生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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3話 血まみれの冒険者

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 森の中を静かに走っていた。
 草木をかき分け、太い木の幹を蹴って反動をつけながら、相手を撹乱する。

 魔物が襲ってくる。
 今日の相手は大柄のゴブリンで、ホブゴブリン。
 頭はあまり良くないけど、パワーだけは一級品の凶悪すぎるやつだった。

 ゴブリン系でお馴染みの、知能不足をガタイの二メートル近い体と全身からみなぎるパワーで、常にカバーし続ける。

 手には石をそのまま削り出しような、太い棍棒を握りしめ、僕を追いかけながら、邪魔な木々を伐採し続ける。

「まったくしつこいなぁー」

 ホブゴブリンはたった一匹。
 いつもは取り巻きの小さいゴブリンたちがいるはずだけど、僕がさっき奇襲を仕掛けて全部倒しちゃったから、怒って追いかけてきてるんだ。

 だけどあっちは二メートル。
 対して僕は百五十センチ。
 小さい体を利用して、木々の合間をすり抜けて、動きを阻害しながら、ちょこまかと動き回る。

「ほらほら、こっちだよ!」

 途中でわざと止まって攻撃を空振りさせる。
 こうすることで怒りメーターを蓄積させて、冷静な判断をさせない。

 それから蔦が密集している辺りを定期的に走ってみる。
 するとホブゴブリンの体に、幾つもの細くて丈夫な自然の蔦が絡まって、棍棒や腕が持っていかれる。

 身動きが取れなくなるのも、時間の問題だった。

「ゴブっ、ゴブっゴフっ!」
「動きが鈍くなった。これなら!」

 僕はホブゴブリン捕まった方向に、すぐさまきびすを返して、走り出した。
 一気に詰め寄ると、腰のベルトに取り付けた鞘から、剣を抜刀する。

 ズバッ!

 僕はホブゴブリンの腹を切った。
 するとホブゴブリンは苦しみだし、怒って左腕を振り下ろす。

「危ないっ!」

 僕は左。つまり、帆船ゴブリンから見たら右に思いっきり飛んで避けた。
 それから空振りになった腕の上を橋のように渡り、首を狙う。

「これでトドメ!」

 僕はホブゴブリンの首を落とした。
 するとピクリとと動かなくなる。
 死んだんだ。
 いや、討伐完了ってことになる。

「ふうっ。意外になんとかなったね」

 赤い血がついた剣をチラッとみると、血を飛ばしてから鞘に収める。
 血が残っていると、剣が錆びて使えなくなる。

 僕はボブゴブリンの頭から、耳の部分だけを小さなナイフをベルトから取り出して、切り落とす。
 これを見せて討伐証明に使うんだ。

 それにしても、

「うわぁ、やっぱり酷い臭い」

 僕は服の袖や肌に直接付着した血液の臭いを嗅ぎ、顔を顰める。
 これは僕の血じゃない。
 さっき倒した、ホブゴブリンの血だった。

 服の袖だけじゃなくて、肌にもびっしり付いていた。
 何より一番付着しているのは、真っ白に色素の抜けた僕の髪だった。

「これどうしよう。絶対綺麗に洗わないと、落ちないよね」

 さっき頸動脈を切った時に、噴き出たんだ。
 プシュー! と勢いよく噴射し、顔は覆って隠したけれど、頭や着ていた服に全部ついてしまっていた。

 この服、結構気に入ってたのに。
 ちょっと残念だ。
 また丁寧に洗って使わないとね。

「よし、帰ろう。っとその前に、ごめんね。ホブゴブリン」

 僕は手を合わせた。
 倒した魔物に敬意を表する。

 別に魔物は人を襲うし、この魔物も人を殺したから討伐依頼が来たんだ。
 それでもまだ目的があったから、仕方ないと思いつつ、僕はこの手で殺してしまったことを後悔はしなかった。

「さてと。うーん、でもこの髪見たら、きっとエレナさんとか驚いちゃうかもね」

 何となくそんな予感がした。
 ここから町までは大体十キロなので、少し急げば昼前には帰れるだろうと思い、近くの川で魚を何匹か捕ってから帰ることにしました。

 今日は川魚の塩焼きだ。
 僕は笑みを浮かべながら、思いを走らせていた。
 

 
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