『第七因子の少年――世界最強の破壊者だけど、守りたいものがある』

霧島

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第4章 4-2

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第4章 4-2

第七因子、解放──初めての“戦闘”

 砂漠の風が竜巻のように巻き上がり、
 巨大生命体の咆哮が大気を震わせた。

 ユウはまるで心臓を掴まれたような圧迫感に、
 息を呑みながらも構えを取った。

「……これが……敵……!」

 60メートル級の巨獣。
 黒い外殻は脈動し、
 骨の刃が背中から無数に伸びている。

 赤い眼孔が、
 まるで“獲物を見つけた”かのように
 ユウだけを見つめていた。

(完全に……俺を狙ってる……!)

 その瞬間、
 ユウの全身を何かが走り抜けた。

《敵性因子との共鳴反応──“標的認識”。
 第七因子保有者を優先捕食対象に設定》

 ユリアがユウの背後から叫ぶ。

「ユウ! あれは……あなたを捕食するために造られている!
 第七因子を取り込めば、あれは“進化”する……!」

「進化!?
 そんなのさせられるかよ!」

 巨獣が咆哮し、
 砂漠を抉りながら突進してくる。

 地響きが鼓膜を破りそうだった。

「ユウ、来るわ!!」

「わかってる!」

 ユウは地面を強く蹴った。



 巨獣の前脚が大地を叩き割る。

 同時に衝撃波が発生し、
 砂の壁が迫り来る。

「くっ──!!」

 ユウは咄嗟に腕をクロスした。

 次の瞬間、
 腕にまとわりつくような光が広がり、
 衝撃を吸収した。

《攻撃因子の余波を利用──防御因子を上乗せし、
 物理衝撃を最適化します》

(すげぇ……!
 あの攻撃……受け止められた……!?)

 ユリアが叫ぶ。

「ユウ! シンクロ率が上昇してるわ!
 このまま押し返して!!」

「わかった!!」

 ユウは腕を振り払うように前へ踏み込んだ。

 巨獣が二撃目の足を振り下ろす。

 しかし。

「うおおおおおッ!!」

 ユウは全力で跳躍した。

 巨獣の前脚が地面に突き刺さり、
 砂煙が爆発した。

(今だ!!)

 ユウは拳を固め、
 胸の奥の因子を解放する。

「はあああっ!」

 拳から迸る光が衝撃波となり、
 脈動する巨獣の外殻に叩き込まれる。

 着弾した瞬間、
 外殻が大きく割れ──

 “黒い血”が飛び散った。

「やった……!!」

 ユリアが喜びかけた、その直後。

 巨獣の割れた外殻が、
 ドロリと波打つように盛り上がり──
 次の瞬間には元通りになっていた。

「えっ……再生した……!?」

 ユリアの顔が青ざめる。

「ユウ……あれは“自己再生型”!
 攻撃因子の出力が足りない……!
 もっと力を高めなきゃ!」

「もっとって……どうすれば……!」

 ユリアは迷わずユウの手を握る。

「ユウ。
 あなたを信じてる。
 あなたの“恐怖”まで……全部受け止めるわ!」

「ユリア……!」

 ユウの胸の中で因子が震える。

《シンクロ率──86%……87%》

 巨獣が再び咆哮し、
 ユウへ一直線に突進してくる。

「来るぞ……!」

「ユウ、左脚の関節が弱点!
 さっきの攻撃で反応が鈍ったわ!」

(弱点……!)

 ユウは即座に標準を合わせる。

(いける……!
 ユリアとなら……いける!!)

 巨獣の脚が振り上げられ──
 ユウを潰さんと迫る。

「うおおおっ!!」

 ユウは地面を蹴って横へ跳び、
 巨獣の左脚へ拳を叩き込む。

 衝撃が骨まで響き、
 巨獣の脚が大きくぐらついた。

「効いてる!!」

「ユウ、もう一度!!」

「わかった!!」

 ユウは続けて拳を二撃、三撃と叩き込む。

 外殻が砕け、黒い血が噴き出す。

 巨獣がよろめき、
 身体を支えきれずにわずかに沈んだ。

「これで──!」

 ユウが最後の一撃を込めた、その瞬間。

 巨獣の背中の刃が、
 突然しなるように伸び──
 ユウへと襲い掛かってきた。

「っ!!」

「ユウ!!」

 ユウは避けきれず、
 刃が肩を掠めた。

 熱い痛みが走り、
 地面に転がり落ちる。

「う……あぁぁ……!!」

「ユウ!!」

 ユリアが駆け寄ろうとするが──

 巨獣が彼女の行く手を遮る。

 ユウは血を流しながら、
 震える手で立ち上がった。

(痛い……!
 でも……ユリアを……守らなきゃ……!!)

 巨獣がユウに向けて骨刃を構える。

「来るな……!
 ユリアには……指一本触れさせない!!」

 ユウが叫んだ瞬間──

《シンクロ率──89%……90%》

 胸の内側から光が溢れ出し、
 ユウの身体を包み込む。

「……熱い……でも……怖くない……!」

 ユリアが叫ぶ。

「ユウ! “攻撃因子・第一式”が使える!!
 イメージして!
 “貫く”でも“壊す”でもいい、
 あなたの意思を形にして!!」

「意思を……形に……!」

 ユウは巨獣を睨みつけた。

「俺は……
 ユリアを……守るために戦う!!」

 拳を握りしめた瞬間──
 ユウの腕に光が集まり、
 槍のような形へ伸びていった。

「これが……俺の力……!」

 ユリアが涙を流しながら叫ぶ。

「ユウ……綺麗……!」

 巨獣が跳び上がり、
 ユウめがけて爪を振り下ろす。

 ユウは一歩踏み込み、
 光の槍を水平に構え──

「うおおおおおっ!!」

 巨獣の腕を貫いた。

 巨獣の咆哮が砂漠全体に響き渡る。

 黒い血が噴き出し、
 巨獣は大きくバランスを崩した。

「いける!!」

「ユウ!!
 そのまま──!!」

 ユウは渾身の力を込め、
 槍を巨獣の脚へ叩き込み、
 さらに胸部へ向けて突き上げる。

 巨獣は後退し、
 砂漠に膝をついた。

(このまま……決める……!!)

 ユウが最後の一撃を構えた、その時。

 巨獣の口腔内部に集まる赤黒い光。

「……まずい……!!
 溜めてる……!」

 ユリアが叫んだ。

「ユウ──避けて!!
 それは……“因子破壊砲”よ!!」

「ここで避けたら……
 街が……吹き飛ぶ……!!」

 ユウは迷わず、
 巨獣のとどめの一撃に踏み込んだ。

「ユウ!!!」

 巨獣の咆哮、
 爆発する光、
 そしてユウの拳が──

 同時にぶつかり合った。

 大地が割れ、
 砂嵐が天へと昇る。



 光が収まったとき、
 ユウは砂の中に膝をついていた。

 巨獣は……まだ完全には倒れていない。

「……まだ……動くのかよ……」

 巨獣の外殻が再び脈動する。

 しかしその再生速度は
 明らかに鈍っていた。

 ユリアが駆け寄り、
 ユウの体を支えながら叫ぶ。

「ユウ! もう一撃よ!!
 あなたなら……倒せる!!」

 ユウは苦笑し、
 立ち上がる。

「当然だろ……
 俺は……まだ終わってない……!」

 巨獣との決戦は、
 いよいよ最終局面へ突入する。

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