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第六十六話 開店準備

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「あずさ、店内の商品で気に入った物があれば収納してくれ、収納が終ったら、シュラを連れてきて欲しい」

「わかりました」

 お店は四階建て、一階は駐車場、二階、三階は店舗、四階は倉庫と事務所になっている。
 ひとまず、あずさが残した物を、全部収納した。
 部屋の中に何も無くなると、とても広く感じる。
 あずさは、移動魔法で小田原に飛んだ。

「まずは、照明と空調だな」

 店内は、広くてまだ午前中なのに夜のように暗い。
 季節が、初夏のため部屋の中は少し暑さを感じる。
 照明は、ミスリルロッドにゴーレム魔法を使い、付与魔法で白色の光を出すようにした。
 それを現在の照明と取り替え発光させた。
 ゴーレム化させているので、言葉で発光と消灯が可能だ。

「すごい、どうなっているのかわからないけど、電気が付いた」

 おかみさんが驚いている。
 正確には、電気では無く魔力ですけどね。
 そして、空調の送風口に、こちらもミスリル製の細い板をセットした。
 これにも、ゴーレム魔法を使い、付与は風魔法と、温度魔法だ。
 とりあえず、丁度よい二十三度になるようにした。

「とうさん、戻りました」

 あずさが、シュラと二人で戻って来た。

「シュラ、早速だけどこれをエアコンの、吹き出し口にセットしてくれ」

「ハイ、マスター」

「すごいねー! 今度は赤いロボットだよ」

「おかみさん、ここを俺の所有物にするにはどうしたら良い?」

「簡単さ、外の看板にペンキで名前を書けば良い」

「そうか、ありがとう」

 俺は、店の外に出た。
 道路の十字路に立っている店舗の、交差点側に斜めに出入口が切ってあり、その上に店名と、垂れ幕でアウトドアセールとなっている。

「これを店の名前にすればいいのだな」

 木田商店では、身ばれしてしまう。
 俺は、木田から縦線を取ることにした。
 大田商店、どうせなら、大田大商店にしよう。
 これだと、上から読んでも下から読んでも大田大、左右反転させても大田大だ。憶えやすい。
 読み方は、おおたふとしだな。
 俺は、空を飛ぶと、収納してあったペンキの黒で大田大商店と書いた。

「とうさん、何て読むの」

「うん、おおたふとししょうてん」

「じゃあ、私は、おおたあずき、にします」

「じゃあ、あたしは、おおたはる、だね」

「次は商品だ」

 俺は店舗二階へ上がった。

「全照明点灯、空調全開」

 二階で、ゴーレム達に命じた。

「と、とうさんは、天才です」

 明るく、そして涼しくなった店内にあずさが喜んでいる。

 まずは冷蔵庫と冷凍庫、これはミスリルで作ってだした。
 家庭用と、業務用をだし、業務用にはマグロを入れた。
 当然マグロも商品だ。
 そして、この店にもつけた、照明も用意した。
 収納したこの店にあった展示用の棚を出し並べる。
 当然、空調用ミスリルも並べる。これからの季節には必要だろう。

「さあ、これから出すのがこの数日、考えに考えた目玉商品だ」

「な、なんだって、今までのが目玉商品じゃ無いのかい」

 おかみさんが驚いたが、俺は人差し指を立て、左右に振った。

「チッ、チッ、これが目玉商品、ウォーターサーバー、そして加熱コンロ」

 俺は、ミスリル製のウォーターサーバーとオリハルコン製の熱調理器をだした。

「とうさん、それは良いですけど、いちいち変な声で言うのはやめてもらえませんか」

「ふふふ、あずさ、それは出来ない。アイテムを出す時に大山のぶ代の真似をするのは、当たり前の事だ」

「なにそれ」

「ガーーン! まさか大山のぶ代を知らないとは…………泣けるぜ!」

「ところで、それは何?」

 おかみさんが割り込んで来た。

「これは、こうすると……」

 俺は形だけのミスリルのウォーターサーバーに手を当てて魔力を込めた。
 俺がゴーレム化の魔力を入れると、黄金色に光る。
 そして、模様のように溝が出来て、金色の模様が光輝く。
 青い金属の筐体に金色の模様が光ると、なんとも言えない美しさがある。
 付与は水魔法だ。
 俺はウォーターサーバーの正面のレバーを下げた。

「な、なんだって!! す、すごい。水が出た」

「それだけじゃ無い、横にある蛇口も使える。これで、洗濯もお風呂も使える様になる」

「こ、この水はどこから?」

「ふふふ、内緒です。これをレンタルで出そうと思います。どうでしょう売れますかね?」

「あはははは、今のこの日本で、ほしがらない人はいないさ」

 ついでにオリハルコン製のコンロを実演した。
 普通のガスコンロと同じだが、火が魔法ででるというだけの代物だ。

「まだ、案は色々ありますが、とりあえずこんな所でしょうか。じゃあ、二人とも食事の時間です。俺はやることがあるので二人で行って来てください」

「えっ、あんたは食べなくていいのかい」

「とうさんは、おたくスイッチが入ると、ご飯は抜きます。はるさん、行きましょう」

 ふふふ、そう、俺はおたくスイッチが入っている。
 犠牲者は、君だ。シュラ君だ!

 ビクン!!

 あれ、シュラの体が反応した。
 悪寒でもしたのだろうか。
 ロボットが悪寒を感じるなんて、性能良すぎだ。

「二人は行ったか?」

「ハイ、マスター」

「では、こっちへ来なさい」

 俺は、きっと悪代官の様な顔をして、シュラの手を引いて部屋の壁に歩いているのだろう。

「ふふふふふふ」

 やってやりますよ。あれを……。
 笑いが止まらない。
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