異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第19章ドエニプラ攻防戦2編

第5話 ドエニプラ市街戦にてアカツキは対敵する

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 ・・5・・
 同日
 午後2時半
 ドエニプラ中心市街地より西5キーラ
 人類諸国統合軍連合王国軍能力者化師団本部


「北部方面の協商連合軍より報告あり! 我、中心市街地より四キーラ地点まで前進。帝国軍部隊瓦解する部隊多数!」

「同様に北部方面の南部合流包囲担当の師団より連絡あり! 敵の抵抗激しく、包囲完了に数時間を要するとのこと! 現在砲兵及びロケット部隊に支援を要請し、重火器を投入しての制圧作戦を敢行中!」

「南部方面、中心市街地より四キーラ半まで迫るも包囲は今しばらく時間がかかるとのこと!」

「西部方面、撤退部隊は少なく想定以上の反抗をされているとのことで面制圧による圧殺の後に攻勢へ再度出るとのこと! 現在最前進地点は司令部まで四キーラを切りました」

「能力者化師団麾下部隊は浸透しつつあるも、一区画を争う戦闘へ。ただし朝からの総攻撃で敵軍かなり消耗し抵抗力は低下しつつありと!」

 午前中から始まったドエニプラ中心市街地への総攻撃は包囲が遅れている点を除いて着実に進んでいた。
 昼までに帝国軍は敗走する部隊や降伏する部隊も続出していたけれど、頑なに戦い続ける部隊も存在している。統合軍は火力人員全てにおいて勝っていることからゴリ押しを繰り返し、今の時点で一番敵司令部に近い部隊は約四キーラ地点まで迫っていた。

「この様子なら今日だけでかなり近付ける。遅くとも明後日、いや、明日には司令部目前まで行けるかな」

「推測。既に帝国軍部隊は交戦能力を喪失しつつあり、早晩総崩壊に陥るかと。ただし、シェーコフ大将の捕虜化は不可能となりました」

「包囲が未だに手間取っているのはシェーコフ大将が司令部地下壕から脱出したからだろうね。目撃もあるし」

 午前中に『始まりの大隊』の破壊工作人員が救出されたことにより余力を残して帰還したエイジスは、隣で冷静に戦況報告をする。その中にはシェーコフ大将がドエニプラから脱出し理想としていた捕虜化が出来なくなった点も含まれていた。
 ドエニプラ攻防戦を一筋縄では片付かない戦争にしたシェーコフ大将の事だからそう易々と捕まってくれないだろうと思ったけれど、逃してしまったのは少し手痛いとこだと言えるかな。
 もしここでシェーコフ大将が捕虜になってくれれば、ドエニプラだけじゃなくてプレジチェープリも無血で手中に収められたかもしれない。だけど現実は捕まらず、脱出して向かった方面は間違いなくプレジチェープリ。迂回はするかもしれないけれど、包囲が完成していない以上は東方面に帝国軍がまだ残っている関係上追撃も難しく、追加で部隊投入したいところだけれどまずはドエニプラを完全制圧しないといけない。
 だからシェーコフ大将は諦めて最重要目標であるドエニプラにカタを付けるのが先と判断。今は前線ほどからほど近い地点で能力者化師団の指揮官として僕とリイナにエイジスはいた。もちろん、アレン中佐達も一緒だ。

「こちらの手が空かない隙を狙われてシェーコフ大将をとり逃したのは痛いけれど、元々プレジチェープリは厳冬期の限定攻勢で占領するか、包囲の予定だから誤差の範囲内ね。その前に、まずはドエニプラだわ」

「うん。帝国軍の兵士はこの期に及んでまだ抵抗をしているからね。特に包囲が完成するのに時間がかかるのには少し驚いた。まあシェーコフ大将が逃げた時点で目的は一目瞭然だけどね」

「大方時間稼ぎでしょうね。シェーコフ大将がいなくなったとすると、引き継いだのはチョスカー少将かしら」

「肯定。現在チョスカー少将の目撃例が東部にはありません。総司令官たるシェーコフ大将をプレジチェープリへ脱出させる為に引き受けたのでしょう」

 三人の間で意見は一致していたし、現場にいる能力者化師団の指揮官クラスも同様だった。

「アカツキ中将閣下。攻防戦を通して体感しましたが帝国軍の連中、特にドエニプラにいる奴等はかなり根性があります。練度に裏打ちされていますが、司令部に近付くにつれて顕著になっていると思います。閣下、ご注意を」

「ありがとうアレン中佐。君の言うように辛うじて司令部直轄の部隊が食い止めているのも恐ろしいくらいの精神力が支えているんだろうね。敵ながら賞賛に値するよ」

「まったくです、アカツキ中将閣下」

「とはいえ、もう終わりだよ。僕達が終わらせる」

「となると、いよいよですか」

「うん。能力者化師団を予備兵力を除いて全力投入する。たぶん、シェーコフ大将が逃げ切ったのを確認した時点で東部方面は諦めるはず。そうしたら東部方面の僅かな予備を振り向けてくるだろうから」

「了解しました。部下達に出撃を命じておきます」

「よろしく」

 アレン中佐が一度席を外す。
 僕達も準備をしなきゃね。
 ツイン・リル、よし。護身用の魔法拳銃よし。魔力よし。エイジスの第一、第二解放用の残存魔力もそれなりに余裕を残しているし、帰還後から少し時間が経過しているからその分の回復もしてる。

「リイナ、戦う用意はオッケー?」

「もちろんよ旦那様。いつでも行けるわ」

「よし。エイジス、いつも通りに」

「サー、マスター」

 アレン中佐達が揃ったら出撃しよう。
 僕達はその心づもりでいたけれど、どうやら僕は帝国軍の軍人の根性。というよりかはとある人物に対してここまでやるとは思っていなかった事態が起こる。
 それは、アレン中佐達がやってきた頃だった。
 急に表情を変えた通信要員が僕の方を向いて叫ぶように報告をする。大きな爆発音もそれとほぼ同時に発生する。

「き、緊急通報!」

「どうしたの」

「敵司令部方面から敵一個連隊が突撃を敢行! け、決死隊です! 方角はこちら! 西部方面!」

「食い止められそう?」

「既に最前線の部隊が突破されました! 止められません! 将兵関係無く倒れても後ろを振り返ることなく西進しているとのこと!」

「まずいね。指揮官は?」

「帝国軍チョスカー少将です。報告が次々と来ています。間違いないかと」

「アレン中佐」

「はっ」

「非戦闘要員へ通達。僕達は前に出る。予備兵力を残すけれど万が一突破された場合は速やかに後退すること。でも安心して。必ず撃破するから」

『はっ! 健闘を祈ります!』

「うん。さぁ、戦場だ。しばらく司令部にいるか後方ばかりだったからね。こういう時こそ出番だ。――総員、出撃」

『了解!!』

 僕達は西部方面へ最期の抵抗と言わんばかりに強襲をしかける連隊がいる方角へ向かう。
 確か最前線が抜かれた後ろにいるのはレイデン連隊長の能力者化部隊のはず。エイジスの情報共有によると、チョスカー少将率いる敵連隊はここから二キーラも無い地点にいる。相当消耗しているはずなのに、一部それなりに強力な魔力反応が幾つもある。中でも一際目立つのがチョスカー少将なんだろう。
 アレン中佐に作戦方針を伝えると、同行している移動通信の要員へは手が空いているロケット砲部隊や砲兵隊に支援砲撃を要請し、航空支援も要請しておく。ココノエ陛下の部隊は十分程度で、戦闘機部隊は数分後に五機前後は向かわせられるそうだ。

「近いね。あそこかな」

「肯定。該当交戦地帯まで一キーラ半」

「了解。アレン中佐、中隊規模統制射撃。エイジス、オフェンスモードで全発射」

「了解!」

「サー、マスター」

「私はアブソリュート・ソロを撃つわ」

「頼んだ」

「任せて」

 交戦地帯まで残り一キーラ。
 僕達は減速すると、まずアレン中佐の部隊が中隊統制射撃で敵の突破力を減衰。情報共有画面で何人か死亡確認をするけれど、思ったより魔法障壁が全損出来ていない。

「モード・オフェンス。『ウィンド・リッパー』を発動。十六重射出ヘキサデカ・ショット

 次にエイジスが敵の魔法障壁を破壊する目的で風属性魔法を発動。十六本の風の刃が上空に展開された魔法陣から発射される。

「アカツキ中将閣下、リイナ准将閣下にエイジス特務官っっ!! 助かりました!!」

「待たせたわね!! 全員道を開けなさい!!」

「了解!! おいお前ら道を開けろ!! 絶対零度の女帝様の一発だぞ!!」

「――銀世界、極地をも凍てつかせる光をここに。『アブソリュート・ソロ』!!」

 さらに追撃としてリイナが『アブソリュート・ソロ』を発動。敵連隊目掛けて青白い光線が放たれる。

「あらあら、相手は余程のやり手ね。手応えがないわ」

「そう簡単には死なないか。そりゃそうだ」

 情報共有画面には一般的な兵士とかはともかく、強い魔力反応は消えていない。
 やっぱりあの副官、強力な能力者でもあるみたいだ。
 連撃によって巻き起こっていた粉塵が晴れると、死傷者も見られるけれど魔法障壁がほぼ全損なのと引き換えに奴等を守っていた。
 僕の目線の先にいるのは警戒すべき人物、憤怒の表情のチョスカー少将がいた。

「アカツキ・ノースロードぉぉぉぉ!! やはり出てきたようだなァァァ!!」
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