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閑話 変態貴族の終わらせ方③
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部屋に入ると、のほほんとした姿で、赤いふかふかのソファーの上に腰を据える男がいた。
かなりの巨漢だ。いや、脂肪分の塊みたいだ。
顔は脂肪で膨れ上がり、腹も出ている。
着ている服が引きちぎれそうになっていて、目の奥にはそれと似た狂気が見え隠れしていた。
「いやいや、アマツカミ侯爵。わざわざ足を運んでいただき感謝いたしますぞ」
「いえ、お気になさらずに。私がこの村に立ち寄ったのも、単なる偶然の産物でございます故」
「そうですかそうですか。ですが、一目お会いしたいとは思っておりましたよ。いやはや、誠に美しい女性だ」
今の一言、嘘ですね。
私は心を読むことも得意としています。
今の感想は、こう。
(チッ。なんでアマツカミガ。まあいい。どうせバレんだろ。それにしても、この女が少女ならなー)
と言った具合です。
全く、虫唾が走るぐらいには、最低最悪な変態野郎ですね。
「ところで、この部屋、かなりものが少ないように思いますか?」
「応接室ですからね。普段は、あまり使いませんので」
「そうでしょうか?」
「はい?」
私は部屋に入って一目見て確信した。
この部屋には小細工が多い。
例えば、
「あの観葉植物。毎日水を与えていますね。あの本棚の近くです」
「はあ?」
「証拠は埃です。埃の量や、動いた跡があります。あの本棚の真下辺り、そうですね壁際から少し離れた位置です。おそらく、あの場所に曲線美があることから、あの辺りに鉢を置いていたものを、何かの理由で避けたのでしょうね」
「そ、そこまでわかるのですね」
「ええ。それから、本棚ですが。中にある本、皆同じ背表紙で統一されています。シャルロッテ著書のシャーリーン探偵事務所シリーズの最新刊までが並んでいますね。ですが、一つおかしくはありませんか?」
「おかしい?」
私は本棚に近づいて、勝手に取り出します。
私は本の背表紙を見るとともに、「やはり」と確信しました。
「この本、第四巻と五巻の間にあたる、中編小説、ロッセルドの滝殺人事件が少し分厚いですね。これは、本棚との隙間を埋めるための小細工でしょう。それにこの本だけが、少しへたれていて、さらには本の上部に埃がない。何故でしょうか?」
「そ、それはその本だけよく読むんですよ」
「そうですか。では、この本の犯人は?」
「そ、それは……」
言葉に詰まる。
それは当然です。何故なら一度読んだら、絶対に忘れない人物なんですからね。
「覚えていないんですか?」
「そ、それはその。ど忘れしただけだとも」
「ほほう? グレイ・スージー。依頼人の娘が犯人だと知らずにですか?」
「そ、そうだそうだ。グレイ・スージー。まさか彼女が犯人だとは思わなかったよ。まさか、十四歳の娘が犯人……」
「はい、嘘ですね」
「なあっ!?」
私は嘘を見破りました。
何故なら、
「グレイ・スージーは、最初の被害者です。それを覚えていないなど、すでに貴方の嘘は見破られているんですよ。ですから、この先には!」
「や、やめろ!」
私は本を引いた。
すると本棚が軋みだし、誇りを巻き上げながら、壁の向こうに道を作る。
そう、本棚の裏には隠し通路があったのだ。隠し部屋。この先には、
「だ、誰か助けてよ!」
「お願いです。お願いだから!」
少女達の声が聞こえてきました。
「どうですか?」
「こ、この野郎が!」
つい先ほど助けた少女達の声。
わざと張ってもらっていたんです。
しかし暴かれた途端に、豹変するなんて、最低ですね。いえ、パターン的には凡人です。
私は襲ってきたヘンネル伯爵を、指一本使わず、気配だけで威圧させると、そのまま指を鳴らしました。
バタン!ーー
「ヘンネル伯爵、覚悟!」
「な、何をするは、離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
扉が盛大に開き、待機していた騎士たちが飛び込んでいました。
すると瞬く間に確保され、私は無駄に足掻く姿を目の当たりにします。
「どうですか? これでもまだ、貴方の行動を認めないなら、ここにいる人たちが怒りに任せて、貴方を殺すかもしれませんよ?」
「く、くそっ!」
「せいぜい足掻くんですね。これまでに殺してきた少女達の無念を知りながら」
私の言葉はまるで呪いのようでした。
こうして、ヘンネル伯爵の短い貴族人生は幕を閉じ、牢に収監されることになりました。
近々裁判があるようですが、私は参加しません。
今までに殺されてきた少女たち、誘拐されてきた少女たち、その無念の絶望と悲しさを背負って、彼には身を潰してでも償ってほしい? と、思う心があるのかは、私にはさっぱりでした。
かなりの巨漢だ。いや、脂肪分の塊みたいだ。
顔は脂肪で膨れ上がり、腹も出ている。
着ている服が引きちぎれそうになっていて、目の奥にはそれと似た狂気が見え隠れしていた。
「いやいや、アマツカミ侯爵。わざわざ足を運んでいただき感謝いたしますぞ」
「いえ、お気になさらずに。私がこの村に立ち寄ったのも、単なる偶然の産物でございます故」
「そうですかそうですか。ですが、一目お会いしたいとは思っておりましたよ。いやはや、誠に美しい女性だ」
今の一言、嘘ですね。
私は心を読むことも得意としています。
今の感想は、こう。
(チッ。なんでアマツカミガ。まあいい。どうせバレんだろ。それにしても、この女が少女ならなー)
と言った具合です。
全く、虫唾が走るぐらいには、最低最悪な変態野郎ですね。
「ところで、この部屋、かなりものが少ないように思いますか?」
「応接室ですからね。普段は、あまり使いませんので」
「そうでしょうか?」
「はい?」
私は部屋に入って一目見て確信した。
この部屋には小細工が多い。
例えば、
「あの観葉植物。毎日水を与えていますね。あの本棚の近くです」
「はあ?」
「証拠は埃です。埃の量や、動いた跡があります。あの本棚の真下辺り、そうですね壁際から少し離れた位置です。おそらく、あの場所に曲線美があることから、あの辺りに鉢を置いていたものを、何かの理由で避けたのでしょうね」
「そ、そこまでわかるのですね」
「ええ。それから、本棚ですが。中にある本、皆同じ背表紙で統一されています。シャルロッテ著書のシャーリーン探偵事務所シリーズの最新刊までが並んでいますね。ですが、一つおかしくはありませんか?」
「おかしい?」
私は本棚に近づいて、勝手に取り出します。
私は本の背表紙を見るとともに、「やはり」と確信しました。
「この本、第四巻と五巻の間にあたる、中編小説、ロッセルドの滝殺人事件が少し分厚いですね。これは、本棚との隙間を埋めるための小細工でしょう。それにこの本だけが、少しへたれていて、さらには本の上部に埃がない。何故でしょうか?」
「そ、それはその本だけよく読むんですよ」
「そうですか。では、この本の犯人は?」
「そ、それは……」
言葉に詰まる。
それは当然です。何故なら一度読んだら、絶対に忘れない人物なんですからね。
「覚えていないんですか?」
「そ、それはその。ど忘れしただけだとも」
「ほほう? グレイ・スージー。依頼人の娘が犯人だと知らずにですか?」
「そ、そうだそうだ。グレイ・スージー。まさか彼女が犯人だとは思わなかったよ。まさか、十四歳の娘が犯人……」
「はい、嘘ですね」
「なあっ!?」
私は嘘を見破りました。
何故なら、
「グレイ・スージーは、最初の被害者です。それを覚えていないなど、すでに貴方の嘘は見破られているんですよ。ですから、この先には!」
「や、やめろ!」
私は本を引いた。
すると本棚が軋みだし、誇りを巻き上げながら、壁の向こうに道を作る。
そう、本棚の裏には隠し通路があったのだ。隠し部屋。この先には、
「だ、誰か助けてよ!」
「お願いです。お願いだから!」
少女達の声が聞こえてきました。
「どうですか?」
「こ、この野郎が!」
つい先ほど助けた少女達の声。
わざと張ってもらっていたんです。
しかし暴かれた途端に、豹変するなんて、最低ですね。いえ、パターン的には凡人です。
私は襲ってきたヘンネル伯爵を、指一本使わず、気配だけで威圧させると、そのまま指を鳴らしました。
バタン!ーー
「ヘンネル伯爵、覚悟!」
「な、何をするは、離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
扉が盛大に開き、待機していた騎士たちが飛び込んでいました。
すると瞬く間に確保され、私は無駄に足掻く姿を目の当たりにします。
「どうですか? これでもまだ、貴方の行動を認めないなら、ここにいる人たちが怒りに任せて、貴方を殺すかもしれませんよ?」
「く、くそっ!」
「せいぜい足掻くんですね。これまでに殺してきた少女達の無念を知りながら」
私の言葉はまるで呪いのようでした。
こうして、ヘンネル伯爵の短い貴族人生は幕を閉じ、牢に収監されることになりました。
近々裁判があるようですが、私は参加しません。
今までに殺されてきた少女たち、誘拐されてきた少女たち、その無念の絶望と悲しさを背負って、彼には身を潰してでも償ってほしい? と、思う心があるのかは、私にはさっぱりでした。
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