生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

文字の大きさ
19 / 86

19話 名前を聞いてもいいかな

しおりを挟む
 僕は少女が泣き終わるのを待った。
 その間、ずっと立ち尽くしていた。

 女の子を慰めるのが、男の子の役目。
 僕はそうは思わない。
 だけど、悲しい時に側にいてあげるのは、悪いことじゃないはずだ。

 僕は師匠たちの言葉を参考に、その場で待っていると、少女の涙は次第に枯れていき、気づいた時にはダムのように、堰き止められていた。

「ぐすっぐすっ」
「大丈夫だよ。大丈夫」

 少女の目元は赤い。
 腫れ上がっていて、痛そうだった。

「ありがとうございます」
「いいよいいよ。それより、君はこれから如何するの? 強くなるって言っても、色々あるけど」

 僕はそう尋ねた。
 さっきはできる限りは協力することを、買って出てしまった身。
 しかし、僕はこの町から離れる気はないので、それ以上のことはしてあげられなかった。

 僕はそこまで、を追求したりはしない性格だ。
 ひ弱でいい。

「私は、この町で冒険者を続けます」
「そっか。依頼を受けてたんだもんね。冒険者ってことは、ランクは?」
「前回、Cになりました」

 それなら僕と同じだ。
 しかもこの町ときたら、僕にも余地がある。
 すると、

「あの、さっきは協力してくれると言っていましたよね?」

 僕は軽く頷く。
 すると、少女は笑顔になった。
 そんなに嬉しいのかな?

「では、そのえーっと。こほん、私とパーティーを組んでくれませんか?」
「パーティー? うん。僕でよかったら、全然構わないよ」

 正直その提案には、賛成だった。
 今の今まで、僕は一人で戦って来た。
 だけど、いつかそれも厳しくなる。

 僕は師匠たちみたいに強くない。
 それにいつ暴走するかもわからない。

 だけど彼女なら僕が暴走したとしても、仮に殺しそうになったとしても、きっと止められる気がする。
 それぐらい強い魔力が込み上がっていた。

「よかったです」
「そんなに? ちなみに僕がでよかったの?」

 尋ね返した。
 縦に首を振り、安心したが、どうして僕なんだ。

「貴方なら、私の命を預けられる」
「うわぁ、凄い信頼だ。じゃあ僕の方からも、僕が暴走した時は、腕をへし折ってでも止めてね」
「わかりました。約束です。月の誘いに誓います」
「誘いって。迷いすぎて、不安なんだけど」

 僕は顔を曇らせた。
 けれど彼女は穏やかに笑っていて、布団名前を聞いていないことを思い出した。

 手のひらをポンと叩いて、彼女に僕の名前を教えた。

「そうだ、まだ自己紹介してなかったよね。僕は、天月。天月・オボロナ。よろしくね」

 一応笑顔を作っておく。
 すると少女は胸に手を当てて、優雅に、

「私はリーファ。リーファ・リンドルムです。よろしくお願いしますね、天月さん」
「よろしく、リーファさん」

 僕もなんとなんとなく真似をして、胸に手を当てる。
 だけど僕は、拳を作って、杭を打つみたいな格好だった。

 初めて仲間。
 しかも剣士のエルフ。
 いつか、彼女みたいな多くの人を、悲しみから解放できるようになれるかはわからない。今回が稀なのは、承知している。

 だけど、女の子はやっぱり、笑った顔の方が、素敵で可愛かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...