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駆け出し冒険者の章
46.買い物2
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薬屋を出た所でちょうど昼時を迎えた四人は、屋台で好きな物を買って噴水広場のベンチに腰掛ける。
空を見上げれば真っ青な空と、穏やかに流れる白い雲。初夏の陽気が心地よく身体を包み込み、特に何をしている訳でも無いのに自然と心が弾んで笑みが溢れる。
四人とも、隣には世界で一番愛おしい恋人の存在。そして昨夜の事があって、この四人での連帯感はより一層強くなった。恋人にしか見せる事の無い自分の淫らに乱れた姿を、誰もが全てさらけ出したのだ。もうこの四人の中には、恥ずかしい事も隠す物も何も無い。
「美味しいね未来」
「うん!リーシャのも美味しそう!」
「ふふ、一口食べるミク?サフィーのも美味しいけど」
「じゃあわたしのも一口あげるわ。ほら、アイリも」
「うん、ありがとうサフィー」
ベンチに座りながら仲良く食べ物をシェアし合う四人の美少女達に、誰もが一瞬足を止めて見入ってしまう。だが、あまりにも仲が良いので、誰もが口元を緩めながらまた歩き出す。そんな穏やかな時間が、ゆっくりと流れて行った。
「さて、次は何処行こっか?リーシャは雑貨屋に行きたいんだっけ?」
「そうね、少し見たいかしら」
「じゃあ雑貨屋で決まりね。それで今日の買い物は全部終わり?」
「あ、最後でいいから昨日の武器屋に行きたいんだけどいい?」
愛莉の口から武器屋という単語が出てきて、少し驚く三人。だが別に反対する理由も無いのでもちろん了承する。
そして雑貨屋で色々と小物を見たり買ったりした四人は、最後に武器屋へ。昨日の店主が四人を見てカウンターの奥から出て来た。
「おう、昨日の嬢ちゃん達じゃねぇか。あんな剣を持って行ったから心配してたんだよ」
「あ、オジさん昨日はありがとうね!お陰でモンスターいっぱい倒せたよ!」
首を傾げる武器屋の店主。あんな剣でそんなに多くのモンスターなど倒せる筈も無いのに、この娘は何を言っているんだという表情だった。ちなみに、今日は買い物だけなので未来は剣を持って来ていない。愛莉の錬金術で既に別物に変わり果てた剣なので、見た所で分からないのだが。
「……まあいいや。今日はどうした?それを伝えに来たのか?」
「あ、いえ、今日はわたしの用事で」
そう言って、愛莉が小さく手を上げる。愛莉を見た店主が少し意外そうな表情を浮かべた。
「何だ嬢ちゃん、武器職だったのか?てっきり魔法職か何かだと思ってたんだが」
「あはは……まあどちらかと言うとそっち系かも」
店主にそう答えながらも、愛莉は壁に掛けてある武器を一点に見つめていた。そしてそれを指差し、店主に「あの武器が見たいんですけど」と告げる。
店主は更に驚いた表情を浮かべたが、言われた通りその武器を取ると愛莉に渡す。
「気をつけろよ。変な所を持つとすぐに手が切れるぜ」
それは、円状をした武器。一周が全て刃になっていて、くり抜かれた真ん中に持ち手が付いている。
「うっ……結構重いんですね……」
「そりゃあ鉄だからな。ってかそれは投擲用の武器だが……嬢ちゃんが投げて使うのか?」
持っただけで重いと言っている愛莉には、とてもじゃないが投げる事など出来ないだろう。
愛莉が手に持つそれは『円月輪』と呼ばれる投擲用の武器。直径はおよそ五十センチほどで、一周全て鋭利な刃になっている。持ち手となる所は左右対象に二ヶ所あるが、これを使いこなすには相当な訓練が必要とされ、扱いがかなり難しい武器だ。
スポーツ万能で【投擲】のスキルを持つ未来ですら、訓練なくしていきなりは扱えないだろう。そんな武器を愛莉は一体どうしようと言うのか、皆は愛莉に注目する。
「こんなに重い物は操作した事無いけど……」
魔力操作で物を操作する場合、重い物はより多くの魔力を放出する事で操作が可能だと愛莉は既に答えを出している。
木の枝を操作した時と同じぐらいの魔力の放出量で、更に重い石を操作しようとした時は上手く操作出来なかった。だが、少し魔力の放出量を多くすると同じように空中に浮かべられたのである。
昨日の練習の成果もあって、軽い物ならほとんど魔力を消費する事なく操作出来るようになった。なので、この重さに見合った魔力を放出すれば、理論的には木の枝や石、リップクリームなどと同じ事が出来る筈なのである。
少しずつ、円月輪に魔力を込めてゆく愛莉。すると徐々に、愛莉の腕にかかる円月輪の重さが軽くなっていくように感じる。そこから更に魔力を込めると、遂には愛莉の腕にかかる円月輪の重さが消えた。
だが、まだ駄目だ。このまま手を離せば、きっと円月輪は自重で床に落ちる。これを空中に留める為には、更に魔力を円月輪に込めなくてはならない。
「もう少し……」
何故だが謎の緊張感が武器屋の中に立ち込める。未来はもちろん、リーシャもサフィーも、そして武器屋の店主も固唾を呑んで愛莉の動向を見守っている。
そんな中、遂に愛莉は円月輪を握っていた手をゆっくりと開いてゆく。すると、落ちる筈の円月輪がそのまま空中に浮かんでいた。その光景を見て、皆は驚愕の表情を浮かべる。
「嘘だろ……どうなってやがるんだ……?」
「凄いじゃん愛莉!すごいすごい!」
「はぁ……言葉が出て来ないわぁ……」
「まったくよ……魔力操作なんて魔道士のわたしでも出来ないのに……」
皆からの賞賛の声が耳に届く中、頭の中では別の声が響いていた。
ーー魔力操作のレベルが上がりました。
(これで魔力操作のレベルは5になったけど……この武器を実戦で使うにはまだ全然足りないみたい)
魔力操作のレベルが上がるにつれて、操作する為に必要な魔力量は減っていくのも昨日一日で検証済みだ。今はこの円月輪を浮かべるだけで相当な魔力を消費しているが、魔力操作のレベルが上がれば、もっと少ない魔力で操作出来るようになる。
(当面の目標は魔力操作のレベル上げと、自分のレベルも上げてMPの最大量を増やす事かな)
今のままでは、あっという間にMPが底を尽きてしまう。そうならない為には、魔力操作のレベル上げとMPの量を増やす事が必須である。
とは言え、これで自分も攻撃に参加出来る目処は立った。後は鉄鉱石や鉛などといった鉱石や金属が手に入れば、是非とも錬金術で作ってみたい武器があるのだが、それは当分先になりそうだった。
「あ、この武器買います。えっと、銀貨四枚ですよね」
「いや……二枚でいい。どうせ誰も買って行かねぇし、すげぇもん見せてくれた礼だ」
そう言ってポリポリと頭を掻く店主。愛莉はありがとうございますと頭を下げた。
「やったね愛莉!あ、じゃああたしも半分出すねー」
「え、いいよいいよ。わたしの個人的な買い物だし」
「だってそれ戦闘用でしょ?それって愛莉だけの問題じゃないじゃん」
「ちょっと待ちなさいミク。そういう事ならわたし達も無関係じゃいられないわ」
「ふふ、そうよね。だってわたし達は四人パーティなんですもの」
結局、一人大銅貨を五枚ずつ店主に支払う。そして皆で改めて店主に礼を述べ、店を後にした。
「武器屋のオジさん、愛莉が武器をマジックバッグに入れるの見て驚いてたね!」
「そりゃそうでしょ……何回も言うけど、本来わたし達みたいな小娘が持ってるアイテムじゃないんだからね」
そんな会話をしながら街中を歩く四人の美少女達。時計を見ると、時刻は午後三時過ぎ。夕食にはまだ早いし、かと言って宿屋に戻るのもやはり早い。なので何処かでお茶でもしようかと話していたその時、前方から見知った四人組がこちらに向かって歩いて来た。
先頭のスナイプとカロンは足元がふらついている。その後ろのメリッサと、一番後ろのエストも顔色が悪い。同じ魔法職であるサフィーは、それがMPの枯渇によるものだとすぐに理解した。
「ちょっとエスト!?あんた魔力切れ起こしてるじゃない!」
慌ててエストに駆け寄るサフィーと、そのすぐ後に続くリーシャ、そして未来と愛莉も急いでエストに駆け寄る。
「あはは……わ、わたしは大丈夫です……あ……大丈夫だよ……?」
「顔が真っ青じゃない!アイリ、マジックポーション出して!メリッサの分も!」
その言葉を聞いたメリッサがピクリと反応する。そして一言、きっぱりと拒否の言葉を口にした。
「余計なお世話よ。誰があんたの施しなんか」
「なに意地張ってるのよ!歩くのも辛いんでしょ!?」
そう言ってメリッサの手を取ろうとしたが、そのサフィーの手をパシッと払いのけるメリッサ。
「余計なお世話だって言ってるでしょ!何よあんた、何様のつもり!?」
「な、何様って……わたしはただ……」
「聞きなさい!わたし達は今日『風鳴き山』に挑戦したわ!そこでモンスターを一匹狩ったのよ!格上のモンスターをね!」
スナイプとカロンが何かのモンスターの皮を手に持っている事から、どうやらその話は本当らしかった。
「あんた達は今から『赤水の大空洞』でしょうけど、わたし達はその先に行ってるのよ。雑魚が気安く話し掛けて来ないで!」
そう言って、メリッサは前を歩くスナイプとカロンを追いかけるように急ぎ足で進む。本当は走りたいのだが、辛くて走れないのは見ていて明らかだった。
「わたしは………」
「ご、ごめんなさいサフィーちゃん……あの……またね……」
そう言ってエストもメリッサ達を追い掛けるように去って行った。残されたサフィーはその場に立ち尽くしている。
何故、いつもメリッサにキツい事を言われるのだろうか。何故こんなにも嫌われているのだろうか。パーティの誘いを断ったのが、そんなに気に障ったのだろうか。
「何してるのサフィー?早く追いかけようよ」
俯いていると、すぐ隣から未来の声が聞こえて来た。
「え……?追いかけるって……」
「そうだよ、あんな大口叩いたんだから、そのモンスターの素材がどれくらいの値段なのか見せて貰おうよ」
反対側からは、愛莉の声が聞こえて来た。
「アイリ………」
「そうね、わたし達も近い内に挑戦する事になるんですもの、参考にさせて貰いましょうね」
いつの間に正面には、リーシャが立ってこちらに手を伸ばしていた。
「………そうね、そうよね」
リーシャから差し出されたその手を掴むサフィー。顔を上げて、三人の顔を順番に見回した。
「あいつらの成果がどれ程のものか、じっくり見てあげるわ!」
そうだ、自分の周りにはこんなにも頼もしい仲間が三人も居る。誰に嫌われようとも、誰に拒絶されようとも、この三人が居てくれるだけでいつだって前に進める。
今日というこの最高な日を最後まで最高なまま終わらせる為に、サフィーは力強く歩き出すのだった。
空を見上げれば真っ青な空と、穏やかに流れる白い雲。初夏の陽気が心地よく身体を包み込み、特に何をしている訳でも無いのに自然と心が弾んで笑みが溢れる。
四人とも、隣には世界で一番愛おしい恋人の存在。そして昨夜の事があって、この四人での連帯感はより一層強くなった。恋人にしか見せる事の無い自分の淫らに乱れた姿を、誰もが全てさらけ出したのだ。もうこの四人の中には、恥ずかしい事も隠す物も何も無い。
「美味しいね未来」
「うん!リーシャのも美味しそう!」
「ふふ、一口食べるミク?サフィーのも美味しいけど」
「じゃあわたしのも一口あげるわ。ほら、アイリも」
「うん、ありがとうサフィー」
ベンチに座りながら仲良く食べ物をシェアし合う四人の美少女達に、誰もが一瞬足を止めて見入ってしまう。だが、あまりにも仲が良いので、誰もが口元を緩めながらまた歩き出す。そんな穏やかな時間が、ゆっくりと流れて行った。
「さて、次は何処行こっか?リーシャは雑貨屋に行きたいんだっけ?」
「そうね、少し見たいかしら」
「じゃあ雑貨屋で決まりね。それで今日の買い物は全部終わり?」
「あ、最後でいいから昨日の武器屋に行きたいんだけどいい?」
愛莉の口から武器屋という単語が出てきて、少し驚く三人。だが別に反対する理由も無いのでもちろん了承する。
そして雑貨屋で色々と小物を見たり買ったりした四人は、最後に武器屋へ。昨日の店主が四人を見てカウンターの奥から出て来た。
「おう、昨日の嬢ちゃん達じゃねぇか。あんな剣を持って行ったから心配してたんだよ」
「あ、オジさん昨日はありがとうね!お陰でモンスターいっぱい倒せたよ!」
首を傾げる武器屋の店主。あんな剣でそんなに多くのモンスターなど倒せる筈も無いのに、この娘は何を言っているんだという表情だった。ちなみに、今日は買い物だけなので未来は剣を持って来ていない。愛莉の錬金術で既に別物に変わり果てた剣なので、見た所で分からないのだが。
「……まあいいや。今日はどうした?それを伝えに来たのか?」
「あ、いえ、今日はわたしの用事で」
そう言って、愛莉が小さく手を上げる。愛莉を見た店主が少し意外そうな表情を浮かべた。
「何だ嬢ちゃん、武器職だったのか?てっきり魔法職か何かだと思ってたんだが」
「あはは……まあどちらかと言うとそっち系かも」
店主にそう答えながらも、愛莉は壁に掛けてある武器を一点に見つめていた。そしてそれを指差し、店主に「あの武器が見たいんですけど」と告げる。
店主は更に驚いた表情を浮かべたが、言われた通りその武器を取ると愛莉に渡す。
「気をつけろよ。変な所を持つとすぐに手が切れるぜ」
それは、円状をした武器。一周が全て刃になっていて、くり抜かれた真ん中に持ち手が付いている。
「うっ……結構重いんですね……」
「そりゃあ鉄だからな。ってかそれは投擲用の武器だが……嬢ちゃんが投げて使うのか?」
持っただけで重いと言っている愛莉には、とてもじゃないが投げる事など出来ないだろう。
愛莉が手に持つそれは『円月輪』と呼ばれる投擲用の武器。直径はおよそ五十センチほどで、一周全て鋭利な刃になっている。持ち手となる所は左右対象に二ヶ所あるが、これを使いこなすには相当な訓練が必要とされ、扱いがかなり難しい武器だ。
スポーツ万能で【投擲】のスキルを持つ未来ですら、訓練なくしていきなりは扱えないだろう。そんな武器を愛莉は一体どうしようと言うのか、皆は愛莉に注目する。
「こんなに重い物は操作した事無いけど……」
魔力操作で物を操作する場合、重い物はより多くの魔力を放出する事で操作が可能だと愛莉は既に答えを出している。
木の枝を操作した時と同じぐらいの魔力の放出量で、更に重い石を操作しようとした時は上手く操作出来なかった。だが、少し魔力の放出量を多くすると同じように空中に浮かべられたのである。
昨日の練習の成果もあって、軽い物ならほとんど魔力を消費する事なく操作出来るようになった。なので、この重さに見合った魔力を放出すれば、理論的には木の枝や石、リップクリームなどと同じ事が出来る筈なのである。
少しずつ、円月輪に魔力を込めてゆく愛莉。すると徐々に、愛莉の腕にかかる円月輪の重さが軽くなっていくように感じる。そこから更に魔力を込めると、遂には愛莉の腕にかかる円月輪の重さが消えた。
だが、まだ駄目だ。このまま手を離せば、きっと円月輪は自重で床に落ちる。これを空中に留める為には、更に魔力を円月輪に込めなくてはならない。
「もう少し……」
何故だが謎の緊張感が武器屋の中に立ち込める。未来はもちろん、リーシャもサフィーも、そして武器屋の店主も固唾を呑んで愛莉の動向を見守っている。
そんな中、遂に愛莉は円月輪を握っていた手をゆっくりと開いてゆく。すると、落ちる筈の円月輪がそのまま空中に浮かんでいた。その光景を見て、皆は驚愕の表情を浮かべる。
「嘘だろ……どうなってやがるんだ……?」
「凄いじゃん愛莉!すごいすごい!」
「はぁ……言葉が出て来ないわぁ……」
「まったくよ……魔力操作なんて魔道士のわたしでも出来ないのに……」
皆からの賞賛の声が耳に届く中、頭の中では別の声が響いていた。
ーー魔力操作のレベルが上がりました。
(これで魔力操作のレベルは5になったけど……この武器を実戦で使うにはまだ全然足りないみたい)
魔力操作のレベルが上がるにつれて、操作する為に必要な魔力量は減っていくのも昨日一日で検証済みだ。今はこの円月輪を浮かべるだけで相当な魔力を消費しているが、魔力操作のレベルが上がれば、もっと少ない魔力で操作出来るようになる。
(当面の目標は魔力操作のレベル上げと、自分のレベルも上げてMPの最大量を増やす事かな)
今のままでは、あっという間にMPが底を尽きてしまう。そうならない為には、魔力操作のレベル上げとMPの量を増やす事が必須である。
とは言え、これで自分も攻撃に参加出来る目処は立った。後は鉄鉱石や鉛などといった鉱石や金属が手に入れば、是非とも錬金術で作ってみたい武器があるのだが、それは当分先になりそうだった。
「あ、この武器買います。えっと、銀貨四枚ですよね」
「いや……二枚でいい。どうせ誰も買って行かねぇし、すげぇもん見せてくれた礼だ」
そう言ってポリポリと頭を掻く店主。愛莉はありがとうございますと頭を下げた。
「やったね愛莉!あ、じゃああたしも半分出すねー」
「え、いいよいいよ。わたしの個人的な買い物だし」
「だってそれ戦闘用でしょ?それって愛莉だけの問題じゃないじゃん」
「ちょっと待ちなさいミク。そういう事ならわたし達も無関係じゃいられないわ」
「ふふ、そうよね。だってわたし達は四人パーティなんですもの」
結局、一人大銅貨を五枚ずつ店主に支払う。そして皆で改めて店主に礼を述べ、店を後にした。
「武器屋のオジさん、愛莉が武器をマジックバッグに入れるの見て驚いてたね!」
「そりゃそうでしょ……何回も言うけど、本来わたし達みたいな小娘が持ってるアイテムじゃないんだからね」
そんな会話をしながら街中を歩く四人の美少女達。時計を見ると、時刻は午後三時過ぎ。夕食にはまだ早いし、かと言って宿屋に戻るのもやはり早い。なので何処かでお茶でもしようかと話していたその時、前方から見知った四人組がこちらに向かって歩いて来た。
先頭のスナイプとカロンは足元がふらついている。その後ろのメリッサと、一番後ろのエストも顔色が悪い。同じ魔法職であるサフィーは、それがMPの枯渇によるものだとすぐに理解した。
「ちょっとエスト!?あんた魔力切れ起こしてるじゃない!」
慌ててエストに駆け寄るサフィーと、そのすぐ後に続くリーシャ、そして未来と愛莉も急いでエストに駆け寄る。
「あはは……わ、わたしは大丈夫です……あ……大丈夫だよ……?」
「顔が真っ青じゃない!アイリ、マジックポーション出して!メリッサの分も!」
その言葉を聞いたメリッサがピクリと反応する。そして一言、きっぱりと拒否の言葉を口にした。
「余計なお世話よ。誰があんたの施しなんか」
「なに意地張ってるのよ!歩くのも辛いんでしょ!?」
そう言ってメリッサの手を取ろうとしたが、そのサフィーの手をパシッと払いのけるメリッサ。
「余計なお世話だって言ってるでしょ!何よあんた、何様のつもり!?」
「な、何様って……わたしはただ……」
「聞きなさい!わたし達は今日『風鳴き山』に挑戦したわ!そこでモンスターを一匹狩ったのよ!格上のモンスターをね!」
スナイプとカロンが何かのモンスターの皮を手に持っている事から、どうやらその話は本当らしかった。
「あんた達は今から『赤水の大空洞』でしょうけど、わたし達はその先に行ってるのよ。雑魚が気安く話し掛けて来ないで!」
そう言って、メリッサは前を歩くスナイプとカロンを追いかけるように急ぎ足で進む。本当は走りたいのだが、辛くて走れないのは見ていて明らかだった。
「わたしは………」
「ご、ごめんなさいサフィーちゃん……あの……またね……」
そう言ってエストもメリッサ達を追い掛けるように去って行った。残されたサフィーはその場に立ち尽くしている。
何故、いつもメリッサにキツい事を言われるのだろうか。何故こんなにも嫌われているのだろうか。パーティの誘いを断ったのが、そんなに気に障ったのだろうか。
「何してるのサフィー?早く追いかけようよ」
俯いていると、すぐ隣から未来の声が聞こえて来た。
「え……?追いかけるって……」
「そうだよ、あんな大口叩いたんだから、そのモンスターの素材がどれくらいの値段なのか見せて貰おうよ」
反対側からは、愛莉の声が聞こえて来た。
「アイリ………」
「そうね、わたし達も近い内に挑戦する事になるんですもの、参考にさせて貰いましょうね」
いつの間に正面には、リーシャが立ってこちらに手を伸ばしていた。
「………そうね、そうよね」
リーシャから差し出されたその手を掴むサフィー。顔を上げて、三人の顔を順番に見回した。
「あいつらの成果がどれ程のものか、じっくり見てあげるわ!」
そうだ、自分の周りにはこんなにも頼もしい仲間が三人も居る。誰に嫌われようとも、誰に拒絶されようとも、この三人が居てくれるだけでいつだって前に進める。
今日というこの最高な日を最後まで最高なまま終わらせる為に、サフィーは力強く歩き出すのだった。
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