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5. 知られざる失踪
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~東京都文京区 六義園~
ティークと咲が捜査員を連れて到着。
「で、どうやって探すのよ?」
園内マップを持って、高い場所に上がる。
「あのさ、クールガイさん、マップ似合わないんだけど」
振り向くティーク。
「……💧」
「咲さん、彼って結構繊細なのよね💦取扱い注意してね。彼の右目にはスパイアイってのが仕込まれてて、透視できるから役に立つはず」
咲を見つめるティーク。
「透視?えっ!やだ、何見てんのよ、あっちあっち💦」
園内を見渡し、マップに丸印を付けていく。
「これはひどいな…」
マップを差し出す。
「お仲間さんに、ここをよろしく」
胸を押さえながら、受け取る。
(そ…そんな…)
マップには、5箇所に丸が付いていた。
「次、…安心しろ、そんな趣味はない💧」
片手で胸をかばう咲に告げた。
「ラブ、ヘリを回してくれ」
そう言って、車には乗らず、近くにあったホテルへ入り、エレベーターで最上階へ。
「ヘリは大丈夫か?」
「だから、見ないでって💦」
「咲さんったら…💧まぁ…いいか」
繋いでいた通信を切るラブ。
屋上への扉はロックされている。
「そりゃ普通そうよ、全く…えっ?」
鍵穴に、何かを差し込み、ボタンを押す。
「ガチャ」
「えぇ~⁉️」
ドアを開けると、ヘリが待っていた。
素早く乗り込み、後ろを見る。
(おっと、そうか)
ハッチを開け、手を差し伸べる。
「腕組んでないで早く手を出せ」
仕方なく片方の手を伸ばす。
「ふわっ」一瞬にして後部座席に座る咲。
差し出されたヘルメットをかぶる。
「さあいくぜ」
の言葉が終わるより早く上昇する。
「シークレットモード」
ヘリのエンジン音が消えた。
外観は周囲の景色と同化し、視認できない。
(カッコいいじゃないの…意外と💖)
タブレット上の公園マップに、印を付けていくティーク。
1時間半程で、未確認であった公園や庭園の確認が終了し、警視庁対策本部ビルへ戻った。
「おつかれ」
咲をおろし、タブレットを渡す。
「あ…ありがとう」
エレベーターで5階の刑事課フロアを押す。
「………」気まずい間《ま》。
エレベーターが開き、先に促すティーク。
「おお、咲。早かったな」
「咲さんおつかれ様」紗夜が来る。
「ダメダメ!紗夜ダメよ💦」
「……💧」(ティーク)
「咲さん、スパイアイで透視したら、せいぜい見えても骨よ」
「そんなもの見ないがな💧」
凹みきってるティークであった。
「えっ?そうなの、骨?…やっぱり嫌よ💦」
富士本とラブがデータマップを確認する。
「あっ、もしかして…咲さんここ!」
タブレットデータを見ていたラブが呼ぶ。
モニターに映し出す。
「小石川後楽園。ここはまだ一体も遺棄されていないわ」
(アイ)
大きなメインモニターに、東京都の公園や、庭園が映る。
「ラブ様、ポイントは23箇所です」
「な、なにっ!まだそんなに遺体が?」
「富士本さん、人間の遺体とは限りません。動物や、ゴミの場合も十分ありますから」
「よし、すぐに確認しろ!」
「部長…そんな人手は…」
その後ろでラブが電話をかける。
~練馬区 飛鳥神宅~
神の携帯が鳴る。
「ラブです。手の空いてる若者が、100人くらい欲しいんだけど」
「いきなりだな。うちも今ちょっと…」
「時給1万でどうかなぁ~」
「200人くらいなら、すぐにいくぜ!」
変わり身の早い組長さん。
「サンキュー!じゃあ、今から送る地図のポイントに、適当に割り振って、1時間後ね。あとは、警察の指示に従って。よろしく❗️」
「了解!…何?け、けいさ」プツン。
「咲さん、近くの警察にマップ送って、指示をお願い。道具は準備します。念のためTERRAの者も各ポイントへ就かせます」
「富士本さん、各区に許可をお願いします」
「ティーク、夜から咲さんと、小石川後楽園で見張って。もし遺体を遺棄したら、アイが後を追うから、捕まえないでね」
全てを伝え切り、部屋をでるラブ。
「す…凄いですね、ラブさんって💦」
紗夜の呟きにうなずきながら、二人を見送る咲と富士本であった。
~千代田区 京極ビル~
文字通り、京極恒彦が所有するビルである。
ビル内には、天文学、人類学、電子工学、考古学、他、あらゆる分野の研究フロアがあり、多くの学者や学生達が研究をしていた。
もちろん、滝川と安斎の研究フロアもあり、警視庁とのプロジェクトも、行われている。
その合同研究室に、三人がいた。
「京極さん、なぜ海外事例のことを伏せたんですか?」
心理学の滝川には、その心理が読めなかった。
「あれか…警視庁の手前、頂いてるデータでとしか言えないだろう。日本の警察のデータでは、不足だって啖呵《たんか》切るわけにはいかんしな」
「なるほど、そうですね。さすがです」
「しかし、あの紗夜って刑事と、ヴェロニカさんには、見破られてましたわ」
「安斎さんも、そう感じましたか。正直、ヴェロニカさんのReincarnationには、驚きました」
「ですね。輪廻転生説が正なら、私達の行動分析の理論では解明出来ないことになります」
「心理学の滝川さんに、そう言われちゃ身も蓋もない。とにかく、今は今日得た情報を加味して、まずは残忍な日本版ブルックリンの吸血鬼とらやを分析しましょう」
貰ったデータを読み込み、今までのデータと複合させ、行動解析の細かい作業に取組む。
「では、あとは君たちの専門分野だ、なんとか明日には、粗方の結果を提示できるよう、頑張ってください」
「了解です、京極さんは上で、この成果を論文にしてください」
と、答えたものの、事件の生々しい事実を見た二人には、過去のシリアルキラーとの共存要素を振り切れずにいたのである。
(論文に…か)
エレベーターに乗り、…下へ降りていく。
~TERRA 地下20m~
ここは、ラブ達の本拠地であり、極一部の者しか知らない空間であった。
「アイ、京極ビルはどう?」
「つい先ほど、繋がりました」
「気付かれない様に慎重にね」
京極ビルは、外部とのネットワークを、完全に遮断していた。
そのため、シリアルキラーのデータに、TERRA専用の通信ウィルスを忍ばせていた。
「しかしさすがヴェロニカ。見直したぜ」
「T2に褒められると不気味ですわ」
「確かに、まさかあなたが輪廻転生を切り出すとは、意外だったわ」
「輪廻?転生?オホホホ。そんなもの科学者の私が信じるわけないでしょう」
「はぁ?じゃああれは…」
(ヴェロニカ…ハメたわね、京極を!)
「今頃、あの三人、いや少なくとも二人は悩んでいるでことでこざいましょう」
「しかし、確かに同じ手口だぜ」
「もちろんです。でもあり得ないのよ、チェスボードキラーは、まだ無期懲役で服役中でございますから」
「生きてんのか❗️」
「京極恒彦。彼は何か怪しいわね」
「はい、最初から彼は、凄惨な写真を見ても、全く無反応でごさいました」
「仕事柄、見慣れてんじゃねぇか?」
「もしくは知っていた…って可能性もあるわ」
彼の仕草や、彼から感じたイメージを辿る。
「あの時の、警視総監への協力意思に、偽りは無かったわ」
嫌な予感がした。
「ヴェロニカ、本部へ戻りましょう。T2とアイは、彼らの研究内容を探って、気付かれない様にね」
「はい」「任せろ!」
~警視庁対策本部~
23:00
富士本が、各対策本部の指揮者を招集した。
ラブとヴェロニカが入ってくる。
(アイ、小石川後楽園の様子は?)
(今のところ何も)
(何かおかしい…)ラブの勘も咲に負けない。
入るなり、指を唇に当てるラブ。
(アイ、スキャン)
ラブの目を通して、部屋中をスキャンする。
ラブが富士本へと近づく。
指は唇に当てたまま。
首の後ろのスーツの襟をめくる。
そこに、小さな盗聴器があった。
(富士本さん、ラブです。別室の対策室へ行って、リモートで参加してください。発言はチャットで、音声はこれで)
イヤホン形通信機を渡す。
初めてのテレパシー通信に驚きながらも、別室へ向かう。
「まさか、盗聴されてたとはな」
「アイ、小石川後楽園の次に遺体の少ない場所はどこ?」
「練馬区の光が丘公園が、1体です」
「すぐに監視を!」
指示を出し、電話をかける。
「は~い、咲よ。ラブ、な~んにも現れないんだけど」
「咲さん対策室は、盗聴されていました。練馬区の光が丘公園へ向かって下さい」
「了解!タフガイさん、よ・ろ・し・く❣️」
助手席を倒し、ミニスカからダッシュボードの上へ伸ばした足を組み替える。
「………💧」
お色気攻撃が、無意味と知らない咲であった。
「いったい誰が盗聴器を…」
紗夜が記憶を探る。
ラブとヴェロニカは、確信していた。
しかし、その理由が分からない。
先程のヴェロニカの話を伝える。
「チェスボードキラーは生きてるの⁉️」
紗夜が驚く。
当然の反応である。
「では、あの輪廻転生説は…」
「オホホ。あり得ませんわ。だいたい、1件ならともかく、この文化も違う日本で、更に4件も発生するなんて、心霊学にも関係なく、あり得ない確率でございます」
「そこですね」
優秀な頭脳の昴。
「有り得ない事が3回重なると、それは確率的には偶然ではなくなり、必然性を持ちます」
「では、今回の4件のシリアルキラーは何者かによって、作り出されたもの…」
紗夜の意識が、一人に向かって行く。
~玄関前~
「あのね…毎回毎回、何度も言いますけどね。本っ当に行くんすか」
真っ赤なベンツの中。
「神さん、ヤクザって自覚してます?普通ぅ~はあり得ないって…思いません?」
「いちいちうるせぇなぁ。ヤクザが警察へ来ちゃ行けねぇって法律はねぇだろうが。知らねぇけど…。黙って待ってろ!」
ドアを閉めて、正面玄関への階段を上る。
「その哀愁を帯びた後ろ姿は、カッコイイんだけどなぁ…その先が警視庁って、洒落にもなんねぇ、全く…」
「あっ…お客さんです」
昴が、驚いた顔で告げる。
自動ドアが開いて、飛鳥神が入って来た。
「神さん、どうしたんですか?」
このシチュエーションには慣れた紗夜。
「ついに顔パスになっちまったぜ💧」
もちろんヤクザの自覚はあった。
「神、お手伝いありがとね~。おかげさまで、一日で完了できたわ」
『ラブ!あの200人は、ヤクザか?💦』
富士本のチャットが入る。
『さすが、大正解!』打ち返すラブ。
「言ってなかったかしら…💦」
警察がヤクザの手を借りて、遺体遺棄現場を調べることなど、前代未聞ではある。
残念な結果ではあるが、新たに16名、指を切り取られた遺体が発見された。
いずれも、行方不明の女性達であり、夕方のニュースで、大々的に報道されたのである。
薄暗い通路の突き当たり。
鍵穴に差し込まれる金属音が響く。
扉を開いた瞬間。
「バンッ!」
不意の体当たりに飛ばされる。
が、かろうじてその腕を掴む。
「っ痛!」
鋭い爪がその腕を掠める。
たまらず放す。
「クソっ!」
顔を上げた時には、ソレは長い通路の闇へと、消えていた。
~対策本部~
「神、何があったの?」
警視庁へヤクザの組長が来ること自体、何かあったのは間違いない。
「最近おかしな事が起きててな…」
紗夜とラブが、彼のモヤモヤした心に気付く。
「先日、うちの若ぇ奴が、5年の刑期を終えて出所するんで、迎えを行かせたんだが、到着が少し遅れて、着いた時には居なかったってんだ」
まだ話の見えないご一同。
「まさか、ヤクザが看守を呼び出すわけにもいかず、タクシーでも呼んだんだろうって、帰ぇってきたんだが、それっきり」
「逃げられたんじゃないですか?」
聞こえていた昴が、口を挟む。
「出所前に迎えに行くと伝えてあり、うちで面倒みてる彼女に会うのを楽しみにしててな、出所祝いのケーキまで買って待ってたんだが…」
「ヤクザがケーキ?誕生日なんですか?」
ちょいちょい口出す昴君💧
「ケーキなんて問題じゃねぇ!」
その通りである。
「昴、心配なのは分かるけど、黙ってて」
紗夜が諭す。
「でも、本当に今夜は大丈夫なんですか?」
対策本部の責任者である彼が、『ブルックリンの吸血鬼』を気にするのは当然である。
「ラブさんが、対象家庭の全てに対策をしてくれたんだから、安心していいと思うわ、ねぇ」
「えっ💦あ…あれね、確かに…対策済みだから大丈夫よ、昴さん」
紗夜の疑いの視線を感じるラブ。
「おいおい、話を戻さねぇか?」
「そ、そうよね💦で、それから?」
警察の動きが漏れていると考えたラブ。
あえて警察の手を借りずに、全対象に監視カメラと、防犯装置を設置した。
と、本業でもある芝居で、ハッタリを告知したのであった。
「もしかして…他にも?」
とりあえず、ラブを信じることにした紗夜。
「ああ、傘下の組からも、何件か同じ報告があってな。事件じゃねぇかと」
「出所者失踪事件…」by 紗夜。
「出所者誘拐事件…」byラブ。
「刑務所の出所者が消えても、ほとんどの場合、捜索する者はいないわね」
「神さん、他の組にも聞いて見て、いなくなった人の名前と住所を全部送って下さい」
「紗夜さん、調べてくれんのか?」
「当たり前です。刑を終えた方は、もう一般人と対等の権利がありますから!」
「出所者か……まさか⁉️」
「どうした、ラブ?」
「アイ、犯罪者のDNA登録が開始されたのはいつから?」
「刑務所によって違いはありますが、最も早くて、7年前からです」
「昴さん、ワイングラスのDNA照合ができたのは、DNA登録が始まってからの犯罪者だけよ。それ以前の犯罪者の中にきっとヤツはいる!」
「もしかしたら、神さんの言う、失踪事件とも関連があるかも知れません!」
「何だかしらねぇが、血が騒いできやがった。人手が必要な時は、また強力するぜ!」
「神さんは、とにかくまずリストを」
「了解」神が出て行く。
背後のモニター。
『おい、こら』
『紗夜!』
『ヤクザの手は借りるんじゃない!』
『お~い』
富士本の虚しい叫びが続いていた。
ティークと咲が捜査員を連れて到着。
「で、どうやって探すのよ?」
園内マップを持って、高い場所に上がる。
「あのさ、クールガイさん、マップ似合わないんだけど」
振り向くティーク。
「……💧」
「咲さん、彼って結構繊細なのよね💦取扱い注意してね。彼の右目にはスパイアイってのが仕込まれてて、透視できるから役に立つはず」
咲を見つめるティーク。
「透視?えっ!やだ、何見てんのよ、あっちあっち💦」
園内を見渡し、マップに丸印を付けていく。
「これはひどいな…」
マップを差し出す。
「お仲間さんに、ここをよろしく」
胸を押さえながら、受け取る。
(そ…そんな…)
マップには、5箇所に丸が付いていた。
「次、…安心しろ、そんな趣味はない💧」
片手で胸をかばう咲に告げた。
「ラブ、ヘリを回してくれ」
そう言って、車には乗らず、近くにあったホテルへ入り、エレベーターで最上階へ。
「ヘリは大丈夫か?」
「だから、見ないでって💦」
「咲さんったら…💧まぁ…いいか」
繋いでいた通信を切るラブ。
屋上への扉はロックされている。
「そりゃ普通そうよ、全く…えっ?」
鍵穴に、何かを差し込み、ボタンを押す。
「ガチャ」
「えぇ~⁉️」
ドアを開けると、ヘリが待っていた。
素早く乗り込み、後ろを見る。
(おっと、そうか)
ハッチを開け、手を差し伸べる。
「腕組んでないで早く手を出せ」
仕方なく片方の手を伸ばす。
「ふわっ」一瞬にして後部座席に座る咲。
差し出されたヘルメットをかぶる。
「さあいくぜ」
の言葉が終わるより早く上昇する。
「シークレットモード」
ヘリのエンジン音が消えた。
外観は周囲の景色と同化し、視認できない。
(カッコいいじゃないの…意外と💖)
タブレット上の公園マップに、印を付けていくティーク。
1時間半程で、未確認であった公園や庭園の確認が終了し、警視庁対策本部ビルへ戻った。
「おつかれ」
咲をおろし、タブレットを渡す。
「あ…ありがとう」
エレベーターで5階の刑事課フロアを押す。
「………」気まずい間《ま》。
エレベーターが開き、先に促すティーク。
「おお、咲。早かったな」
「咲さんおつかれ様」紗夜が来る。
「ダメダメ!紗夜ダメよ💦」
「……💧」(ティーク)
「咲さん、スパイアイで透視したら、せいぜい見えても骨よ」
「そんなもの見ないがな💧」
凹みきってるティークであった。
「えっ?そうなの、骨?…やっぱり嫌よ💦」
富士本とラブがデータマップを確認する。
「あっ、もしかして…咲さんここ!」
タブレットデータを見ていたラブが呼ぶ。
モニターに映し出す。
「小石川後楽園。ここはまだ一体も遺棄されていないわ」
(アイ)
大きなメインモニターに、東京都の公園や、庭園が映る。
「ラブ様、ポイントは23箇所です」
「な、なにっ!まだそんなに遺体が?」
「富士本さん、人間の遺体とは限りません。動物や、ゴミの場合も十分ありますから」
「よし、すぐに確認しろ!」
「部長…そんな人手は…」
その後ろでラブが電話をかける。
~練馬区 飛鳥神宅~
神の携帯が鳴る。
「ラブです。手の空いてる若者が、100人くらい欲しいんだけど」
「いきなりだな。うちも今ちょっと…」
「時給1万でどうかなぁ~」
「200人くらいなら、すぐにいくぜ!」
変わり身の早い組長さん。
「サンキュー!じゃあ、今から送る地図のポイントに、適当に割り振って、1時間後ね。あとは、警察の指示に従って。よろしく❗️」
「了解!…何?け、けいさ」プツン。
「咲さん、近くの警察にマップ送って、指示をお願い。道具は準備します。念のためTERRAの者も各ポイントへ就かせます」
「富士本さん、各区に許可をお願いします」
「ティーク、夜から咲さんと、小石川後楽園で見張って。もし遺体を遺棄したら、アイが後を追うから、捕まえないでね」
全てを伝え切り、部屋をでるラブ。
「す…凄いですね、ラブさんって💦」
紗夜の呟きにうなずきながら、二人を見送る咲と富士本であった。
~千代田区 京極ビル~
文字通り、京極恒彦が所有するビルである。
ビル内には、天文学、人類学、電子工学、考古学、他、あらゆる分野の研究フロアがあり、多くの学者や学生達が研究をしていた。
もちろん、滝川と安斎の研究フロアもあり、警視庁とのプロジェクトも、行われている。
その合同研究室に、三人がいた。
「京極さん、なぜ海外事例のことを伏せたんですか?」
心理学の滝川には、その心理が読めなかった。
「あれか…警視庁の手前、頂いてるデータでとしか言えないだろう。日本の警察のデータでは、不足だって啖呵《たんか》切るわけにはいかんしな」
「なるほど、そうですね。さすがです」
「しかし、あの紗夜って刑事と、ヴェロニカさんには、見破られてましたわ」
「安斎さんも、そう感じましたか。正直、ヴェロニカさんのReincarnationには、驚きました」
「ですね。輪廻転生説が正なら、私達の行動分析の理論では解明出来ないことになります」
「心理学の滝川さんに、そう言われちゃ身も蓋もない。とにかく、今は今日得た情報を加味して、まずは残忍な日本版ブルックリンの吸血鬼とらやを分析しましょう」
貰ったデータを読み込み、今までのデータと複合させ、行動解析の細かい作業に取組む。
「では、あとは君たちの専門分野だ、なんとか明日には、粗方の結果を提示できるよう、頑張ってください」
「了解です、京極さんは上で、この成果を論文にしてください」
と、答えたものの、事件の生々しい事実を見た二人には、過去のシリアルキラーとの共存要素を振り切れずにいたのである。
(論文に…か)
エレベーターに乗り、…下へ降りていく。
~TERRA 地下20m~
ここは、ラブ達の本拠地であり、極一部の者しか知らない空間であった。
「アイ、京極ビルはどう?」
「つい先ほど、繋がりました」
「気付かれない様に慎重にね」
京極ビルは、外部とのネットワークを、完全に遮断していた。
そのため、シリアルキラーのデータに、TERRA専用の通信ウィルスを忍ばせていた。
「しかしさすがヴェロニカ。見直したぜ」
「T2に褒められると不気味ですわ」
「確かに、まさかあなたが輪廻転生を切り出すとは、意外だったわ」
「輪廻?転生?オホホホ。そんなもの科学者の私が信じるわけないでしょう」
「はぁ?じゃああれは…」
(ヴェロニカ…ハメたわね、京極を!)
「今頃、あの三人、いや少なくとも二人は悩んでいるでことでこざいましょう」
「しかし、確かに同じ手口だぜ」
「もちろんです。でもあり得ないのよ、チェスボードキラーは、まだ無期懲役で服役中でございますから」
「生きてんのか❗️」
「京極恒彦。彼は何か怪しいわね」
「はい、最初から彼は、凄惨な写真を見ても、全く無反応でごさいました」
「仕事柄、見慣れてんじゃねぇか?」
「もしくは知っていた…って可能性もあるわ」
彼の仕草や、彼から感じたイメージを辿る。
「あの時の、警視総監への協力意思に、偽りは無かったわ」
嫌な予感がした。
「ヴェロニカ、本部へ戻りましょう。T2とアイは、彼らの研究内容を探って、気付かれない様にね」
「はい」「任せろ!」
~警視庁対策本部~
23:00
富士本が、各対策本部の指揮者を招集した。
ラブとヴェロニカが入ってくる。
(アイ、小石川後楽園の様子は?)
(今のところ何も)
(何かおかしい…)ラブの勘も咲に負けない。
入るなり、指を唇に当てるラブ。
(アイ、スキャン)
ラブの目を通して、部屋中をスキャンする。
ラブが富士本へと近づく。
指は唇に当てたまま。
首の後ろのスーツの襟をめくる。
そこに、小さな盗聴器があった。
(富士本さん、ラブです。別室の対策室へ行って、リモートで参加してください。発言はチャットで、音声はこれで)
イヤホン形通信機を渡す。
初めてのテレパシー通信に驚きながらも、別室へ向かう。
「まさか、盗聴されてたとはな」
「アイ、小石川後楽園の次に遺体の少ない場所はどこ?」
「練馬区の光が丘公園が、1体です」
「すぐに監視を!」
指示を出し、電話をかける。
「は~い、咲よ。ラブ、な~んにも現れないんだけど」
「咲さん対策室は、盗聴されていました。練馬区の光が丘公園へ向かって下さい」
「了解!タフガイさん、よ・ろ・し・く❣️」
助手席を倒し、ミニスカからダッシュボードの上へ伸ばした足を組み替える。
「………💧」
お色気攻撃が、無意味と知らない咲であった。
「いったい誰が盗聴器を…」
紗夜が記憶を探る。
ラブとヴェロニカは、確信していた。
しかし、その理由が分からない。
先程のヴェロニカの話を伝える。
「チェスボードキラーは生きてるの⁉️」
紗夜が驚く。
当然の反応である。
「では、あの輪廻転生説は…」
「オホホ。あり得ませんわ。だいたい、1件ならともかく、この文化も違う日本で、更に4件も発生するなんて、心霊学にも関係なく、あり得ない確率でございます」
「そこですね」
優秀な頭脳の昴。
「有り得ない事が3回重なると、それは確率的には偶然ではなくなり、必然性を持ちます」
「では、今回の4件のシリアルキラーは何者かによって、作り出されたもの…」
紗夜の意識が、一人に向かって行く。
~玄関前~
「あのね…毎回毎回、何度も言いますけどね。本っ当に行くんすか」
真っ赤なベンツの中。
「神さん、ヤクザって自覚してます?普通ぅ~はあり得ないって…思いません?」
「いちいちうるせぇなぁ。ヤクザが警察へ来ちゃ行けねぇって法律はねぇだろうが。知らねぇけど…。黙って待ってろ!」
ドアを閉めて、正面玄関への階段を上る。
「その哀愁を帯びた後ろ姿は、カッコイイんだけどなぁ…その先が警視庁って、洒落にもなんねぇ、全く…」
「あっ…お客さんです」
昴が、驚いた顔で告げる。
自動ドアが開いて、飛鳥神が入って来た。
「神さん、どうしたんですか?」
このシチュエーションには慣れた紗夜。
「ついに顔パスになっちまったぜ💧」
もちろんヤクザの自覚はあった。
「神、お手伝いありがとね~。おかげさまで、一日で完了できたわ」
『ラブ!あの200人は、ヤクザか?💦』
富士本のチャットが入る。
『さすが、大正解!』打ち返すラブ。
「言ってなかったかしら…💦」
警察がヤクザの手を借りて、遺体遺棄現場を調べることなど、前代未聞ではある。
残念な結果ではあるが、新たに16名、指を切り取られた遺体が発見された。
いずれも、行方不明の女性達であり、夕方のニュースで、大々的に報道されたのである。
薄暗い通路の突き当たり。
鍵穴に差し込まれる金属音が響く。
扉を開いた瞬間。
「バンッ!」
不意の体当たりに飛ばされる。
が、かろうじてその腕を掴む。
「っ痛!」
鋭い爪がその腕を掠める。
たまらず放す。
「クソっ!」
顔を上げた時には、ソレは長い通路の闇へと、消えていた。
~対策本部~
「神、何があったの?」
警視庁へヤクザの組長が来ること自体、何かあったのは間違いない。
「最近おかしな事が起きててな…」
紗夜とラブが、彼のモヤモヤした心に気付く。
「先日、うちの若ぇ奴が、5年の刑期を終えて出所するんで、迎えを行かせたんだが、到着が少し遅れて、着いた時には居なかったってんだ」
まだ話の見えないご一同。
「まさか、ヤクザが看守を呼び出すわけにもいかず、タクシーでも呼んだんだろうって、帰ぇってきたんだが、それっきり」
「逃げられたんじゃないですか?」
聞こえていた昴が、口を挟む。
「出所前に迎えに行くと伝えてあり、うちで面倒みてる彼女に会うのを楽しみにしててな、出所祝いのケーキまで買って待ってたんだが…」
「ヤクザがケーキ?誕生日なんですか?」
ちょいちょい口出す昴君💧
「ケーキなんて問題じゃねぇ!」
その通りである。
「昴、心配なのは分かるけど、黙ってて」
紗夜が諭す。
「でも、本当に今夜は大丈夫なんですか?」
対策本部の責任者である彼が、『ブルックリンの吸血鬼』を気にするのは当然である。
「ラブさんが、対象家庭の全てに対策をしてくれたんだから、安心していいと思うわ、ねぇ」
「えっ💦あ…あれね、確かに…対策済みだから大丈夫よ、昴さん」
紗夜の疑いの視線を感じるラブ。
「おいおい、話を戻さねぇか?」
「そ、そうよね💦で、それから?」
警察の動きが漏れていると考えたラブ。
あえて警察の手を借りずに、全対象に監視カメラと、防犯装置を設置した。
と、本業でもある芝居で、ハッタリを告知したのであった。
「もしかして…他にも?」
とりあえず、ラブを信じることにした紗夜。
「ああ、傘下の組からも、何件か同じ報告があってな。事件じゃねぇかと」
「出所者失踪事件…」by 紗夜。
「出所者誘拐事件…」byラブ。
「刑務所の出所者が消えても、ほとんどの場合、捜索する者はいないわね」
「神さん、他の組にも聞いて見て、いなくなった人の名前と住所を全部送って下さい」
「紗夜さん、調べてくれんのか?」
「当たり前です。刑を終えた方は、もう一般人と対等の権利がありますから!」
「出所者か……まさか⁉️」
「どうした、ラブ?」
「アイ、犯罪者のDNA登録が開始されたのはいつから?」
「刑務所によって違いはありますが、最も早くて、7年前からです」
「昴さん、ワイングラスのDNA照合ができたのは、DNA登録が始まってからの犯罪者だけよ。それ以前の犯罪者の中にきっとヤツはいる!」
「もしかしたら、神さんの言う、失踪事件とも関連があるかも知れません!」
「何だかしらねぇが、血が騒いできやがった。人手が必要な時は、また強力するぜ!」
「神さんは、とにかくまずリストを」
「了解」神が出て行く。
背後のモニター。
『おい、こら』
『紗夜!』
『ヤクザの手は借りるんじゃない!』
『お~い』
富士本の虚しい叫びが続いていた。
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「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
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