生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう

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43話 いつもとは違う空気

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 僕とリーファさんは、久々に冒険者ギルドに向かった。
 ここ数日間は、療養も兼ねて休んでいたんだ。

 とは言っても、リーファさんの提案で、僕のことを気遣ってくれたらしい。
 だけど僕にはそんなもの必要なくて、結果として、この期間は全部自主練に充てながら、ルビーさんのお店の手伝いに明け暮れていた。

 それで今に至るのだが、久々の感覚で、冒険者ギルドが様変わりしているかどうか、気になる。
 とは言っても、雰囲気がそう変わることはなく、情勢やクエストの種類なんかを見たかったんだ。

 そういう目的も兼ねて、僕たちは、

「うわぁ。なんだかいつもよりはしゃいでるのかな?」
「そうみたいですね。見てください、あれは宴会ですかね?」

 リーファさん指を指す。
 するとテーブルの上に酒やら食べ物やらが置かれていて、何だか気分が良さそうだった。

 もしかして何かあったのかと思いきや、いきなり、

「よお天月!」
「うわぁ! ご、ゴレスさん?」

 頭を思いっきり掴まれた。
 そこにいたのはゴレスさんで、相変わらずガタイがいい。

 筋肉隆々って感じで、清々しく、僕はたこができた手で、触られていたが、すぐに避けると、ゴレスさんにこの状況を聞いた。

「ゴレスさん? これって一体なんなんですか?」
「何って。決まってるだろ。支援金がたんまり入って、豪華にパーティーだとよ」
「ぱ、パーティー? って、支援金って!」

 僕は目を丸くした。
 正直支援金が出るなんて話は結構ある。

 だけどこんな適当な時期に、一体どこの誰が?
 そう思いきや、僕たちを見つけたエレナさんが走ってきた。

「あっ、天月君、リーファさん!」
「エレナさん。あの、支援金とかパーティーって」
「それなんですが、パーティーはあの人たちがクエストで大きな手柄を上げたとかで、ですが支援金の方です。天月君、ちょっと来てください。リーファさんも!」
「「えっ?」」

 僕とリーファさんは、同時に声を上げた。
 と言うか首を傾げながら、ポカンと口を開ける。
 こんな間抜けな表情をするリーファさんを見られる機会はかなり少ない。だけどそれにも訳がある。

 エレナさんは、慌てた様子で、来るなり僕たちを連れて、何処かに行こうとした。

「あのエレナさん、僕たち何かしちゃいましたか?」
「そうではないんですけど、そのお礼の品が届いていて、支援金はそのついでみたいなものです」
「支援金をついで? 一体どなたでしょうか」

 リーファさんにも心当たりはない。
 僕にもさっぱりだ。そんな感謝されるようなことをした覚えは、なくはないけど、当然のことをしたまでだった。

「エレナさん、ここは?」
「バックヤードです。お二人には、ある方に会っていただきたいんです」
「ある方?」

 一体誰だろうと思いながら、僕たちは足を止めると、バックヤードを進んだ。
 その先はいくつも部屋があって、その一番奥。そこには、

「ギルドマスター室?」

 と書かれたプレートが吊るされていた。
 
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