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3. 戦場の絆
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~サウスパーク~
22:00
ウェストストリート沿いのバー、フィッシュ。
店内には女性客が1人だけである。
携帯が鳴る。
着信メールを見て、腰を上げた。
「マスター帰るわ、おやすみ~」
「オゥ、またな」
空のグラスを片付ける。
酔った足取りで店を出た彼女。
店の看板が消える。
向かいに、グランド・ホープ・パークのバス停があった。
この時間、車の数は少ない。
フラフラと通りを渡る。
公園のベンチに無造作にバッグを置く。
ドサッっと崩れる様に座ってバスを待つ。
暫くは携帯をいじっていたが…
疲れていたのか、飲み過ぎたのか、座ったままうなだれて、眠ってしまった。
その様を、少し離れた茂みから見ていた男。
慎重に、物音一つ立てずに近づく。
ゆっくりバッグを持ち上げ、慣れた仕草で、中身が鳴らない様に手を添える。
5mほど離れ、じっくり周りを確認した。
そして、サッと走り去出す。
公園の出口に差し掛かった時…
「カチッ」(しまっ…)
乾いた金属音に絶望感さえ間に合わなかった。
「ドーン💥」
静かな通りに、爆音が響いたのである。
消えていた通りの店の明かりが点いていく。
誰かが通報し、遠くから幾つものサイレンの音が近づいて来た。
22:30
パトカーが集まり、辺りは騒然とした雰囲気に一変していた。
「紗夜さん、お疲れ様です」
エスコートするつもりのアレンの手を、軽い会釈で断り、現場へ向かう。
(チッ、FBIには変わりないか。おっと!読まれたかな💦)
焦るアレン。
「ボブ刑事、状況を教えて下さい」
「今回は微妙だな。公園の出口で、地面とアスファルトの境い目に近い。地雷かどうかは鑑識班の結果次第だ」
「そうですか…監視カメラは?」
「公園にはなく…通り沿いの店ぐらいだな」
その声に、期待はできないことを知る。
通りを見渡す紗夜。
その目が、ある違和感を捉えた。
「向かいの通りに空き地はありますか?」
「はぁ?…い、いやこの通りは小さな飲食店が多くて、空き地はないが…それが?」
「この騒ぎの中、明かりが付いてない店が一軒ありますね」
「あぁ、あれはソルトがやってるバーだ」
「アレン刑事のお知り合いですか?」
「いいヤツですよ。まだ若いのに、最初のアフガン派兵で足をやっちまって、今はオヤジさんが残した店を継いでるんです」
「退役軍人なのですね……ん?」
話しながら通りへ向かう紗夜の足が止まった。
首を傾けながら、ベンチに座る。
(この匂い…)
「どこか具合でも?」
「あ、いえ、大丈夫です。店へ」
立ち上がり、左右も確認せずに通りを渡る。
「さ、紗夜さん、危ないですよ!」
慌てて後を追うアレンとボブ。
「ご心配なく、車は分かりますので」
驚きを通り越して、呆れる2人。
「しかし、なぜこの店なんだね?」
「爆発騒ぎで、どの店も明かりがついているのに、無関心はおかしいかと。それに、退役軍人なら、尚更気になるはず。休みで誰もいないのでしょうか?」
「なるほどね、確かにな。今日は定休日じゃないし、彼はここの2階に住んでますから」
そう言って、アレンがシャッターを叩く。
紗夜が何かを感じて首を僅かに傾ける。
それを見逃さないボブ。
(またか…ベンチの時も)
「ソルト!俺だ、アレンだ、ちょっと協力してくれないか?」
2階の明かりがつき、少ししてシャッターが開いた。
「アレンさん、どうかしましたか?」
(声が大きい…)
ふと、紗夜を見て驚くソルト。
(そうなるよな~夜中にサングラスじゃ💧)
「ソルトさん、失礼ですが貴方耳が…」
わざと大きめの声で話す紗夜。
「ああ、爆音でやられて、あまり良く聞こえないんだ」
「中に入ってもよろしいでしょうか?」
「あ、ああもちろん、どうぞ」
中へ入る3人。
(お酒の匂い…無理か)
「紗夜さん、彼は爆発に気付かなかっただけですよ。ねぇボブさん?」
「ん?…あ、ああ、そうかもな」
シャッターを叩く音と爆音。
どちらが大きいかを考えていたボブ。
ましてや、爆音に過敏なはずの彼である。
「ソルト、今夜は何時に閉めたんだ?」
「10時くらいかな、多分」
「じゃあ見て無いな。監視カメラの映像は?」
「ああ、あれね。一応付けちゃあいるが、形だけだよ。内緒だけどな」
この間ボブは、ひたすら紗夜を見ていた。
「協力ありがとうございました。もし何か気がついたことがあったら、連絡してください」
名刺を渡す紗夜。
「あ、間違えました、こちらが新しいので」
渡してからすぐに取り替えた。
「分かりました。ご苦労様です」
こうして店を出た。
車に乗る。
「直ぐに出して」
しゃべりかけようとしたアレンが、車を出す。
「アレン刑事、ホテルまでお願いしても?」
それを言うつもりだった。
「いいですよ、紗夜さん」
「それで?紗夜さんどうだったかね?」
「どうって、ボブさ…」
「彼は、怪しいです」
「どこが❗️」
遮られてばかりで、少しイラついたアレン。
「だよな。私もそう思うよ」
「ボブさんまで!」
「アレン刑事、彼は爆発を知らないはずなのに、事件のことを一言も聞きませんでした」
「そういうことだ。彼は知っているんだよ」
「それから、監視カメラは動いてました。私は目の代わりに、他の感覚が人より敏感なので、動作音が聞こえました。」
「ボブ刑事、念のためこれを」
名刺を小さなビニル袋に入れて渡す。
「指紋採るためだったんですか!」
「そうです。ボブ刑事、暫く誰か監視に付けてください」
「分かった。明日から誰かを回してもらうよ」
「アレン刑事、彼に悪意は感じませんでした。善人です。安心してください」
ホテルに着いた。
「では、また明日お願いします」
「ああ、紗夜さん。これからは、ボブとアレンで。堅苦しいのは気持ち悪い」
「アハッ!では、こちらも紗夜で。」
ドアを閉め、振り返らずにホテルへ入る。
「ボブ、笑うこともあるんですね彼女」
「おい、お前は、さんぐらい付けろ!」
「あっ、つい…すみません💦」
(さすがに凄いな。心理捜査官、紗夜…か)
感心すると共に、ベンチでの挙動が気になるボブであった。
~ビバリーヒルズ~
緩やかな斜面に、映画スターや著名人の高級住宅が立ち並ぶ。
ハバマ産の葉巻を加え、ゆったりとしたソファーに座る。
その周りには、沢山のモニターや最新IT機器が並んでいた。
携帯が鳴る。
「どうした」
「昨日、察が来ました。暫くは出入りに注意してください」
「いつもすまない。サングラスをした盲目の女はいたか?」
「あ、はい。いましたが…彼女が何か?」
「いや、何でもない。協力を感謝するよ」
通話を切る。
葉巻を置いて、パソコンからメールを送った。
(目障りなヤツめ)
~ロサンゼルス チャイナタウン~
ロス市警本部に集まったあと、FBIの情報から、ある退役軍人を訪ねて来た3人。
「今朝のボス、気合い入ってましたね~」
「そりゃあそうだ、追悼式まであと3日。まだ何も掴めてないんだからな」
退役軍人を見つけるのは楽ではない。
国の指令で任務を果たした彼等。
しかし、イラクやアフガンにおける無差別な報復攻撃や、一般人を犠牲にしての要人暗殺は、国民の許容範囲を超えていたのである。
孤独感と迫害。
非難の的となった兵士達。
その所在や名前は、国防総省に守られ、FBIでも情報入手は出来なかった。
「不思議な国ですね。9.11の後は、報復攻撃を指示していた国民が、命懸けでそれを実行した兵士を非難するなんて」
「日本では分からないでしょうな。この国には多くの人種がいて、民主主義を通している。あの戦争は、長引き過ぎたんですよ。今じゃ、何のために、あんな遠くでタリバンと戦っているのやら」
「ところでボブ…さん、昨日のことは、何か分かったんですか?」
「使われたのは、やはりあの地雷だ。ただ…破片には土がついて無かった。代わりに、溶けた布やプラスチックが見つかったよ」
「身元は、ヘンリー・ブライト。やはりアフガンの帰還兵で、路上生活をされてた様です」
「英雄のはずが、路上生活だって!全く」
「それからな、遺体の状態から、地雷は足で踏んだのではなく、抱えていた様なんだよ」
「はぁ⁉️」
アレンが信じられずに叫ぶ。
「やはり…あのベンチに誰かがいた」
「紗夜、それが昨日の疑問か?」
「はい。あのベンチに微かに匂いが残っていました。嗅いだことのない匂いが。おそらく、バス停のそばのベンチに座り、待っている内に眠ってしまった」
「その眠った人のバッグか何かを、ヘンリーは盗んだってわけか」
「なるほど…いやいや、待ってくださいよ!バッグに地雷なんか持ち歩かないでしょう?」
当然なご指摘である。
「ハメられた…ってことか」
「はい。ヘンリーは、酔っ払いから盗みを働いていた。それを狙って罠を仕掛けられたんだわ。あの通りで、アルコールがある店は」
「ソルトのバー❗️」
「あの店の監視カメラに、そいつが映っているってことだな」
「鑑識結果が出れば、分かること…はっ!ボブ、あの店には?」
「今朝から2人張り付いてるが…まさか⁉️」
慌てて無線を取る。
「ジム!アッガス!ボブだ、いるか⁉️」
「ど、どうしたんです、ボブさん?」
「ジムか…良かった。変わりはないか?」
ホッとしたのも束の間。
「さっき宅配が来たから、念の為に、今アッガスが確認に…」
「ダメ!直ぐに引き戻して、彼が危ない❗️」
「わ、分かりましたよ、全く。呼びも…」
「ドガーンッ💥❗️」
「おい、ジム!ジム!応答しろ❗️」
大きな爆音と共に、無線が切れた。
「本部へ、ボブだ!大至急、ウェストストリートのバー、フィッシュへ救急車と応援を!ジムとアッガスがやられた!」
「そ、そんな…」
「クソッ❗️」「バンッ!」
紗夜が後部座席のドアを叩いた。
「私が行ったから…」
歯を噛み締めて悔しがる紗夜であった。
ソルトの店は、跡形もなく吹き飛び、中にいた彼と、警官のアッガスは即死。
飛ばされたジムは、奇跡的に軽症で済んだ。
沈痛な面持ちで、チャイナタウンのアパートのドアをノックするボブ。
「ロス市警のボブだ。悪いが、少し話を聞かせてくれないか?」
暫く待つ。
「留守か?」
「いえ、います」
紗夜が呟いた途端、ドアのロックが解除され、ドアチェーンが付いたまま、少し開いた。
「マーガレット・ハンセンさんですね?調査にご協力をお願いします」
サングラスを外して、紗夜が覗き込む。
女性である紗夜に、安心したのか、チェーンが外れ、ドアが開いた。
(なんて孤独感…こんなに恐れて)
紗夜の頭に、耐えられないほどの苦しみが、流れ込んできた。
その様子に気づいたボブ。
「安心してください。我々は味方だ。今、君達退役軍人の命が狙われているのは知ってるね?」
「…はい」
「私達は、それを止めたいんだよ。何でもいい。知っていることが有れば、教えてほしい。頼む」
優しい口調で、誠意的に話すボブ。
「すみません。仲間のことは…言えない。それが…同じ戦場で戦った者の誓いだから」
3人には、それ以上、彼女を問い詰めることはできなかった。
「マーガレットさん、分かりました。でももし、その大切な仲間達を救いたいなら、連絡ください。このままじゃ良くない。私は…こんなことをしてる奴らを、絶対に許さない❗️理由は何であれ、絶対に許すわけにはいかない❗️」
いつになく、強い口調の紗夜。
紗夜の名刺を握りしめ、座り込んだ彼女の膝に、幾つもの涙が滴り落ちていた。
ボブが2人にあいずを送る。
そして、そっとドアを閉めた。
車に乗るまで、3人は無言であった。
目の当たりにした彼等の苦しみ。
それは、あまりに哀しいものであった。
車に乗り込んだ。
「マーガレットは、重要な何かを知っています。だからこそ、酷く怯えていました」
「紗夜、顔色が良くない。少し休め」
そのボブの声は、届いてなかった。
「次は、私。きっと…次は私…仕方ない…」
「バシッ❗️」
「ボブさん!なにするんですか❗️」
トランス状態の紗夜を、ボブの張り手が救い出した。
「…私。」
「紗夜、彼女の心に入り過ぎてはいかん!シッカリするんだ」
その時、紗夜の携帯が鳴った。
「メール?」
「紗夜、これは❗️」
マーガレットからのメールであった。
「ありがとう。おかげで決心が着きました。私達、アフガン派兵47部隊は、大きな過ちを犯しました。お願いします。後のみんなを救ってあげてください。私は誓いを破ってしまった。仲間のもとへ行きます。ありがとう」
「そんな、まさか❗️」
慌てて車を降りたその瞬間。
「ドドーン💥❗️」
彼女の部屋が…爆発した。
呆然とする3人。
「ちがう…違うよマーガレット…死んだら意味ないじゃない。死んでしまったら負けじゃない❗️私はあなたも、みんな助けたかったんだよ❗️ァアアアー❗️」
心の底から叫んだ。
地に座り込んだ紗夜を抱きしめるボブ。
ボブにしがみついた紗夜。
今まで殺してきた感情を全て吐き出し、思い切り泣いて泣いて泣き叫んだ。
(絶対、許さない❗️)
アレンの心にも、熱い焔が燃え上っていた🔥
22:00
ウェストストリート沿いのバー、フィッシュ。
店内には女性客が1人だけである。
携帯が鳴る。
着信メールを見て、腰を上げた。
「マスター帰るわ、おやすみ~」
「オゥ、またな」
空のグラスを片付ける。
酔った足取りで店を出た彼女。
店の看板が消える。
向かいに、グランド・ホープ・パークのバス停があった。
この時間、車の数は少ない。
フラフラと通りを渡る。
公園のベンチに無造作にバッグを置く。
ドサッっと崩れる様に座ってバスを待つ。
暫くは携帯をいじっていたが…
疲れていたのか、飲み過ぎたのか、座ったままうなだれて、眠ってしまった。
その様を、少し離れた茂みから見ていた男。
慎重に、物音一つ立てずに近づく。
ゆっくりバッグを持ち上げ、慣れた仕草で、中身が鳴らない様に手を添える。
5mほど離れ、じっくり周りを確認した。
そして、サッと走り去出す。
公園の出口に差し掛かった時…
「カチッ」(しまっ…)
乾いた金属音に絶望感さえ間に合わなかった。
「ドーン💥」
静かな通りに、爆音が響いたのである。
消えていた通りの店の明かりが点いていく。
誰かが通報し、遠くから幾つものサイレンの音が近づいて来た。
22:30
パトカーが集まり、辺りは騒然とした雰囲気に一変していた。
「紗夜さん、お疲れ様です」
エスコートするつもりのアレンの手を、軽い会釈で断り、現場へ向かう。
(チッ、FBIには変わりないか。おっと!読まれたかな💦)
焦るアレン。
「ボブ刑事、状況を教えて下さい」
「今回は微妙だな。公園の出口で、地面とアスファルトの境い目に近い。地雷かどうかは鑑識班の結果次第だ」
「そうですか…監視カメラは?」
「公園にはなく…通り沿いの店ぐらいだな」
その声に、期待はできないことを知る。
通りを見渡す紗夜。
その目が、ある違和感を捉えた。
「向かいの通りに空き地はありますか?」
「はぁ?…い、いやこの通りは小さな飲食店が多くて、空き地はないが…それが?」
「この騒ぎの中、明かりが付いてない店が一軒ありますね」
「あぁ、あれはソルトがやってるバーだ」
「アレン刑事のお知り合いですか?」
「いいヤツですよ。まだ若いのに、最初のアフガン派兵で足をやっちまって、今はオヤジさんが残した店を継いでるんです」
「退役軍人なのですね……ん?」
話しながら通りへ向かう紗夜の足が止まった。
首を傾けながら、ベンチに座る。
(この匂い…)
「どこか具合でも?」
「あ、いえ、大丈夫です。店へ」
立ち上がり、左右も確認せずに通りを渡る。
「さ、紗夜さん、危ないですよ!」
慌てて後を追うアレンとボブ。
「ご心配なく、車は分かりますので」
驚きを通り越して、呆れる2人。
「しかし、なぜこの店なんだね?」
「爆発騒ぎで、どの店も明かりがついているのに、無関心はおかしいかと。それに、退役軍人なら、尚更気になるはず。休みで誰もいないのでしょうか?」
「なるほどね、確かにな。今日は定休日じゃないし、彼はここの2階に住んでますから」
そう言って、アレンがシャッターを叩く。
紗夜が何かを感じて首を僅かに傾ける。
それを見逃さないボブ。
(またか…ベンチの時も)
「ソルト!俺だ、アレンだ、ちょっと協力してくれないか?」
2階の明かりがつき、少ししてシャッターが開いた。
「アレンさん、どうかしましたか?」
(声が大きい…)
ふと、紗夜を見て驚くソルト。
(そうなるよな~夜中にサングラスじゃ💧)
「ソルトさん、失礼ですが貴方耳が…」
わざと大きめの声で話す紗夜。
「ああ、爆音でやられて、あまり良く聞こえないんだ」
「中に入ってもよろしいでしょうか?」
「あ、ああもちろん、どうぞ」
中へ入る3人。
(お酒の匂い…無理か)
「紗夜さん、彼は爆発に気付かなかっただけですよ。ねぇボブさん?」
「ん?…あ、ああ、そうかもな」
シャッターを叩く音と爆音。
どちらが大きいかを考えていたボブ。
ましてや、爆音に過敏なはずの彼である。
「ソルト、今夜は何時に閉めたんだ?」
「10時くらいかな、多分」
「じゃあ見て無いな。監視カメラの映像は?」
「ああ、あれね。一応付けちゃあいるが、形だけだよ。内緒だけどな」
この間ボブは、ひたすら紗夜を見ていた。
「協力ありがとうございました。もし何か気がついたことがあったら、連絡してください」
名刺を渡す紗夜。
「あ、間違えました、こちらが新しいので」
渡してからすぐに取り替えた。
「分かりました。ご苦労様です」
こうして店を出た。
車に乗る。
「直ぐに出して」
しゃべりかけようとしたアレンが、車を出す。
「アレン刑事、ホテルまでお願いしても?」
それを言うつもりだった。
「いいですよ、紗夜さん」
「それで?紗夜さんどうだったかね?」
「どうって、ボブさ…」
「彼は、怪しいです」
「どこが❗️」
遮られてばかりで、少しイラついたアレン。
「だよな。私もそう思うよ」
「ボブさんまで!」
「アレン刑事、彼は爆発を知らないはずなのに、事件のことを一言も聞きませんでした」
「そういうことだ。彼は知っているんだよ」
「それから、監視カメラは動いてました。私は目の代わりに、他の感覚が人より敏感なので、動作音が聞こえました。」
「ボブ刑事、念のためこれを」
名刺を小さなビニル袋に入れて渡す。
「指紋採るためだったんですか!」
「そうです。ボブ刑事、暫く誰か監視に付けてください」
「分かった。明日から誰かを回してもらうよ」
「アレン刑事、彼に悪意は感じませんでした。善人です。安心してください」
ホテルに着いた。
「では、また明日お願いします」
「ああ、紗夜さん。これからは、ボブとアレンで。堅苦しいのは気持ち悪い」
「アハッ!では、こちらも紗夜で。」
ドアを閉め、振り返らずにホテルへ入る。
「ボブ、笑うこともあるんですね彼女」
「おい、お前は、さんぐらい付けろ!」
「あっ、つい…すみません💦」
(さすがに凄いな。心理捜査官、紗夜…か)
感心すると共に、ベンチでの挙動が気になるボブであった。
~ビバリーヒルズ~
緩やかな斜面に、映画スターや著名人の高級住宅が立ち並ぶ。
ハバマ産の葉巻を加え、ゆったりとしたソファーに座る。
その周りには、沢山のモニターや最新IT機器が並んでいた。
携帯が鳴る。
「どうした」
「昨日、察が来ました。暫くは出入りに注意してください」
「いつもすまない。サングラスをした盲目の女はいたか?」
「あ、はい。いましたが…彼女が何か?」
「いや、何でもない。協力を感謝するよ」
通話を切る。
葉巻を置いて、パソコンからメールを送った。
(目障りなヤツめ)
~ロサンゼルス チャイナタウン~
ロス市警本部に集まったあと、FBIの情報から、ある退役軍人を訪ねて来た3人。
「今朝のボス、気合い入ってましたね~」
「そりゃあそうだ、追悼式まであと3日。まだ何も掴めてないんだからな」
退役軍人を見つけるのは楽ではない。
国の指令で任務を果たした彼等。
しかし、イラクやアフガンにおける無差別な報復攻撃や、一般人を犠牲にしての要人暗殺は、国民の許容範囲を超えていたのである。
孤独感と迫害。
非難の的となった兵士達。
その所在や名前は、国防総省に守られ、FBIでも情報入手は出来なかった。
「不思議な国ですね。9.11の後は、報復攻撃を指示していた国民が、命懸けでそれを実行した兵士を非難するなんて」
「日本では分からないでしょうな。この国には多くの人種がいて、民主主義を通している。あの戦争は、長引き過ぎたんですよ。今じゃ、何のために、あんな遠くでタリバンと戦っているのやら」
「ところでボブ…さん、昨日のことは、何か分かったんですか?」
「使われたのは、やはりあの地雷だ。ただ…破片には土がついて無かった。代わりに、溶けた布やプラスチックが見つかったよ」
「身元は、ヘンリー・ブライト。やはりアフガンの帰還兵で、路上生活をされてた様です」
「英雄のはずが、路上生活だって!全く」
「それからな、遺体の状態から、地雷は足で踏んだのではなく、抱えていた様なんだよ」
「はぁ⁉️」
アレンが信じられずに叫ぶ。
「やはり…あのベンチに誰かがいた」
「紗夜、それが昨日の疑問か?」
「はい。あのベンチに微かに匂いが残っていました。嗅いだことのない匂いが。おそらく、バス停のそばのベンチに座り、待っている内に眠ってしまった」
「その眠った人のバッグか何かを、ヘンリーは盗んだってわけか」
「なるほど…いやいや、待ってくださいよ!バッグに地雷なんか持ち歩かないでしょう?」
当然なご指摘である。
「ハメられた…ってことか」
「はい。ヘンリーは、酔っ払いから盗みを働いていた。それを狙って罠を仕掛けられたんだわ。あの通りで、アルコールがある店は」
「ソルトのバー❗️」
「あの店の監視カメラに、そいつが映っているってことだな」
「鑑識結果が出れば、分かること…はっ!ボブ、あの店には?」
「今朝から2人張り付いてるが…まさか⁉️」
慌てて無線を取る。
「ジム!アッガス!ボブだ、いるか⁉️」
「ど、どうしたんです、ボブさん?」
「ジムか…良かった。変わりはないか?」
ホッとしたのも束の間。
「さっき宅配が来たから、念の為に、今アッガスが確認に…」
「ダメ!直ぐに引き戻して、彼が危ない❗️」
「わ、分かりましたよ、全く。呼びも…」
「ドガーンッ💥❗️」
「おい、ジム!ジム!応答しろ❗️」
大きな爆音と共に、無線が切れた。
「本部へ、ボブだ!大至急、ウェストストリートのバー、フィッシュへ救急車と応援を!ジムとアッガスがやられた!」
「そ、そんな…」
「クソッ❗️」「バンッ!」
紗夜が後部座席のドアを叩いた。
「私が行ったから…」
歯を噛み締めて悔しがる紗夜であった。
ソルトの店は、跡形もなく吹き飛び、中にいた彼と、警官のアッガスは即死。
飛ばされたジムは、奇跡的に軽症で済んだ。
沈痛な面持ちで、チャイナタウンのアパートのドアをノックするボブ。
「ロス市警のボブだ。悪いが、少し話を聞かせてくれないか?」
暫く待つ。
「留守か?」
「いえ、います」
紗夜が呟いた途端、ドアのロックが解除され、ドアチェーンが付いたまま、少し開いた。
「マーガレット・ハンセンさんですね?調査にご協力をお願いします」
サングラスを外して、紗夜が覗き込む。
女性である紗夜に、安心したのか、チェーンが外れ、ドアが開いた。
(なんて孤独感…こんなに恐れて)
紗夜の頭に、耐えられないほどの苦しみが、流れ込んできた。
その様子に気づいたボブ。
「安心してください。我々は味方だ。今、君達退役軍人の命が狙われているのは知ってるね?」
「…はい」
「私達は、それを止めたいんだよ。何でもいい。知っていることが有れば、教えてほしい。頼む」
優しい口調で、誠意的に話すボブ。
「すみません。仲間のことは…言えない。それが…同じ戦場で戦った者の誓いだから」
3人には、それ以上、彼女を問い詰めることはできなかった。
「マーガレットさん、分かりました。でももし、その大切な仲間達を救いたいなら、連絡ください。このままじゃ良くない。私は…こんなことをしてる奴らを、絶対に許さない❗️理由は何であれ、絶対に許すわけにはいかない❗️」
いつになく、強い口調の紗夜。
紗夜の名刺を握りしめ、座り込んだ彼女の膝に、幾つもの涙が滴り落ちていた。
ボブが2人にあいずを送る。
そして、そっとドアを閉めた。
車に乗るまで、3人は無言であった。
目の当たりにした彼等の苦しみ。
それは、あまりに哀しいものであった。
車に乗り込んだ。
「マーガレットは、重要な何かを知っています。だからこそ、酷く怯えていました」
「紗夜、顔色が良くない。少し休め」
そのボブの声は、届いてなかった。
「次は、私。きっと…次は私…仕方ない…」
「バシッ❗️」
「ボブさん!なにするんですか❗️」
トランス状態の紗夜を、ボブの張り手が救い出した。
「…私。」
「紗夜、彼女の心に入り過ぎてはいかん!シッカリするんだ」
その時、紗夜の携帯が鳴った。
「メール?」
「紗夜、これは❗️」
マーガレットからのメールであった。
「ありがとう。おかげで決心が着きました。私達、アフガン派兵47部隊は、大きな過ちを犯しました。お願いします。後のみんなを救ってあげてください。私は誓いを破ってしまった。仲間のもとへ行きます。ありがとう」
「そんな、まさか❗️」
慌てて車を降りたその瞬間。
「ドドーン💥❗️」
彼女の部屋が…爆発した。
呆然とする3人。
「ちがう…違うよマーガレット…死んだら意味ないじゃない。死んでしまったら負けじゃない❗️私はあなたも、みんな助けたかったんだよ❗️ァアアアー❗️」
心の底から叫んだ。
地に座り込んだ紗夜を抱きしめるボブ。
ボブにしがみついた紗夜。
今まで殺してきた感情を全て吐き出し、思い切り泣いて泣いて泣き叫んだ。
(絶対、許さない❗️)
アレンの心にも、熱い焔が燃え上っていた🔥
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