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召使いの僕に召使いが現れた
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朝の澄んだ空気を裂くように、旦那様と僕は歩いていく。
磨き上げられた床に、手入れされた靴達が映るのは気持ちが良い。
「今日は会議が入っております。15時より、本社会議室です」
「了解」
旦那様よりほんの少し後ろを歩き、今日の予定を確認する。
「それ以外は?」
「特に予定はありません」
「一週間前に出張した時に着たスーツ、社長室にあったかな」
「クリーニング後、社長室に届けるよう指示を出しております」
答えながら、片手でスマホを取り出す。
素早く画面をタップし、到着連絡を確認する。
「一昨日の17時頃、到着の連絡が来ております」
「わかった。いつもありがとう」
僕の仕事は今日も完璧だ。
つまり、部下への指示も完璧という証拠でもある。
玄関を開けると、旦那様の愛用する大型バイクが停まっている。
僕は、旦那様がヘルメットを被る間に、小さくまとめられた荷物を荷物入れに入れる。
旦那様はバイクに跨り、エンジンをかけると、僕に小さく手を振り、走り出していった。
僕は旦那様が見えなくなるまで深くお辞儀をした後、自室に戻った。
僕は召使いとして、この家で働いている。
秘書のようなこともするし、旦那様の家の管理も行っている。部下も何人かいる。
まぁ、今の関係になる前は、旦那様とは友達であったのだけど。
あだ名で呼びあっていた頃もあった。
昔のことを懐かしみながら、自室のドアを開ける。
そこには、メイド服を着た1人の女性が畳の上で正座していた。
「お、おかえりなさい!」
顔を真っ赤にしながら、じっと僕を見つめる。
「今日から宇留野様にお仕え致します、水野と申します」
「僕に?」
緊張からだろうか、声が震えている。
「どのような事でも結構です。お申し付けください」
水野さんがどのような経緯でここにいるか分からないが、今はその言葉に甘えようじゃないか。
「では、僕の行動を覚えてください。まずは部屋を元に戻します」
決して、漫画やアニメのように、物が壊れていたりする訳では無い。今まで置いてなかったものが置いてある訳でもない。
だがしかし。
違うものは違うのだ。
「掃除機をかけて下さったのですね? でも、掃除機の位置が間違っています」
「す、すみません」
僕は靴を脱ぎ、掃除機の場所を直す。
数センチ場所がズレているだけだが、気持ち悪い。
他にも少しズレている。これらも指摘しながら定位置に戻していった。
「机を水拭きしてますか?」
「はい……」
消え入りそうな声になろうと関係ない。
「水拭きした後は乾いた布巾で拭いてください」
返事が返ってこないが、指導を続ける。
「この完璧な僕の召使いなら、完璧に業務をこなしてください。誰からの派遣か分かりませんが、出来なければ出ていってください」
泣き出しても知らない。まず、僕は自分のことを自分で出来るのだから、召使いなんていなくても良い。
その時、着信音が鳴る。
画面を見ると、旦那様からだ。
「はい、宇留野です」
「言い忘れてた! 今日からうるちゃんに可愛いメイドさん付けたから! もう会った?」
「今お会いしました。指導中です」
水野さんを横目で見ながら答える。水野さんは泣きながら拭き掃除を行っている。
「その子、俺の婚約者だから」
急に旦那様の声色が変わった。
「泣かすなよ?」
なぜか旦那様は怒っている。思い当たる原因など見つからない。
「かしこまりました」
寒気を感じ、顔が強ばるが、普段と変わらないよう取り繕い、返事を返す。
「優秀なうるちゃんなら大丈夫だよな? それじゃ」
電話が切られた。
さすがに、どう対応すれば良いか分からない。
どうすりゃいいんだよ。
天井を仰ぎ、叫びたい気持ちをこらえた。
磨き上げられた床に、手入れされた靴達が映るのは気持ちが良い。
「今日は会議が入っております。15時より、本社会議室です」
「了解」
旦那様よりほんの少し後ろを歩き、今日の予定を確認する。
「それ以外は?」
「特に予定はありません」
「一週間前に出張した時に着たスーツ、社長室にあったかな」
「クリーニング後、社長室に届けるよう指示を出しております」
答えながら、片手でスマホを取り出す。
素早く画面をタップし、到着連絡を確認する。
「一昨日の17時頃、到着の連絡が来ております」
「わかった。いつもありがとう」
僕の仕事は今日も完璧だ。
つまり、部下への指示も完璧という証拠でもある。
玄関を開けると、旦那様の愛用する大型バイクが停まっている。
僕は、旦那様がヘルメットを被る間に、小さくまとめられた荷物を荷物入れに入れる。
旦那様はバイクに跨り、エンジンをかけると、僕に小さく手を振り、走り出していった。
僕は旦那様が見えなくなるまで深くお辞儀をした後、自室に戻った。
僕は召使いとして、この家で働いている。
秘書のようなこともするし、旦那様の家の管理も行っている。部下も何人かいる。
まぁ、今の関係になる前は、旦那様とは友達であったのだけど。
あだ名で呼びあっていた頃もあった。
昔のことを懐かしみながら、自室のドアを開ける。
そこには、メイド服を着た1人の女性が畳の上で正座していた。
「お、おかえりなさい!」
顔を真っ赤にしながら、じっと僕を見つめる。
「今日から宇留野様にお仕え致します、水野と申します」
「僕に?」
緊張からだろうか、声が震えている。
「どのような事でも結構です。お申し付けください」
水野さんがどのような経緯でここにいるか分からないが、今はその言葉に甘えようじゃないか。
「では、僕の行動を覚えてください。まずは部屋を元に戻します」
決して、漫画やアニメのように、物が壊れていたりする訳では無い。今まで置いてなかったものが置いてある訳でもない。
だがしかし。
違うものは違うのだ。
「掃除機をかけて下さったのですね? でも、掃除機の位置が間違っています」
「す、すみません」
僕は靴を脱ぎ、掃除機の場所を直す。
数センチ場所がズレているだけだが、気持ち悪い。
他にも少しズレている。これらも指摘しながら定位置に戻していった。
「机を水拭きしてますか?」
「はい……」
消え入りそうな声になろうと関係ない。
「水拭きした後は乾いた布巾で拭いてください」
返事が返ってこないが、指導を続ける。
「この完璧な僕の召使いなら、完璧に業務をこなしてください。誰からの派遣か分かりませんが、出来なければ出ていってください」
泣き出しても知らない。まず、僕は自分のことを自分で出来るのだから、召使いなんていなくても良い。
その時、着信音が鳴る。
画面を見ると、旦那様からだ。
「はい、宇留野です」
「言い忘れてた! 今日からうるちゃんに可愛いメイドさん付けたから! もう会った?」
「今お会いしました。指導中です」
水野さんを横目で見ながら答える。水野さんは泣きながら拭き掃除を行っている。
「その子、俺の婚約者だから」
急に旦那様の声色が変わった。
「泣かすなよ?」
なぜか旦那様は怒っている。思い当たる原因など見つからない。
「かしこまりました」
寒気を感じ、顔が強ばるが、普段と変わらないよう取り繕い、返事を返す。
「優秀なうるちゃんなら大丈夫だよな? それじゃ」
電話が切られた。
さすがに、どう対応すれば良いか分からない。
どうすりゃいいんだよ。
天井を仰ぎ、叫びたい気持ちをこらえた。
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