生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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14話 オークの住処

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 洞窟の中は薄明かりで照らされていた。
 ゴツゴツとした表面の岩肌が、手のひらを擦る。
 ちょっと痛いけど、目印にはちょうどいい。

「それにしても変だね」

 僕は壁を見ながらふと口にした。
 この壁、んだ。

 見たところ、最近作られたようには見えない風化の仕方をしているのに、苔が一切ない。
 しかももっと不自然なのは、をしていたことだ。

「もしかして、人為的にカモフラージュした? でもそれだったら、如何してオークたちが。普通に考えたら、ありえないよね」

 僕はそこが一番引っかかる。
 オークは決して頭がいいわけではない。
 だけど悪くもない。

 基本的に体幹の発達した図体を活かした、近接線を得意とする。
 だからこんな真似、そうかんたんにはできたりしない。
 そう考えると、ますます怪しい。

「とにかく先に進んでみるしかないよね。新調に進んで……ん?」

 向こうから何か来た。
 大きな影だ。

 僕はすぐに気配を消して、壁の裏側に隠れる。
 すると見張りのオークのようで、手には松明を持っていた。
 外では使えないから、洞窟内で使ったんだろう。

 これは使える。
 僕はオークが寄ってきたところを見計らい、背後を取った。

「眠いな」
「だったら寝てていいよ」

 ゴカッ!

 僕はオークの後頭部を思いっきり棍棒で、ぶん殴った。
 近くに置いていた、昔オークたちが使っていたものの余りだろう。

「ごめん。でも、仕方ないんだ」

 僕は軽く手を合わせると、持っていた松明を奪い取る。
 ちょっと頭を使ってみようか。

「ホズキ師匠、まさかこんな危ない方法使うとは思いませんでしたよ」

 火を調達した僕は、雨風に当たらないように火を大きくした。
 焚き火を作り、松明の火を移す。
 すると轟々と音を立てて燃え出し、今にも焼き尽くすほどだった。

 チーズを溶かせば美味しそう。
 なんて、ハートフルなことでも考えてないと落ち着けない。

「よし、後は時間を稼ぐだけ。だけど……うーん」

 このやり方、めちゃくちゃ効率が悪い。
 もう少し中の様子を見ておこう。

 僕の指先は剣の柄にそっと触れ、いつでも抜刀できた。
 ベルトに差したナイフも、全部ある。
 銀のナイフ。十字架のようだ。

「このオークは壁際に寄せて、慎重に慎重に……」

 ファイ師匠に習った縮地と高速移動の応用で、僕は壁伝いながらテキパキと移動することができた。
 それで少しだけ進むと、何やら声が聞こえてきた。
 人の言葉を話している。

「にしても上手くいったな」
「ああ。ここまで成功したのは、全部あんたのおかげだ」
「そうだな。今までの俺たちには無かった発想だ。全部あんたのおかげだよ、ボス」

 ボス?
 不穏な言葉を聞き、少しだけ顔を壁から逸らして、奥の様子を覗き込んだ。

 そこにいたのはオークたちの集団。
 群がっていることから、さしずめサウナか。

 暑苦しい雰囲気に飲まれ、顔を顰めた。
 だけどその奥。椅子に座り、敬われているオークがいた。

「何だろ、あれ?」

 かなり異質だ。
 堂々としている。
 雷鳴が洞窟の外で響き渡り、僕の目にしたのは、明らかに大きくて威厳たっぷりなオークだった。

 多分あれがボスだ。
 あいつを倒せば全て終わる、はず?
 そんな生優しい体制ならいいけれど、僕に取っては気が気ではない。

 こうなったらさっさと蹴りをつけることにした。
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