Dazai & JK

牧村燈

文字の大きさ
8 / 15
第1章 太宰とJKが過ごしたある初夏の日々

第8話 無言電話

しおりを挟む
 1年ぶりのN美との電話。電話をすると言っても、一体何を話せば良いのだろう。太宰先生に『一番言いたいことを一番最初に言うのが良い』と言われて、そんなこと言われたって、と何だかむず痒くて「先生だってコミュ障のくせに」と言い返した。少し傷ついたのか拗ねたような素振りをする先生。でも、このアドバイスは私の心にしっかり響いていた。

 私がN美に今一番言いたいことって何だろう。私は何でN美に電話しようとしているんだろう。色々考えたけれど答えは出なかった。

『考えるより産むがやすし。明日に回したらまた当分電話はできないだろう。私はそれでもいいと思うが、君はどうなんだろうか』

 立ち直りが早いのも先生のいいところ。そしてすぐに今欲しい後押しをしてくれる。

「分かってるよ」

 N美に会うつもりで学校にだって行ったんだ。電話するくらい何でもない。私はアドレス帳からN美の名前を呼び出しそのまま通話ボタンを押した。

 トゥルルル、トゥルルル

 呼び出し音が鳴る。出ないでと出てが頭の中を交錯する。何なの私って、と思った四度目のベルでN美が出た。N美はこの電話が私からだと分かって出たのだ。

「もしもし」

「あ、もしもし」

「ああ、もしもし」

「……ハルカ?」

「うん、……N美だよね?」

「うん……」

 それっきり二人とも無言になる。1分過ぎただろうか、それとも2分経ったのだろうか。私にはもう1年くらいずっとそうしていたような気がするくらい長い時間、遠く離れた場所で小さな携帯電話を握り合った二人が、息づかいさえ聞こえるすぐ隣で、会えなかった1年間を振り返っていた。

 N美が鼻をすする声が聞こえた。

「N美、大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ」

「良かった」

 何が良かったんだろう。私、言いたいと思ってたこと何にも言ってない。

「N美」

「何?」

「ねえ、また仲良くしてくれる?」

 あ。それここで言う?自分から出た言葉が信じられない。だけど一番言いたかったことは多分これ。太宰先生、責任とってよね。

「えっ、ハルカ。私のこと怒ってないの?」

「バカ、怒ってるに決まってるじゃない。もう絶対口きかないって思ってたし」

「うん」

「でもね」

「なあに」

「何でもないよ」

「何でもないって」

「だから何でもないって言ってる」

 また無言。だけど今度の無言はさっきとは少し違っていた。くすぐったくて意外と気持ちがいい時間。フフフッ。何だか笑いがこみあげて来て止まらない。

「どうしたの?何かおかしい?」

 そう言いながらN美も少し笑っている。

「明日さ、N美の家に行っていい?」

「明日?」

「ダメなの?」

「うううん。違う。ねえ、今から来られない」

「今から?」

「だって、私、ハルカに話したいことがいっぱいある。もう抑えきれないくらい、いっぱいある」

 N美の声がまた涙声になる。

「私だって」

 そう言って二人はまた無言になった。話したいことがあり過ぎて、胸が詰まってしまい言葉にならなかったのだ。

(続く)
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...