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4. Reincarnation
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壇上の者は、スクリーンが見える座席へ移動し、ラブは仲間のもとへ着席した。
「お疲れ様でございます」
「ほんと疲れるわ、慣れないスーツって💦」
「あのプロジェクトのことは?」
「初耳よ。理論的には分かるけど…果たして狙い通りの結果が出せるかは疑問ね」
「猫の手も借りたいってやつじゃねぇか」
聞こえた何人かが振り返る。
「T2!…すみません」
「あ、い、いえ…別に💦」
まさかラブがいるとは思ってなかった。
「始まりますわよ」
『第12号:幼女食人連続殺人事件』
「刑事課の神崎昴です」
4件の中で最も残虐な事件である。
「これまでに発見されているのは、今朝の1件を加えて…10件で、被害者は…25名」
疲れ切ったか細い声で伝える昴。
それを咎《とが》める者はいない。
【共通点】
①12才以下の子供がターゲットである。
②全てが江戸川区内で発生。
③全裸でテーブルに手足を釘で固定され、
生きたまま、目の前で体の一部を切り
取られて、食べられるのを見せている。
④テーブルにはワイングラスがあり、
血液が入れられている。
⑤家族は椅子に縛られ、子供の死後に殺害。
⑥犯行時刻は22時~24時
【手ががり】
❶25~26㎝のビジネスシューズの靴跡
❷ワイングラスのDNA
説明しながら、凄惨な現場の写真がスクリーンに写されていた。
途中、警察官が何人も部屋を飛び出し、トイレへ駆け込んだ。
死体を見慣れている者でも、その限界を超えている映像ばかりであり、無理もない。
「被害者の共通点はなく、子供を狙った無差別殺人と考えられます。目撃者情報で、共通するものはなく、唯一のDNAも、警察のデータには一致するものはありません」
「ポイントは、江戸川区と洋食ね。何か意味がある気がするわ」
咲の勘も鋭い。
「なぜ、地域が分かっていて、止められないんだ?」
「江戸川区に、12才以下の子供を持つ家庭がいくつあると思いますか?全国の警察官を動員しない限り、防げません。更に、今は他の事件でも人手が足りないのに…」
悔しさと怒りが込み上げてくるのを、必死で抑える昴。
「富士本君、彼にはもう限界じゃないかね?」
「高松総監、心遣いありがとうございます。ですが、彼の心は強い。あの拳を見てください」
握り締めた拳から、血が流れていた。
「毎回毎回、治る間もなく握り締めているんです。今、彼を外すことはできません」
(アイ)ラブが情報を求める。
(江戸川区の対象数は、約1万7000件です)
「昴さん。江戸川区の全対象の監視は、私に任せてください。2日もあれば、設置します」
「ラブさん、本当に可能かね?警察官は回せないがと思うが…」
「高松さん、設備は我が社に十分あります。警察の方は必要ありません。お任せください」
(アイ、リストを地区別に小分けして、マイクロカメラと防犯発信機をお願い)
(了解しました)
この時、ヴェロニカはじっと京極を見ていた。
(変化なし…か)
『第13号:指切り連続殺人事件』
「刑事課長代理、鳳来咲です」
「彼女は、自分のスタイルを貫いてるね~」
ミニスカにハイヒール、そして黒サングラス。
T2が感心する。
「もしかして…私に何か言いたいのT2🔥」
「帰ってからにしてくださいな」
慣れてるヴェロニカが、サラリとあしらう。
「現在のところ、発見されている遺体は12体。被害者は全て女性で、共通点は認められてないわ。遺体は全て都内の公園に遺棄されてるけど、殺害現場は別のどこか。車を使って運んでいるとは思うんだけど、不審者や不審な車の情報は全くないのよね」
発言中は自分の世界に入り込むため、ヒールの音がコツコツ動く度に、男性陣の視線がそれを追う。
(全く、こいつらときたら………)
ふと横を見る富士本。
お隣の警視総監様も、同じ男性であった💧
【共通点】
①死体遺棄の場所は都内の公園。
②被害者は若い女性。
③被害者は指を1本切り取られている。
④殺害現場は別の場所
【手がかり】
❶同じスポーツシューズかスニーカー。
❷代々木公園で採取した繊維
「記録では、通報数より遺体の数が多いが?」
視線は別にして、見るべきものと聞くべき点はシッカリしている総監。
「警察犬を投入して、都内各地の公園を順番に捜索したところ、追加で発見されたのよ」
「では、まだまだ被害者はいると?」
「そうね、まだ3分の1くらいだから、私の勘では20体以上はあるかと」
場内が騒つく。
目を閉じるラブ。
「ラブ様、これでしょ」
ヴェロニカが書類を渡す。
「今朝の時点で、失踪届けが出されている都内の若い女性は、93名でございます。ただ…実際にはその3倍はいると考えられますわ」
気になる点は労を惜しまず調べ、また、ラブの考えそうなこともほぼ分かっていた。
「ポイントは、なぜ指と公園に拘るか?ね」
憶測で騒つく会場。
「淳、次お願い」
意見無しと判断し、咲が進める。
『第14号:連続死体解体遺棄事件』
「刑事課の宮本淳一です。被害者は現在9人で、いずれもバラバラの状態で発見されています。まぁ…過去のバラバラ殺人とは大きく異なり、解体と言った方が正しい状態です。被害者の年齢や性別には一貫性はなく、殺害現場と解体現場も手がかり無しです」
【共通点】
①被害者は完全に解体されている。
②被害者の一部が欠けている。
③練馬区、杉並区、世田谷区で発見。
【手がかり】
❶切り口から、凶器はメスと推定できる。
❷骨も医療用の電動ノコギリと推定できる。
❸犯人は高度な医療知識を持つ者
「欠けている部位に特徴は?」
「目、鼻骨、爪、背骨、など様々ですが、一番多いのが肋骨です」
「バラバラなら、犬などの動物が持ち逃げした可能性もあるのではないかね?」
「はい。可能性はあります。ですが…それなら普通は、肉や臓器を選ぶのでは?と思います」
事件報告が続く毎に騒めきが増す。
「何の為に一部を持ち去るか?がネックね」
「紗夜、ラストお願い」
「目と皮膚と爪に骨…か…なるほど」
呟いたラブがヴェロニカを見る。
「私もそう確信しておりますわ」
(頼りになる仲間だわ)
『第15号:老人施設連続不審死事件』
「刑事課の宮本 紗夜《さや》です」
(あれが、例の…)
(バカ、読まれるぞ)
気にせずに、紗夜が始める。
「現在都内の老人ホームや介護施設を順次廻って確認していますが、届け出がされていない不審死と思われるものが多数あり、今のところ44名の老人が、薬の多量投与された後に亡くなっていることが分かっています」
「違法レベルではない…と聞いているが?」
「はい総監。確かに致死量ではありません。ただし、通常の投与量ではないことは明らかで、医療ミスとは考えられない発生数です」
「投与した看護師はわからんのかね?」
「それが…調べて分かったのですが、ホームや施設の管理はどこも杜撰《ずさん》で、投与者名も不明確なんです。また、都内に3つある大きな介護団体・医療機関を、どの場所も利用していて、リストで確認しましたが、現場施設に共通して関与している者はいませんでした」
「では、複数犯…もしくは、リストにない誰かってことね」
【共通点】
①被害者は老人。
②発生場所老人ホーム、介護施設。
③死因は、薬の過剰摂取。
④外部団体・機関の介入。
⑤杜撰な管理(侵入者もあり得る)。
【手がかり】
❶医療知識、特に薬剤師並みの知識人。
❷侵入し易い現場。
❸杜撰な管理を知っている。
「厄介だな…今の調査状況は?」
「まだ、都内の老人ホーム、介護施設の10%程度です…」
「で、では被害者はまだまだ…」
「はい。今までの比率で想定すると、数百人に及ぶ可能性が…あります」
場内がどよめく。
「え~以上が、今起きている猟奇的連続殺人事件の状況です。何か意見や気づいたことがあれば発言を」
各対策本部の責任者4名(昴、咲、淳一、紗夜)は、壇上に残る。
「ハイ!よろしいかしら?」
ここぞとばかりに手を上げ、承諾もないうちに、前へと歩き出す。
「ど…どうぞ」
「TERRAのヴェロニカと申します。まず一つ。プロジェクトメンバーの京極教授、滝川博士、安斎博士は、なぜ発言なさらないのでしょうか?」
(そうだ、いるだけじゃ意味がない)
(博士とか、ビビってるんじゃないか?)
陰口と批判的な目が多い。
「代表して、答えましょう、ヴェロニカ博士」
京極恒彦が立ち上がる。
「私達は、提示された事実を他の症例と合わせて、分析した結果を求めます。憶測での発言は先入観になり、分析の妨げになりますので」
「なるほど。では、分析している犯罪データは、日本のものでございましょうか?」
「もちろん。警察から提供頂いたものなので」
壇上で目を閉じている、紗夜の頭が瞬間傾く。
それに気づいた富士本が、京極を見る。
(今のは偽りか…)
「警視総監様、少しお時間を頂いてよろしいでしょうか?」
「かまわんよ。君の頭脳は世界最高レベルと聞いている。実はかなり前に、君のお母さんに会ったこともある。彼女も素晴らしい頭脳の持ち主であった」
「では、少々捜査を混乱させてしまうかもしれませんが、重要なことですので」
「警視庁史上最悪の事件。と言いますが、世界的に見れば、この様な事件はたくさんございます。京極様、あなたはご存知のはず」
動揺せず、掌を差し出し、軽くおじきをする。
「どうぞ、続けて」の意味である。
「これら4件のシリアルキラーは、全て海外で実在したものと同じでごさいます」
「シリアルキラー…切り裂きジャックの様なものかね?」
「あれは、現実性が乏しい逸話にすぎません」
モニター用パソコンに、メモリースティックを差し込むヴェロニカ。
「まずは、指切り連続殺人事件。これと同じ事件が、モスクワで『チェスボード・キラー』と呼ばれた殺人鬼、アレクサンドル・ピチュシキン。遺体は公園に埋められ、指を切り取られています」
モニターに史実と写真が映る。
「確かに、同じだ…」場内が騒つく。
「通称の由来は、切り取った指を、ピンでチェスボーに刺していたことから来てございます。マス目は64。彼は逮捕されるまでに63人を殺害しており、後一人の…」
「で、では今回も64人まで続くのか?」
会場の一人が思わず問う。
「それは分かりません。もしかすると、既に達成しているかも知れませんし、日本の将棋盤なら81マス、囲碁盤となれば、更に…」
騒めきが、どよめきに変わる。
「次に、連続死体解体遺棄事件は、アメリカウィスコンスィン州で『ブレインフィールドの解体職人』と呼ばれた殺人鬼、エド・ゲイン。彼は、9人を解体し、死体から奪った皮膚や骨で記念品を作っています」
「こ、これも同じだ…」
少し間を置き、続ける。
静まりかえる会場。
「次の老人施設連続不審死事件は、通称『ヘルスケア・キラー』。カルフォルニア州の呼吸療法士により、推定で200人以上を殺害しております」
「に、200人だと!」
「はい。ただ…今回の様に微妙な殺害方法であるためと老人が多いことから、殺人と分かるのが遅れ、正確な被害者は不明でございます」
「……」
「最後に、第12号:幼女食人連続殺人事件」
(ふぅ~)昴を見るヴェロニカ。
「通称『ブルックリンの吸血鬼』アルバート・フィッシュ。アメリカ史上最悪の殺人鬼よ。ニューヨーク州で約400人の児童に暴行や殺人をおこない、殺した場合は、時間をかけてその全部位を食べています」
また何人かが、堪えきれず部屋を出て行く。
「彼の場合は、その食人の方法や味などを手紙に細かく書いて、担当警察官に送りつけたりもしております。腎臓を同封して」
富士本の背筋に寒気が走る。
「確かに、全て酷似しているが、模倣犯と言うことなのか?」
寒気を振り切る様に、富士本が答えを求める。
「これは…模倣犯の域を超えてますね」
心理学の滝川が、指摘した。
「模倣犯の場合は、ただの快楽殺人に過ぎません。ここまで同じ手口で、連続させることができるとしたら…」
「精神的憑依…犯人は完全に彼らに成り代わっている可能性があります」
精神医学の安斎である。
「多重人格も、その一つと言われていて、知らない言語を話したりするケースも少なくありません」
「憑き物…と言うことか?安斎さん」
「富士本さん、科学者にその答えは無理でございます。」
ヴェロニカがフォローし、安斎が軽く頭を下げる。
「皆様、西洋に悪魔憑きや、神の生まれ変わりなどの表現がある様に、この日本には、輪廻と呼ぶものがございます」
「輪廻…」紗夜が呟く。
「諸外国でも最近は『Reincarnation』と言う言葉が使われる様になりました」
「Reincarnation…輪廻転生《りんねてんしょう》…ですか?」
「ええ、滝川さんの心理学の中でも、避けては通れない壁ですわね」
「た…確かに」
「京極教授様、これらの海外のシリアルキラーも含めて、行動分析をよろしくお願いいたします。以上でございます」
壇上から降りるヴェロニカに、賞賛の拍手が鳴り響く。
(浅はかな…事態は何も変わってないのに)
ラブが立つ。
「静かに!」の一喝で、ピタリと止んだ。
規律、これが日本の警察が優秀と言われる一つの理由である。
「既に江戸川区の12歳以下の子供がいる家には、防犯機器のセットが始まりました。明日には完了します」
昴が頭を下げる。
「それから咲さん、あなたが強いのはわかりますが、残忍な犯人ですので、ティークをつかせます」
「あら、あのクールな方ね、サンキュー」
ヴェロニカが妬くが、仕方ない。
「よし、諸君!私は君らを信じる。解散❗️」
かくして、再び捜査開始である。
Reincarnation、輪廻転生。
この言葉が、頭に響いたまま…
「お疲れ様でございます」
「ほんと疲れるわ、慣れないスーツって💦」
「あのプロジェクトのことは?」
「初耳よ。理論的には分かるけど…果たして狙い通りの結果が出せるかは疑問ね」
「猫の手も借りたいってやつじゃねぇか」
聞こえた何人かが振り返る。
「T2!…すみません」
「あ、い、いえ…別に💦」
まさかラブがいるとは思ってなかった。
「始まりますわよ」
『第12号:幼女食人連続殺人事件』
「刑事課の神崎昴です」
4件の中で最も残虐な事件である。
「これまでに発見されているのは、今朝の1件を加えて…10件で、被害者は…25名」
疲れ切ったか細い声で伝える昴。
それを咎《とが》める者はいない。
【共通点】
①12才以下の子供がターゲットである。
②全てが江戸川区内で発生。
③全裸でテーブルに手足を釘で固定され、
生きたまま、目の前で体の一部を切り
取られて、食べられるのを見せている。
④テーブルにはワイングラスがあり、
血液が入れられている。
⑤家族は椅子に縛られ、子供の死後に殺害。
⑥犯行時刻は22時~24時
【手ががり】
❶25~26㎝のビジネスシューズの靴跡
❷ワイングラスのDNA
説明しながら、凄惨な現場の写真がスクリーンに写されていた。
途中、警察官が何人も部屋を飛び出し、トイレへ駆け込んだ。
死体を見慣れている者でも、その限界を超えている映像ばかりであり、無理もない。
「被害者の共通点はなく、子供を狙った無差別殺人と考えられます。目撃者情報で、共通するものはなく、唯一のDNAも、警察のデータには一致するものはありません」
「ポイントは、江戸川区と洋食ね。何か意味がある気がするわ」
咲の勘も鋭い。
「なぜ、地域が分かっていて、止められないんだ?」
「江戸川区に、12才以下の子供を持つ家庭がいくつあると思いますか?全国の警察官を動員しない限り、防げません。更に、今は他の事件でも人手が足りないのに…」
悔しさと怒りが込み上げてくるのを、必死で抑える昴。
「富士本君、彼にはもう限界じゃないかね?」
「高松総監、心遣いありがとうございます。ですが、彼の心は強い。あの拳を見てください」
握り締めた拳から、血が流れていた。
「毎回毎回、治る間もなく握り締めているんです。今、彼を外すことはできません」
(アイ)ラブが情報を求める。
(江戸川区の対象数は、約1万7000件です)
「昴さん。江戸川区の全対象の監視は、私に任せてください。2日もあれば、設置します」
「ラブさん、本当に可能かね?警察官は回せないがと思うが…」
「高松さん、設備は我が社に十分あります。警察の方は必要ありません。お任せください」
(アイ、リストを地区別に小分けして、マイクロカメラと防犯発信機をお願い)
(了解しました)
この時、ヴェロニカはじっと京極を見ていた。
(変化なし…か)
『第13号:指切り連続殺人事件』
「刑事課長代理、鳳来咲です」
「彼女は、自分のスタイルを貫いてるね~」
ミニスカにハイヒール、そして黒サングラス。
T2が感心する。
「もしかして…私に何か言いたいのT2🔥」
「帰ってからにしてくださいな」
慣れてるヴェロニカが、サラリとあしらう。
「現在のところ、発見されている遺体は12体。被害者は全て女性で、共通点は認められてないわ。遺体は全て都内の公園に遺棄されてるけど、殺害現場は別のどこか。車を使って運んでいるとは思うんだけど、不審者や不審な車の情報は全くないのよね」
発言中は自分の世界に入り込むため、ヒールの音がコツコツ動く度に、男性陣の視線がそれを追う。
(全く、こいつらときたら………)
ふと横を見る富士本。
お隣の警視総監様も、同じ男性であった💧
【共通点】
①死体遺棄の場所は都内の公園。
②被害者は若い女性。
③被害者は指を1本切り取られている。
④殺害現場は別の場所
【手がかり】
❶同じスポーツシューズかスニーカー。
❷代々木公園で採取した繊維
「記録では、通報数より遺体の数が多いが?」
視線は別にして、見るべきものと聞くべき点はシッカリしている総監。
「警察犬を投入して、都内各地の公園を順番に捜索したところ、追加で発見されたのよ」
「では、まだまだ被害者はいると?」
「そうね、まだ3分の1くらいだから、私の勘では20体以上はあるかと」
場内が騒つく。
目を閉じるラブ。
「ラブ様、これでしょ」
ヴェロニカが書類を渡す。
「今朝の時点で、失踪届けが出されている都内の若い女性は、93名でございます。ただ…実際にはその3倍はいると考えられますわ」
気になる点は労を惜しまず調べ、また、ラブの考えそうなこともほぼ分かっていた。
「ポイントは、なぜ指と公園に拘るか?ね」
憶測で騒つく会場。
「淳、次お願い」
意見無しと判断し、咲が進める。
『第14号:連続死体解体遺棄事件』
「刑事課の宮本淳一です。被害者は現在9人で、いずれもバラバラの状態で発見されています。まぁ…過去のバラバラ殺人とは大きく異なり、解体と言った方が正しい状態です。被害者の年齢や性別には一貫性はなく、殺害現場と解体現場も手がかり無しです」
【共通点】
①被害者は完全に解体されている。
②被害者の一部が欠けている。
③練馬区、杉並区、世田谷区で発見。
【手がかり】
❶切り口から、凶器はメスと推定できる。
❷骨も医療用の電動ノコギリと推定できる。
❸犯人は高度な医療知識を持つ者
「欠けている部位に特徴は?」
「目、鼻骨、爪、背骨、など様々ですが、一番多いのが肋骨です」
「バラバラなら、犬などの動物が持ち逃げした可能性もあるのではないかね?」
「はい。可能性はあります。ですが…それなら普通は、肉や臓器を選ぶのでは?と思います」
事件報告が続く毎に騒めきが増す。
「何の為に一部を持ち去るか?がネックね」
「紗夜、ラストお願い」
「目と皮膚と爪に骨…か…なるほど」
呟いたラブがヴェロニカを見る。
「私もそう確信しておりますわ」
(頼りになる仲間だわ)
『第15号:老人施設連続不審死事件』
「刑事課の宮本 紗夜《さや》です」
(あれが、例の…)
(バカ、読まれるぞ)
気にせずに、紗夜が始める。
「現在都内の老人ホームや介護施設を順次廻って確認していますが、届け出がされていない不審死と思われるものが多数あり、今のところ44名の老人が、薬の多量投与された後に亡くなっていることが分かっています」
「違法レベルではない…と聞いているが?」
「はい総監。確かに致死量ではありません。ただし、通常の投与量ではないことは明らかで、医療ミスとは考えられない発生数です」
「投与した看護師はわからんのかね?」
「それが…調べて分かったのですが、ホームや施設の管理はどこも杜撰《ずさん》で、投与者名も不明確なんです。また、都内に3つある大きな介護団体・医療機関を、どの場所も利用していて、リストで確認しましたが、現場施設に共通して関与している者はいませんでした」
「では、複数犯…もしくは、リストにない誰かってことね」
【共通点】
①被害者は老人。
②発生場所老人ホーム、介護施設。
③死因は、薬の過剰摂取。
④外部団体・機関の介入。
⑤杜撰な管理(侵入者もあり得る)。
【手がかり】
❶医療知識、特に薬剤師並みの知識人。
❷侵入し易い現場。
❸杜撰な管理を知っている。
「厄介だな…今の調査状況は?」
「まだ、都内の老人ホーム、介護施設の10%程度です…」
「で、では被害者はまだまだ…」
「はい。今までの比率で想定すると、数百人に及ぶ可能性が…あります」
場内がどよめく。
「え~以上が、今起きている猟奇的連続殺人事件の状況です。何か意見や気づいたことがあれば発言を」
各対策本部の責任者4名(昴、咲、淳一、紗夜)は、壇上に残る。
「ハイ!よろしいかしら?」
ここぞとばかりに手を上げ、承諾もないうちに、前へと歩き出す。
「ど…どうぞ」
「TERRAのヴェロニカと申します。まず一つ。プロジェクトメンバーの京極教授、滝川博士、安斎博士は、なぜ発言なさらないのでしょうか?」
(そうだ、いるだけじゃ意味がない)
(博士とか、ビビってるんじゃないか?)
陰口と批判的な目が多い。
「代表して、答えましょう、ヴェロニカ博士」
京極恒彦が立ち上がる。
「私達は、提示された事実を他の症例と合わせて、分析した結果を求めます。憶測での発言は先入観になり、分析の妨げになりますので」
「なるほど。では、分析している犯罪データは、日本のものでございましょうか?」
「もちろん。警察から提供頂いたものなので」
壇上で目を閉じている、紗夜の頭が瞬間傾く。
それに気づいた富士本が、京極を見る。
(今のは偽りか…)
「警視総監様、少しお時間を頂いてよろしいでしょうか?」
「かまわんよ。君の頭脳は世界最高レベルと聞いている。実はかなり前に、君のお母さんに会ったこともある。彼女も素晴らしい頭脳の持ち主であった」
「では、少々捜査を混乱させてしまうかもしれませんが、重要なことですので」
「警視庁史上最悪の事件。と言いますが、世界的に見れば、この様な事件はたくさんございます。京極様、あなたはご存知のはず」
動揺せず、掌を差し出し、軽くおじきをする。
「どうぞ、続けて」の意味である。
「これら4件のシリアルキラーは、全て海外で実在したものと同じでごさいます」
「シリアルキラー…切り裂きジャックの様なものかね?」
「あれは、現実性が乏しい逸話にすぎません」
モニター用パソコンに、メモリースティックを差し込むヴェロニカ。
「まずは、指切り連続殺人事件。これと同じ事件が、モスクワで『チェスボード・キラー』と呼ばれた殺人鬼、アレクサンドル・ピチュシキン。遺体は公園に埋められ、指を切り取られています」
モニターに史実と写真が映る。
「確かに、同じだ…」場内が騒つく。
「通称の由来は、切り取った指を、ピンでチェスボーに刺していたことから来てございます。マス目は64。彼は逮捕されるまでに63人を殺害しており、後一人の…」
「で、では今回も64人まで続くのか?」
会場の一人が思わず問う。
「それは分かりません。もしかすると、既に達成しているかも知れませんし、日本の将棋盤なら81マス、囲碁盤となれば、更に…」
騒めきが、どよめきに変わる。
「次に、連続死体解体遺棄事件は、アメリカウィスコンスィン州で『ブレインフィールドの解体職人』と呼ばれた殺人鬼、エド・ゲイン。彼は、9人を解体し、死体から奪った皮膚や骨で記念品を作っています」
「こ、これも同じだ…」
少し間を置き、続ける。
静まりかえる会場。
「次の老人施設連続不審死事件は、通称『ヘルスケア・キラー』。カルフォルニア州の呼吸療法士により、推定で200人以上を殺害しております」
「に、200人だと!」
「はい。ただ…今回の様に微妙な殺害方法であるためと老人が多いことから、殺人と分かるのが遅れ、正確な被害者は不明でございます」
「……」
「最後に、第12号:幼女食人連続殺人事件」
(ふぅ~)昴を見るヴェロニカ。
「通称『ブルックリンの吸血鬼』アルバート・フィッシュ。アメリカ史上最悪の殺人鬼よ。ニューヨーク州で約400人の児童に暴行や殺人をおこない、殺した場合は、時間をかけてその全部位を食べています」
また何人かが、堪えきれず部屋を出て行く。
「彼の場合は、その食人の方法や味などを手紙に細かく書いて、担当警察官に送りつけたりもしております。腎臓を同封して」
富士本の背筋に寒気が走る。
「確かに、全て酷似しているが、模倣犯と言うことなのか?」
寒気を振り切る様に、富士本が答えを求める。
「これは…模倣犯の域を超えてますね」
心理学の滝川が、指摘した。
「模倣犯の場合は、ただの快楽殺人に過ぎません。ここまで同じ手口で、連続させることができるとしたら…」
「精神的憑依…犯人は完全に彼らに成り代わっている可能性があります」
精神医学の安斎である。
「多重人格も、その一つと言われていて、知らない言語を話したりするケースも少なくありません」
「憑き物…と言うことか?安斎さん」
「富士本さん、科学者にその答えは無理でございます。」
ヴェロニカがフォローし、安斎が軽く頭を下げる。
「皆様、西洋に悪魔憑きや、神の生まれ変わりなどの表現がある様に、この日本には、輪廻と呼ぶものがございます」
「輪廻…」紗夜が呟く。
「諸外国でも最近は『Reincarnation』と言う言葉が使われる様になりました」
「Reincarnation…輪廻転生《りんねてんしょう》…ですか?」
「ええ、滝川さんの心理学の中でも、避けては通れない壁ですわね」
「た…確かに」
「京極教授様、これらの海外のシリアルキラーも含めて、行動分析をよろしくお願いいたします。以上でございます」
壇上から降りるヴェロニカに、賞賛の拍手が鳴り響く。
(浅はかな…事態は何も変わってないのに)
ラブが立つ。
「静かに!」の一喝で、ピタリと止んだ。
規律、これが日本の警察が優秀と言われる一つの理由である。
「既に江戸川区の12歳以下の子供がいる家には、防犯機器のセットが始まりました。明日には完了します」
昴が頭を下げる。
「それから咲さん、あなたが強いのはわかりますが、残忍な犯人ですので、ティークをつかせます」
「あら、あのクールな方ね、サンキュー」
ヴェロニカが妬くが、仕方ない。
「よし、諸君!私は君らを信じる。解散❗️」
かくして、再び捜査開始である。
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