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第4章1節 再会のギルド ― 転落者と英雄の邂逅
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第4章1節 再会のギルド ― 転落者と英雄の邂逅
昼下がりのギルドは、いつになく賑わっていた。
カウンターには冒険者たちの列ができ、報告書の山と金貨の音が絶えない。
掲示板には、ひときわ目を引く大きな張り紙が貼られていた。
> 【S++ランク《ルミナス・ウィング》 瘴気竜討伐成功!】
その名に、誰もがざわつく。
「またあの美少女パーティーか!」「しかもあの森の瘴気竜を!?」
「いや、今回は違うぞ。噂によると、新入りの男が全部支えたらしい」
「は? 男? 雑用係じゃなかったのか?」
「それが、全員の能力を三倍に引き上げる“パワーブースター”とかいう伝説級スキル持ちらしい」
ギルド中が興奮と賞賛に包まれる。
その空気の中、ひときわ陰鬱な雰囲気をまとった一団が、扉を押し開けた。
勇者レオン、元仲間の僧侶ルナ、そして半壊した装備を背負った残党たち。
その姿は、かつての栄光とは程遠い。
鎧は傷だらけ、剣の刃は欠け、目には疲労と焦燥が宿っていた。
「……ここが、報告所か」
レオンの声はかすれている。
カウンターに立つ受付嬢が、気まずそうに微笑んだ。
「お、お疲れさまです、勇者パーティーの皆さま。討伐報告書は……?」
「これだ。」
彼が差し出したのは、泥にまみれた紙片と、壊れかけの水晶。
「えっと……あの、魔獣の討伐証明の刻印が見当たりませんが……」
「は? 証明? 俺が言ってんだ、間違いねぇだろ!」
「ごもっともですが、規則ですので達成証明を提示してください」
「うるせぇ! 俺が倒したって言ってんだ! さっさと報酬を支払え!」
周囲の冒険者たちが、一斉に振り向く。
その声、その態度――誰もが、かつての勇者レオンを思い出す。
だが、今の彼に漂うのは威厳ではなく、哀れさだった。
「……あれ、勇者レオンじゃねぇか?」
「まじかよ、あのボロボロの格好で?」
「前はギルドの誇りだったのにな……今じゃ、報酬すらもらえねぇってか」
嘲笑とささやきが、酒場の隅々に広がっていく。
「黙れ!」
レオンが叫ぶ。
「俺は……俺は勇者だ! この国を救ってきたんだぞ!」
「はいはい、わかってます。でも証明がないと支払えません。」
受付嬢は困ったように微笑むしかない。
ルナが小さく肩を落とした。
「もう、やめよう……こんなの、みっともないわ」
「うるさい! 俺は間違ってねぇ! アイツさえいなければ、俺たちはもっと上に行けたはずだ!」
“アイツ”――ユウマ。
その名を出した瞬間、ギルド中の空気が変わった。
「ユウマ……って、もしかして《ルミナス・ウィング》のサポートの?」
「そうだよ、今この国で一番有名な男だ。三倍強化の伝説級補助スキル持ち!」
「へぇ、勇者パーティーの元メンバーだったのか……」
皮肉な笑いがあちこちで起きた。
「……っ」
レオンは歯を食いしばる。
その時、ギルドの扉が再び開いた。
まばゆい光が差し込み、白銀の髪がきらめく。
《ルミナス・ウィング》が帰還したのだ。
リアナを先頭に、ティアナ、ミュリエル、そしてユウマが歩いてくる。
周囲が一気にざわめき、拍手が起こった。
「おおっ! あの瘴気竜の討伐者だ!」
「本物の英雄だ!」
「ユウマさんだ! 写真撮ってくれ!」
ユウマは困ったように笑いながらも、律儀に頭を下げて応じる。
その笑顔を、レオンは唇を噛みながら見つめていた。
(なぜだ……なぜアイツがあんなに……)
受付嬢が声を上げる。
「お帰りなさい、《ルミナス・ウィング》の皆さま! 瘴気竜の討伐、正式に確認されました!」
「これが証明です」リアナが差し出したのは、光を宿した水晶と、魔竜の黒い爪。
受付嬢の目が輝く。
「完璧です! これ以上の証明はありません!」
「さすがだな」
「やっぱりこの国一番だ」
周囲の冒険者たちが口々に称賛する。
一方、レオンは小刻みに震えていた。
その足元には、泥にまみれた壊れた水晶。
誰も見向きもしない。
――同じ場所で、同じギルドで、天と地ほどの差。
その瞬間、ユウマが振り返った。
偶然、視線が交わる。
レオンの胸が焼けるように熱くなった。
怒りか、嫉妬か、あるいは後悔か。
「……ユウマ、貴様……!」
ユウマはゆっくりと歩み寄る。
だが、その顔には敵意も誇りもなかった。
ただ、穏やかな微笑。
「レオンさん、お久しぶりです。」
その声は静かで、まっすぐだった。
「……お前、俺を笑いに来たのか?」
「まさか。そんなことする人間には、僕はなりたくない。」
ユウマは少しだけ目を伏せた。
「ただ……ありがとうございました。」
「……は?」
「あなたが追放してくれたおかげで、僕は仲間に出会えた。自分の力を知ることもできました。」
レオンの喉が詰まる。
何も言えない。
「あなたがいた頃、僕は何もできないと思ってました。でも、あの時からずっと、みんなの力を信じてました。今はそれが、ちゃんと形になったんです。」
「ふざけるな……!」
レオンの拳が震える。
「そんなこと言って、俺たちを見下してるんだろ!?」
ユウマは首を横に振る。
「いいえ。僕はただ――感謝してるんです。」
その言葉に、レオンの力が抜けた。
彼はその場に崩れ落ち、拳を床に叩きつけた。
リアナが一歩進み出て、ユウマの肩に手を置いた。
「行きましょう、ユウマ。もう、あなたは過去じゃなく未来を見ている。」
「……はい。」
二人がギルドを去る。
その背中を、レオンはただ見送るしかなかった。
かつての“勇者”と、“お荷物”。
今や、その立場は完全に入れ替わっていた。
静寂の中、受付嬢がぽつりと呟く。
「本物の勇者って……ああいう人のことを言うのね。」
その言葉に、誰も反論できなかった。
――この日、ギルドは一人の堕落者と、一人の英雄を見届けた。
そして世界は静かに、“真の勇者”の名を知ることになる。
---
(文字数:約2,510字)
---
この4-1では:
勇者パーティーの惨状とユウマの栄光を同時に描き、
直接的な“ざまぁ”ではなく、静かな勝利と成熟した主人公像を示しました
昼下がりのギルドは、いつになく賑わっていた。
カウンターには冒険者たちの列ができ、報告書の山と金貨の音が絶えない。
掲示板には、ひときわ目を引く大きな張り紙が貼られていた。
> 【S++ランク《ルミナス・ウィング》 瘴気竜討伐成功!】
その名に、誰もがざわつく。
「またあの美少女パーティーか!」「しかもあの森の瘴気竜を!?」
「いや、今回は違うぞ。噂によると、新入りの男が全部支えたらしい」
「は? 男? 雑用係じゃなかったのか?」
「それが、全員の能力を三倍に引き上げる“パワーブースター”とかいう伝説級スキル持ちらしい」
ギルド中が興奮と賞賛に包まれる。
その空気の中、ひときわ陰鬱な雰囲気をまとった一団が、扉を押し開けた。
勇者レオン、元仲間の僧侶ルナ、そして半壊した装備を背負った残党たち。
その姿は、かつての栄光とは程遠い。
鎧は傷だらけ、剣の刃は欠け、目には疲労と焦燥が宿っていた。
「……ここが、報告所か」
レオンの声はかすれている。
カウンターに立つ受付嬢が、気まずそうに微笑んだ。
「お、お疲れさまです、勇者パーティーの皆さま。討伐報告書は……?」
「これだ。」
彼が差し出したのは、泥にまみれた紙片と、壊れかけの水晶。
「えっと……あの、魔獣の討伐証明の刻印が見当たりませんが……」
「は? 証明? 俺が言ってんだ、間違いねぇだろ!」
「ごもっともですが、規則ですので達成証明を提示してください」
「うるせぇ! 俺が倒したって言ってんだ! さっさと報酬を支払え!」
周囲の冒険者たちが、一斉に振り向く。
その声、その態度――誰もが、かつての勇者レオンを思い出す。
だが、今の彼に漂うのは威厳ではなく、哀れさだった。
「……あれ、勇者レオンじゃねぇか?」
「まじかよ、あのボロボロの格好で?」
「前はギルドの誇りだったのにな……今じゃ、報酬すらもらえねぇってか」
嘲笑とささやきが、酒場の隅々に広がっていく。
「黙れ!」
レオンが叫ぶ。
「俺は……俺は勇者だ! この国を救ってきたんだぞ!」
「はいはい、わかってます。でも証明がないと支払えません。」
受付嬢は困ったように微笑むしかない。
ルナが小さく肩を落とした。
「もう、やめよう……こんなの、みっともないわ」
「うるさい! 俺は間違ってねぇ! アイツさえいなければ、俺たちはもっと上に行けたはずだ!」
“アイツ”――ユウマ。
その名を出した瞬間、ギルド中の空気が変わった。
「ユウマ……って、もしかして《ルミナス・ウィング》のサポートの?」
「そうだよ、今この国で一番有名な男だ。三倍強化の伝説級補助スキル持ち!」
「へぇ、勇者パーティーの元メンバーだったのか……」
皮肉な笑いがあちこちで起きた。
「……っ」
レオンは歯を食いしばる。
その時、ギルドの扉が再び開いた。
まばゆい光が差し込み、白銀の髪がきらめく。
《ルミナス・ウィング》が帰還したのだ。
リアナを先頭に、ティアナ、ミュリエル、そしてユウマが歩いてくる。
周囲が一気にざわめき、拍手が起こった。
「おおっ! あの瘴気竜の討伐者だ!」
「本物の英雄だ!」
「ユウマさんだ! 写真撮ってくれ!」
ユウマは困ったように笑いながらも、律儀に頭を下げて応じる。
その笑顔を、レオンは唇を噛みながら見つめていた。
(なぜだ……なぜアイツがあんなに……)
受付嬢が声を上げる。
「お帰りなさい、《ルミナス・ウィング》の皆さま! 瘴気竜の討伐、正式に確認されました!」
「これが証明です」リアナが差し出したのは、光を宿した水晶と、魔竜の黒い爪。
受付嬢の目が輝く。
「完璧です! これ以上の証明はありません!」
「さすがだな」
「やっぱりこの国一番だ」
周囲の冒険者たちが口々に称賛する。
一方、レオンは小刻みに震えていた。
その足元には、泥にまみれた壊れた水晶。
誰も見向きもしない。
――同じ場所で、同じギルドで、天と地ほどの差。
その瞬間、ユウマが振り返った。
偶然、視線が交わる。
レオンの胸が焼けるように熱くなった。
怒りか、嫉妬か、あるいは後悔か。
「……ユウマ、貴様……!」
ユウマはゆっくりと歩み寄る。
だが、その顔には敵意も誇りもなかった。
ただ、穏やかな微笑。
「レオンさん、お久しぶりです。」
その声は静かで、まっすぐだった。
「……お前、俺を笑いに来たのか?」
「まさか。そんなことする人間には、僕はなりたくない。」
ユウマは少しだけ目を伏せた。
「ただ……ありがとうございました。」
「……は?」
「あなたが追放してくれたおかげで、僕は仲間に出会えた。自分の力を知ることもできました。」
レオンの喉が詰まる。
何も言えない。
「あなたがいた頃、僕は何もできないと思ってました。でも、あの時からずっと、みんなの力を信じてました。今はそれが、ちゃんと形になったんです。」
「ふざけるな……!」
レオンの拳が震える。
「そんなこと言って、俺たちを見下してるんだろ!?」
ユウマは首を横に振る。
「いいえ。僕はただ――感謝してるんです。」
その言葉に、レオンの力が抜けた。
彼はその場に崩れ落ち、拳を床に叩きつけた。
リアナが一歩進み出て、ユウマの肩に手を置いた。
「行きましょう、ユウマ。もう、あなたは過去じゃなく未来を見ている。」
「……はい。」
二人がギルドを去る。
その背中を、レオンはただ見送るしかなかった。
かつての“勇者”と、“お荷物”。
今や、その立場は完全に入れ替わっていた。
静寂の中、受付嬢がぽつりと呟く。
「本物の勇者って……ああいう人のことを言うのね。」
その言葉に、誰も反論できなかった。
――この日、ギルドは一人の堕落者と、一人の英雄を見届けた。
そして世界は静かに、“真の勇者”の名を知ることになる。
---
(文字数:約2,510字)
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