異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第11章 北関東・会津郡山方面奪還作戦編Ⅱ

第2話 敵の配置から懸念される、神聖帝国属国軍指揮官の存在

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 ・・2・・
 2037年1月31日
 午前9時45分過ぎ
 福島県猪苗代町中心街
 第三戦線仮設前線司令部

 南東北地方の要衝が一つ、郡山市攻略に向けた準備は着々と進んでいた。
 第一戦線は郡山の戦いの前哨戦となる須賀川攻略戦において勝利を掴み郡山市を射程圏内に収めるまで前進。本格的な市街戦に備えて物資の集積が続けられていた。
 第三戦線も同様に郡山市を北西から攻撃する準備が続けられていた。
 第三戦線の諸部隊がいるのは猪苗代湖の湖畔に広がる自然豊かな町、猪苗代町の中心部。孝弘は無事な建物を利用して開かれている、第一〇一魔法旅団戦闘団部隊長級の作戦会議に参加していた。

「旅団戦闘団の諸君、猪苗代湖周辺の攻略ご苦労だったね。猪苗代湖南部はまだ全てのCTを討伐出来ていないけど数は少数だから、残敵相当部隊を編成させて対処させよう。そっちは余程の心配はないからいいとして、いよいよ明日から始まる郡山奪還作戦について説明していこうか。ホログラムの地図に注目しつつ、作戦資料も目を通していってね」

 璃佳がこの部屋にいる者達全員に視線を向けながら、ホログラムの地図を起動する。表示されたのは北は本宮市、東は三春町、南は須賀川市、西は猪苗代湖周辺までの範囲だった。郡山奪還作戦に関連する地域である。

「私達第三戦線の戦闘行動は第一戦線のそれに大きく関わってくるから、まずは第一戦線の動きについて説明していこっか」

 璃佳は端末のボタンを押すと第一戦線の主要部隊が表示された。

「現在、第一戦線の諸部隊は須賀川市とその周辺まで前進してる。各部隊の動きはこう」

 璃佳がまた端末のボタンを押すと、第一戦線の部隊が動き始め途中で止まった。

「第一戦線の部隊は大まかに二手に分かれて行動する。一つは正面からぶち当たる部隊。主攻部隊だね。徹底的に火力を叩きこみつつ、郡山市街に向けて接近することになる。もう一つが迂回攻撃部隊。ウチはこっちと連携を取って動くことになるね」

 璃佳が主攻と言った部隊の動きはシンプルだった。須賀川市から郡山市に向けていくつかの矢印がまっすぐ動いたからだ。数に勝るCTを排除しつつ、市街戦に突入していく形になる。

 もう一つの迂回攻撃部隊の動きは須賀川市や鏡石町から回り込むように郡山市西部を攻める流れになっていた。矢印の動きは主攻部隊より早い。

 というのも、この部隊は高機動が可能な兵科で編成されていたからである。陸軍は戦車部隊やそれに随伴する機械化歩兵部隊。軽快に行動が可能な海兵隊。そして、身体強化魔法によって高機動な行動が可能な魔法軍部隊だ。

「第一戦線の各部隊は郡山市を南から包み込むように展開していく。ただし東部方面では作戦初期においてここまで大規模な攻勢は行わない。地形的に機動攻撃は難しいからね」

「阿武隈川を挟んで東部は標高はさほど高くないですが丘陵地帯だからですね」

「その通りだよ、松阪中佐。主攻部隊が前進するにあたって郡山東部地帯にも兵力は振り向けられるけれど、ここはCTがさほど多くないことが判明してる。重要度はやや落ちるんだよね。とはいえ放っておくわけにはいかないし北を除く三方位は押さえておくからある程度の兵力配置はされる予定。じゃあ、CTと神聖帝国軍の配置はどうなってるかっていうと、こう」

 璃佳がボタンを押すと既に交戦中の須賀川市方面を除く各地域に敵兵力を表すマークが表示される。

「はははっ、こいつは随分と俺らが警戒されてますねえ」

「恐らく会津若松から極わずかだけ伝令目的で兵士を逃したんだろうね。さすがにあの状況で察知は出来ないから仕方ないよ」

 蓼科が笑って言うが、目元は笑みを表していなかった。思ったより自分達と相対する敵兵力が多かったからだ。
 郡山市周辺に展開するCTと神聖帝国軍の主な配置が第一戦線主攻部隊に向いているのは想定内だった。そちらに兵力を重点配置しなければ早々に郡山市内に突入されるからである。
 問題は第三戦線と交戦が予想される数である。CTが約一五〇〇〇に神聖帝国軍が二個連隊。加えて本宮方面からもCTが約五〇〇〇。合計で約二五〇〇〇近くにもなっていた。第一戦線主攻部隊だけでなく迂回攻撃部隊に対処する為の兵力も割り振られていたが、第三戦線に対処する敵の数は第三戦線の兵力数だけを見れば明らかに過剰な数だった。

「んで、だ。ここに私達第三戦線の前進予定経路を被せようか」

 璃佳が端末のボタンを押すと第三戦線の部隊配置が表示される。孝弘達が進むのは猪苗代湖方面から安子ヶ島へ。そして喜久田方面である。ところがCTは安子ヶ島方面や喜久田方面に展開されており、その後ろである郡山インター東方には神聖帝国軍二個連隊が配置されていたのだ。

「あっちゃあ。見事に対策を取られましたね。狭い範囲にCTを配置して、一点突破で抜かれたとしても神聖帝国軍が待ち構えている、と。こいつは橋頭堡の構築に苦労しそうですね」

「問題はそこなんだよね、川崎中佐。猪苗代湖方面から郡山市北西部方面に向かう陸路は限られている上に狭い。道路から進出する陸軍部隊と海兵隊部隊等はここしか経路が無いからドラゴンでも現れようものなら袋叩きにされる。半ば奇襲に近かった会津盆地と違って、今回は相手がどっから自分達のとこに来るかは織り込み済み。だから対策もされるだろうしその上で私達上空警戒部隊も配置したから、前ほど橋頭堡構築部隊に数が割きづらい。というわけで、支援を要請したのがこれ」

 璃佳が再び端末のボタンを押すと現れたのは空軍部隊と璃佳達とは別の魔法軍部隊だった。

「海軍艦載機部隊と新潟に展開してる空軍部隊から合計一二機の戦闘機部隊を回してもらった。さらに新潟にいる魔法軍フェアル部隊が二個中隊。海軍艦載機部隊と空軍部隊は先の借りを早々に返してくれるってことで来てくれて、フェアル部隊は私達の部隊に何かがあった時の予備兵力から捻出してもらったってとこだね」

 璃佳の発言に一同はホッとした雰囲気が出ていたし、硬かった表情が少し柔らかくなっていた。増派部隊があると無しでは心理的にも違うからだ。

「とはいえ、初っ端から想定より激しい戦いになるのは確定事項。で、橋頭堡構築部隊を担当するのはもちろん私達だ」

「いつものだ」

「いつものですね」

「いやぁ、こういう時になんて言うんだっけ」

「知ってた」

「そうそれ」

 璃佳がおどけて笑うと、幹部連の面々も冗談を言い合うように話していた。
 孝弘も隣にいた川崎と一緒に今までと変わんないやつだ。と口を揃えて言っていた。

(まあ、ウチの役割になるよな。瞬間火力なら第一〇一は魔法軍のどの部隊にも負けないんだし。)

 孝弘は心中でこうも思っていた。

「ホント、慣れって怖いよね」

「違いないですよ、准将閣下」

「むしろ普通の作戦に慣れなくなるんでは?」

「変に安心することになりそう」

「はいはい、冗談はそこまで。確かに私達が安子ヶ島や郡山西部第二工業団地、喜久田を確保する役割は変わんないけど、第一戦線はこの点も考慮してくれてる。迂回攻撃部隊の矢印、工業団地の辺りで私達と合流してるでしょ」

 璃佳が言うように、迂回攻撃部隊は戦車部隊や魔法軍部隊を中心に第三戦線の部隊と合流するようになっていた。彼等は一〇一が橋頭堡構築の為に突入した頃には工業団地の南の方まで進む予定でいてくれたのだ。
 実は迂回攻撃部隊のこの作戦行動、郡山市付近のマジックジャミングが破壊された後に決まったプランである。ここまで北西部に重点配置されると思っていなかったとはいえ、第三戦線部隊対策に神聖帝国軍が何らかの手を打ってくる所までは参謀本部も想定はしていたようで、サブプランとして立案はされていたのだ。最も参謀本部も本当に採用することになるとは思っていなかったのだが。

「さて。私達の動きに敵軍の動きを表示させてみて分かったと思うけど、郡山市にいる神聖帝国軍の指揮官は少なくとも馬鹿じゃない。数の多いCTでただ圧殺しようとしてくる訳じゃ無さそうだ。属国軍指揮官の能力はこれまで大したことないと見積もられていたけど、郡山については例外と考えて良さそうなんだよね。ドラゴンが無くても面倒になりそうな感じが伝わるでしょ?   だから、決して油断しないように。CTはともかく、神聖帝国軍そのものはマトモな指揮官が動かしてると頭に入れて行動しなさい」

『はっ!!』

 璃佳の言葉に全員の身が引き締まる。
 郡山市にいるCTと神聖帝国軍は合わせて約一一〇〇〇〇程度。指揮官が無能であったり、今までと同じような手法を取るのならば、イレギュラーにさえ気をつければなんということは無い。CT大群決戦を乗り越えた彼等にはそれだけの自信がある。

 だが、Sランク能力者が集まる第三戦線に過剰ともいえる兵力を集中させた上に、CTの使い方もただ数で平押しするのではなく橋頭堡構築を難しくさせる妙手の配置。エンザリアCTの発見数がやけに少ない点もあるから、孝弘達が敵に対する警戒度を上げるを要素としては十分だった。イレギュラー要素も考慮すればさらにその度合いは上昇する。

 今までとは違う指揮官がいる可能性は大いにある。下手な事をしたら、被害は大きくなる。
 孝弘を含め十分な備えと対策を取るべきだと感じ、彼等は明日の作戦の準備を進めていった。
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