百合JKの異世界転移〜女の子だけのパーティで最強目指します!〜

綾瀬 猫

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帝国激震の章

236.殺戮衝動

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 明らかに格下だと思っていた少女六人で構成されたパーティ『クローバー』。そのクローバーの戦闘を目の当たりにし、ツヴァイフェッターの五人は誰しもが驚愕の表情を浮かべる。


「何なんだよあの髪の短い女……突然消えたと思ったら空の上に現れたり、また地上に戻ったり……意味分かんねぇ!」


 自由自在に瞬間移動を繰り返す未来を見て、ゼレットが驚嘆の声を上げる。あんな能力、反則では無いかと。


「あれは……転移魔法か何か?」
「いや……転移する際に魔力の揺れは無い」
「と言う事は……スキルって事かしらね?」


 好きな場所に自在に転移するスキルなど、当たり前だが見た事も聞いた事も無い。無いが、こうして現実に未来が使用している以上、どんなに荒唐無稽なスキルでも信じるしか無い。


「おそらく。それにしても……あの魔道士の能力は何だ?なぜ何も無い空間から魔法を撃てるのだ……!?」


 今度はラギアが、驚嘆というよりは疑問の混じった声を上げる。師であるマディアスは【魔境召喚】という、魔力そのものを吸収して更に威力を倍増させる魔境を召喚するスキルを持っているが、魔法の根源である魔法陣を召喚するスキルなど、当たり前だが聞いた事すら無い。
 誰よりも魔法に長けたラギアだからこそ、あのスキルの恐ろしさが良く分かる。好きな場所に魔法陣を召喚して魔法を撃ち出せると言う事は、つまり防御も回避も不可能な魔法攻撃を一方的に撃てるという事だ。そんなの、やはり反則では無いかと奥歯を噛む。


「それに……あの殿下の姿もおそらくスキルよね。闘気が圧倒的過ぎて……言葉も出ないわ」


 ミルファもまた、脱帽だと言わんばかりの言葉を発する。自分達よりも何歳も若い少女達が、自分達よりも圧倒的なスキルや能力を有している。何故あれほどのスキルを持った者達が、一つ所に集まる事が出来たのか。それは偶然なのか、はたまた天に運命さだめられた運命だったのか、ミルファには知る由もない。

 誰もがクローバーの実力を認めざるを得ないといった状況の中で、バルムンクは悔しそうに唇を噛む。
 最強だと思っていた自分達が全く歯が立たなかった漆黒の竜。それをあの少女達は、善戦しているどころか圧倒しているのだ。

 クローバーの少女達に戦闘を譲った際、バルムンクはこう考えていた。


(あの召喚獣……あいつがもっと竜にダメージを与えてくれれば、僕達にも勝機はある。彼女達が戦闘で敗北したタイミングで、僕達が『救援』という形で戦闘に参加すれば………)


 そう、雷凰の攻撃でかなりダメージを与えたが、まさか他の少女達があの竜にダメージを与えられるとは思っていなかったのだ。
 なのでクローバーが敗北した後に、彼女達を助ける形で戦闘に参加すれば、かなりのダメージを負った黒き竜と再戦する事が出来る。そうすれば今度こそ自分達ツヴァイフェッターが竜を倒せると、そんな計算をしていたのだが、状況はバルムンクの考えていた戦況とは全く違い、少女達が竜を圧倒している。


(一体何なんだ……何故あんな少女達が、あれほどの力を持っているんだ……?)


 見た事も無い数々のスキル、見た事も無い召喚獣、見た事も無い回復魔法。
 そのどれもが蒸気を逸している。いや、もはや異常だと言っても差し支えないほどの能力を、あの六人の少女達は有している。
 まるで、神に選ばれた存在であるかの如く、その奇跡のような能力の数々で、最強の竜を圧倒している。その事実を目の当たりにし、バルムンクは噛んでいた自分の唇から白い歯を放す。


「ふぅ……どうやら主役は僕達じゃなかったみたいだ………」


 そう呟いた顔は、悔しさを滲ませながらも何処か清々しさも見て取れる表情だった。



■■■



 自分の意思がある訳では無い。あるのは、無理やり呼び起こされる闘争本能と、無理やり植え付けられた殺戮衝動のみ。

 全てを屠って来たこの身が、激しく傷つけられている。
 全身は無数の紫電で焼かれ、鱗は剥ぎ落とされ、肉体は深く抉られている。
 抉られた肉体に更に強烈な魔法を撃ち込まれ、遂に死した肉体が悲鳴を上げた。

 許せん。この人間共を許す事は出来ん。塵も残さず消し去る事こそ、最大の復讐になる。
 体内で練り混んだ高威力の爆炎砲。これを撃ち放てば、全てを一瞬で消し去る事が出来る。先ずは、先ほどこの肉体に魔法を撃ち込んだ魔道士から。


「ミクッ!!サフィーを護って!!!!」


 遅い。次の刹那には最早、あの人間の肉体はこの世には無い。




 ーー滅光灰燼閃




 放たれた滅光灰燼閃が魔道士を飲み込む。もはやその身体は消滅し、塵一つ残ってはいない。
 
 先ずは一人。次の標的はーーーーー


「あの目……暗闇みたいな色だけど見えてる………?」


 人間の声が耳に届く。ああ、見えているとも。竜族は他の種族よりも圧倒的な視力を持つ。己を最強まで昇華させた者は、千里眼にて遠くまで把握出来る程にまで視力を高められる。この目から逃れる術を他の種族はーーーーーー


「未来!時空斬で左目お願い!!」


 人間が叫ぶ。無駄だ、この目を潰そうなど人間には不可能。全てを見通せるこの目は、どんな攻撃も見逃しはしない。肉体は傷つけられようとも、この目だけは傷つけようがない。
 もしも目を狙って接近して来たのならば、再び滅光灰燼閃の餌食となろう。長距離から狙ってくれば、攻撃ごと跳ね返してくれる。

 随分と肉体が傷つけられた。早々に人間共を消し去り、目の前の人間が大勢住まう都市を破壊しなければならない。
 そう、破壊しなければならないのだ。理由は分からぬが、そうするのが今の目標であるらしい。何故なのかは分からぬが。



 ザシュシュシュシュッ!!


 ーーー何だ?視界の半分が突然消えた。どういう事なのだ?



「さっすが愛莉!不可視のエクストラスキル、ガチでエゲツないね!!って、次はあたしの番か!!」


 何を言っている?いや、何をしたのだ?何故突然視界の半分が消えた?攻撃など、この目には見えなかったーーーーー


「時空斬!!」


 ズドンッ!!



 我が左目に衝撃が走る。馬鹿な……完全に視力を失っただと!?


「よしっ、これで照準は定まらない筈だよ」


 何故だ!?何故突然、視界が閉ざされたのだ!?いや、この目に攻撃を仕掛けたのだ!?
 全てを見通せるこの目にすら映らない攻撃など……人間の所業では無い。その力は神のーーーーー



 神とは誰の事だ?いや、そもそも私は一体ここで何をしている?何故この私が人間と戦ってーーーーー



【余計ナ事ヲ考エルナ。貴様ハ何モ考エズニ人間ヲ滅ボセバ良イノダ】



 今の声は何だ?まるでこの肉体に巣食うような、得体の知れぬ存在感。今の声は何者の声だ?
 いや、もはや考えずとも良い。今の声を聞いていたら、強い殺戮衝動が浮かび上がって来た。
 そうだ、この私の肉体をこれ程までに損傷させし人間共を、生かしておく事など出来ぬ。今すぐにでも滅ぼさなくては。

 この目が見えぬのであれば、逃げ場の無い程の攻撃をこの一帯に撃てば良いだけの事。私を本気にさせた事、とくと後悔しながら滅ぶが良い。


「何か来るよ!翼が光ってる!」
「未来!今すぐ全員をショートワープで集めて安全な場所に避難して!さっきツヴァイフェッターを一瞬で倒した技が来るみたい!!」


 人間の声が五月蝿く耳に届く。ツヴァイフェッターというのは、先ほど【黒死翼】を食らわせた人間共の事か。

 だが浅慮。竜魔法は黒死翼だけでは無い。そしてこれから発動させる竜魔法は、黒死翼とは比べものにならぬ程の威力を持つ。絶望と死の狭間で深い後悔を抱きながら消えろ。



 ーー竜魔法・【隕石落下メテオ


    
 全てを破壊し尽くす死の魔法、その身に受けろ。


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