VRMMOのキメラさん~〜モンスターのスキルを奪える私は、いつの間にか《キメラ》とネットで噂になってました!? 【リメイク版】

水定ゆう

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5ー2:太陽の遺跡と挑戦状

◇160 謎の歯車

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「結局、なにもして来ないね」
「そうだな」

 タンクライノスが落とし穴に落ちてしばらく。
 一応警戒しつつも、十分は既に経っている。

 もしかすると私達が近付いて来るのを待っているのかもしれない。
 近付いて来た所にドカンと一発。
 なんて嫌なことを考えてしまうけど、流石に確認もしないのはダメだよね?

「もう大丈夫かな?」
「私は問題無いと思いますよ」
「私もだ。さて、見に行ってみるか」

 重たい腰を上げ、Nightは先頭を切る。
 私達もその後を続くと、やはり警戒する。
 砲弾が花火みたいに撃ち込まれたら如何しよう。
 そんな想像をする中、落とし穴を覗き込んだNightは「なるほどな」と呟く。

「どうしたの、Night。なにかあったの?」
「見てみろ」
「見てみろって……あれ?」

 Nightに言われて落とし穴の中を覗き込む。
 段差を利用して覗き込んでみると、目を見開く。
 瞼を押し上げるのも当然で、何にもなかった。

「いませんね、タンクライノス」
「そうね、姿が消えた?」
「ってことは倒したってことだー。あれ? でも、経験値が入ってないよ?」

 落とし穴の中にはタンクライノスの姿が無かった。
 残骸の一つも無いから完全に消失している。
 つまりは私達が倒したってこと。だけど経験値は入ってないから如何してだろう?

「当り前だ。別に私達は戦った訳じゃない」
「「「あっ!」」」
「あくまでもタンクライノスと追いかけっこをしていただけだ」

 確かに私達は戦っていなかった。
 確かにベルや雷斬は多少戦った……って言うか小細工を使ったかもしれない。
 だけど直接的に戦った訳じゃないから、誰にも経験値らしきものが入っていなかった。

「ってことは、意味ないってこと?」
「そうだな」
「そんなー」

 もう落胆するしかない。
 私は声を上げてしまうと、そんなに疲れてないけど、ペタンと座る。
 Nightも不満があるのか、ムッとした顔をしていて、膝が震えていた。

「はっ、結局成果はタンクライノスを討伐しただけか」
「そうね。まあ、それが依頼だったんでしょ?」
「結果オーライだねー」
「うん。でも、なにか……」

 私はふと段差から下の落とし穴を見つめた。
 するとピカンと何かが光る。
 私の勘違いかな? 小さな光だけど、私は目を擦る。

「どうしたんだ?」
「今、なにか光ったような気がして」
「光った?」
「勘違いじゃないの?」
「そうだと思うんだけど……Night?」

 私の勘違いかもしれない。
 だけどちょっとだけ気になる。
 そんな私の顔を見たのか、Nightは無言でインベントリを開く。

「下りてみるか?」
「えっ!?」
「ここまで来たんだ。物は試し、できることは全部やるぞ」

 そう言うと、縄梯子を取り出したNight。
 落とし穴の中に梯子を下ろすと、安全を確認してから下りる。
 成果が出なくて腹立たしいのか、もはや自棄に見える。
 そんなNightを放ってはおけず、全員巻き込まれる形で手伝う。

「どうだ、そっちにあるか?」
「うーん、こっちじゃないかなー?」
「こちらもですね」
「ダメね。さっきの光、なんだったのかしら?」

 みんなで落とし穴の中に入った。
 縄梯子を使って安全に辿り着く。
 それから光っていたものの正体を見つけようと必死になる。

 だけどなかなか見つからない。
 私以外は全員空振り。
 これじゃあ私も見つからない。木のせいかと思った矢先だった。

「あっ、あったよ!」

 私は何か落ちている物を見つけた。
 陽の光に触れると、キラリ光る。
 拾い上げると、私の声に気が付いてみんな寄る。
 私達は揃いも揃って拾ったものを見つめた。

「コレは歯車か?」
「歯車……なんで?」
「そんなこと、私に訊かれても知るか」
「だよね、ごめんなさい」

 私達が見つけたのは歯車が一つ。
 タンクライノスの残骸にしてはあまりにも綺麗。
 コレだけ取り残されるのも不自然な話で、納得もできない。
 私は首を捻ってしまう。

「どうしてこの歯車だけが残されていたのでしょうか?」
「分からないな」
「分からないって、Nightは天才でしょ? 心当たりとかないの?」
「ある訳がないだろ」

 雷斬とベルの質問を軽くあしらう。
 Nightは決してなんでも解ける訳じゃない。
 そのせいか、今回は全く浮かんで来ない。

「それじゃあどうするのー?」
「仕方ないな。どうするもなにも、答えは決まっている」
「決まってるー?」
「適任者の元に向かう。情報を貰いに行くぞ、それくらいの権利はある筈だ」

 Nightの顔が決まっていた。
 如何やら情報をくれそうな所を知っているらしい。
 腕利きの情報屋かな? 私はそんな期待をするが、もっと身近なことに勘付いていた。



「ってことなんですけど」
「と、言われましても……」

 私は歯車を持ち帰り、タンクライノス討伐を報告。
 無事に討伐して危険は無くなり、ギルドpも貰えたからお互いにwin-win。
 けれどここからが大変だった。

「あの、その……」

 ミーNaさんは困ってしまった。
 私達は謎の歯車の形をしたアイテムを手に入れた。
 それをミーNaさんに見て貰うことにしたけれど、ポカンとした顔をする。

「なにか知らないか?」
「そう言われましても、私のも心当たりがまるで無くてですね」

 ミーNaさんは本気で困っていた。
 何せまるでピンと来ていない。
 謎のアイテムを渡されても、頭の中の知識でも、今ギルド会館に集まった情報でも足りないらしい。

 つまりこの歯車が何の目的で作られた何かさえ分かってない。
 もしかしたらタンクライノスのただの残骸。
 そうとしか考えられないので、私は手詰まりになる。

「その模様はどうだ?」
「模様ですか?」
「そんなのあったっけー?」
「あっただろ。見てないのか?」

 そんなの私も知らない。
 フェルノが標的にされてよかった。
 私なら何も言い返せなかったと、冷汗を掻いてしまう。

 だけど歯車に模様なんて何かある筈。
 一体どんな模様だっけ?
 一番見ている筈なのに、全く記憶にない。

「本当ですね。この太陽の模様は一体?」
「太陽?」
「意味は無いのか?」
「まだ情報が無いので」

 ミーNaさんは適切な返しをする。
 ちょっとイラっとするけど認めるしかない。
 情報の一つもない以上、もはや謎としか解決できない。

「分からない」
「そうだな。恐らくは歯車を使う機会のある場所が何処かにある筈だ」
「何処かにって、漠然としているのね?」

 確かにいつのもNightらしくは無かった。
 Nightならもっと賢くスマート解決する筈だ。
 だけど情報が一切無いせい、それとも隠蔽されているとか?
 色んな憶測を飛び交わせると、余計に分からなくなった。

「私なら手近な所に遺跡かなにかを配置するが、そんな情報は無いのか?」
「残念ながら、ありませんね」
「無いのか……残念だ」

 完全に手詰まり。一回休み。
 これ以上は間が持たない。
 おまけにミーNaさんは忙しいから、拘束もできない。

「一回で直そうよ、Night」
「そうだな。それしかないか」

 結局は諦めることも大事だ。
 特に今回はこれでお終い。
 多分時間経過で何かヒントを貰える系かもしれない。

「あの、歯車は一度お返ししますね」
「うん。ありがとう。できればなにか分かったら……」
「はい。真っ先に情報をお伝えしますね」

 一度歯車は返してもらう。
 私はインベントリに仕舞うと、ミーNaさんに情報提供を頼んだ。
 とりあえず職権乱用にはならない程度に抑えると、私達は一度ギルド会館を後にする。

 結局はタンクライノスを倒しただけ。
 もちろんまともに倒した訳じゃない。
 万事解決……とまではいかない中、私達は不完燃焼でギルド会館を立ち去った。
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