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第3章 栗林の企み
朝のひととき
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翌朝
「部長、朝ですよ」
僕は起き上がり、ソファーにそのまま座った。
昨夜は吐きすぎたせいか、胃が痛くて具合が悪い。
「大丈夫ですか?」
「あ~大丈夫だ」
「昨夜はすいません。私もかなり酔ってしまって、部長がトイレに行っている間にベッドで寝てしまいました。」
渡辺さんの心の声が聞こえた。
(酔い潰れた私を介抱してくれてありがとうございました。)
「いや、当たり前だよ」
ヤバイ、つい心の声に答えてしまった。
「寝てしまった事を当たり前だなんて、他の女性にもこんな事をしているんですか?」
僕は慌てて
「女性では無くて、男性だよ。後輩達は僕が風呂に入っている間に、ベッドを占領して眠ってしまうからね」
と笑って、ありもしない嘘を語った。
「さて、そろそろ部屋を出ようか?君は先に出てそのまま帰りなさい。
いいね?」
「はい」
と渡辺さんは笑顔で答える。
その笑顔に20歳近く離れている事を忘れて、思わず胸が熱くなった。
渡辺さんがドアに向かって歩き出した。
「ごめん渡辺さん」
彼女は振り返り僕を見た。
「今度また飲みに行こう」
「はい、約束ですよ」
と笑顔で答えて、部屋を出て行った。
僕は彼女が部屋を出て行った後、しばらくベッドに横たわり、彼女の残り香に包まれて1時間ほど体を休めてチェックアウトをした。
「おい!前田」
後ろから男性の声がしたが、すぐに栗林だと分かった。
何も知らない素振りで、挨拶をする。
「あ~おはよう。栗林もここに泊まったんだ?」
「おう、あの後、二次会があったからな。」
あれ?
何か態度がおかしいな?
心の声が聞こえる。
(渡辺の口を塞ぐにはどうすれば・・・)
そうか、昨夜無理矢理、渡辺さんを抱こうとした事を会社で噂される事を心配しているのか。
まあ、そりゃあそうだろうな。はっきり言ってあれは犯罪だ。
少しは懲りた方が、コイツの為だろう。
「じゃあな」
とホテルを出ようとしたが、
「おっおい、前田!」
血相を変えて僕の袖を掴む。
「何?」
袖をすぐに離し、
「ごめん、ちょっと相談があるんだ。そこの喫茶店に寄れないか?」
まあ特に用事も無いし、話を聞いてやるか
「まあ、少しならいいよ」
二人は喫茶店に入り、対面に座ると栗林がいきなり頭を下げて話し始める。
「前田、助けてくれ!」
「おい、どうしたんだよ」
「実は昨日、酔っ払って君をホテルまで運んで来た女性社員に手を出してしまった。」
勿論、一部始終知っているが
「えっ?肉体関係を持ったのか?」
「いや、未遂で終わったんだが・・・」
「渡辺さんがどう思っているのか分からないけど、やってしまったのだから、あとは彼女次第だよな。」
「そこを前田から事を大きくしない様に頼んでくれよ。」
「俺が?」
「ダメか?」
「俺が頼む事では無いだろ!」
「俺には女房も子供もいるんだ。ここでクビになる訳にはいかないんだよ。頼む、君からあの子に事を荒げない様に言ってくれ、この通りだ」
と顔を机に擦り付けて、頼み込んできた。
「おい、こんな所で止めろよ!」
「マジで頼むよ。月曜日に会社に行く前までに話をつけてくれないか」
「そんな事は無理だよ。彼女の電話番号すら知らない。」
「会社に行けば、部下の連絡先ぐらいわかるだろう?」
「仮に彼女へ連絡が出来たとしても、説得できるかなんて約束出来ないよ。」
「それでもいいから、一度彼女に頼んでみてくれ。」
まったくしょうがない。
今日は土曜日だから、これから会社に行って連絡先を調べて、今日の夜か明日に電話してやるか。
「約束は出来ないけど、やってみるよ」
「ありがとう、前田、本当にありがとう」
と僕の手を強く握ってきた。
僕は咳を立ち
「じゃあ期待しないでくれよ」
と言って、頼んだコーヒーも飲まずに店を出た。
「部長、朝ですよ」
僕は起き上がり、ソファーにそのまま座った。
昨夜は吐きすぎたせいか、胃が痛くて具合が悪い。
「大丈夫ですか?」
「あ~大丈夫だ」
「昨夜はすいません。私もかなり酔ってしまって、部長がトイレに行っている間にベッドで寝てしまいました。」
渡辺さんの心の声が聞こえた。
(酔い潰れた私を介抱してくれてありがとうございました。)
「いや、当たり前だよ」
ヤバイ、つい心の声に答えてしまった。
「寝てしまった事を当たり前だなんて、他の女性にもこんな事をしているんですか?」
僕は慌てて
「女性では無くて、男性だよ。後輩達は僕が風呂に入っている間に、ベッドを占領して眠ってしまうからね」
と笑って、ありもしない嘘を語った。
「さて、そろそろ部屋を出ようか?君は先に出てそのまま帰りなさい。
いいね?」
「はい」
と渡辺さんは笑顔で答える。
その笑顔に20歳近く離れている事を忘れて、思わず胸が熱くなった。
渡辺さんがドアに向かって歩き出した。
「ごめん渡辺さん」
彼女は振り返り僕を見た。
「今度また飲みに行こう」
「はい、約束ですよ」
と笑顔で答えて、部屋を出て行った。
僕は彼女が部屋を出て行った後、しばらくベッドに横たわり、彼女の残り香に包まれて1時間ほど体を休めてチェックアウトをした。
「おい!前田」
後ろから男性の声がしたが、すぐに栗林だと分かった。
何も知らない素振りで、挨拶をする。
「あ~おはよう。栗林もここに泊まったんだ?」
「おう、あの後、二次会があったからな。」
あれ?
何か態度がおかしいな?
心の声が聞こえる。
(渡辺の口を塞ぐにはどうすれば・・・)
そうか、昨夜無理矢理、渡辺さんを抱こうとした事を会社で噂される事を心配しているのか。
まあ、そりゃあそうだろうな。はっきり言ってあれは犯罪だ。
少しは懲りた方が、コイツの為だろう。
「じゃあな」
とホテルを出ようとしたが、
「おっおい、前田!」
血相を変えて僕の袖を掴む。
「何?」
袖をすぐに離し、
「ごめん、ちょっと相談があるんだ。そこの喫茶店に寄れないか?」
まあ特に用事も無いし、話を聞いてやるか
「まあ、少しならいいよ」
二人は喫茶店に入り、対面に座ると栗林がいきなり頭を下げて話し始める。
「前田、助けてくれ!」
「おい、どうしたんだよ」
「実は昨日、酔っ払って君をホテルまで運んで来た女性社員に手を出してしまった。」
勿論、一部始終知っているが
「えっ?肉体関係を持ったのか?」
「いや、未遂で終わったんだが・・・」
「渡辺さんがどう思っているのか分からないけど、やってしまったのだから、あとは彼女次第だよな。」
「そこを前田から事を大きくしない様に頼んでくれよ。」
「俺が?」
「ダメか?」
「俺が頼む事では無いだろ!」
「俺には女房も子供もいるんだ。ここでクビになる訳にはいかないんだよ。頼む、君からあの子に事を荒げない様に言ってくれ、この通りだ」
と顔を机に擦り付けて、頼み込んできた。
「おい、こんな所で止めろよ!」
「マジで頼むよ。月曜日に会社に行く前までに話をつけてくれないか」
「そんな事は無理だよ。彼女の電話番号すら知らない。」
「会社に行けば、部下の連絡先ぐらいわかるだろう?」
「仮に彼女へ連絡が出来たとしても、説得できるかなんて約束出来ないよ。」
「それでもいいから、一度彼女に頼んでみてくれ。」
まったくしょうがない。
今日は土曜日だから、これから会社に行って連絡先を調べて、今日の夜か明日に電話してやるか。
「約束は出来ないけど、やってみるよ」
「ありがとう、前田、本当にありがとう」
と僕の手を強く握ってきた。
僕は咳を立ち
「じゃあ期待しないでくれよ」
と言って、頼んだコーヒーも飲まずに店を出た。
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