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第3章4節 英雄と堕落者 ― 交わらぬ運命
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第3章4節 英雄と堕落者 ― 交わらぬ運命
ギルドの掲示板前。
朝の光が差し込み、冒険者たちのざわめきが広がる中、一つのパーティーが注目を浴びていた。
それは、白銀の髪の剣士リアナを筆頭にしたAランクパーティー《ルミナス・ウィング》。
そして、彼女たちの後ろには、静かに荷物を背負う青年――ユウマの姿があった。
「ねぇ、見た? あのパーティー、また最高難度の討伐依頼を一日で終わらせたって!」 「リーダーがSランクの剣士、魔法使いはS-、僧侶もA+……それに新入りの男、誰だ? あいつ、最近急に評価上がってるらしいぞ」 「いや、雑用係らしいけど、なんか“勝利の女神”ならぬ“勝利の男”って呼ばれてるんだとよ」
酒場の笑い声の中で、ユウマは相変わらず控えめに頭を下げた。
「そんな、大したことはしてませんよ。みんなの力がすごいだけです。」
リアナが微笑む。
「謙遜しすぎよ、ユウマ。あなたがいると、私たちの力がいつもの倍以上に感じるわ。まるで風が後押ししてくれるみたい。」
横で魔法使いのティアナが笑った。
「リアナ、それは“風”じゃなくて“ユウマのスキル”でしょ。鑑定した時びっくりしたのよ、あれ。」
僧侶ミュリエルも頷く。
「“パワーブースター”……仲間全員の能力を三倍に高めるなんて、普通の補助スキルじゃありえません。神話級です。」
ユウマは少し困ったように笑う。
「……でも僕自身は強くないですよ。戦闘も下手ですし、魔法も使えない。ただ、仲間が輝けるように支えるだけです。」
「それで十分だよ」リアナが断言する。
「力を誇るだけが勇者じゃない。仲間を信じて支える人こそ、真の勇者だと思うわ。」
その言葉に、ユウマの胸の奥で、何か温かいものが広がった。
――かつて、勇者パーティーでは一度も聞いたことのない言葉。
彼の存在を“価値あるもの”と認めてくれる声だった。
---
同じ日の午後。
瘴気の森――かつて勇者パーティーが惨敗した場所。
リアナたちは新たな依頼で、その森の奥に潜んでいた“瘴気竜”の討伐に挑んでいた。
かつてレオンたちが恐怖し、敗走した相手。
ユウマの胸には一瞬、過去の光景がよぎる。
(ここで……みんなと同じように、怖がっていたな。俺が何の役にも立てなかったから――)
だが、リアナの声がその思考を遮った。
「ユウマ、大丈夫? あなたがいるだけで、私たちは安心できるのよ。」
「……ありがとう。行きましょう。」
瘴気を纏った竜が、森の奥から姿を現す。
黒曜石のような鱗が陽光を跳ね返し、咆哮が大地を震わせる。
Aランクどころか、Sクラスにも匹敵する存在。
ティアナが詠唱を開始する。
「“烈火の環よ、我が手に集え――フレア・サークル!”」
燃え上がる炎が竜を包む。
続けてリアナが剣を抜き、風を裂くように突撃する。
その一撃は、以前よりも鋭く、力強い。
(すごい……みんな、前よりもずっと強い)
ユウマは仲間たちの背を見つめながら、手の中に力を込めた。
「――発動、パワーブースト。」
金色の光がユウマの体から放たれ、仲間全員の体を包み込む。
瞬間、リアナの剣が光を帯び、ティアナの魔力が爆発的に高まった。
ミュリエルの回復魔法が輝き、ダメージを瞬時に癒やす。
「なんて……すごい力……!」
ティアナの声が震える。
「これがユウマの力……!」
リアナが叫ぶ。
「この一撃で決める! みんな、合わせて!」
三人が同時に突撃し、炎と光と風が交錯する。
轟音。
眩い閃光。
そして、瘴気竜の体が崩れ落ちた。
沈黙が戻る。
やがて、ミュリエルが静かに笑った。
「……勝ったのね。」
ティアナが抱きつく。
「ユウマ! やった! ほんとにやったわ!」
リアナも微笑みながら彼の肩を叩く。
「あなたのおかげよ。ありがとう、ユウマ。」
ユウマは照れくさそうに笑いながらも、胸の奥で確かに感じていた。
――今度こそ、俺は仲間の力になれたんだ。
---
その頃、同じギルドの片隅では、別の噂が流れていた。
「なあ聞いたか? 勇者レオンのパーティー、ついに解散したらしいぞ。」
「マジかよ。あの有名なSランクパーティーが?」
「どうも、最後の依頼で仲間が半壊したらしい。もう立ち直れねぇって。」
「皮肉だな……あの時、荷物持ちを追い出してから、全部狂ったんだ。」
「お荷物だと思ってた男が、今じゃS++のパーティーの中心メンバーだもんな。」
その話を、リアナがちらりと聞いて小さく微笑む。
「ねぇ、ユウマ。あなた、昔の仲間に会ったら何て言うの?」
ユウマは少し考えてから、穏やかに笑った。
「……何も言いませんよ。ただ、元気でやってるなら、それでいいです。」
ティアナが頬を膨らませる。
「優しすぎるわよ。私だったら、ざまぁって言ってやるのに!」
リアナがくすっと笑う。
「それがユウマのいいところよ。」
ユウマは夜空を見上げた。
星々が瞬く中、かつての仲間の顔が浮かぶ。
怒鳴られ、嘲られ、見下された日々。
だが、もう痛くはなかった。
「……俺を追い出してくれて、ありがとう。」
その一言を、夜風が静かにさらっていった。
---
数日後。
ギルドの報告書には、新たな記録が刻まれた。
> 【S++ランクパーティー《ルミナス・ウィング》、瘴気竜討伐成功】
【補助担当:ユウマ・クレスト】
その下に小さく記された注釈。
> “彼の存在があれば、どんなパーティーも最強になるだろう。”
それは、かつて“お荷物”と呼ばれた男への、遅すぎる証明だった。
-
ギルドの掲示板前。
朝の光が差し込み、冒険者たちのざわめきが広がる中、一つのパーティーが注目を浴びていた。
それは、白銀の髪の剣士リアナを筆頭にしたAランクパーティー《ルミナス・ウィング》。
そして、彼女たちの後ろには、静かに荷物を背負う青年――ユウマの姿があった。
「ねぇ、見た? あのパーティー、また最高難度の討伐依頼を一日で終わらせたって!」 「リーダーがSランクの剣士、魔法使いはS-、僧侶もA+……それに新入りの男、誰だ? あいつ、最近急に評価上がってるらしいぞ」 「いや、雑用係らしいけど、なんか“勝利の女神”ならぬ“勝利の男”って呼ばれてるんだとよ」
酒場の笑い声の中で、ユウマは相変わらず控えめに頭を下げた。
「そんな、大したことはしてませんよ。みんなの力がすごいだけです。」
リアナが微笑む。
「謙遜しすぎよ、ユウマ。あなたがいると、私たちの力がいつもの倍以上に感じるわ。まるで風が後押ししてくれるみたい。」
横で魔法使いのティアナが笑った。
「リアナ、それは“風”じゃなくて“ユウマのスキル”でしょ。鑑定した時びっくりしたのよ、あれ。」
僧侶ミュリエルも頷く。
「“パワーブースター”……仲間全員の能力を三倍に高めるなんて、普通の補助スキルじゃありえません。神話級です。」
ユウマは少し困ったように笑う。
「……でも僕自身は強くないですよ。戦闘も下手ですし、魔法も使えない。ただ、仲間が輝けるように支えるだけです。」
「それで十分だよ」リアナが断言する。
「力を誇るだけが勇者じゃない。仲間を信じて支える人こそ、真の勇者だと思うわ。」
その言葉に、ユウマの胸の奥で、何か温かいものが広がった。
――かつて、勇者パーティーでは一度も聞いたことのない言葉。
彼の存在を“価値あるもの”と認めてくれる声だった。
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同じ日の午後。
瘴気の森――かつて勇者パーティーが惨敗した場所。
リアナたちは新たな依頼で、その森の奥に潜んでいた“瘴気竜”の討伐に挑んでいた。
かつてレオンたちが恐怖し、敗走した相手。
ユウマの胸には一瞬、過去の光景がよぎる。
(ここで……みんなと同じように、怖がっていたな。俺が何の役にも立てなかったから――)
だが、リアナの声がその思考を遮った。
「ユウマ、大丈夫? あなたがいるだけで、私たちは安心できるのよ。」
「……ありがとう。行きましょう。」
瘴気を纏った竜が、森の奥から姿を現す。
黒曜石のような鱗が陽光を跳ね返し、咆哮が大地を震わせる。
Aランクどころか、Sクラスにも匹敵する存在。
ティアナが詠唱を開始する。
「“烈火の環よ、我が手に集え――フレア・サークル!”」
燃え上がる炎が竜を包む。
続けてリアナが剣を抜き、風を裂くように突撃する。
その一撃は、以前よりも鋭く、力強い。
(すごい……みんな、前よりもずっと強い)
ユウマは仲間たちの背を見つめながら、手の中に力を込めた。
「――発動、パワーブースト。」
金色の光がユウマの体から放たれ、仲間全員の体を包み込む。
瞬間、リアナの剣が光を帯び、ティアナの魔力が爆発的に高まった。
ミュリエルの回復魔法が輝き、ダメージを瞬時に癒やす。
「なんて……すごい力……!」
ティアナの声が震える。
「これがユウマの力……!」
リアナが叫ぶ。
「この一撃で決める! みんな、合わせて!」
三人が同時に突撃し、炎と光と風が交錯する。
轟音。
眩い閃光。
そして、瘴気竜の体が崩れ落ちた。
沈黙が戻る。
やがて、ミュリエルが静かに笑った。
「……勝ったのね。」
ティアナが抱きつく。
「ユウマ! やった! ほんとにやったわ!」
リアナも微笑みながら彼の肩を叩く。
「あなたのおかげよ。ありがとう、ユウマ。」
ユウマは照れくさそうに笑いながらも、胸の奥で確かに感じていた。
――今度こそ、俺は仲間の力になれたんだ。
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その頃、同じギルドの片隅では、別の噂が流れていた。
「なあ聞いたか? 勇者レオンのパーティー、ついに解散したらしいぞ。」
「マジかよ。あの有名なSランクパーティーが?」
「どうも、最後の依頼で仲間が半壊したらしい。もう立ち直れねぇって。」
「皮肉だな……あの時、荷物持ちを追い出してから、全部狂ったんだ。」
「お荷物だと思ってた男が、今じゃS++のパーティーの中心メンバーだもんな。」
その話を、リアナがちらりと聞いて小さく微笑む。
「ねぇ、ユウマ。あなた、昔の仲間に会ったら何て言うの?」
ユウマは少し考えてから、穏やかに笑った。
「……何も言いませんよ。ただ、元気でやってるなら、それでいいです。」
ティアナが頬を膨らませる。
「優しすぎるわよ。私だったら、ざまぁって言ってやるのに!」
リアナがくすっと笑う。
「それがユウマのいいところよ。」
ユウマは夜空を見上げた。
星々が瞬く中、かつての仲間の顔が浮かぶ。
怒鳴られ、嘲られ、見下された日々。
だが、もう痛くはなかった。
「……俺を追い出してくれて、ありがとう。」
その一言を、夜風が静かにさらっていった。
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数日後。
ギルドの報告書には、新たな記録が刻まれた。
> 【S++ランクパーティー《ルミナス・ウィング》、瘴気竜討伐成功】
【補助担当:ユウマ・クレスト】
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