百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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駆け出し冒険者の章

47.決意

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 未来達がギルドに到着すると、つい今しがた到着したばかりのスナイプ達がカウンターに向かって歩いている途中だった。

 そんなスナイプ達を見て、正確にはスナイプとカロンが手に持つ物を見て、一つランクが上のCランク冒険者達がヒソヒソと言葉を交わす。


「おい、スナイプとカロンが持ってるのって……」
「ビッグフットの皮だな。あいつら、もうレベル20まで上げたのか?」
「それにしては満身創痍って感じだから、多分先走って挑戦したんだろ。でもあの素材はなぁ……」
「みんな通る道じゃない?すっごいヘコむよねあれ……」


 そんな声が未来達の耳に届き、四人は顔を見合わせる。一体何の話をしているのだろうかと。
 そんな喧騒の中、スナイプ達がカウンターに到着する。対応するのはお馴染みの美人受付嬢のイリアーナだ。


「こんにちはスナイプさん、メリッサさん、カロンさん、エストさん。今日はどのようなご用件でしょうか?」
「モンスターの素材を買い取ってくれ。カウンターに置くから早くな」
「はい、買い取りですね。少々お待ちください」


 イリアーナはそう言って手元のベルを鳴らす。すると、買い取りカウンターの右奥の部屋から、厳つい風貌の鑑定担当のカタールが現れた。


「買い取りだな。見せてみろ」


 カタールの目の前で、ビッグフットの皮と体内から取り出した魔石をカウンターに置くスナイプとカロン。満身創痍だが、何処か誇らしげな表情を浮かべていた。
 何せ、レベル18の格上モンスターを倒して持ち帰った素材だ。流石に皮を全部という訳にはいかなかったが、それでも半分以上は持ち帰った。魔石と合わせればかなりの値段になる筈だと、スナイプ、カロン、メリッサの三人は自信を覗かせていた。

 そんな素材を一瞥し、カタールが紙にペンを走らせる。その紙をイリアーナに渡した際、イリアーナは誰にも気づかれない程の小さな溜め息をついた。


「お待たせ致しました。こちらの素材の買い取り価格ですが、全部で大銅貨二枚になります」
「………は?」
「何………?」
「だ……大銅貨二枚……?」
「………………」


 スナイプ、カロン、メリッサの三人は思わず呆けた表情を浮かべる。エストは悲しそうに瞳を閉じたが、そのすぐ後にスナイプ達の表情がみるみる怒りに染まってゆく。


「ふ、ふざけんなッ!!風鳴き山のモンスターだぞ!?苦労して倒したのに大銅貨二枚の訳無ぇだろうが!」
「そう言われましても、これが適正価格ですので。詳しい説明はカタールさんにして頂きますね」


 再び呼び鈴を鳴らすイリアーナ。カタールもこうなると分かっていたのか、すぐに出て来た。


「何だ?不満なのか?」
「当たり前だろうが!どういう事か説明しやがれ!」
「はっきり言えばな、需要が無いんだよビッグフットの皮やら魔石やらなんて。皮は臭えだけで使い道も無いし、魔石も碌に魔力を含んでないから大したアイテムに加工も出来ねぇ」


 その説明を聞きながら、この結果が分かっていたCランク冒険者達が再びヒソヒソと言葉を交わす。


「これなんだよなぁ……素材価値がほとんど無いクソモンスター」
「大抵はレベル20まで上げてから風鳴き山に行くけど、レベル20でも倒すのに結構苦労するしな」
「そのくせしてあいつのレベル18だから、苦労して倒してもあまり経験値も入らないし、その割にうじゃうじゃ居るし」
「ほんと、Dランク泣かせのモンスターだよなビッグフット」


 そんな周りの冒険者の話を聞きながら、思わず納得してしまう未来達。つまり、ようやく風鳴き山に挑戦出来るようになっても、ビッグフットという『強い』『しぶとい』『安い』の三拍子揃ったモンスターの洗礼を受ける事になるという事だ。だからこそ、あの山には適正レベルが設けられているのだと初めて気付く。
 

「理解したか?」
「く、くそッ!」
「何て無様な……ッ!」
「もう最悪!」
「おいお前ら、また明日挑戦するぞ!今度は違うモンスターの素材を持ち帰ってやる!」

 悪態をつきながら、ギルドを後にするスナイプ達。誰もが経験していて気持ちが分かるので、誰もスナイプ達を咎めなかった。


「エスト!」


 相変わらず顔色があまり良くないエストも、三人の後ろからギルドを出ようとして、サフィーに呼び止められた。


「あはは……サフィーちゃん達居たんだ……格好悪い所を見られちゃって……」
「あんた、もうやめなさいよ。こんな目に合ったのにまた明日行くとか、スナイプ達は周りが見えてないわ。あんたまで付き合う必要無いじゃない」


 それは純粋に、エストを心配しての言葉だった。エストにもそれが分かっているが、首を横に振る。


「駄目だよ……わたしが回復しないと……スナイプさんもカロンさんも死んじゃうもの……」
「ねえエスト、それなら貴女が行かなければ、あの三人も諦めるかもしれないわよ?もう一度話し合ってみてはどうかしら?」


 リーシャの言葉を受けて、元気なく笑うエスト。話し合いに応じてくれる相手であれば、そもそもこんな状況には陥っていない。この引っ込み思案な性格のせいで、思っている事を強く口にも出来ない。
 

「大丈夫です……次はきっと上手くいきますから……」


 最後に力なくそう告げて、エストはギルドを後にした。そんなエストの背中を見つめている事しか出来ないのは、昨日の大衆浴場での時と全く同じだった。



■■■



 昨日とほぼ同じ時刻に大衆浴場を訪れた四人。ファナと一言二言、言葉を交してから脱衣所へと進むが、今日は誰も先客が居なかった。
 もしかしたら今日もエストが居るかもしれないと、淡い期待をしていた四人は無言で肩を落とす。出来ればもう一度エストと話をしたかったのだが、それは叶いそうに無い。


「ふぅ………」


 身体を綺麗に洗い、皆で湯に浸かる。昨夜、全員の身体の隅々まで見て触って愛撫した今となっては、リーシャもサフィーも昨日のように身体を隠そうとはしなかった。今さら隠す方が不自然だと思ったのだろう。


「エスト……来なかったね……」
「きっと魔力切れが辛いんだわ。ちゃんとマジックポーション飲んでるといいんだけど」


 魔力切れ、つまりMPの枯渇は当然MPの量が多ければ多いほど回復するのにも時間が掛かる。エストのMP総量はサフィー程ではないにしても、同年代の魔道士や回復術士に比べてかなり多い。サフィー曰く、一晩寝た程度では全回復はしないとの事だった。


「全回復しないって……じゃあ明日はもっと辛いじゃん!」
「そもそも、回復術士が魔力切れを起こす事態が問題なのよ。それって完全にパーティ全体の実力が及んで無いって事だもん」


 同じ魔法職でも、攻撃職の魔道士ならMPが枯渇する事もそれほど珍しい事では無い。しかし回復術士がMP枯渇に陥るという事は、それだけパーティメンバーがダメージを負っているという事だ。適正レベルのダンジョンや狩場へ赴いた場合、こういった事はほとんど有り得ない。スナイプのパーティがいかに無謀な挑戦をしているのかが、その事実だけで浮き彫りになる。


「確かマジックポーションって大銅貨三枚だったよね?でも今日、エスト達が稼いだのは大銅貨二枚………」
「行けば行くほどマイナスじゃん!」


 そこまでして何故無謀な挑戦を繰り返すのか、何がそこまで彼らを駆り立てるのか。その理由が、自分達に対する嫉妬であるとは誰一人として気付いてはいない。だからこそ、四人は全員同じ事を考えた。


「あのさ、あたしちょっと提案があるんだけど」
「あら奇遇ね。わたしも聞いて欲しい話があるわ」
「そうなのね~、実はわたしも思っている事があるのだけど」
「ってか、多分みんな同じ事だよね」


 湯から顔だけを出した状態で、四人は互いの顔を見てクスクスと笑い合う。


「いけるよね?」
「多分ね。そのビッグフットが少しネックだけど」
「大丈夫よ、素材の価値無いみたいだし、ライちゃんに全力出して貰うから」
「狙うのはランクアップモンスターだね」
「よーっし!!」


 突然、未来が湯から立ち上がる。温められてほんのりと紅く染まった身体を隠そうともしないので、三人の視界には湯で濡れた未来の陰毛が飛び込んで来た。


「な、何でいきなり立ち上がるのよ!?」


 慌てて顔を背けるサフィー。昨夜の事があったとは言え、あまり堂々と直視するのもどうかと思ったのだが、当の未来本人は気にしていない。


「ほら、みんなも立って立って!」


 未来に促され三人は顔を見合わせるが、結局は未来の言う通り立ち上がる。すると未来は手の甲を上に向けて、手を前に出した。
 それを見た愛莉が、未来の意図に気付く。これはあれだ、体育会系のノリでお馴染みの円陣というやつだ。いや、円陣って肩を組むやつだっけ?と、割とどうでもいい事を考えながら未来の手に自分の手を重ねる。


「ほら、二人も早く」

  
 何だか良く分からないが、愛莉を真似て同じように手を重ねるリーシャ、そして最後にサフィー。


「あたしが言い終わったら、みんなオーッ!て言ってね!じゃあ行くよーっ!」


 未来が一呼吸間を空ける。そしてーーーー


「明日は絶対ランクアップモンスター倒すぞぉぉーーーッ!!せーーの!!」
『オーーーッ!!』


 四人の元気過ぎる声が、大浴場の中に響き渡ったのだった。




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