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第13章 休戦会談と蠢く策謀編
第15話 いつかに備えての訓練中に入る急報
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4の月10の日
午前10時55分
アルネセイラ郊外・連合王国軍市街地戦闘演習場
「ちっ、今魔力探知をしたら敵に悟られる可能性が高い。リイナと早いとこ合流したいんだけど、敵がどこに潜んでいるかは分からないとなかなか難しいね……。今いる場所や敵がどこにいてどれくらいいるかに至るまで、やっぱりエイジス抜きでの戦闘は辛くなるね……」
僕は捕虜達からの聞き取りによって忠実に再現された、妖魔帝国の市街地によくある様式の建物と建物の間に身を潜めながら、自身の現状を把握していく。
今行われているのは、敵市街地戦闘訓練と呼ばれるものだ。
ここは、停戦前の戦況ではいずれ起こりうるであろう妖魔帝国本土における市街地戦の訓練を行う為に建設された一キーラ四方に及ぶ大規模な演習場だ。
ただ、今や休戦条約も来月に迫っていたから必要性はやや薄れたけれどいつかは戦争が再開する。それに備えてここでは定期的に訓練が行われていて、最近軍務で忙しく訓練が出来ていなかったからと僕とリイナは、今日は土の曜日の休日だけれどここで練度の高い兵達と本格的な訓練を行っていたのだ。
しかも、それはかなり縛りのある訓練だった。
「敵地において万が一ありうる孤立化した状況を想定した戦闘訓練。僕とリイナははぐれてしまって、まずは合流しないといけない。エイジスは敵との熾烈な戦闘で行動不能。残存魔力は五割を想定。魔力にしても実際はもっと厳しいだろうけど、詰んだ状況での当該区域からの脱出はかなり厳しいね……」
訓練開始から五分。両端から行動開始した僕とリイナだけど当然会えていない。
これが現実であれば良くて捕虜、最悪拷問の末処刑なんて状況下であるけれど、A+ランクのリイナと再会すれば生存率は上がる。
しかしそれを阻んでいるのは、敵兵を演じる精鋭の兵士達三個小隊で構成されている『英雄狩り』部隊。彼等は僕の直轄であるアカツキ旅団のよりすぐりで、そう滅多にない機会だからとこの訓練の敵役に買って出てくれている。
普段は頼もしい部下達は恐るべき敵兵士となると、リイナと会うのは生半可なことではない。
「さて、どうするか。リイナと決めたランデブーポイントまでは、教会があそこだから、あと北東に二五〇メーラか……」
いつもならエイジスが的確に位置情報を伝えてくれるけれど、彼女がいない縛りの現状下だから目印から距離を推測するしかない。
耳を澄ませて、近くにいる敵を探ろうとする。約八〇名の中の何人かの兵士達の大声が耳に入ってきた。たぶん、一個分隊。最小単位の二人ではなく、五人で行動しているのは正しい。エイジス抜きとはいえ僕もA+ランク魔法能力者。彼等が最低Bランク以上で構成されている事を考えれば、集団で潰しにかかるのは至極常識的だ。
「さて、都合良く落っこちていた妖魔製ライフルは使いどころがあるかどうか……。まあBランク魔法能力者相手じゃなかなかないだろうなあ……。ツイン・リルと自分の魔法に頼るしかないか……」
この場に留まって二分半。そろそろ同じ場所にいるのはまずい。
僕は裏路地へ進むことに決めて、目的地へ向かう。最短ルートは様子見していた通りだけど、魔法を使う前に居場所がバレるのはまずい。ここで重要なのは、いかに背後から忍び密やかに殺すか、だ。魔法を使えば探知担当の魔法能力者におおよその位置は掴まれる。それはランデブーポイントに近付くまでは避けたい。
「アカツキ中将かっ、アカツキのクソ野郎はどこにいるんですかねえ」
「我らが、いや違った。――まだ見つからん。何にせよ忌々しいクソッタレの英雄をさっさと探し出せ!」
「りょ、了解! ……まさか中将閣下をクソ呼ばわりする日が来るとは思わなかったですね……」
「畏れ多すぎるよな……。訓練だから本番さながらにしろとは言われたが、後が怖いぜ……」
「リイナ准将閣下も好きなだけ罵倒していいと言っていましたが、遭遇してからを考えると……、やめましょうかこの話……」
「そうだな……」
「いやいや、もっと迫真の演技をしていいんだよ……」
裏路地から通りの様子を伺っていると妖魔帝国の軍服に妖魔帝国のライフルを持つ部下達が、ビクビクしながら話していた。僕とリイナにいつ狙われるかという要素もあるかもしれないけれど、どっちかというと僕達を呼び捨て以上の呼ばわりによる報復を恐れているようだった。
彼等は俳優ではなく軍人なので演技力には期待していないからいいけどさ。
(うーん、この通りには五人だけとはいえ見つかりたくないな。どうにか相手の隙を縫って動かないと……。――よし、今だ。)
前世で培った足音を立てない歩き方で、気付かれないよう通りを抜ける。あまり幅のない所だったから、難なく向こう側に辿り着けると思ったけれど……。
「ん……? 今後ろから何か聞こえなかったか?」
「まさか。もしあの野郎だったら今頃首から上が飛んでますって」
「それもそうか。……よし、あっちに行くぞ」
「はっ」
「あっ、ぶねぇ……」
僕は安堵のため息をつく。ツイン・リルをいつもと違ってサバイバルナイフを収納するかのごとく鞘を固定しておいたのは正解だったね……。まさかあれだけ静かに動いても気付かれかけたなんて。
僕はより慎重に歩きながら裏路地と裏路地を抜け、時には静穏に建物内を移動しながらランデブーポイントからすぐそこまで辿り着く。そこは雑貨店の看板が掲げられている建物で、わざわざ屋内までお店のように再現されていた。
幸い、表通りの少し向こうには十人近い気配を感じたけれど雑貨店への移動に支障は無かった。
雑貨店の裏口は都合良く鍵が空いていて、店内へと忍び込む。
すると、なんとなく雰囲気で感じていたけれどやっぱりお目当ての人物はいた。
「んふふ、旦那様。やっと会えたわね?」
「リイナも無事辿り着けたようで良かった。ここまで誰かに見つかったとかはない?」
「いいえ、旦那様に教えてもらった歩き方や行動のお陰で悟られなかったわ。あわや発見になりかけた事はあったけれどもね」
「やっぱりかあ……。彼等は優秀だからね。敵を察知する力もあるから十分に注意しないと、こうやって合流する前に包囲されておしまいさ……」
「まったくね。訓練とはいえ、旦那様の旅団の兵達の練度の高さを思い知ったわ……」
リイナはため息をつきながら、背中に提げていた魔法ライフルM1834――死んでいた兵が持っていたものという設定――のチェックをして言う。
僕も手持ちの武器であるツイン・リルと妖魔帝国製ライフルの装弾管理をする。ううん、僕の武器だと近距離戦向けで遠距離火力はリイナに任せるしかないかな。
「…………リイナ、音を立てないように」
「私も感じたわ」
互いに装備のチェックを終えると、人が近付く気配を感じたから声を潜めてリイナへ伝える。どうやら彼女も感じ取ったようで、裏口からすぐの商品棚へ隠れた。
僕はツイン・リルの片方を、リイナはアブソリュートではなくダガーナイフを手に持った。僕はともかくとして、リイナの細剣では閉所での超近距離戦闘は向かないからね。
お互いどこにいるのかを把握して頷くと、極限まで気配を隠す。接近してきていたのは二人。さあ、裏口から入ってくるか、はいってこないか。
…………扉の音が聞こえた。残念だね、君らの命運はここで尽きるよ。
ガチャ、と扉が開いた。侵入してきたのは二人の兵。訓示をした時に見た覚えのある顔だ。名前までは覚えてないけど。
さあ、どう動く。
彼等は室内に人がいるのを想定してか、一言も話さずハンドサインと首肯のみで意思疎通をする。
前世の特殊部隊式の訓練を施してある彼等は僕の言葉をしっかり守っていた。うんうん、いいことだよ。
ただ、相手が悪かったね。数が同じなら負けるつもりはない。
ほぼ同時に僕達へ近付く二人。三、二、一、今だ。
「……!?」
「んむぅ!?」
最接近したと同時に背後を取りナイフで頸動脈を切りつける動作をする。仮想戦闘の術式が訓練場内に展開されているから現実なら致命傷は即死判定という形になる。僕がキルをした兵は、唖然としていた。
「……やられました。室内のどこにいるかの雰囲気は感じ取っていたのですが……、お見事です……」
僕にしか聞こえない声量で若い男性兵士は言う。悔しそうな表情も滲み出ていた。
「侵入からの行動は訓練通り出来ていたからそこは評価するよ。けど、もっと気配察知を磨くこと」
「ありがとうございます……。はぁぁ……、自分達はここからあと二時間も死体役ですかぁ……」
「仕方ないね。死体のフリをする間、どう行動すればいいか自己分析するように」
「はっ」
僕は彼にアドバイスをすると、同じようにキルを果たしたリイナの方へ向かう。
「リイナ、ばっちしだったよ」
「つくづく思うけれど、旦那様とこうして一緒にならなかったら超近接戦なんて上手く出来なかったわ」
「リイナ准将閣下はお見事でした。死体役に徹します……」
「貴方は訓練内容をちゃんと身につけていたわ。けれど、分が悪かったわね」
「ええ、まったくです……」
さあてと、まずは二人を魔法を一切使わず死亡判定を出せた。あとは打ち合わせしていた脱出経路へ進み、ゴールするだけ。
彼我の戦力差は圧倒的だから追討戦になると明らかに不利になる。一発で決めて追いかけてこれないくらいに叩きのめせたらいいけれど、よしんば三個小隊を殲滅したところで現実なら追加で捕縛部隊に追いかけられる。
その為には魔力で直接的な攻撃をするのではなく、体内強化故に探知されにくい強化術式を用いた近距離戦に徹するのが吉だろう。
無論、バレてしまったら大暴れして部隊を殲滅、逃げる時間を稼ぐしか無くなるけどね。
「とはいえ、易々と逃させてはくれないか……」
「彼等には私達が決めた脱出経路は割れていないけれど、どうせいくつかの候補地は割り出されているでしょうね。捜索と並行して行われてると考えるとなると、接敵もやむなしかしら?」
「それは極力避けたいね。よし、経路はこうのこうで、こうで行こう」
「分かったわ。背中は任せて」
「了解」
僕とリイナは脱出地点までの道行きを決めて、雑貨店を出る。ハンドサイン一つで、阿吽の呼吸で動いていく。
目標地点は南西七〇〇メーラ地点。身体強化魔法込の全速力で駆ければあっという間だけれど、直線的ではなくなるべく敵のいない地点を迂回しながら時には走り時には歩いていく。
(待った。次の路地、対象が三。距離三〇から四〇)
(了解したわ)
裏路地の丁字路、行き先に敵が三人いることをハンドサインでリイナに伝える。二人ならば即殺可能だけど、三人となると一人あまる。
となると、これの出番か。
僕は戦闘用の軍服に装備しておいた投げナイフを二本取り出し手に持つ。
前世にいた、あの人が拾った英国人――最初はド素人もいいとこだったけど、あの人が完全に壊れる前までには厳しい訓練によって手練になった彼女だ――程までじゃないにしても、僕だってやれていたんだ。これくらい容易い。
(一人はやるわ)
(頼むよ。討ち漏らしたらカバーを)
(任せて)
作戦を決め、スリーカウントで僕達は動く。見敵必殺。
僕とリイナは丁字路を出ると電光石火の如く動く。
「なっ!?」
「遅い」
そこは既にキルラインだ。僕は二本の投げナイフを左右の敵に投擲し、それは頸動脈へ導かれキル判定をくだした。残された真ん中は僕がナイフを投げた直後に先行したリイナがダガーナイフで鮮やかな手際で片付ける。
ふう、これで合計五人だ。
「やはり敵いませんね……」
「もっと訓練を励みます……」
「せめて察知出来れば……。魔力隠蔽、完璧でした……」
「伊達に死線を潜り抜けてきてないからね」
「死体役よろしくねえ」
『了解……』
連合王国が誇る最精鋭部隊という自負がある三人は落ち込んでいたけれど、彼等なりに反省材料を次に活かしてくれるだろう。
僕とリイナは一言だけ残して、先へゆく。
あと五〇〇ミーラ。四五〇ミーラ。三五〇ミーラ。三〇〇ミーラ。
ここまでは順調。けれども、そう簡単には通させてくれない場面が立ちはだかった。
「ちぃ、ここから先は厳しそうだね……」
「脱出経路は知らないのに、ここが一番怪しいとよく分かったわね……」
「伊達にアカツキ旅団の所属兵はやってないってことだね……。しかも討伐隊長のロジャー大尉までいる。数は十五。まずったね……」
「流石ロジャー大尉ね。知謀派だけあるわ。どうするの、旦那様。第二候補へ向かう? それとも一番近い第三経路?」
「いや、ここまで来て引き返すのは得策じゃないね。第二候補までは六〇〇ミーラ。第三候補まで五〇〇ミーラ。遭遇率は高めたくない」
「じゃあ、突っ切るしかないわねえ。ということは」
「暴れ回ろう。追討部隊の再編成をせざるを得ないくらいにしておけば、現実でこうなっても逃げる時間は稼げる。ジリ貧の状況に変わりはないけどね」
「魔力を節約して白兵戦。身体強化と魔法障壁重視ね」
「そういうこと。魔法銃による制圧は任せたよ。近付く奴らは僕が片付ける」
「了解よ。楽しくなってきたわ」
リイナは追い詰められている状況、という想定にも関わらず口角を曲げて笑う。僕も不敵に笑い、告げる。
「魔力隠蔽解除。全力装備。捻り潰すよ」
「任せなさいな」
路地に身を隠していた僕とリイナは今までずっと魔力隠蔽を解除し、全力戦闘へ移行する。
探知魔法を張り続けていた兵にはすぐ察知された。けれど、準備を整えていたこっちの方がずっと早い。
「て、敵襲!!」
「瞬脚二重展開。ツイン・リル、風属性付与」
「爆ぜなさいなあ!!」
僕は白兵戦に備えた魔法を詠唱し、リイナは魔法銃に火属性爆発系魔法を走りながら撃つ。
一発目は彼等の目前に着弾し、爆煙と粉塵が彼等を襲う。さらに二発目。リイナが速やかに装填発射した同属性の魔法は今度は彼等がいた所へ確実に命中した。
「ダメージレポート!」
「負傷判定三、死亡判定二ですロジャー大尉!」
「態勢を立て直せ! ちんちくりんのクソ英雄は絶対突っ込んでくる!」
「ごきげんよう、諸君達。残念だけど、側面だよ」
「嘘でしょう!?」
見事に敵士官を演じるロジャー大尉のがら空きの側面から僕は現れる。両手にはツイン・リル。
跳躍し、勢いを付けて回転した僕のツインダガーは一撃目はロジャー大尉が展開していた魔法障壁を二枚破り、二撃目は残りの二枚も破り、三撃目には実際の戦闘であれば喉元を裂かれた判定を下した。
「まだまだぁ!」
「早いっ!」
「クソッ、当てられない!」
「撃つなよ!? こっちが当てられうわぁぁぁ!!」
「超近距離戦闘への移行が遅い! ほらもう三人目!」
「私も忘れちゃダメよ!」
「そんな!?」
僕がロジャー大尉と不運にも近くにいた二人を屠る間に、リイナは自身に向けられた三人を蹴散らして煙が未だ残る場所から現れる。
あっという間に無傷の者が四人まで激減した部隊は瓦解していた。負傷者三名は最早的では無くて僕が投げたナイフとツイン・リルで死亡判定へと変わり、近接武器に持ち替えたとはいえ魔法障壁の展開が遅れたか展開出来ても一枚かそこらの残り四名はリイナが瞬きの間程度で死亡判定へとさせる。
けど、あっちだって無抵抗なわけではない。
「もう新手か。これだけ派手に暴れれば仕方ないね!」
「目視で十人、いやさらに五人よ! これ以上の戦闘は避けましょう!」
「それが正解! 一気に離脱ポイントへ向かうよ!」
「ええ! 銀世界、極地をも凍てつかせる光をここに! 『アブソリュート・ソロ!』」
リイナは逃げる直前に独自魔法を詠唱。氷の光線は向かってくる兵士達を襲う。
『アブソリュート・ソロ』は残存魔力を踏まえれば消耗が大きい魔法だけど、離脱の一撃としてはぴったりだ。
それが証拠にここへ急行してきた十五人は足止めされるか『アブソリュート・ソロ』の直撃を受ける。時間稼ぎは出来たようだ。
「よくやったよリイナ!」
「これくらいならいくらでもしてあげるわ! と言いたい所だけど、大分魔力を消耗してしまったわ。逃げましょう!」
「もちろん!」
僕とリイナは二〇〇メーラ先のゴールへ走る。ここへ到着すれば訓練は終了で僕達の勝利となる。
ところが、辿り着く前に意外な形で訓練は終了を迎えることになった。
「訓練中止!! 訓練中止!! 総員戦闘を止めてください!! 仮想戦闘も終了します!!」
「はぁ? なんでよ?」
「もうすぐ終わりだってのに? どうしてまた?」
脱出地点の先にいたのは仮想戦闘区域の外側で大声をあげる士官。同時に訓練の強制終了を表す青色の信号弾が各所から打ち上げられていた。
これは何らかの理由で戦闘中止を示す信号弾で、つまり訓練区域外で何かが起きた事を意味していた。
「アカツキ中将閣下、リイナ准将閣下! 勝利条件達成直前に、無礼を承知でお伝えします!」
「何があったの? 訓練を止めたという事はよっぽどの事情なんだよね?」
大慌てで走ってきたのは今まで外で訓練の様子を見ていたはずの三十代初頭の士官、階級は中尉だった。
背後に視線を移すと、死亡判定を受けた多くの部下達が拍子抜けといった様子でこちらを見ていた。ただ、僕のもとへやってきた彼がただならぬ様子で向かってきたのは察知しているようですぐに起立していた。
「は、はいっ……! 外務省経由で統合本部からこちらへ魔法無線装置で緊急伝達事項が送られました……!」
「…………読み上げなさい」
リイナが訓練が急に中止になって不満気だった表情は既に無くなり、准将として相応しい顔つきになって言う。
「はっ、リイナ准将閣下! 読み上げます……! 『本日一一二〇(ヒトヒトフタマル)、協商連合外務省より連合王国外務省へ緊急連絡有。協商連合国内にて、フィリーネ・リヴェット氏が行方不明。現在、捜索するも発見出来ず。です!』」
4の月10の日
午前10時55分
アルネセイラ郊外・連合王国軍市街地戦闘演習場
「ちっ、今魔力探知をしたら敵に悟られる可能性が高い。リイナと早いとこ合流したいんだけど、敵がどこに潜んでいるかは分からないとなかなか難しいね……。今いる場所や敵がどこにいてどれくらいいるかに至るまで、やっぱりエイジス抜きでの戦闘は辛くなるね……」
僕は捕虜達からの聞き取りによって忠実に再現された、妖魔帝国の市街地によくある様式の建物と建物の間に身を潜めながら、自身の現状を把握していく。
今行われているのは、敵市街地戦闘訓練と呼ばれるものだ。
ここは、停戦前の戦況ではいずれ起こりうるであろう妖魔帝国本土における市街地戦の訓練を行う為に建設された一キーラ四方に及ぶ大規模な演習場だ。
ただ、今や休戦条約も来月に迫っていたから必要性はやや薄れたけれどいつかは戦争が再開する。それに備えてここでは定期的に訓練が行われていて、最近軍務で忙しく訓練が出来ていなかったからと僕とリイナは、今日は土の曜日の休日だけれどここで練度の高い兵達と本格的な訓練を行っていたのだ。
しかも、それはかなり縛りのある訓練だった。
「敵地において万が一ありうる孤立化した状況を想定した戦闘訓練。僕とリイナははぐれてしまって、まずは合流しないといけない。エイジスは敵との熾烈な戦闘で行動不能。残存魔力は五割を想定。魔力にしても実際はもっと厳しいだろうけど、詰んだ状況での当該区域からの脱出はかなり厳しいね……」
訓練開始から五分。両端から行動開始した僕とリイナだけど当然会えていない。
これが現実であれば良くて捕虜、最悪拷問の末処刑なんて状況下であるけれど、A+ランクのリイナと再会すれば生存率は上がる。
しかしそれを阻んでいるのは、敵兵を演じる精鋭の兵士達三個小隊で構成されている『英雄狩り』部隊。彼等は僕の直轄であるアカツキ旅団のよりすぐりで、そう滅多にない機会だからとこの訓練の敵役に買って出てくれている。
普段は頼もしい部下達は恐るべき敵兵士となると、リイナと会うのは生半可なことではない。
「さて、どうするか。リイナと決めたランデブーポイントまでは、教会があそこだから、あと北東に二五〇メーラか……」
いつもならエイジスが的確に位置情報を伝えてくれるけれど、彼女がいない縛りの現状下だから目印から距離を推測するしかない。
耳を澄ませて、近くにいる敵を探ろうとする。約八〇名の中の何人かの兵士達の大声が耳に入ってきた。たぶん、一個分隊。最小単位の二人ではなく、五人で行動しているのは正しい。エイジス抜きとはいえ僕もA+ランク魔法能力者。彼等が最低Bランク以上で構成されている事を考えれば、集団で潰しにかかるのは至極常識的だ。
「さて、都合良く落っこちていた妖魔製ライフルは使いどころがあるかどうか……。まあBランク魔法能力者相手じゃなかなかないだろうなあ……。ツイン・リルと自分の魔法に頼るしかないか……」
この場に留まって二分半。そろそろ同じ場所にいるのはまずい。
僕は裏路地へ進むことに決めて、目的地へ向かう。最短ルートは様子見していた通りだけど、魔法を使う前に居場所がバレるのはまずい。ここで重要なのは、いかに背後から忍び密やかに殺すか、だ。魔法を使えば探知担当の魔法能力者におおよその位置は掴まれる。それはランデブーポイントに近付くまでは避けたい。
「アカツキ中将かっ、アカツキのクソ野郎はどこにいるんですかねえ」
「我らが、いや違った。――まだ見つからん。何にせよ忌々しいクソッタレの英雄をさっさと探し出せ!」
「りょ、了解! ……まさか中将閣下をクソ呼ばわりする日が来るとは思わなかったですね……」
「畏れ多すぎるよな……。訓練だから本番さながらにしろとは言われたが、後が怖いぜ……」
「リイナ准将閣下も好きなだけ罵倒していいと言っていましたが、遭遇してからを考えると……、やめましょうかこの話……」
「そうだな……」
「いやいや、もっと迫真の演技をしていいんだよ……」
裏路地から通りの様子を伺っていると妖魔帝国の軍服に妖魔帝国のライフルを持つ部下達が、ビクビクしながら話していた。僕とリイナにいつ狙われるかという要素もあるかもしれないけれど、どっちかというと僕達を呼び捨て以上の呼ばわりによる報復を恐れているようだった。
彼等は俳優ではなく軍人なので演技力には期待していないからいいけどさ。
(うーん、この通りには五人だけとはいえ見つかりたくないな。どうにか相手の隙を縫って動かないと……。――よし、今だ。)
前世で培った足音を立てない歩き方で、気付かれないよう通りを抜ける。あまり幅のない所だったから、難なく向こう側に辿り着けると思ったけれど……。
「ん……? 今後ろから何か聞こえなかったか?」
「まさか。もしあの野郎だったら今頃首から上が飛んでますって」
「それもそうか。……よし、あっちに行くぞ」
「はっ」
「あっ、ぶねぇ……」
僕は安堵のため息をつく。ツイン・リルをいつもと違ってサバイバルナイフを収納するかのごとく鞘を固定しておいたのは正解だったね……。まさかあれだけ静かに動いても気付かれかけたなんて。
僕はより慎重に歩きながら裏路地と裏路地を抜け、時には静穏に建物内を移動しながらランデブーポイントからすぐそこまで辿り着く。そこは雑貨店の看板が掲げられている建物で、わざわざ屋内までお店のように再現されていた。
幸い、表通りの少し向こうには十人近い気配を感じたけれど雑貨店への移動に支障は無かった。
雑貨店の裏口は都合良く鍵が空いていて、店内へと忍び込む。
すると、なんとなく雰囲気で感じていたけれどやっぱりお目当ての人物はいた。
「んふふ、旦那様。やっと会えたわね?」
「リイナも無事辿り着けたようで良かった。ここまで誰かに見つかったとかはない?」
「いいえ、旦那様に教えてもらった歩き方や行動のお陰で悟られなかったわ。あわや発見になりかけた事はあったけれどもね」
「やっぱりかあ……。彼等は優秀だからね。敵を察知する力もあるから十分に注意しないと、こうやって合流する前に包囲されておしまいさ……」
「まったくね。訓練とはいえ、旦那様の旅団の兵達の練度の高さを思い知ったわ……」
リイナはため息をつきながら、背中に提げていた魔法ライフルM1834――死んでいた兵が持っていたものという設定――のチェックをして言う。
僕も手持ちの武器であるツイン・リルと妖魔帝国製ライフルの装弾管理をする。ううん、僕の武器だと近距離戦向けで遠距離火力はリイナに任せるしかないかな。
「…………リイナ、音を立てないように」
「私も感じたわ」
互いに装備のチェックを終えると、人が近付く気配を感じたから声を潜めてリイナへ伝える。どうやら彼女も感じ取ったようで、裏口からすぐの商品棚へ隠れた。
僕はツイン・リルの片方を、リイナはアブソリュートではなくダガーナイフを手に持った。僕はともかくとして、リイナの細剣では閉所での超近距離戦闘は向かないからね。
お互いどこにいるのかを把握して頷くと、極限まで気配を隠す。接近してきていたのは二人。さあ、裏口から入ってくるか、はいってこないか。
…………扉の音が聞こえた。残念だね、君らの命運はここで尽きるよ。
ガチャ、と扉が開いた。侵入してきたのは二人の兵。訓示をした時に見た覚えのある顔だ。名前までは覚えてないけど。
さあ、どう動く。
彼等は室内に人がいるのを想定してか、一言も話さずハンドサインと首肯のみで意思疎通をする。
前世の特殊部隊式の訓練を施してある彼等は僕の言葉をしっかり守っていた。うんうん、いいことだよ。
ただ、相手が悪かったね。数が同じなら負けるつもりはない。
ほぼ同時に僕達へ近付く二人。三、二、一、今だ。
「……!?」
「んむぅ!?」
最接近したと同時に背後を取りナイフで頸動脈を切りつける動作をする。仮想戦闘の術式が訓練場内に展開されているから現実なら致命傷は即死判定という形になる。僕がキルをした兵は、唖然としていた。
「……やられました。室内のどこにいるかの雰囲気は感じ取っていたのですが……、お見事です……」
僕にしか聞こえない声量で若い男性兵士は言う。悔しそうな表情も滲み出ていた。
「侵入からの行動は訓練通り出来ていたからそこは評価するよ。けど、もっと気配察知を磨くこと」
「ありがとうございます……。はぁぁ……、自分達はここからあと二時間も死体役ですかぁ……」
「仕方ないね。死体のフリをする間、どう行動すればいいか自己分析するように」
「はっ」
僕は彼にアドバイスをすると、同じようにキルを果たしたリイナの方へ向かう。
「リイナ、ばっちしだったよ」
「つくづく思うけれど、旦那様とこうして一緒にならなかったら超近接戦なんて上手く出来なかったわ」
「リイナ准将閣下はお見事でした。死体役に徹します……」
「貴方は訓練内容をちゃんと身につけていたわ。けれど、分が悪かったわね」
「ええ、まったくです……」
さあてと、まずは二人を魔法を一切使わず死亡判定を出せた。あとは打ち合わせしていた脱出経路へ進み、ゴールするだけ。
彼我の戦力差は圧倒的だから追討戦になると明らかに不利になる。一発で決めて追いかけてこれないくらいに叩きのめせたらいいけれど、よしんば三個小隊を殲滅したところで現実なら追加で捕縛部隊に追いかけられる。
その為には魔力で直接的な攻撃をするのではなく、体内強化故に探知されにくい強化術式を用いた近距離戦に徹するのが吉だろう。
無論、バレてしまったら大暴れして部隊を殲滅、逃げる時間を稼ぐしか無くなるけどね。
「とはいえ、易々と逃させてはくれないか……」
「彼等には私達が決めた脱出経路は割れていないけれど、どうせいくつかの候補地は割り出されているでしょうね。捜索と並行して行われてると考えるとなると、接敵もやむなしかしら?」
「それは極力避けたいね。よし、経路はこうのこうで、こうで行こう」
「分かったわ。背中は任せて」
「了解」
僕とリイナは脱出地点までの道行きを決めて、雑貨店を出る。ハンドサイン一つで、阿吽の呼吸で動いていく。
目標地点は南西七〇〇メーラ地点。身体強化魔法込の全速力で駆ければあっという間だけれど、直線的ではなくなるべく敵のいない地点を迂回しながら時には走り時には歩いていく。
(待った。次の路地、対象が三。距離三〇から四〇)
(了解したわ)
裏路地の丁字路、行き先に敵が三人いることをハンドサインでリイナに伝える。二人ならば即殺可能だけど、三人となると一人あまる。
となると、これの出番か。
僕は戦闘用の軍服に装備しておいた投げナイフを二本取り出し手に持つ。
前世にいた、あの人が拾った英国人――最初はド素人もいいとこだったけど、あの人が完全に壊れる前までには厳しい訓練によって手練になった彼女だ――程までじゃないにしても、僕だってやれていたんだ。これくらい容易い。
(一人はやるわ)
(頼むよ。討ち漏らしたらカバーを)
(任せて)
作戦を決め、スリーカウントで僕達は動く。見敵必殺。
僕とリイナは丁字路を出ると電光石火の如く動く。
「なっ!?」
「遅い」
そこは既にキルラインだ。僕は二本の投げナイフを左右の敵に投擲し、それは頸動脈へ導かれキル判定をくだした。残された真ん中は僕がナイフを投げた直後に先行したリイナがダガーナイフで鮮やかな手際で片付ける。
ふう、これで合計五人だ。
「やはり敵いませんね……」
「もっと訓練を励みます……」
「せめて察知出来れば……。魔力隠蔽、完璧でした……」
「伊達に死線を潜り抜けてきてないからね」
「死体役よろしくねえ」
『了解……』
連合王国が誇る最精鋭部隊という自負がある三人は落ち込んでいたけれど、彼等なりに反省材料を次に活かしてくれるだろう。
僕とリイナは一言だけ残して、先へゆく。
あと五〇〇ミーラ。四五〇ミーラ。三五〇ミーラ。三〇〇ミーラ。
ここまでは順調。けれども、そう簡単には通させてくれない場面が立ちはだかった。
「ちぃ、ここから先は厳しそうだね……」
「脱出経路は知らないのに、ここが一番怪しいとよく分かったわね……」
「伊達にアカツキ旅団の所属兵はやってないってことだね……。しかも討伐隊長のロジャー大尉までいる。数は十五。まずったね……」
「流石ロジャー大尉ね。知謀派だけあるわ。どうするの、旦那様。第二候補へ向かう? それとも一番近い第三経路?」
「いや、ここまで来て引き返すのは得策じゃないね。第二候補までは六〇〇ミーラ。第三候補まで五〇〇ミーラ。遭遇率は高めたくない」
「じゃあ、突っ切るしかないわねえ。ということは」
「暴れ回ろう。追討部隊の再編成をせざるを得ないくらいにしておけば、現実でこうなっても逃げる時間は稼げる。ジリ貧の状況に変わりはないけどね」
「魔力を節約して白兵戦。身体強化と魔法障壁重視ね」
「そういうこと。魔法銃による制圧は任せたよ。近付く奴らは僕が片付ける」
「了解よ。楽しくなってきたわ」
リイナは追い詰められている状況、という想定にも関わらず口角を曲げて笑う。僕も不敵に笑い、告げる。
「魔力隠蔽解除。全力装備。捻り潰すよ」
「任せなさいな」
路地に身を隠していた僕とリイナは今までずっと魔力隠蔽を解除し、全力戦闘へ移行する。
探知魔法を張り続けていた兵にはすぐ察知された。けれど、準備を整えていたこっちの方がずっと早い。
「て、敵襲!!」
「瞬脚二重展開。ツイン・リル、風属性付与」
「爆ぜなさいなあ!!」
僕は白兵戦に備えた魔法を詠唱し、リイナは魔法銃に火属性爆発系魔法を走りながら撃つ。
一発目は彼等の目前に着弾し、爆煙と粉塵が彼等を襲う。さらに二発目。リイナが速やかに装填発射した同属性の魔法は今度は彼等がいた所へ確実に命中した。
「ダメージレポート!」
「負傷判定三、死亡判定二ですロジャー大尉!」
「態勢を立て直せ! ちんちくりんのクソ英雄は絶対突っ込んでくる!」
「ごきげんよう、諸君達。残念だけど、側面だよ」
「嘘でしょう!?」
見事に敵士官を演じるロジャー大尉のがら空きの側面から僕は現れる。両手にはツイン・リル。
跳躍し、勢いを付けて回転した僕のツインダガーは一撃目はロジャー大尉が展開していた魔法障壁を二枚破り、二撃目は残りの二枚も破り、三撃目には実際の戦闘であれば喉元を裂かれた判定を下した。
「まだまだぁ!」
「早いっ!」
「クソッ、当てられない!」
「撃つなよ!? こっちが当てられうわぁぁぁ!!」
「超近距離戦闘への移行が遅い! ほらもう三人目!」
「私も忘れちゃダメよ!」
「そんな!?」
僕がロジャー大尉と不運にも近くにいた二人を屠る間に、リイナは自身に向けられた三人を蹴散らして煙が未だ残る場所から現れる。
あっという間に無傷の者が四人まで激減した部隊は瓦解していた。負傷者三名は最早的では無くて僕が投げたナイフとツイン・リルで死亡判定へと変わり、近接武器に持ち替えたとはいえ魔法障壁の展開が遅れたか展開出来ても一枚かそこらの残り四名はリイナが瞬きの間程度で死亡判定へとさせる。
けど、あっちだって無抵抗なわけではない。
「もう新手か。これだけ派手に暴れれば仕方ないね!」
「目視で十人、いやさらに五人よ! これ以上の戦闘は避けましょう!」
「それが正解! 一気に離脱ポイントへ向かうよ!」
「ええ! 銀世界、極地をも凍てつかせる光をここに! 『アブソリュート・ソロ!』」
リイナは逃げる直前に独自魔法を詠唱。氷の光線は向かってくる兵士達を襲う。
『アブソリュート・ソロ』は残存魔力を踏まえれば消耗が大きい魔法だけど、離脱の一撃としてはぴったりだ。
それが証拠にここへ急行してきた十五人は足止めされるか『アブソリュート・ソロ』の直撃を受ける。時間稼ぎは出来たようだ。
「よくやったよリイナ!」
「これくらいならいくらでもしてあげるわ! と言いたい所だけど、大分魔力を消耗してしまったわ。逃げましょう!」
「もちろん!」
僕とリイナは二〇〇メーラ先のゴールへ走る。ここへ到着すれば訓練は終了で僕達の勝利となる。
ところが、辿り着く前に意外な形で訓練は終了を迎えることになった。
「訓練中止!! 訓練中止!! 総員戦闘を止めてください!! 仮想戦闘も終了します!!」
「はぁ? なんでよ?」
「もうすぐ終わりだってのに? どうしてまた?」
脱出地点の先にいたのは仮想戦闘区域の外側で大声をあげる士官。同時に訓練の強制終了を表す青色の信号弾が各所から打ち上げられていた。
これは何らかの理由で戦闘中止を示す信号弾で、つまり訓練区域外で何かが起きた事を意味していた。
「アカツキ中将閣下、リイナ准将閣下! 勝利条件達成直前に、無礼を承知でお伝えします!」
「何があったの? 訓練を止めたという事はよっぽどの事情なんだよね?」
大慌てで走ってきたのは今まで外で訓練の様子を見ていたはずの三十代初頭の士官、階級は中尉だった。
背後に視線を移すと、死亡判定を受けた多くの部下達が拍子抜けといった様子でこちらを見ていた。ただ、僕のもとへやってきた彼がただならぬ様子で向かってきたのは察知しているようですぐに起立していた。
「は、はいっ……! 外務省経由で統合本部からこちらへ魔法無線装置で緊急伝達事項が送られました……!」
「…………読み上げなさい」
リイナが訓練が急に中止になって不満気だった表情は既に無くなり、准将として相応しい顔つきになって言う。
「はっ、リイナ准将閣下! 読み上げます……! 『本日一一二〇(ヒトヒトフタマル)、協商連合外務省より連合王国外務省へ緊急連絡有。協商連合国内にて、フィリーネ・リヴェット氏が行方不明。現在、捜索するも発見出来ず。です!』」
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