341 / 390
第22章 死守せよ、ムィトゥーラウ―オチャルフ絶対防衛線編
第12話 現れたリシュカの挑発にアカツキ達は
しおりを挟む
・・12・・
「リシュカ・フィブラ……」
僕は数百メーラ先に姿を現したあの人を睨む。
断頭大隊を引き連れてきた彼女は確かにあの人かもしれないけれど、まさかここまで、まるで他人になっているとは思わなかった。
だから僕は言い聞かす。あそこにいるのは、あの人じゃない。かけ離れた、化け物だと。
彼女が姿を現したことで戦闘は一時停止していた。その間にこっちもあっちも死者や負傷者の回収が進む。ただし、どちらも銃口を向けたままだ。
その中で、彼女は口を開いた。
「ねえ、常勝のクソ英雄さん? 随分と粘って頑張ってるみたいだけど、先月からこの2ヶ月間負けっぱなしなのはどんな気持ち? ねえ、どんな気持ちぃ?」
「随分な挑発をしてくれるみたいね」
「悔しいけれど、帝国軍からしたら事実だからね」
あの人の分かりやすい挑発的な言動に、帝国軍の将兵達はげらげらと下品に笑う。友軍の兵士たちは侮辱に唇を噛むものの誰も挑発に乗りはしなかった。
「んだよもー。誰か一発くらい腹を立てて撃ってくれればいいのにさあ。無駄に統率取れてやがって。まあいいや。切り口を変えよっか。そこのクソトカゲ、この刀、何か分かるよね?」
「クソトカゲとは随分な呼び方じゃのお。で、貴様の持っている光龍刀がどうかしたのかえ?」
ニヤニヤと笑うリシュカの発言に対して、ココノエ陛下は拡声魔法を使って返答する。平静を装って発したけれど、その唇は怒りで震えていた。
「あれれぇ? 随分と冷静じゃないのぉ。この光龍刀って、お前のとこで最期まで忠誠を尽くしたさぞ高名なヤツが愛用した刀なんだよぉ?」
「ああ、そうじゃのぉ。貴様が持っておるのは、貴様等帝国軍が殺した忠臣が持っておった刀じゃよ」
「うんうん。そうだよぉ」
「あれ? 怒らないの? 忠臣の遺品を、私が持っているんだけどぉ」
「貴様は随分とうつけ者のようじゃな? その程度で妾が理性を失い刃を向けるとでも?」
「なぁんだ。つまんないの」
「安い挑発になぞ乗らぬわたわけが。じゃがの、貴様のはらわたはすぐにでも食いちぎってやるから楽しみにしておれ」
「ひゅー。こっわーい」
至極冷静ながらも腹の底で怒りの炎を上げるココノエ陛下に対して、馬鹿にするような物言いで返すリシュカ。
こんなにも変質してしまったのかと少し悲しくはなったけど、意外とそれ以外の感想は湧かなかった。
「ま、これくらいで統制が取れなくなるような連中じゃないから戦闘再開前に一応提案しとこっか。ねえ、ゴーレム使い。アレゼルのことだよ」
「今度はわたし、か」
アレゼル大将閣下はうんざりした様子でため息をつくと拡声魔法を使って、
「一応聞いてあげるよ、ちびっ子!」
「しっつれいなー。えーっとねー、お前に提案なんだけどさ、そこのクソ英雄の身柄を私に渡してくれたらお前達をムィトゥーラウから無傷で撤退させてあげる。どう? 名案でしょ? 一人の命で数十万人が助かるよ?」
「ふざけるな!!」
「貴様にアカツキ中将閣下を渡すものか!」
「我々の命を懸けてでも中将閣下は渡しはしない!」
「てめえらに聞いちゃいねえよ」
彼女の提案に対して友軍の兵士達は猛反発をしてくれる。それがよっぽど不快だったのか、そもそも眼中に無い所から発せられたからなのか、苛立ちながら彼女は言うと呪文を詠唱。
僕達の目の前に、横一面に中級闇属性の魔法が着弾した。兵士達はこんなのを見せられてそれきり黙ってしまう。だけど、恐怖とかで悲鳴は一切上げなかった。
「ったく、雑音がうるせえんだよ。それで、回答は?」
「拒否に決まってるじゃん。当たり前の事を聞かないでくれるかな?」
「なーんだ、ざぁんねん。せっかくの名案なのにー」
アレゼル大将閣下は毅然とした態度で提案を拒否した。対してリシュカは、わざとらしそうに残念がる。
「じゃ、交渉は決裂ってことで」
「元からそのつもりはないでしょ?」
「あったりー! だって、そこにだんまり決め込んでるクソ英雄がいるしさ。私がわざわざ出向いてやった理由は、そいつが目的だしぃ? ほらほら、何か言ったらどうなのクソ英雄」
「分かったよ、リシュカ・フィブラ。――かかってこい、相手になってやる」
「ぷっ。くくく、くくくくくく!! あはははははは!! よく言ったよクソ英雄!! 分かったよ、そこまで言うならお望み通りにしてやるよ!!」
元からそのつもりだろうに、彼女は大笑いしてから表情を消し去り続けてこう言った。
「行け、私の駒達。奴等を皆殺しにしろ」
『御意』
私の駒、ね。
本当にあの人は、変わったよ。
「総員、戦闘用意」
『了解!!』
互いの将兵は臨戦態勢へ。
そして。
「鏖殺しなさい」
「吶喊!!」
両軍の火蓋は切られた。
「リシュカ・フィブラ……」
僕は数百メーラ先に姿を現したあの人を睨む。
断頭大隊を引き連れてきた彼女は確かにあの人かもしれないけれど、まさかここまで、まるで他人になっているとは思わなかった。
だから僕は言い聞かす。あそこにいるのは、あの人じゃない。かけ離れた、化け物だと。
彼女が姿を現したことで戦闘は一時停止していた。その間にこっちもあっちも死者や負傷者の回収が進む。ただし、どちらも銃口を向けたままだ。
その中で、彼女は口を開いた。
「ねえ、常勝のクソ英雄さん? 随分と粘って頑張ってるみたいだけど、先月からこの2ヶ月間負けっぱなしなのはどんな気持ち? ねえ、どんな気持ちぃ?」
「随分な挑発をしてくれるみたいね」
「悔しいけれど、帝国軍からしたら事実だからね」
あの人の分かりやすい挑発的な言動に、帝国軍の将兵達はげらげらと下品に笑う。友軍の兵士たちは侮辱に唇を噛むものの誰も挑発に乗りはしなかった。
「んだよもー。誰か一発くらい腹を立てて撃ってくれればいいのにさあ。無駄に統率取れてやがって。まあいいや。切り口を変えよっか。そこのクソトカゲ、この刀、何か分かるよね?」
「クソトカゲとは随分な呼び方じゃのお。で、貴様の持っている光龍刀がどうかしたのかえ?」
ニヤニヤと笑うリシュカの発言に対して、ココノエ陛下は拡声魔法を使って返答する。平静を装って発したけれど、その唇は怒りで震えていた。
「あれれぇ? 随分と冷静じゃないのぉ。この光龍刀って、お前のとこで最期まで忠誠を尽くしたさぞ高名なヤツが愛用した刀なんだよぉ?」
「ああ、そうじゃのぉ。貴様が持っておるのは、貴様等帝国軍が殺した忠臣が持っておった刀じゃよ」
「うんうん。そうだよぉ」
「あれ? 怒らないの? 忠臣の遺品を、私が持っているんだけどぉ」
「貴様は随分とうつけ者のようじゃな? その程度で妾が理性を失い刃を向けるとでも?」
「なぁんだ。つまんないの」
「安い挑発になぞ乗らぬわたわけが。じゃがの、貴様のはらわたはすぐにでも食いちぎってやるから楽しみにしておれ」
「ひゅー。こっわーい」
至極冷静ながらも腹の底で怒りの炎を上げるココノエ陛下に対して、馬鹿にするような物言いで返すリシュカ。
こんなにも変質してしまったのかと少し悲しくはなったけど、意外とそれ以外の感想は湧かなかった。
「ま、これくらいで統制が取れなくなるような連中じゃないから戦闘再開前に一応提案しとこっか。ねえ、ゴーレム使い。アレゼルのことだよ」
「今度はわたし、か」
アレゼル大将閣下はうんざりした様子でため息をつくと拡声魔法を使って、
「一応聞いてあげるよ、ちびっ子!」
「しっつれいなー。えーっとねー、お前に提案なんだけどさ、そこのクソ英雄の身柄を私に渡してくれたらお前達をムィトゥーラウから無傷で撤退させてあげる。どう? 名案でしょ? 一人の命で数十万人が助かるよ?」
「ふざけるな!!」
「貴様にアカツキ中将閣下を渡すものか!」
「我々の命を懸けてでも中将閣下は渡しはしない!」
「てめえらに聞いちゃいねえよ」
彼女の提案に対して友軍の兵士達は猛反発をしてくれる。それがよっぽど不快だったのか、そもそも眼中に無い所から発せられたからなのか、苛立ちながら彼女は言うと呪文を詠唱。
僕達の目の前に、横一面に中級闇属性の魔法が着弾した。兵士達はこんなのを見せられてそれきり黙ってしまう。だけど、恐怖とかで悲鳴は一切上げなかった。
「ったく、雑音がうるせえんだよ。それで、回答は?」
「拒否に決まってるじゃん。当たり前の事を聞かないでくれるかな?」
「なーんだ、ざぁんねん。せっかくの名案なのにー」
アレゼル大将閣下は毅然とした態度で提案を拒否した。対してリシュカは、わざとらしそうに残念がる。
「じゃ、交渉は決裂ってことで」
「元からそのつもりはないでしょ?」
「あったりー! だって、そこにだんまり決め込んでるクソ英雄がいるしさ。私がわざわざ出向いてやった理由は、そいつが目的だしぃ? ほらほら、何か言ったらどうなのクソ英雄」
「分かったよ、リシュカ・フィブラ。――かかってこい、相手になってやる」
「ぷっ。くくく、くくくくくく!! あはははははは!! よく言ったよクソ英雄!! 分かったよ、そこまで言うならお望み通りにしてやるよ!!」
元からそのつもりだろうに、彼女は大笑いしてから表情を消し去り続けてこう言った。
「行け、私の駒達。奴等を皆殺しにしろ」
『御意』
私の駒、ね。
本当にあの人は、変わったよ。
「総員、戦闘用意」
『了解!!』
互いの将兵は臨戦態勢へ。
そして。
「鏖殺しなさい」
「吶喊!!」
両軍の火蓋は切られた。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる