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18話 戻ったきたけど、また血まみれ
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僕は雨の中、ルビーさんの営む宿屋に戻った。
雨に打たれてずぶ濡れな上に、オークの血で変な臭いがついていた。
気持ち悪い。
雨に流して欲しかったけど、全然だったのが、物足りない。そのせいで、僕は手だけは拭き取ってから、宿屋に入った。
すると、あの子のいる部屋で、声が聞こえた。
僕は悪いと思いつつ、扉越しに声を聞くことにした。
「何話してるのかな?」
そっと耳をドアに押し当てると、少女のか細い声が聞こえた。
流石に小さすぎる。
内容まではわからない。
だけど、悲壮に満ちていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
耳を澄ますと、力のこもった低音部分が聞こえた。
ずっと謝っていた。
何に対するものか、溢れる魔力を辿れば、きっと鞘のことじゃない。
「私がもっと強かったら。私がもっと、もっと……」
やっぱり優しい子だ。
鞘のことは本当は建前で、誰も助けられなかったことに後悔している。
でも僕はそれを悪いとは思わないけど、良くもないと思った。
何だか心のたかが外れて、ドアを押し開けたくなる。
「やっぱり私が弱いせいで、私なんかのせいで……」
「それは違うと思うよ!」
僕はドアを押し開けた。
凄い音だった。
少女は目を丸くしたまま、僕の方に視線を移すと、目から涙を浮かべていた。
きっと泣きながら懺悔していたんだよ。
「貴方……どうしてずぶ濡れで……」
「そんなこといいから。でも、君のせいじゃないよ」
「えっ!?」
急に何を言うんだ。そう思っている顔だ。
だけど僕は追求する。
「さっきの話、ちょっとだけ聞いちゃってたんだ。だけど、僕は君のせいじゃないと思う」
「そんなこと……現に私だけが生き残っていて。逃げ帰ってきて……」
「そんなの仕方ないよ。それより、自分が悪いなんて、卑下するのはやめようよ。もっと強くなりたい。そう思うのはいいけど、全部自分一人で抱えるのだけは、やめた方がいいよ」
自責の念に駆られて、勝手に潰れていく姿を僕はみたくなかった。
何せ僕が助けた子で、この子には才能がある。
僕が言うことでもないけど、こんなことで壊れるには惜しい。
「でも、私はだれも何も守れなくて」
「だったら次誰かを守ればいいんだよ。ほら」
僕は鞘を投げ渡した。
すると少女は目を見開いて、僕と戻ってきた鞘を交互に見返す。
「こ、これって……」
「取り返してきたんだよ。だから元気出して」
少女の目が僕の頭に向く。
真っ赤に染まった白髪。
如何やら納得したらしい。だけど、目からは滝のような大粒の雨が降り注ぐ。
「だ、誰か生きていましたか!」
「残念だけど、皆んな死んでた。遺体すらなかったよ」
「そんな……」
あれから僕は洞窟を潰した。
これ以上、何もない。こんな悲しい場所は残しちゃいけないんだ。
そんな気でいた。
「結局戻って来たのは鞘だけ……」
「いやいや、僕も戻ってきたから。全員倒したんだよ」
何だか忘れられているみたいで、少し悲しい。
でも、ちょっとだけ笑っていた。
そんなに面白かったのかな。
「ありがとうございます。鞘を、皆んなの想いを取り返して来てくれて」
「あっ、やっぱりエルフだ」
僕はそう悟った。
ちょっとだけ嬉しそうなのは、鞘に残った皆んな。つまり、殺された人たちの想いを連れ帰ったから。
そのおかげか、少しだけ笑顔を取り戻し、自責の念から解放される。
「私、もっと強くなります。次の誰かを守れるようになりたいから」
「そっか。頑張って、僕もできるだけ力を貸すよ」
「ありがとうございます。では、今から!」
「えっ!?」
僕は少女に抱きつかれた。
咄嗟のことで驚いちゃったけど、服がどんどん濡れていく。
あったかい涙だ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。私、私はもっと、もっと強くなります!」
泣いていた。
酷く泣いていた。
僕は服ぐらいいくらでも貸し出すと、少女の頭にそっと手を置いた。
洗っておいてよかったよ。
ゆっくりゆっくり撫でてやると、少女は次第に思いを馳せるのだった。
耳の奥をつんざく。
だけど嫌いじゃない。
まるで、歌っているような。瞑想しているような、不思議な気分だった。
少女の叫びは強く、心を震わせた。
それから泣き止むまで、僕はずっと立ち尽くし、少女の頭をひたすらに、撫で続けるだけだったが、何故か僕の瞳にも涙が薄ら、流れていた。
雨に打たれてずぶ濡れな上に、オークの血で変な臭いがついていた。
気持ち悪い。
雨に流して欲しかったけど、全然だったのが、物足りない。そのせいで、僕は手だけは拭き取ってから、宿屋に入った。
すると、あの子のいる部屋で、声が聞こえた。
僕は悪いと思いつつ、扉越しに声を聞くことにした。
「何話してるのかな?」
そっと耳をドアに押し当てると、少女のか細い声が聞こえた。
流石に小さすぎる。
内容まではわからない。
だけど、悲壮に満ちていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
耳を澄ますと、力のこもった低音部分が聞こえた。
ずっと謝っていた。
何に対するものか、溢れる魔力を辿れば、きっと鞘のことじゃない。
「私がもっと強かったら。私がもっと、もっと……」
やっぱり優しい子だ。
鞘のことは本当は建前で、誰も助けられなかったことに後悔している。
でも僕はそれを悪いとは思わないけど、良くもないと思った。
何だか心のたかが外れて、ドアを押し開けたくなる。
「やっぱり私が弱いせいで、私なんかのせいで……」
「それは違うと思うよ!」
僕はドアを押し開けた。
凄い音だった。
少女は目を丸くしたまま、僕の方に視線を移すと、目から涙を浮かべていた。
きっと泣きながら懺悔していたんだよ。
「貴方……どうしてずぶ濡れで……」
「そんなこといいから。でも、君のせいじゃないよ」
「えっ!?」
急に何を言うんだ。そう思っている顔だ。
だけど僕は追求する。
「さっきの話、ちょっとだけ聞いちゃってたんだ。だけど、僕は君のせいじゃないと思う」
「そんなこと……現に私だけが生き残っていて。逃げ帰ってきて……」
「そんなの仕方ないよ。それより、自分が悪いなんて、卑下するのはやめようよ。もっと強くなりたい。そう思うのはいいけど、全部自分一人で抱えるのだけは、やめた方がいいよ」
自責の念に駆られて、勝手に潰れていく姿を僕はみたくなかった。
何せ僕が助けた子で、この子には才能がある。
僕が言うことでもないけど、こんなことで壊れるには惜しい。
「でも、私はだれも何も守れなくて」
「だったら次誰かを守ればいいんだよ。ほら」
僕は鞘を投げ渡した。
すると少女は目を見開いて、僕と戻ってきた鞘を交互に見返す。
「こ、これって……」
「取り返してきたんだよ。だから元気出して」
少女の目が僕の頭に向く。
真っ赤に染まった白髪。
如何やら納得したらしい。だけど、目からは滝のような大粒の雨が降り注ぐ。
「だ、誰か生きていましたか!」
「残念だけど、皆んな死んでた。遺体すらなかったよ」
「そんな……」
あれから僕は洞窟を潰した。
これ以上、何もない。こんな悲しい場所は残しちゃいけないんだ。
そんな気でいた。
「結局戻って来たのは鞘だけ……」
「いやいや、僕も戻ってきたから。全員倒したんだよ」
何だか忘れられているみたいで、少し悲しい。
でも、ちょっとだけ笑っていた。
そんなに面白かったのかな。
「ありがとうございます。鞘を、皆んなの想いを取り返して来てくれて」
「あっ、やっぱりエルフだ」
僕はそう悟った。
ちょっとだけ嬉しそうなのは、鞘に残った皆んな。つまり、殺された人たちの想いを連れ帰ったから。
そのおかげか、少しだけ笑顔を取り戻し、自責の念から解放される。
「私、もっと強くなります。次の誰かを守れるようになりたいから」
「そっか。頑張って、僕もできるだけ力を貸すよ」
「ありがとうございます。では、今から!」
「えっ!?」
僕は少女に抱きつかれた。
咄嗟のことで驚いちゃったけど、服がどんどん濡れていく。
あったかい涙だ。
「ごめんなさい。ごめんなさい。私、私はもっと、もっと強くなります!」
泣いていた。
酷く泣いていた。
僕は服ぐらいいくらでも貸し出すと、少女の頭にそっと手を置いた。
洗っておいてよかったよ。
ゆっくりゆっくり撫でてやると、少女は次第に思いを馳せるのだった。
耳の奥をつんざく。
だけど嫌いじゃない。
まるで、歌っているような。瞑想しているような、不思議な気分だった。
少女の叫びは強く、心を震わせた。
それから泣き止むまで、僕はずっと立ち尽くし、少女の頭をひたすらに、撫で続けるだけだったが、何故か僕の瞳にも涙が薄ら、流れていた。
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