『勇者パーティーを追放されたが、俺のスキルは“通常の3倍”強かった』

霧島

文字の大きさ
12 / 17

第3章4節 英雄と堕落者 ― 交わらぬ運命

しおりを挟む
第3章4節 英雄と堕落者 ― 交わらぬ運命

ギルドの掲示板前。
朝の光が差し込み、冒険者たちのざわめきが広がる中、一つのパーティーが注目を浴びていた。
それは、白銀の髪の剣士リアナを筆頭にしたAランクパーティー《ルミナス・ウィング》。
そして、彼女たちの後ろには、静かに荷物を背負う青年――ユウマの姿があった。

「ねぇ、見た? あのパーティー、また最高難度の討伐依頼を一日で終わらせたって!」 「リーダーがSランクの剣士、魔法使いはS-、僧侶もA+……それに新入りの男、誰だ? あいつ、最近急に評価上がってるらしいぞ」 「いや、雑用係らしいけど、なんか“勝利の女神”ならぬ“勝利の男”って呼ばれてるんだとよ」

酒場の笑い声の中で、ユウマは相変わらず控えめに頭を下げた。
「そんな、大したことはしてませんよ。みんなの力がすごいだけです。」

リアナが微笑む。
「謙遜しすぎよ、ユウマ。あなたがいると、私たちの力がいつもの倍以上に感じるわ。まるで風が後押ししてくれるみたい。」

横で魔法使いのティアナが笑った。
「リアナ、それは“風”じゃなくて“ユウマのスキル”でしょ。鑑定した時びっくりしたのよ、あれ。」

僧侶ミュリエルも頷く。
「“パワーブースター”……仲間全員の能力を三倍に高めるなんて、普通の補助スキルじゃありえません。神話級です。」

ユウマは少し困ったように笑う。
「……でも僕自身は強くないですよ。戦闘も下手ですし、魔法も使えない。ただ、仲間が輝けるように支えるだけです。」

「それで十分だよ」リアナが断言する。
「力を誇るだけが勇者じゃない。仲間を信じて支える人こそ、真の勇者だと思うわ。」

その言葉に、ユウマの胸の奥で、何か温かいものが広がった。
――かつて、勇者パーティーでは一度も聞いたことのない言葉。
彼の存在を“価値あるもの”と認めてくれる声だった。


---

同じ日の午後。
瘴気の森――かつて勇者パーティーが惨敗した場所。

リアナたちは新たな依頼で、その森の奥に潜んでいた“瘴気竜”の討伐に挑んでいた。
かつてレオンたちが恐怖し、敗走した相手。
ユウマの胸には一瞬、過去の光景がよぎる。
(ここで……みんなと同じように、怖がっていたな。俺が何の役にも立てなかったから――)

だが、リアナの声がその思考を遮った。
「ユウマ、大丈夫? あなたがいるだけで、私たちは安心できるのよ。」

「……ありがとう。行きましょう。」

瘴気を纏った竜が、森の奥から姿を現す。
黒曜石のような鱗が陽光を跳ね返し、咆哮が大地を震わせる。
Aランクどころか、Sクラスにも匹敵する存在。

ティアナが詠唱を開始する。
「“烈火の環よ、我が手に集え――フレア・サークル!”」
燃え上がる炎が竜を包む。
続けてリアナが剣を抜き、風を裂くように突撃する。
その一撃は、以前よりも鋭く、力強い。

(すごい……みんな、前よりもずっと強い)
ユウマは仲間たちの背を見つめながら、手の中に力を込めた。

「――発動、パワーブースト。」

金色の光がユウマの体から放たれ、仲間全員の体を包み込む。
瞬間、リアナの剣が光を帯び、ティアナの魔力が爆発的に高まった。
ミュリエルの回復魔法が輝き、ダメージを瞬時に癒やす。

「なんて……すごい力……!」
ティアナの声が震える。
「これがユウマの力……!」

リアナが叫ぶ。
「この一撃で決める! みんな、合わせて!」
三人が同時に突撃し、炎と光と風が交錯する。

轟音。
眩い閃光。
そして、瘴気竜の体が崩れ落ちた。

沈黙が戻る。
やがて、ミュリエルが静かに笑った。
「……勝ったのね。」
ティアナが抱きつく。
「ユウマ! やった! ほんとにやったわ!」
リアナも微笑みながら彼の肩を叩く。
「あなたのおかげよ。ありがとう、ユウマ。」

ユウマは照れくさそうに笑いながらも、胸の奥で確かに感じていた。
――今度こそ、俺は仲間の力になれたんだ。


---

その頃、同じギルドの片隅では、別の噂が流れていた。

「なあ聞いたか? 勇者レオンのパーティー、ついに解散したらしいぞ。」
「マジかよ。あの有名なSランクパーティーが?」
「どうも、最後の依頼で仲間が半壊したらしい。もう立ち直れねぇって。」

「皮肉だな……あの時、荷物持ちを追い出してから、全部狂ったんだ。」
「お荷物だと思ってた男が、今じゃS++のパーティーの中心メンバーだもんな。」

その話を、リアナがちらりと聞いて小さく微笑む。
「ねぇ、ユウマ。あなた、昔の仲間に会ったら何て言うの?」

ユウマは少し考えてから、穏やかに笑った。
「……何も言いませんよ。ただ、元気でやってるなら、それでいいです。」

ティアナが頬を膨らませる。
「優しすぎるわよ。私だったら、ざまぁって言ってやるのに!」
リアナがくすっと笑う。
「それがユウマのいいところよ。」

ユウマは夜空を見上げた。
星々が瞬く中、かつての仲間の顔が浮かぶ。
怒鳴られ、嘲られ、見下された日々。
だが、もう痛くはなかった。

「……俺を追い出してくれて、ありがとう。」
その一言を、夜風が静かにさらっていった。


---

数日後。
ギルドの報告書には、新たな記録が刻まれた。

> 【S++ランクパーティー《ルミナス・ウィング》、瘴気竜討伐成功】
【補助担当:ユウマ・クレスト】



その下に小さく記された注釈。

> “彼の存在があれば、どんなパーティーも最強になるだろう。”



それは、かつて“お荷物”と呼ばれた男への、遅すぎる証明だった。


-
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...