『第七因子の少年――世界最強の破壊者だけど、守りたいものがある』

霧島

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第4章 4-3

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第4章 4-3

覚醒と暴走──第七因子の真価

 巨獣は、まだ終わっていなかった。

 砂漠に倒れ伏したまま動かない……
 そう思われたその巨体が、
 ドクン、と脈打つように跳ねた。

「……まだ動くのかよ……!」

 ユウは血の滲む拳を握りしめる。

 ユリアがユウの肩を支えながら叫ぶ。

「ユウ、あれは……自分の生命力そのものを、
 “因子核”に集中させて再生してる!
 もう普通の攻撃じゃ止まらない……!」

 巨獣の背中から黒い刃が再び伸び、
 それらが“槍”のように構えられた。

 完全にユウを殺すための形だ。

(やっぱり……俺だけを狙ってるんだ……)

 その事実に、ユウは背筋が冷えるのを感じた。

 巨獣の眼孔が赤黒く光り、
 次の瞬間、全身が震えるほどの咆哮が砂漠を揺らした。

 そして巨獣の胸部に──
 “黒い心臓のような核”が露出する。

「……核(コア)を……外に出した?」

 ユリアが歯を食いしばる。

「違う……!
 あれは“囮”よ!
 本物の因子核は、体内のもっと奥にある!」

「じゃあ……どうすれば……!」

 ユリアはユウの胸に手を当てた。

「ユウ。
 あなたの因子──“第七因子”は、
 本来なら破壊にも創造にも振れる万能因子よ」

「万能……?」

「でも今のあなたは、
 “破壊の形”しか使えていない。
 だから……出力が足りないの!」

 巨獣の背からさらに刃が形成される。

 その数、先ほどの倍以上。

 明らかに決着をつけに来ている。

「ユウ、お願い。
 あなたの力の“もう一つの側面”を解放して──
 創造因子を使うの!!」

「俺に……できるのかよ……!」

 ユリアはユウの手を両手で包み込み、
 涙を浮かべて叫んだ。

「できる!
 だってあなたは……
 人を傷つけるためじゃなく、
 “守るために戦う”人だから!!
 だからこそ第七因子はあなたに選ばれたの!!」

「守るため……」

 ユウはユリアの顔を見つめた。

 彼女は震えながらも、
 必死に微笑もうとしていた。

(俺は……戦いたくて戦ってるんじゃない……
 ユリアを……みんなを……守りたいだけだ……)

 その瞬間、
 胸の奥で何かが開くような感覚が走った。

《シンクロ率──92%……93%……95%》

 ユリアの声が震える。

「ユ……ユウ……!
 これ以上は危険よ……!
 これ以上シンクロが進むと……
 あなたの精神が因子に飲まれる……!」

「大丈夫だよ、ユリア。
 だって……お前がいるから。」

「……っ!」

 ユリアの目から大粒の涙がこぼれた。

《シンクロ率──97%》

 巨獣が咆哮し、
 刃の雨を降らせるようにユウへ向けて放つ。

「ユリア……行くぞ!」

「ユウ……!!

 ──行きましょう!!」



 世界がスローモーションになった。

 ユウの身体が勝手に動く。
 刃が迫るたびに、ユウの腕が光の盾を形成し、
 次々と弾き返していく。

《第七因子:創造式……発動》

 光がユウの周囲を包み、
 肩から腕へ、腕から手へと流れ込む。

 ユウはそのまま拳を握り──
 形を“イメージ”した。

(俺の力は……壊すだけじゃない。
 守る盾だ。
 仲間を……ユリアを守るための……!)

 その瞬間。

 ユウの手に“光の円盾”が生まれた。

「出た……!
 ユウ! これがあなたの創造因子よ!!」

 巨獣の刃を円盾で受けたその瞬間、
 刃が光の欠片のように消滅していく。

「この盾……
 壊されても再構築される……!」

「そうよ!
 第七因子は“破壊”と“創造”の両立!
 これで攻撃にも守りにも対応できる!」

 巨獣がさらに刃を連続発射する。

 ユウは一歩も動かず、
 ただ盾を構えるだけでその全てが消滅した。

(これなら……いける……!)

「ユリア、今だ!!
 本物の核の位置を教えてくれ!」

「ユウの……三歩左前方……!
 胸部内部から……わずかに反応がある!」

「任せろ!」

 ユウは盾を前に構え、
 巨獣の懐に飛び込む。

 巨獣の口腔内に赤黒い光が集まる。

 因子破壊砲の予兆。

 ユリアが叫ぶ。

「ユウ、正面は危険!
 回り込んで!!」

 しかしユウは止まらなかった。

「大丈夫だ……
 正面から行く!!」

「ユウ!!?」

(だって……
 俺の盾は……みんなを守るためのもんだろ……!)

 巨獣が口を開け、
 因子破壊砲を放つ。

 赤黒い奔流が砂漠を焼き尽くす。

 ユウは盾を構え、
 全力で踏み込んだ。

「うおおおおおおっ!!」

 世界が光に飲まれる。



 やがて光が収まり──
 ユウは巨獣の胸部へ拳を叩き込んでいた。

 盾は砕けたが、すぐに再構築される。

 拳は強化され、
 巨獣の胸部に深く深く食い込んでゆく。

「まだだ……まだ足りねぇ!!!」

「ユウ!!
 あなたの破壊因子……
 上限突破してる!!」

「なら……全部出す……!!
 俺の全部で……守るために戦う力だって証明する!!」

《第七因子──完全同期》

 ユウの身体が光に包まれる。

 巨獣の内部が赤黒く閃いた。

「ユウ!!
 そこ!!
 そこが本物の核!!!!」

「うおおおおおおおッ!!!!!」

 ユウの拳が閃光となり、
 巨獣の胸部を完全に貫いた。

 次の瞬間──

 巨獣は爆発するように光へと消えた。

 砂漠に静寂が戻る。



 ユウは膝をつき、
 肩で息をしながら呟く。

「……勝った……のか……?」

 ユリアが駆け寄り、
 ユウを抱き締める。

「ユウっ……!!
 無事で……本当に……無事でよかったぁ……!」

「ユリア……お前こそ……」

 そのときだった。

 砂漠の空間が歪み、
 黒いノイズのような亀裂が走る。

「……来る……!」

 ユリアが震える声で言う。

 亀裂から“人型の黒影”が現れた。

 漆黒の槍を携え、
 顔に仮面をつけたその存在は──

「……第七因子……回収対象、確認」

 冷たい声でそう告げた。

 ユウの背筋が凍りつく。

「お前……まさか……!」

 また新たな強敵が現れた。

 第七因子を求めて。

 ──戦いは、まだ終わらない。


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