生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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12話 雨の中を走る

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 僕は少女の部屋を出た。
 まだ名前も聞いてない。
 そんな少女の悲しそうな表情が、酷く胸に突き刺さる。

 自分と境遇が似ているから?
 いいやそれは盲信だ。

 彼女は僕とは違う。
 僕の苦しみとはまた違うベクトルだ。
 だけど、心の奥底から掻き立てるこの欲求何か。
 きっと僕の中に流れる、だ。
 忌々しい。今更だが、胸糞悪くなる。

「ふぅー。行こっか」

 僕は部屋に戻って、剣だけ持っていく。
 その辺の武器屋で買った、安物の鉄剣だ。

 僕の中に流れる血が、どれだけ穢れていてもいい。
 だからと言ってその力をコントロールできないようなら、僕は単なる人殺しだ。
 でも違うだろ。
 僕が殺すのは、のはずだ。

「えーっと、剣はある。ベルトもある。服はないから、適当にローブだけ被って行こう」

 前にホズキ師匠から貰ったもほだ。
 何でも故郷の村で使われている、特別な素材のものらしく、僕のためにわざわざ作ってくれた。
 とっても嬉しくて、あの時は抱きしめて寝ていたっけな。
 今更だけど、懐かしい。

「ベルトも予備の白いのしかないね。これ、綺麗だから汚したくないんだけど、背に腹はかえられないか」

 剣の鞘をベントのホルダーに突き刺す。

 軽い作りの留め具。
 ベルトと鞘を固定させ、これで準備よし。
 冒険の時用の茶色い皮のブーツに履き替え、いざ出発だ。

「あら? 天月君、今からどこに行くの?」
「ルビーさん。少し出てきます。あの子のこと、お願いします」

 そう言い残すと、僕は雨が降り頻る町に飛び出した。
 未だに雨は降り止まない。
 これはしばらくかかるはずだ。

「早くしないと、目印がなくなっちゃうもんね」

 僕はローブに取り付けられたフードを深く被る。
 雨粒がバサバサと音を立てて、僕の肌を濡らす。
 そんな中、目印は残っているのか。
 不安で仕方ない中、それは残っていた。

「よかった、残ってるよ」

 僕は地面を目を凝らして覗き込む。

「真っ赤な血。きっとあの子のだ」

 少女の体は傷だらけ。
 それに、剣の先には血溜まりができていた。
 きっとこの血は、あの少女のもので、雨で流されてなければ、まだ残っているはずだ。

 そんな薄い希望に胸を馳せる。
 すると、点々と赤いものが続いている。
 きっとこの先だ。

「急がないと。早くしないと、血がわからなくなる。もしかしたら、もう残ってないかも。くそっ! そんなことになったら、使じゃないか」

 この力が役に立つかも。
 だけどそんなことは最後の手段。
 僕は町の中は隙間があって、地面に散らばった血が溜まるが、外に出たらわからなくなる。
 凸凹の地面を睨みつけ、「残っていてよ」と願うばかり。
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