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第1章 太宰とJKが過ごしたある初夏の日々
第8話 無言電話
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1年ぶりのN美との電話。電話をすると言っても、一体何を話せば良いのだろう。太宰先生に『一番言いたいことを一番最初に言うのが良い』と言われて、そんなこと言われたって、と何だかむず痒くて「先生だってコミュ障のくせに」と言い返した。少し傷ついたのか拗ねたような素振りをする先生。でも、このアドバイスは私の心にしっかり響いていた。
私がN美に今一番言いたいことって何だろう。私は何でN美に電話しようとしているんだろう。色々考えたけれど答えは出なかった。
『考えるより産むがやすし。明日に回したらまた当分電話はできないだろう。私はそれでもいいと思うが、君はどうなんだろうか』
立ち直りが早いのも先生のいいところ。そしてすぐに今欲しい後押しをしてくれる。
「分かってるよ」
N美に会うつもりで学校にだって行ったんだ。電話するくらい何でもない。私はアドレス帳からN美の名前を呼び出しそのまま通話ボタンを押した。
トゥルルル、トゥルルル
呼び出し音が鳴る。出ないでと出てが頭の中を交錯する。何なの私って、と思った四度目のベルでN美が出た。N美はこの電話が私からだと分かって出たのだ。
「もしもし」
「あ、もしもし」
「ああ、もしもし」
「……ハルカ?」
「うん、……N美だよね?」
「うん……」
それっきり二人とも無言になる。1分過ぎただろうか、それとも2分経ったのだろうか。私にはもう1年くらいずっとそうしていたような気がするくらい長い時間、遠く離れた場所で小さな携帯電話を握り合った二人が、息づかいさえ聞こえるすぐ隣で、会えなかった1年間を振り返っていた。
N美が鼻をすする声が聞こえた。
「N美、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「良かった」
何が良かったんだろう。私、言いたいと思ってたこと何にも言ってない。
「N美」
「何?」
「ねえ、また仲良くしてくれる?」
あ。それここで言う?自分から出た言葉が信じられない。だけど一番言いたかったことは多分これ。太宰先生、責任とってよね。
「えっ、ハルカ。私のこと怒ってないの?」
「バカ、怒ってるに決まってるじゃない。もう絶対口きかないって思ってたし」
「うん」
「でもね」
「なあに」
「何でもないよ」
「何でもないって」
「だから何でもないって言ってる」
また無言。だけど今度の無言はさっきとは少し違っていた。くすぐったくて意外と気持ちがいい時間。フフフッ。何だか笑いがこみあげて来て止まらない。
「どうしたの?何かおかしい?」
そう言いながらN美も少し笑っている。
「明日さ、N美の家に行っていい?」
「明日?」
「ダメなの?」
「うううん。違う。ねえ、今から来られない」
「今から?」
「だって、私、ハルカに話したいことがいっぱいある。もう抑えきれないくらい、いっぱいある」
N美の声がまた涙声になる。
「私だって」
そう言って二人はまた無言になった。話したいことがあり過ぎて、胸が詰まってしまい言葉にならなかったのだ。
(続く)
私がN美に今一番言いたいことって何だろう。私は何でN美に電話しようとしているんだろう。色々考えたけれど答えは出なかった。
『考えるより産むがやすし。明日に回したらまた当分電話はできないだろう。私はそれでもいいと思うが、君はどうなんだろうか』
立ち直りが早いのも先生のいいところ。そしてすぐに今欲しい後押しをしてくれる。
「分かってるよ」
N美に会うつもりで学校にだって行ったんだ。電話するくらい何でもない。私はアドレス帳からN美の名前を呼び出しそのまま通話ボタンを押した。
トゥルルル、トゥルルル
呼び出し音が鳴る。出ないでと出てが頭の中を交錯する。何なの私って、と思った四度目のベルでN美が出た。N美はこの電話が私からだと分かって出たのだ。
「もしもし」
「あ、もしもし」
「ああ、もしもし」
「……ハルカ?」
「うん、……N美だよね?」
「うん……」
それっきり二人とも無言になる。1分過ぎただろうか、それとも2分経ったのだろうか。私にはもう1年くらいずっとそうしていたような気がするくらい長い時間、遠く離れた場所で小さな携帯電話を握り合った二人が、息づかいさえ聞こえるすぐ隣で、会えなかった1年間を振り返っていた。
N美が鼻をすする声が聞こえた。
「N美、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ」
「良かった」
何が良かったんだろう。私、言いたいと思ってたこと何にも言ってない。
「N美」
「何?」
「ねえ、また仲良くしてくれる?」
あ。それここで言う?自分から出た言葉が信じられない。だけど一番言いたかったことは多分これ。太宰先生、責任とってよね。
「えっ、ハルカ。私のこと怒ってないの?」
「バカ、怒ってるに決まってるじゃない。もう絶対口きかないって思ってたし」
「うん」
「でもね」
「なあに」
「何でもないよ」
「何でもないって」
「だから何でもないって言ってる」
また無言。だけど今度の無言はさっきとは少し違っていた。くすぐったくて意外と気持ちがいい時間。フフフッ。何だか笑いがこみあげて来て止まらない。
「どうしたの?何かおかしい?」
そう言いながらN美も少し笑っている。
「明日さ、N美の家に行っていい?」
「明日?」
「ダメなの?」
「うううん。違う。ねえ、今から来られない」
「今から?」
「だって、私、ハルカに話したいことがいっぱいある。もう抑えきれないくらい、いっぱいある」
N美の声がまた涙声になる。
「私だって」
そう言って二人はまた無言になった。話したいことがあり過ぎて、胸が詰まってしまい言葉にならなかったのだ。
(続く)
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