270 / 390
第3部『血と硝煙と死体の山の果てに』第16章 春季第三攻勢作戦『電光の双剣』
第10話 勝利したとはいえ、予想外の損害はアカツキに今後を憂慮させる。
しおりを挟む
・・10・・
六の月九の日より始まったオディッサとその周辺における戦いは、結果を先に述べると人類諸国統合軍南部統合軍が勝利し二十四の日にはオディッサの南、ディトゥートリを占領。二十七の日にはオディッサも占領した。
北部統合軍も六の月三十の日にはキャエフを占領。
翌日にはダロノワ臨時大統領達にとって悲願の政府樹立が宣言され、当面の間は治安面などを人類諸国統合軍北部統合軍に頼るものの、キャエフの地には正式に『妖魔諸種族連合共和国』が発足され、キャエフは連合共和国の首都となったのである。
これより以下に、七の月一の日までの経過を記しておこう。
【人類諸国統合軍南部統合軍行動記録】
・6の月13の日~6の月16の日
人類諸国統合軍南部統合軍は昨日までの戦闘を受け、師団再編成の為一時的に進軍速度を低下させる。また、特に損害の大きかった連合王国能力者化師団と法国神聖特務師団は一旦後方へ下がり再編成へ。
・6の月17の日
人類諸国統合軍南部統合軍、攻勢再開。ただし能力者化師団は再編成途上につき一部の参戦に留まる。
・6の月18の日
最前進地点で、オディッサより西9.6キーラ地点まで到達。妖魔帝国軍がの攻勢が弱まる。
・6の月19の日
前線兵士からの報告によると、統制のある後退を開始している兆候ありと。この日までにはオディッサより西7.2キーラまで前進。野砲もまもなくオディッサ中心街を射程におさめる距離へ。
・6の月20の日
オディッサから西5キーラ、ディトゥートリまで西4.2キーラまで前進。AFー44偵察飛行隊からの報告では、妖魔帝国軍オディッサ方面軍司令部は市街からの撤退を開始。オディッサ放棄か?
人類諸国統合軍南部統合軍が数的にも優位になり妖魔帝国軍は全滅する前に粛々と撤退する為によるものと司令部は推測。
・同日
北部統合軍はキャエフの戦いを優位に進め、市街地郊外まで到達。
・6の月21の日
能力者化師団、連合王国・法国共に再編成が終了。補充兵はひとまず1500とし、ブカレシタ後方司令部より補充に依頼。攻勢が強化される。
・6の月22の日
オディッサ・ディトゥートリ市街戦突入。
捕虜からの聴取により市街地に一部市民が残っている――市民兵として自主的にと思われるが、単純に離れなかった者もいる――為、降伏勧告も行う。
解答無し、黙殺される。午後から徹底した空爆と砲兵隊による観測射撃が行われる。
・6の月24の日
ディトゥートリ占領。
・6の月27の日
オディッサ占領。残っていたのは僅かな防衛隊と市民達のみ。防衛隊と市民兵は捕虜へ。残っていた市民達は市民兵を除いて約5000程度。残りは着の身着のまま逃げたか、妖魔帝国軍の勧告で避難済み。
ディトゥートリでも行っているが、市民達には食糧供出を開始。想定より少ない人数の為、兵站に圧迫は無し。
・6の月30の日
北部統合軍、キャエフ占領。
・7の月1の日
キャエフにて『妖魔諸種族連合共和国』建国宣言。同国は首都をキャエフとする。ただし当面は治安面などを人類諸国統合軍北部統合軍が担当する。
【7の月1の日までの両軍損害】
・妖魔帝国軍(キャエフ方面軍含む)
死者:58000
負傷者:69000
捕虜:31000
捕虜除く合計:127000
・人類諸国統合軍(北部統合軍含む)
死者:17000
負傷者:32000(復帰可能:14000)
捕虜:5500(内、4000は救出)
捕虜除く合計:49000
・・Φ・・
7の月2の日
午前9時15分
妖魔帝国西部・オディッサ市西部郊外
人類諸国統合軍南部統合軍総司令部
六の月二十七の日にオディッサ市を占領してから五日が経過した七の月二の日は快晴で、少し汗ばむような陽射しだった。
妖魔帝国軍に奇襲され何とか防いだあの日以降の攻勢は、僕の感想としてはかなり順調だったと言ってもいい。
それが証拠に予定よりは数日遅れたものの、僕は今こうして南部統合軍司令部――オディッサの復旧と現地司令部の建設は進んでいるけれど、まだ五日しか経っていないから当然完成していなくて、天幕を使っている――でデスクワークに追われている。外に出てマーチス元帥と共に視察する事はあるけれど、それ以外というと事後処理と部下からの報告を受けて指示を飛ばすことくらい。
懸念されていた市民達のレジスタンス化もほとんど無く、つい先日までここが戦場だとは思えないくらいに平穏になっていたんだ。
「旦那様、能力者化師団再編成に伴っての新しい書類よ。私の決裁はしてあるから、後は旦那様のサインだけ。一応目を通してくれるかしら?」
「了解したよ」
「次にこっちが今回の戦いにおける南部統合軍と北部統合軍の損害と、戦況報告よ。参謀本部が旦那様に今後の指針を求めているみたいね」
「相変わらず仕事が早いなあ。現場組の意見を取り入れて欲しいってことでしょ。今日の午後からやろうかな」
「これは……、兵站本部からね。輸送に関して、道路整備の選定と鉄道網をどうするかの資料よ。妖魔帝国は広軌を採用しているから、私達の標準軌は使えないでしょう? 彼等は広大な地をすぐさま改軌するのは諦めて、敵地の軌道を修理して利用するらしいわ。もし今後改軌するにしても、少しずつだそうよ」
「だろうね。軌道間が違うから、手間がかかりすぎるし。だから山脈間の輸送は蒸気トラックと馬車によるものになるからね。道路拡幅工事は完了が見えてきたし、物資集積基地にはキャエフとここオディッサに置くけれど、サスロスフ高地も中継基地にする。だったかな」
「ええ。山脈越えの鉄道敷設は時間がかかりすぎる上に、軌道が違うからこの辺りで積み替え作業の基地も必要になるものね。だったら次々に供給されている輸送トラックやゴーレム等の召喚動物、それに従来の馬による輸送を使った方が余程いいって結論になったものね」
「資材の関係もあるけれど、建設期間の問題が一番大きいね。西側の麓まで、つまりは鉄道敷設のしやすい地点まで延伸さえすれば、あとはサスロフスまでそう遠くはないからね。兵站参謀の見立てではこの形でも十分に維持は出来るって事だから、僕もそれでいいと思うよ」
戦闘が一旦落ち着くと、整えていかないといけないのが情報通信網と兵站網の構築と整備だ。
現状、南北合わせて約一〇〇万人の将兵が妖魔帝国本土西部にいる。
今後の戦略の関係上、極力現地徴発――金銭を支払った上での徴発は除くとして――を避けたい人類諸国統合軍は戦闘を続けながらも特に兵站関連については構築と整備を続けていた。
ここに書かれているのは、兵站に携わる参謀達が分かりやすく簡潔に纏められた報告書だ。
リイナとの会話の通り、サスロフス高地までの全線敷設はせずに、山脈西側の麓までは敷設してそこからは輸送トラックと一部は従来の馬によるピストン輸送に。山脈東側の輸送中継基地になるサスロフス高地からも輸送トラックと馬による輸送になった。
これはそもそも山脈だから平地に比べて鉄道敷設に要する時間が大幅に必要になるのと、僕達人類諸国の鉄道が標準軌で、妖魔帝国が広軌だからという理由がある。
特に後者の理由が今回の決定に影響を及ぼした。
もしレールの幅が同じならば全線敷設もしたと思う。何せオディッサまで伸びている敵の鉄路を利用出来るんだからね。
だけど実際には僕らが標準軌で、あちらが広軌。となると選択肢は二つでこのまま利用するか、膨大な資材と時間を投入して改軌するかのどちらか。
手っ取り早いのはやっぱり一つ目だ。だから司令部はこちらを採用した。
とはいえ、こっちもこっちで問題がある。破壊工作をされたりした時の修理だ。まあ、こればかりかは都度工兵にやってもらうしかないだろうね。
あとは機関車と貨車についてだろうか。当面は彼等が残していった――てっきり使われないように爆破されたかと思ったけれど、半数は無事だった――ものを使い、残りは占領地の工場で作らせるしかないかな。
正直非効率的ではあるけれど、改軌の方はもっと膨大な資源と人員を投入しないといけない。
こんな感じで、輸送面だけは僕達を今後も悩ませることになるだろう。予測はしてたものの実際になってみるとなかなかにしんどい。
だからふと思う。鉄道敷設を広軌にした皇帝レオニードには先見の妙があるな、と。
鉄道関連については兵站参謀達に任せるとして、話を元に戻そう。
「輸送についての書類は以上ね。あとは、今日のスケジュール確認。能力者化師団の駐屯地への視察が昼食後に。オディッサ市街地への視察がその次よ」
「護衛にアレン中佐と二個分隊を付けて。食糧配給の様子も見ておきたいね。とにかく占領地は治安維持と敵国市民達の神経を逆撫でしない事にある。息抜きも必要だけど、軍規は厳しく保つようにしないと」
「占領地における治安維持の方策は憲兵に任せましょう。幾つも直接旦那様が携わっていては、アナタの身体がどれだけあっても足りないもの」
「全くだね。戦闘が終われば、中将らしく各地の視察と作戦会議に書類仕事。これが僕の仕事さ。――よし、チェックも終わったし始めるとするかな」
僕はリイナから聞いた片付けるべき仕事の内容を箇条書きにして手書きのTO-DOリストを作ると、事務仕事をスタートした。
中将かつマーチス侯爵の副官という僕の立場だと、書類の殆どは僕で決裁が終わるかあとはマーチス侯爵に行くものくらいだ。
既に佐官クラスや参謀達が整えてくれた書類に目を通していき、途中からは、僕の手元にあるものよりさらに詳細が書かれている戦闘詳報を閲覧しにいっていたエイジスが戻ってきてサポートをしてくれていた。
「んんー。そこそこ片付いたし、休憩にしよっか」
「同意。人の集中力最大持続時間は約九〇分。休憩を推奨しますマスター」
「そうね。私もちょっと休みたいわ」
「ならテントの外へ行こうか」
二、三本の喫煙をしつつ一時間半程経過した午後十一時前。そろそろ一息つこうと僕は休憩することに決め、外の空気を吸いがてら僕とリイナにエイジスはテントの外に出る。
僕の執務室といえるテントは司令部の中心にあって、今も道行く士官達は忙しなく動き回っている。彼等は僕に気が付くと敬礼をして過ぎ去っていく。
彼等に共通しているのは表情の明るさ。あわや包囲される事になりかけたあの日を除いて、混乱する場面はあまり無く、一応は作戦通りオディッサを占領出来たからだろう。北部統合軍もキャエフを占領し、今後妖魔帝国本土で勢力圏を築いていく『妖魔諸種族連合共和国』が建国されたからというのもあるだろう。
しかし、一部の軍人達――僕達のような指揮官クラスだけでなく、死闘を経験した兵士達まで――はとある憂いも抱えていた。
それを僕は、外の空気を吸い終えて行き交う軍人達からは聞こえない執務テントで、今まではあえて口に出していなかったことを言う。
「ねえ、リイナ。ようやく落ち着けたからふと思ったんだけどさ」
「どうしたの、旦那様? って、その顔つきだと戦争の事よね」
執務椅子に座って煙草に火をつけてから言うと、察しが良いリイナは僕の話題が何かを当ててみせた。
僕はエイジスが執務机にあった戦況報告書を手元に置いてくれたのを横目で見ながら頷くと。
「うん。リイナは今回のオディッサの戦いをどう分析する?」
「分析、ね。そうねえ。一言で表すのならば、ブカレシタはこの、これからの戦争を示唆する前哨戦だったと言える。かしら。死者、負傷者の数だけ見ても私はこう考えたわ」
「僕も全く同じだ。北部統合軍と合わせて、僅か一ヶ月足らずで死傷者は約五〇〇〇〇。一般医療と魔法医療が発達したお陰で復帰可能な者が約一四〇〇〇いるとはいっても、差し引いたとしても三六〇〇〇だ。いくら奇襲された分も含めてとはいえ、とても看過出来る数字じゃない」
「先行きが不安になるわよね……」
「そうとも」
近代戦がいくら互いに大量の死傷者を生じさせる、命の価値が限りなく安くなる戦争形態とはいえだ。全体を通じれば序盤でしかない戦いで死傷者約五〇〇〇〇は今後の戦略を修正しなければならないと決心させるには十分な数だった。
特に全体の一割も損耗した能力者化師団については人類諸国統合軍に大きな衝撃を与えた。能力者化師団創設に深く関わりその指揮官でもある僕にとっては、対策を早期に講じないと早晩能力者化師団が崩壊しかねないと危機感を抱かざるを得なかった。
だけど、人類諸国統合軍の中にはまだ損耗は全体の四パルセント弱でしかないと楽観視する者もいる。
奇襲されたからこれだけの損害を受けたのであり、新兵器『ソズダーニア銃砲兵』を半壊させ約三〇万の妖魔帝国軍に対して約一三万の死傷者を与えたのは事実。いくら大量の陸軍兵力を保有している妖魔帝国軍とはいえ、十分なダメージを与えられたのだから過度に怖気付く必要は無い。
という論調だ。
確かに約一三万の死傷者を出させ、オディッサとキャエフを失ったのは妖魔帝国軍にとっても決して無傷とは言えないだろうし、『ソズダーニア銃砲兵』を半減させられたのは痛手だっただろう。
でも、僕はどうしても勇ましくはなれなかった。
「全体でもだけど、貴重な能力者化師団の想定以上の損耗に、明らかに練度が向上している妖魔帝国軍そのもの。そして、『ソズダーニア銃砲兵』の存在……。妖魔帝国軍が変貌を遂げたのは確定事項。何か作戦を考えないと、いつか……」
「旦那様」
「ん、あぁ、ごめん……」
どうやら僕はいつの間にか思い詰めたような顔をしていたらしい。振り返ると、心配そうな表情をしたリイナ。彼女は後ろから僕の頭を優しく撫でてくれる。抱き締めてこないのはここが執務室だからだろう。
「通常編成師団も勿論だけど、能力者化師団と私達が侵攻を食い止めたからこそ包囲されなかったの。包囲されなかったからこそ損害の拡大を防げたの。だからこそ、オディッサを占領出来た。旦那様、前向きに考えましょ? 妖魔帝国軍の脅威度は上方修正しなくちゃいけないのは確かだけれども、対策は皆で考えればいいわ。これは旦那様が常日頃意識している事じゃなくて?」
「そう、だね。思い悩んでいても始まらない。後方では新兵器の開発は進んでいて、僕達にはまだ空の切り札も控えている。これからの方針は明日には会議の議題にもあがるだろうし、参謀本部とも話し合えばいいから。――ありがとう、リイナ。いつも君には、支えられてるよ」
「どういたしまして、旦那様」
リイナの微笑みは、僕に強い安心感を与えてくれた。
困難は皆で分かち合い考えればいい。それこそが軍であり、参謀本部であるのだから。
常々意識している点を、焦ったり思い詰めると思考の外に行ってしまうのは僕の悪い癖だ。
だけどストッパーとして、支えとしてリイナがいてくれる。論理的かつ効率的な提案をエイジスはしてくれる。命懸けで戦ってくれる部下達がいる。
この先の戦いは確実に厳しく険しいものになるだろう。
沢山の人があっけなく死ぬだろうし、四肢のいずれかを欠損させられるかもしれない。無論、僕もその例外ではない。
けれども、この戦争は大切な人を守る為に、未来の世代が平和に暮らす為の戦争だ。
負ける訳にはいかない。いかないから、僕だけじゃなく優秀な参謀本部の面々や死地を乗り切った部下達から話を聞き意見を交わして対策を考えよう。
…………とは言ってもだ。
「そろそろ昼食の時間だね」
「肯定。栄養補給は精神的にも安定をもたらしますマイマスター」
「先にお昼にしましょ、旦那様。今日の仕事はまだあるのだし、何より物事を考えたりするにはまず食事だもの」
「ははっ、違いないね」
腹が減ってはなんとやら、だからさ。
六の月九の日より始まったオディッサとその周辺における戦いは、結果を先に述べると人類諸国統合軍南部統合軍が勝利し二十四の日にはオディッサの南、ディトゥートリを占領。二十七の日にはオディッサも占領した。
北部統合軍も六の月三十の日にはキャエフを占領。
翌日にはダロノワ臨時大統領達にとって悲願の政府樹立が宣言され、当面の間は治安面などを人類諸国統合軍北部統合軍に頼るものの、キャエフの地には正式に『妖魔諸種族連合共和国』が発足され、キャエフは連合共和国の首都となったのである。
これより以下に、七の月一の日までの経過を記しておこう。
【人類諸国統合軍南部統合軍行動記録】
・6の月13の日~6の月16の日
人類諸国統合軍南部統合軍は昨日までの戦闘を受け、師団再編成の為一時的に進軍速度を低下させる。また、特に損害の大きかった連合王国能力者化師団と法国神聖特務師団は一旦後方へ下がり再編成へ。
・6の月17の日
人類諸国統合軍南部統合軍、攻勢再開。ただし能力者化師団は再編成途上につき一部の参戦に留まる。
・6の月18の日
最前進地点で、オディッサより西9.6キーラ地点まで到達。妖魔帝国軍がの攻勢が弱まる。
・6の月19の日
前線兵士からの報告によると、統制のある後退を開始している兆候ありと。この日までにはオディッサより西7.2キーラまで前進。野砲もまもなくオディッサ中心街を射程におさめる距離へ。
・6の月20の日
オディッサから西5キーラ、ディトゥートリまで西4.2キーラまで前進。AFー44偵察飛行隊からの報告では、妖魔帝国軍オディッサ方面軍司令部は市街からの撤退を開始。オディッサ放棄か?
人類諸国統合軍南部統合軍が数的にも優位になり妖魔帝国軍は全滅する前に粛々と撤退する為によるものと司令部は推測。
・同日
北部統合軍はキャエフの戦いを優位に進め、市街地郊外まで到達。
・6の月21の日
能力者化師団、連合王国・法国共に再編成が終了。補充兵はひとまず1500とし、ブカレシタ後方司令部より補充に依頼。攻勢が強化される。
・6の月22の日
オディッサ・ディトゥートリ市街戦突入。
捕虜からの聴取により市街地に一部市民が残っている――市民兵として自主的にと思われるが、単純に離れなかった者もいる――為、降伏勧告も行う。
解答無し、黙殺される。午後から徹底した空爆と砲兵隊による観測射撃が行われる。
・6の月24の日
ディトゥートリ占領。
・6の月27の日
オディッサ占領。残っていたのは僅かな防衛隊と市民達のみ。防衛隊と市民兵は捕虜へ。残っていた市民達は市民兵を除いて約5000程度。残りは着の身着のまま逃げたか、妖魔帝国軍の勧告で避難済み。
ディトゥートリでも行っているが、市民達には食糧供出を開始。想定より少ない人数の為、兵站に圧迫は無し。
・6の月30の日
北部統合軍、キャエフ占領。
・7の月1の日
キャエフにて『妖魔諸種族連合共和国』建国宣言。同国は首都をキャエフとする。ただし当面は治安面などを人類諸国統合軍北部統合軍が担当する。
【7の月1の日までの両軍損害】
・妖魔帝国軍(キャエフ方面軍含む)
死者:58000
負傷者:69000
捕虜:31000
捕虜除く合計:127000
・人類諸国統合軍(北部統合軍含む)
死者:17000
負傷者:32000(復帰可能:14000)
捕虜:5500(内、4000は救出)
捕虜除く合計:49000
・・Φ・・
7の月2の日
午前9時15分
妖魔帝国西部・オディッサ市西部郊外
人類諸国統合軍南部統合軍総司令部
六の月二十七の日にオディッサ市を占領してから五日が経過した七の月二の日は快晴で、少し汗ばむような陽射しだった。
妖魔帝国軍に奇襲され何とか防いだあの日以降の攻勢は、僕の感想としてはかなり順調だったと言ってもいい。
それが証拠に予定よりは数日遅れたものの、僕は今こうして南部統合軍司令部――オディッサの復旧と現地司令部の建設は進んでいるけれど、まだ五日しか経っていないから当然完成していなくて、天幕を使っている――でデスクワークに追われている。外に出てマーチス元帥と共に視察する事はあるけれど、それ以外というと事後処理と部下からの報告を受けて指示を飛ばすことくらい。
懸念されていた市民達のレジスタンス化もほとんど無く、つい先日までここが戦場だとは思えないくらいに平穏になっていたんだ。
「旦那様、能力者化師団再編成に伴っての新しい書類よ。私の決裁はしてあるから、後は旦那様のサインだけ。一応目を通してくれるかしら?」
「了解したよ」
「次にこっちが今回の戦いにおける南部統合軍と北部統合軍の損害と、戦況報告よ。参謀本部が旦那様に今後の指針を求めているみたいね」
「相変わらず仕事が早いなあ。現場組の意見を取り入れて欲しいってことでしょ。今日の午後からやろうかな」
「これは……、兵站本部からね。輸送に関して、道路整備の選定と鉄道網をどうするかの資料よ。妖魔帝国は広軌を採用しているから、私達の標準軌は使えないでしょう? 彼等は広大な地をすぐさま改軌するのは諦めて、敵地の軌道を修理して利用するらしいわ。もし今後改軌するにしても、少しずつだそうよ」
「だろうね。軌道間が違うから、手間がかかりすぎるし。だから山脈間の輸送は蒸気トラックと馬車によるものになるからね。道路拡幅工事は完了が見えてきたし、物資集積基地にはキャエフとここオディッサに置くけれど、サスロスフ高地も中継基地にする。だったかな」
「ええ。山脈越えの鉄道敷設は時間がかかりすぎる上に、軌道が違うからこの辺りで積み替え作業の基地も必要になるものね。だったら次々に供給されている輸送トラックやゴーレム等の召喚動物、それに従来の馬による輸送を使った方が余程いいって結論になったものね」
「資材の関係もあるけれど、建設期間の問題が一番大きいね。西側の麓まで、つまりは鉄道敷設のしやすい地点まで延伸さえすれば、あとはサスロフスまでそう遠くはないからね。兵站参謀の見立てではこの形でも十分に維持は出来るって事だから、僕もそれでいいと思うよ」
戦闘が一旦落ち着くと、整えていかないといけないのが情報通信網と兵站網の構築と整備だ。
現状、南北合わせて約一〇〇万人の将兵が妖魔帝国本土西部にいる。
今後の戦略の関係上、極力現地徴発――金銭を支払った上での徴発は除くとして――を避けたい人類諸国統合軍は戦闘を続けながらも特に兵站関連については構築と整備を続けていた。
ここに書かれているのは、兵站に携わる参謀達が分かりやすく簡潔に纏められた報告書だ。
リイナとの会話の通り、サスロフス高地までの全線敷設はせずに、山脈西側の麓までは敷設してそこからは輸送トラックと一部は従来の馬によるピストン輸送に。山脈東側の輸送中継基地になるサスロフス高地からも輸送トラックと馬による輸送になった。
これはそもそも山脈だから平地に比べて鉄道敷設に要する時間が大幅に必要になるのと、僕達人類諸国の鉄道が標準軌で、妖魔帝国が広軌だからという理由がある。
特に後者の理由が今回の決定に影響を及ぼした。
もしレールの幅が同じならば全線敷設もしたと思う。何せオディッサまで伸びている敵の鉄路を利用出来るんだからね。
だけど実際には僕らが標準軌で、あちらが広軌。となると選択肢は二つでこのまま利用するか、膨大な資材と時間を投入して改軌するかのどちらか。
手っ取り早いのはやっぱり一つ目だ。だから司令部はこちらを採用した。
とはいえ、こっちもこっちで問題がある。破壊工作をされたりした時の修理だ。まあ、こればかりかは都度工兵にやってもらうしかないだろうね。
あとは機関車と貨車についてだろうか。当面は彼等が残していった――てっきり使われないように爆破されたかと思ったけれど、半数は無事だった――ものを使い、残りは占領地の工場で作らせるしかないかな。
正直非効率的ではあるけれど、改軌の方はもっと膨大な資源と人員を投入しないといけない。
こんな感じで、輸送面だけは僕達を今後も悩ませることになるだろう。予測はしてたものの実際になってみるとなかなかにしんどい。
だからふと思う。鉄道敷設を広軌にした皇帝レオニードには先見の妙があるな、と。
鉄道関連については兵站参謀達に任せるとして、話を元に戻そう。
「輸送についての書類は以上ね。あとは、今日のスケジュール確認。能力者化師団の駐屯地への視察が昼食後に。オディッサ市街地への視察がその次よ」
「護衛にアレン中佐と二個分隊を付けて。食糧配給の様子も見ておきたいね。とにかく占領地は治安維持と敵国市民達の神経を逆撫でしない事にある。息抜きも必要だけど、軍規は厳しく保つようにしないと」
「占領地における治安維持の方策は憲兵に任せましょう。幾つも直接旦那様が携わっていては、アナタの身体がどれだけあっても足りないもの」
「全くだね。戦闘が終われば、中将らしく各地の視察と作戦会議に書類仕事。これが僕の仕事さ。――よし、チェックも終わったし始めるとするかな」
僕はリイナから聞いた片付けるべき仕事の内容を箇条書きにして手書きのTO-DOリストを作ると、事務仕事をスタートした。
中将かつマーチス侯爵の副官という僕の立場だと、書類の殆どは僕で決裁が終わるかあとはマーチス侯爵に行くものくらいだ。
既に佐官クラスや参謀達が整えてくれた書類に目を通していき、途中からは、僕の手元にあるものよりさらに詳細が書かれている戦闘詳報を閲覧しにいっていたエイジスが戻ってきてサポートをしてくれていた。
「んんー。そこそこ片付いたし、休憩にしよっか」
「同意。人の集中力最大持続時間は約九〇分。休憩を推奨しますマスター」
「そうね。私もちょっと休みたいわ」
「ならテントの外へ行こうか」
二、三本の喫煙をしつつ一時間半程経過した午後十一時前。そろそろ一息つこうと僕は休憩することに決め、外の空気を吸いがてら僕とリイナにエイジスはテントの外に出る。
僕の執務室といえるテントは司令部の中心にあって、今も道行く士官達は忙しなく動き回っている。彼等は僕に気が付くと敬礼をして過ぎ去っていく。
彼等に共通しているのは表情の明るさ。あわや包囲される事になりかけたあの日を除いて、混乱する場面はあまり無く、一応は作戦通りオディッサを占領出来たからだろう。北部統合軍もキャエフを占領し、今後妖魔帝国本土で勢力圏を築いていく『妖魔諸種族連合共和国』が建国されたからというのもあるだろう。
しかし、一部の軍人達――僕達のような指揮官クラスだけでなく、死闘を経験した兵士達まで――はとある憂いも抱えていた。
それを僕は、外の空気を吸い終えて行き交う軍人達からは聞こえない執務テントで、今まではあえて口に出していなかったことを言う。
「ねえ、リイナ。ようやく落ち着けたからふと思ったんだけどさ」
「どうしたの、旦那様? って、その顔つきだと戦争の事よね」
執務椅子に座って煙草に火をつけてから言うと、察しが良いリイナは僕の話題が何かを当ててみせた。
僕はエイジスが執務机にあった戦況報告書を手元に置いてくれたのを横目で見ながら頷くと。
「うん。リイナは今回のオディッサの戦いをどう分析する?」
「分析、ね。そうねえ。一言で表すのならば、ブカレシタはこの、これからの戦争を示唆する前哨戦だったと言える。かしら。死者、負傷者の数だけ見ても私はこう考えたわ」
「僕も全く同じだ。北部統合軍と合わせて、僅か一ヶ月足らずで死傷者は約五〇〇〇〇。一般医療と魔法医療が発達したお陰で復帰可能な者が約一四〇〇〇いるとはいっても、差し引いたとしても三六〇〇〇だ。いくら奇襲された分も含めてとはいえ、とても看過出来る数字じゃない」
「先行きが不安になるわよね……」
「そうとも」
近代戦がいくら互いに大量の死傷者を生じさせる、命の価値が限りなく安くなる戦争形態とはいえだ。全体を通じれば序盤でしかない戦いで死傷者約五〇〇〇〇は今後の戦略を修正しなければならないと決心させるには十分な数だった。
特に全体の一割も損耗した能力者化師団については人類諸国統合軍に大きな衝撃を与えた。能力者化師団創設に深く関わりその指揮官でもある僕にとっては、対策を早期に講じないと早晩能力者化師団が崩壊しかねないと危機感を抱かざるを得なかった。
だけど、人類諸国統合軍の中にはまだ損耗は全体の四パルセント弱でしかないと楽観視する者もいる。
奇襲されたからこれだけの損害を受けたのであり、新兵器『ソズダーニア銃砲兵』を半壊させ約三〇万の妖魔帝国軍に対して約一三万の死傷者を与えたのは事実。いくら大量の陸軍兵力を保有している妖魔帝国軍とはいえ、十分なダメージを与えられたのだから過度に怖気付く必要は無い。
という論調だ。
確かに約一三万の死傷者を出させ、オディッサとキャエフを失ったのは妖魔帝国軍にとっても決して無傷とは言えないだろうし、『ソズダーニア銃砲兵』を半減させられたのは痛手だっただろう。
でも、僕はどうしても勇ましくはなれなかった。
「全体でもだけど、貴重な能力者化師団の想定以上の損耗に、明らかに練度が向上している妖魔帝国軍そのもの。そして、『ソズダーニア銃砲兵』の存在……。妖魔帝国軍が変貌を遂げたのは確定事項。何か作戦を考えないと、いつか……」
「旦那様」
「ん、あぁ、ごめん……」
どうやら僕はいつの間にか思い詰めたような顔をしていたらしい。振り返ると、心配そうな表情をしたリイナ。彼女は後ろから僕の頭を優しく撫でてくれる。抱き締めてこないのはここが執務室だからだろう。
「通常編成師団も勿論だけど、能力者化師団と私達が侵攻を食い止めたからこそ包囲されなかったの。包囲されなかったからこそ損害の拡大を防げたの。だからこそ、オディッサを占領出来た。旦那様、前向きに考えましょ? 妖魔帝国軍の脅威度は上方修正しなくちゃいけないのは確かだけれども、対策は皆で考えればいいわ。これは旦那様が常日頃意識している事じゃなくて?」
「そう、だね。思い悩んでいても始まらない。後方では新兵器の開発は進んでいて、僕達にはまだ空の切り札も控えている。これからの方針は明日には会議の議題にもあがるだろうし、参謀本部とも話し合えばいいから。――ありがとう、リイナ。いつも君には、支えられてるよ」
「どういたしまして、旦那様」
リイナの微笑みは、僕に強い安心感を与えてくれた。
困難は皆で分かち合い考えればいい。それこそが軍であり、参謀本部であるのだから。
常々意識している点を、焦ったり思い詰めると思考の外に行ってしまうのは僕の悪い癖だ。
だけどストッパーとして、支えとしてリイナがいてくれる。論理的かつ効率的な提案をエイジスはしてくれる。命懸けで戦ってくれる部下達がいる。
この先の戦いは確実に厳しく険しいものになるだろう。
沢山の人があっけなく死ぬだろうし、四肢のいずれかを欠損させられるかもしれない。無論、僕もその例外ではない。
けれども、この戦争は大切な人を守る為に、未来の世代が平和に暮らす為の戦争だ。
負ける訳にはいかない。いかないから、僕だけじゃなく優秀な参謀本部の面々や死地を乗り切った部下達から話を聞き意見を交わして対策を考えよう。
…………とは言ってもだ。
「そろそろ昼食の時間だね」
「肯定。栄養補給は精神的にも安定をもたらしますマイマスター」
「先にお昼にしましょ、旦那様。今日の仕事はまだあるのだし、何より物事を考えたりするにはまず食事だもの」
「ははっ、違いないね」
腹が減ってはなんとやら、だからさ。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる