くなる。
「あ、うん……。ここが、自治圏……?」
「ええ。外からは絶対に見えないように、結界が張られてるの。
普通は軍関係者と許可済みの住民以外は入れないわ」
「結界ってことは……魔術技術の街なのか?」
「魔術と科学の混合ね。
“外”の世界よりも、はるかに技術水準が高いわ」
レイブンが前方から補足する。
「自治圏は、国家にも公開されていない独立自治区域だ。
反国家勢力ではないが、国家の支配からは自由な“第三の都市”。
そこが君たちの新しい居場所だ」
「居場所……」
(本当に……そんな場所があったんだ……)
胸がわずかに熱くなる。
◆
巨大な壁が迫る。
高さ30メートルはあるだろうか。
軍用の素材に近い金属で構成され、表面には複雑な魔術刻印が光っている。
ユウの口から感嘆が漏れた。
「これ……マジで街を守るための武装だよな……」
「ええ。
国家にもし攻められたら、ここは戦場になるから」
ユリアは言葉を濁すことなく続けた。
「……でも、そのときは大丈夫。
この街には国家を相手にできる戦力がある。
あなたの“居場所”を守れるだけの力が」
ユウを真っ直ぐ見つめるユリアの瞳は、
優しさと強さ、どちらも宿しているように見えた。
(守られてる……
こんなに……誰かに守られてるって感じたの、初めてだ……)
◆
装甲車は巨大な門の前で停車する。
門上の監視塔から、鋭い声が響いた。
『コードを確認する。識別データを送れ』
レイブンが端末を操作し、認証データを送信する。
数秒の静寂。
『確認した。“優先ルート”を開放する』
ゴゴゴゴ……!
壁の中央部が左右に割れ、
まるで海が割れるように巨大な通路が開いた。
ユウは言葉を失う。
「……うそだろ……」
「これが自治圏。
“隠された街”へようこそ」
ユリアは微笑み、そっとユウの手を握る。
ユウは驚いたが、握り返す勇気はなく……
ただほんのり温もりを感じていた。
◆
通路を抜けると、そこはまったく別世界だった。
宙に浮くトラム。
建物の壁を光が走り、ホログラム広告が立体的に浮かび上がる。
歩道の人々は皆、最新式の装衣や魔力補助の装備を身につけている。
「……なんだよ、ここ……未来都市じゃん……!」
「もちろんよ。
国家より100年以上進んだ技術もあるわ」
「そんな場所に……俺が住むのか……?」
「住めるのよ。
あなたは“保護対象”であり、同時に……“価値ある存在”だから」
ユウは赤面する。
(なんだよ、価値ある存在って……
今まで、俺なんていない方がいいって扱いだったのに……)
◆
車は中心街を抜け、静かな住宅区に入る。
高級マンションのように整えられた建物が並ぶが、
監視カメラがほとんど見当たらない。
代わりに魔法陣のような紋様が歩道に刻まれている。
「あれ……魔術の警戒システムよ。
結界の一種で、住民のプライバシーは守るけど、
危険だけは感知できるようになってるの」
「すげぇ……なんか、安心する……」
「でしょ?
あなたを守るために、ここまでの技術があるのよ」
「……ユリア、ありがとう」
「どういたしまして」
(なんだよその笑顔……反則だろ……)
◆
やがて、車は白い大きな建物の前で停車した。
「ここが……?」
「君たちの居住施設だ」
レイブンが降車し、振り返る。
「第七因子の安定まで、君たちはここで暮らす。
危険区域でも、彼女ユリアが常に側にいる」
「え……ユリアも?」
「当然よ。
私はあなたの補助因子なんだから」
ユリアは少し照れたように微笑む。
「補助因子って……そんな、危ない役割じゃ……」
「危ないとかじゃないの。
私は……あなたのそばにいたいのよ」
ユウの胸が跳ねた。
「そ、そうなんだ……」
(ちょっと待ってくれ……
ユリアと一緒に暮らすとか……
そんな状況、俺の心臓がもたない……!)
◆
建物に入ると、中はホテルのように豪華で、
無機質さよりも温かさを感じた。
案内された部屋は二人用で、
大きなリビング、システムキッチン、
そして寝室は……二つ。
「安心して。
ちゃんと別々の部屋があるから」
「そ、そっか……よかった……いやよくはないけど……」
「ん? 何か言った?」
「な、なんでもない!」
(何言ってんだ俺!?)
◆
レイブンは扉の前に立ち、最後の説明をする。
「明日から本格的な“能力測定”が始まる。
君の因子は世界の均衡に関わる。
だからこそ、安全に使いこなせるように訓練する必要がある」
「訓練……」
「安心しろ。
ユリアがついている限り、君は暴走しない」
ユウは深く息を吸い、力強く頷いた。
「……やります。
逃げない。
ユリアと……この街を守りたい」
「ユウ……」
ユリアが小さくこちらを見る。
その瞳は嬉しさと不安、両方が混ざったようだった。
「では、私は行く。
ゆっくり休め」
レイブンは静かに去っていった。
◆
ユリアは二つの寝室の扉を見比べて、いたずらっぽく笑った。
「どっちがいい?」
「え、あ……えっと……」
「ユウはこっちね」
ユリアは右側の部屋を指差し、ユウの手を取った。
「……?」
「すぐ隣が私の部屋だから。
夜中に不安になっても……すぐ声が届くでしょ?」
「……っ」
(不安になったら声をかけていい……?
そんな優しさ、ずるい……)
「ありがとう、ユリア」
ユリアはそっと微笑む。
「ユウ。
初めての場所って怖いでしょ?
だからね……」
彼女はユウの頭にそっと手を置いた。
「“一緒にいるから大丈夫”って、言ってあげる」
ユウは胸が苦しくなった。
(なんだよ……
俺なんかに……なんで……)
ユリアは手を離すと、小さく頭を下げた。
「それじゃあ、今日は休みましょう。
おやすみ、ユウ」
「……おやすみ、ユリア」
扉が閉まる音がしても、
ユウの胸はしばらく熱さを失わなかった。
(守りたい……
こんなに優しい人を……
絶対に守りたい……)
ユウは拳を握り、静かに目を閉じた。
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自治圏への到達──“隠された街”で始まる新生活
ガタガタ……ゴウン……。
装甲車が砂利道から舗装路へ乗り換えた音で、ユウは目を覚ました。
「……ん……ここ……どこ……?」
薄く目を開けると、外の景色が変わっていた。
乱暴にむき出しの荒野ではなく、
整備された街路灯が並び、
巨大な壁に囲まれた“街”の入口が近づいている。
「ユウ、起きた?」
隣でユリアが微笑んでいた。
その笑顔だけで、ユウの胸の緊張がふっと軽くなる。
「あ、うん……。ここが、自治圏……?」
「ええ。外からは絶対に見えないように、結界が張られてるの。
普通は軍関係者と許可済みの住民以外は入れないわ」
「結界ってことは……魔術技術の街なのか?」
「魔術と科学の混合ね。
“外”の世界よりも、はるかに技術水準が高いわ」
レイブンが前方から補足する。
「自治圏は、国家にも公開されていない独立自治区域だ。
反国家勢力ではないが、国家の支配からは自由な“第三の都市”。
そこが君たちの新しい居場所だ」
「居場所……」
(本当に……そんな場所があったんだ……)
胸がわずかに熱くなる。
◆
巨大な壁が迫る。
高さ30メートルはあるだろうか。
軍用の素材に近い金属で構成され、表面には複雑な魔術刻印が光っている。
ユウの口から感嘆が漏れた。
「これ……マジで街を守るための武装だよな……」
「ええ。
国家にもし攻められたら、ここは戦場になるから」
ユリアは言葉を濁すことなく続けた。
「……でも、そのときは大丈夫。
この街には国家を相手にできる戦力がある。
あなたの“居場所”を守れるだけの力が」
ユウを真っ直ぐ見つめるユリアの瞳は、
優しさと強さ、どちらも宿しているように見えた。
(守られてる……
こんなに……誰かに守られてるって感じたの、初めてだ……)
◆
装甲車は巨大な門の前で停車する。
門上の監視塔から、鋭い声が響いた。
『コードを確認する。識別データを送れ』
レイブンが端末を操作し、認証データを送信する。
数秒の静寂。
『確認した。“優先ルート”を開放する』
ゴゴゴゴ……!
壁の中央部が左右に割れ、
まるで海が割れるように巨大な通路が開いた。
ユウは言葉を失う。
「……うそだろ……」
「これが自治圏。
“隠された街”へようこそ」
ユリアは微笑み、そっとユウの手を握る。
ユウは驚いたが、握り返す勇気はなく……
ただほんのり温もりを感じていた。
◆
通路を抜けると、そこはまったく別世界だった。
宙に浮くトラム。
建物の壁を光が走り、ホログラム広告が立体的に浮かび上がる。
歩道の人々は皆、最新式の装衣や魔力補助の装備を身につけている。
「……なんだよ、ここ……未来都市じゃん……!」
「もちろんよ。
国家より100年以上進んだ技術もあるわ」
「そんな場所に……俺が住むのか……?」
「住めるのよ。
あなたは“保護対象”であり、同時に……“価値ある存在”だから」
ユウは赤面する。
(なんだよ、価値ある存在って……
今まで、俺なんていない方がいいって扱いだったのに……)
◆
車は中心街を抜け、静かな住宅区に入る。
高級マンションのように整えられた建物が並ぶが、
監視カメラがほとんど見当たらない。
代わりに魔法陣のような紋様が歩道に刻まれている。
「あれ……魔術の警戒システムよ。
結界の一種で、住民のプライバシーは守るけど、
危険だけは感知できるようになってるの」
「すげぇ……なんか、安心する……」
「でしょ?
あなたを守るために、ここまでの技術があるのよ」
「……ユリア、ありがとう」
「どういたしまして」
(なんだよその笑顔……反則だろ……)
◆
やがて、車は白い大きな建物の前で停車した。
「ここが……?」
「君たちの居住施設だ」
レイブンが降車し、振り返る。
「第七因子の安定まで、君たちはここで暮らす。
危険区域でも、彼女ユリアが常に側にいる」
「え……ユリアも?」
「当然よ。
私はあなたの補助因子なんだから」
ユリアは少し照れたように微笑む。
「補助因子って……そんな、危ない役割じゃ……」
「危ないとかじゃないの。
私は……あなたのそばにいたいのよ」
ユウの胸が跳ねた。
「そ、そうなんだ……」
(ちょっと待ってくれ……
ユリアと一緒に暮らすとか……
そんな状況、俺の心臓がもたない……!)
◆
建物に入ると、中はホテルのように豪華で、
無機質さよりも温かさを感じた。
案内された部屋は二人用で、
大きなリビング、システムキッチン、
そして寝室は……二つ。
「安心して。
ちゃんと別々の部屋があるから」
「そ、そっか……よかった……いやよくはないけど……」
「ん? 何か言った?」
「な、なんでもない!」
(何言ってんだ俺!?)
◆
レイブンは扉の前に立ち、最後の説明をする。
「明日から本格的な“能力測定”が始まる。
君の因子は世界の均衡に関わる。
だからこそ、安全に使いこなせるように訓練する必要がある」
「訓練……」
「安心しろ。
ユリアがついている限り、君は暴走しない」
ユウは深く息を吸い、力強く頷いた。
「……やります。
逃げない。
ユリアと……この街を守りたい」
「ユウ……」
ユリアが小さくこちらを見る。
その瞳は嬉しさと不安、両方が混ざったようだった。
「では、私は行く。
ゆっくり休め」
レイブンは静かに去っていった。
◆
ユリアは二つの寝室の扉を見比べて、いたずらっぽく笑った。
「どっちがいい?」
「え、あ……えっと……」
「ユウはこっちね」
ユリアは右側の部屋を指差し、ユウの手を取った。
「……?」
「すぐ隣が私の部屋だから。
夜中に不安になっても……すぐ声が届くでしょ?」
「……っ」
(不安になったら声をかけていい……?
そんな優しさ、ずるい……)
「ありがとう、ユリア」
ユリアはそっと微笑む。
「ユウ。
初めての場所って怖いでしょ?
だからね……」
彼女はユウの頭にそっと手を置いた。
「“一緒にいるから大丈夫”って、言ってあげる」
ユウは胸が苦しくなった。
(なんだよ……
俺なんかに……なんで……)
ユリアは手を離すと、小さく頭を下げた。
「それじゃあ、今日は休みましょう。
おやすみ、ユウ」
「……おやすみ、ユリア」
扉が閉まる音がしても、
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(守りたい……
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